後半、マッシュ君…‥曇らせ?注意です。すごいことになっちゃった。
曇らせは最後ハッピーエンドになるのなら大好きです、バッドエンドは……いやですね。
それでは本編へ……どうぞ!
合宿所・ロビー
「はぁ、ふぅ……! な、何とか、戻って来る事が出来ましたね……!」
「えぇ……」
室内へと戻ってきた補習授業部は、全員が疲労感を滲ませて深い息を吐き出した。マッシュが作った荷車は爆発によって破壊されてしまったため、徒歩でここまで戻ってきたのである。
「先ず先生は此処で安静に、今は休んでいてください」
「僕は別に怪我とかしてないよ?」
「念のため、です」
「……わかったよ」
「アズサちゃんは念の為、引き続き周囲の警戒をお願いします」
「……分かった」
合宿所へと戻って来たにも関わらずハナコは張り詰めた空気を放ったまま、そう告げる。アズサは頷き、愛銃を構えながら合宿所入り口に立った。
「け、警戒って、ハナコちゃん、此処はトリニティの合宿所で――」
「――申し訳ありませんが」
そんな困惑するヒフミの声を掻き消すように、ハナコは強い口調で断じた。
「あの様な手段を用いて来た時点で、私はこの合宿所ですら安全ではないと考えています――元々此処は、ティーパーティーの用意した場所ですから」
「それは……そうですけれど」
「……ごめんなさい、ヒフミちゃん、私もトリニティ内で仕掛けて来る可能性は低いと思っています、けれど決してゼロではないんです」
「ヒフミ、ハナコの云う通りだ――此処はもう、無条件で安心できる場所じゃない」
「っ……」
今日の朝まで、皆が安心して暮らせる暖かい寮であったが、今やそんな雰囲気ではなく、冷たく、まるで監獄のような状況。
「あ、あの、何なら救護騎士団の方を呼んだ方が――」
「それは……」
「それはやめておいた方がいいね」
「先生、だけど……」
「僕の負傷……とかはまぁしてないんだけど、今回の事件が外部に漏れたら、最悪学園間での対立、争いにも繋がっちゃうかもしれない……それだけは絶対にダメ」
外部に、『トリニティの生徒会、シャーレの先生を爆殺未遂か!?』なんて事が漏れ伝わってしまえば、おそらくマッシュと関わったありとあらゆる生徒がティーパーティーの敵になる。
「――こんな仕打ちを受けて尚、ティーパーティーを庇うのですか、先生」
「当然、ナギサさんも僕の生徒ですから」
「………」
「それにほら、別に目立った怪我とかしてないし……今はそれよりも大事なことがある」
「………次の試験について、対策を練らなければなりませんね」
「その通り」
少し遅れて、コハルがマッシュ達の元へやってくる。その手には救急箱と濡れタオルを所持していた。
「せ、先生……これ、一応…」
「ありがとうコハルちゃん」
「気にしないで………ね、ねぇ…それよりも―本当に……本当にティーパーティーの偉い人たちが私達を退学させようとしているのなら、もうどうしようもないんじゃ……? 知恵を寄せ合ったところで、何をしたって、そんなの、もう……」
「一応、一週間後の第三次特別学力試験が私達の最後のチャンスとなりますが……」
「あんな手を使ってくる事を考えると、とてもマトモに試験を受けさせてくれるとは思えない」
どんな手を使ってでも補修授業部を退学へと持っていく、例えどんな犠牲を払ってでも……ティーパーティーは、ナギサは、その覚悟を決めている。
そんな相手が真っ当に、ちゃんと試験を受けさせてくれるだろうか?―答えは否……絶対にない。
我慢ならなくなったコハルが、遂に声を上げた。
「そっ、そもそも!どうしてこんな事になっているの!?何で、退学にならなくちゃいけない訳……!?それに先生が攻撃されるなんて、おかしいじゃない!!」
「コハルちゃん、僕は」
「トリニティの裏切り者とか、意味わかんない……!私達、疑われるような事なんて何もしていないのに!それに、それにさ、私達だけならまだ良いよ!?だって、痛いだけで済むもん……!
でも、先生は下手をしたら死んじゃう所だったのよ!?いくら先生がとんでもなく強くて、死ななかったとしても……後遺症とか、ありえるでしょ?――賢い人なのに、そんなこともわからないの!?」
そう言って泣き叫ぶように声を荒げ、歯を食い縛るコハル、理不尽な力によって自分達の努力が無駄になり、自身の大切な仲間達が傷付く……そんなことが許せなかったのだ。
「何なの、何で、こんな……っ!た、退学になったら、正義実現委員会にも戻れなくなっちゃう…わ、わたし達、なにも、こんな、こんな事される様な事なんて、何も……うぅ……っ!」
「………コハルちゃん」
「……立場を考えると、この事を抗議しても暖簾に腕押しだろう」
「えぇ、恐らくは――真面に取り合って貰えるとは思えません」
「なら、正攻法で試験を突破するしかない……か」
「しかし正攻法で、九十点以上を取れるようになんて可能なのでしょうか?しかも試験範囲は三倍で、一週間以内に――」
「……時間も手も足りない…ですね」
「ぐずっ……!無理、絶対無理よ……せっかくここまで頑張ったのに、これ以上なんて……!」
コハルは絶望し、泣き続ける。尊敬する先輩の応援に応えるため、自分に頑張って勉強を教えてくれる仲間たちのため、コハルはずっと頑張ってきた。
苦手なことに向き合い続け、血の滲むような努力をし、絶対に諦めない、やめないと心に決めてきた……だが今回の件と、退学という言葉を聞き、心が折れてしまった。
「――コハルちゃん」
「グスッ…せん…せ?」
マッシュは泣きじゃくるコハルの手を握り、目線を合わせ、優しい口調で話し始める。
「もっと頑張れ、なんて言わない。コハルちゃんはこれまでめいいっぱい頑張ったんだから」
「……うん」
「だけどあと少し……あと、ほんの少し試してみない?――僕は、皆が合格できるように、死ぬ気で応援して手伝うから」
「で、でもこれ以上無理したら…先生は」
「コハルちゃん、もう忘れちゃった?」
マッシュは握っていたコハルの手を離し立ち上がると、自分の筋肉を見せつけるようにマッスルポーズをを取る。
「僕は完璧で究極で最強無敵の先生、マッシュ・バーンデッド。ちょっとやそっとじゃ死なないし、消えない」
「…けど」
「もしこれから、補習授業部が最悪の事態に陥ったとしても、皆の退学だけは絶対に回避して見せる……たとえそれで僕が、どうなろうとも、力づくで」
「先生……」
「それが僕の覚悟だよ」
マッシュのそんな力強い言葉に、ヒフミ達は背を押されたような感覚を味わった。―そうだ、自分達にはマッシュがいる、そんなマッシュが側にいるのに……何を心配する必要がある?
マッシュが命を張っている、仲間が、友達が、命をかけている……ならば自分達も、頑張るほかない。
「今日はもう休もうか、みんなもう疲れてるし――うん、明日はちょっと遅めに授業を始めよう」
「……ずびっ、う、うん」
「よすよす……さて、僕はもう少し起きてるから、みんなはもう眠るように」ビシッ!
「寝るべきなのは……先生だ、本当にそろそろ」
「………大丈夫大丈夫、なんてたって僕は」
マッシュはまたマッスルフォームを作り、大丈夫アピールをしようとした――しかしその時
「完璧で究極……究極…の………」
「先生?」
「さいきょう…無……てき………の……ぁれ…?」
突如として、マッシュの視界が由来で頭が呆け、立ちくらみが発生した。さらに意識も朦朧とし、手足の力も徐々に抜けていく。マッシュがふらふらと揺れ始め、思考がまとまらなくなる。
――ふざけるな、今じゃないだろ、ダメだ
「なんで……いま……こう…なっ…た―――」フラッ
「先生!!」ガシッ!
マッシュは倒れてしまい、それをアズサが受け止めた。ヒフミ達はすぐに駆け寄り、顔面蒼白でマッシュに呼びかける。
「先生!マッシュ先生!!」
「全然、全然大丈夫じゃないじゃん!!」
「先生、しっかりして!こんなところで――――――ん?」
「………これは」
マッシュは気絶……………ではなく
「…zzzzzzzzzzzzzzz」
眠った。
「寝てる!?」
「…相当疲れが溜まっていたはずだ……寧ろこうならない方がおかしい」
「そ、そうですよね!?これが正常……ですよ、ね……?」
「……少し安心しましたね…ふふっ」
アズサの腕にもたれ掛かりながら、寝息を立てて眠るマッシュ。ハナコはこれからの選択肢を考え、行動を起こすことにした。
「みなさん、先生の事は私にお任せください」
「は、ハナコ……あんた」
「大丈夫です、ほんの少し……ほんの少し、先生のそばにいるだけで―」
「眠ってる先生を襲おうとか、そんな事考えてないわよね?」
「そっそそそそそそんなわけないじゃないですか!?」
「な、何よその動揺!?あんたまさか、本気で!?」
「違います!全然違いますからね!?…た、ただちょっと…その……なんと……言いますか………ほんの少し、お身体に触れられればと…」
「あーもうダメ!絶対にダメ!あんたに先生は任せられないっ!……だから、ヒフミ!」
「え、わ、私ですか!?」
「貴方が一番安心できる!だから先生をお願い!」
「…コハル、私じゃダメなのか?」
「あんたは絶対に先生と一緒に寝るからもっとダメ!!」
「………………ソンナコトシナイ」
「片言じゃないの!!―ほら、早く先生を自室にまで運ぶわよ!」
「は、はい!」
「………ふふっ、いつもの、コハルちゃんに戻りましたね」
補習授業部全員でマッシュを自室へと運び出し、ヒフミを除いた他メンバーは自分達の部屋へと戻る。いつもの補修部、いつもの明るさを少し取り戻したと思ったハナコは
「…よかった」
少し安心した。
【―――ああ……やっと産まれたな……私の可愛い可愛い…息子よ】
………なんだこの声…知らないはずなのに……知ってるような…………気味悪いな
【これで6人目……ついに、ついにこの時が来た。私が……私が完璧な存在となるまで…あと、もう少しだ】
………え、何…こわ、この人…怖
【……しかし少し不安があるとするならば――魔力がない……ただそれだけが、不安で仕方ない】
―─なんでそのことを…うわ、ちょ、顔をそんなに強く触られたら……つめた、何この人。
【……まあいい、どうせお前は、私の一部になるのだからな】
一部……なんの話を
【どうせ、この世界では……お前のような魔力が無い人間は生きていけない……生きる価値も無い、誰かに頼られることもなければ、誰にも感謝されることもない……つまり、この世界に、お前が存在する価値はない】
喧嘩売ってるんですか?買いますよ?
存在価値とか勝手に決めないでくれませんか?そんなの他人にとやかく言われる筋合いないですし
【しかし喜べ……そんな存在価値のないお前を……この私が、完璧な生命となるこの私の役に立てるんだ――光栄だろう?】
ぶっ飛ばしますよ?人の役に立てるのは嬉しいですけど……貴方みたいに感じ悪い人のために働くのは、流石の僕も嫌なので
【お前の価値は、その肉体だけ……それ以外は、ゴミに等しい……】
……………腹立ってきたな、この、えい、――うんダメだ、全然動けない。
【―――生徒達も可哀想だ、お前のような……なんの取り柄も能もない、お前に従わなければいけないのだから】
―───なんで生徒達のことを……?
【お前が先生になったせいで……多くの生徒達が死ぬかもしれない、お前が先生になったせいで、キヴォトスの未来が奪われるかもしれない】
そんなことさせない、死んでも守ってやるって決めたんだ。……それに、みんな僕のことを頼ってくれている、その間は
【第一……本気でお前が頼られていると思っているのか?】
……は?
【お前は頼られているのではない――利用されているだけだ、超人的な、暴力の化身のようなお前の力を利用して……彼女たちは楽をしている。面倒事はお前に押し付ければ勝手に処理される、だからお前は生徒にとって都合の良い道具にしかならない。ただそれだけだ……お前が考えているような友は、どこにも存在しない】
何を言って……そんなわけ―
【ほら……聞こえてくるぞ?…働きの良い奴隷としてお前を利用している……お前のことを友としても仲間としても認識していない―ただただ道具としか見ていない……生徒達の声が……】
【ん………私達はただ、あなたを利用しただけ……仲間?そんなのあなたが勝手に思ってることでしょ?】
【先生、先生って呼ばれて……さぞや嬉しかったでしょう――書類もまともに処理できないくせに、よくもまあ、あそこまで誇れましたね】
【あなたのせいで私たちの負担が増えていることに…なぜ気づかないの?―ほんと…迷惑】
【私は誰も信じない、どうせ貴方も私のことを信用していないんでしょう?――消えてくれないかな……アビドスに、貴方の席はないんだから】
【あなたが無理に動いてくれたおかげで、私の負担がかなり減った………もっと頑張って?もっともっと私のために働いて………――そのまま、私の役に立って】
【私達は主役……でも先生はゲームで言うところの、脇役?……ううん、主要メンバー達が成長するためだけの脇キャラ!――だからもうどっかいってもいいよ?】
【お姉ちゃんの言う通り……本当に、それだけなので】
【……うん】
【マッシュ・バーンデッド、貴方は……パーティーから追放です!!】
【私たちを信頼…?そんなことされても困る】
【私よりも頭が悪いくせに、偉そうに】
【そんな薄っぺらい言葉……誰が信じられますか?】
【えーと………あはは、楽しかったですよ?】
【先生との、友情ごっこ】
―――そんな………そんな…
【―どうだ、これが事実だ………哀れだな、マッシュ・バーンデッド……お前はこの世界で、彼女たちに近付けたものだと勘違いをしていたんだ……お前は――孤独だ。
お前に友などいない………お前を育ててくれた祖父も、お前を必要としていない】
【お前に会ってから散々に目にあってばかりじゃ………お前なんぞ―――
拾わなければよかったんじゃ……マッシュよ】
【頼むから……死んでくれ】
………………
【さあ……さあ!!どう思ったマッシュ・バーンデッド!アッハハハハハハッ!!!――さあ絶望しろ!貴様のような下等に、生きる意味など存在しないと知れ…!………お前は、ただひたすらに、一人で!!!】
―──―いや、解釈違いです。
【…………なに?】
いや、なんか色々聞こえてきましたけど………全部解釈違いなんですよね。
【……何を、言っている?】
リンさんに、シロコちゃん…ユウカちゃんにホシノさん、ヒナさんに、ゲーム開発部と補習授業部の皆……ううん、それだけじゃない。
僕が今まで関わってきた生徒達……それに、僕の大事な家族であるじいちゃんが
そんなこと言うわけないだろ、馬鹿野郎が。
【…………………】
皆、言ってくれたんだ。大切な友達で、仲間で、家族だって。
それに貴方は、生徒の皆が僕を利用して楽をしてるだけ、とでも言いたげな言い草ばっかりですけど……違う。
頼まれたからやってるんじゃない。僕がやりたいからやってるんだ。
【………】
貴方が何者か、僕にとってどんな存在か知らないけど……とりあえず言わせてください。
二度と僕の大事な人達に、あんなことを言わせるな
二度と、僕の大事な人達を愚弄するな
二度と、僕の大事な人達に関わるな
関わって危害を加えたその時は―─――朝日が拝めるとは思うなよ
【…………ふん、せいぜい足掻いていろ―─所詮、貴様らは】
いい加減に―――
ブンッ!!!!!!
「うるさい、よ……………あれ?」
「せ……先生?」
マッシュは腕を振り上げたと同時に、自室で目を覚ました。体を起こして見回した室内は、未だ試験出発前と変わっていなかった。
「……ヒフミちゃん?…あれ、どうしたの?」
「ど、とうしたも、なにも……さっきまで眠っていた先生が寝言を呟き始めて、いきなり腕を振り上げたので…びっくりしたん、です」
「―――……あれは……夢か」
「夢?いったいどのような?」
「凄く不思議で…変な夢だったよ。なんか声がいい男の人が僕を徹底的に貶してきたり、生徒の皆やじいちゃんに解釈違いな台詞を喋らせて、僕をめちゃくちゃ口撃してくる夢」
「な、なんですかそれ……ちなみに、夢の中で、その大切な人達はなんと?」
「……あんまり、聞いてて楽しいものじゃなかったかな。なんていうか、とことんまで僕や周りの人をこき下ろしたいって意図が見え見えのことばっかり言ってた。先生になった僕は生徒にとって都合の良い道具として利用されてるだけで、皆に負担をかけるばっかりの役立たず、とも言ってたような気がする」
「―――な……なんですか……なんなんですか、それはっ!!!」
「うわびっくりした」
マッシュが語った内容に、ヒフミはたちまち憤慨した。夢の中に現れてまでマッシュを罵倒し侮辱した相手を蜂の巣にしかねない勢いで、顔を真っ赤に染めたヒフミが激情のままに叫ぶ。
「先生が負担?そんなわけありませんよ!!寧ろ、補習授業を受けることになったのは私達自身の問題で、先生は顧問として協力してくれただけで……どう考えても、足を引っ張っているのは私たち生徒のほうです!!」
「えぇ、いやそんなことは」
「役立たず?利用していただけ?人様の夢の中に上がり込んできて何様のつもりなんですか、って話ですよ!」
「ひ、ヒフミちゃん?あの、これ夢の話だから……あんまり本気にしないで」
「夢だったとしても!……先生がそんなふうに言われるのは…嫌です。だって先生は――私の大事な友達ですから!」
【お前に、友はいない】
「――いるんだね、目の前に」
「ふえ?」
「あーごめん、こっちの話………ありがとうヒフミちゃん、友達になってくれて」
「え?……な、なんだかよくわかりませんが――どういたしまして!!」
きっと疲れすぎていて、ネガティブな感情が夢にまで影響してあんなものを見たのだろう。マッシュはそう思い、夢の内容を忘れることにした。
気になる節は尽きない……しかし今は、
「先生として、ここを任されたものとして―頑張らないとね」
自分の役目を、全うする。マッシュは先生として、補習授業部とともに戦うことを決めた。
はい、謎の人物の登場とマッシュ君が悪魔を見ちゃったお話でした。すごいことになっちゃった……え?謎の人物は誰かって?
秘密です。そして謎の人物の出番はおそらくこれまでです。
正義実現委員会とか、C&C、他にも今までマッシュと関わってグループ達の一部は省略しました。単純にかけませんてました。
そしていよいよ……次回からラストスパートです、覚悟の準備をしておいてください……いいですね!?
励みになるのでコメントと評価、どうぞよろしくお願いします。
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