次回、いよいよ……あはは、のシーンです。しかぁぁぁしご安心を!!
鉄槌は下しますが、ハッピーエンドには持ってゆきます!
それでは本編へ……どうぞ!!
第五次補習授業部模試、結果
ハナコ・百点・合格
アズサ・九十四点・合格
コハル・九十点・合格
ヒフミ・九十三点・合格
――――――――――――――――――――――
第六次補習授業部模試、結果
ハナコ・百点・合格
アズサ・九十一点・合格
コハル・八十三点・不合格
ヒフミ・八十九点・不合格
―1日、また1日と、時間が流れていき…ついに、第二次特別学力試験から六日後の夜を迎えた補修授業部一同。
「……ついに明日、ですね」
「はい……」
「………」
第二次特別学力試験で起きたあの事件から、この一週間彼女達は出来得る限りの事はして来ており、食事、睡眠、トイレなど、それ以外の時間はすべて勉強に費やして来たと言って良いほど、彼女達は頑張ってきた。
『みんな、シュークリーム焼き上がっ』
『ください!!!!』『ちょうだい!!』『欲しい!!』『おひとついただきますね♡』
『ど、どうぞ』
『いただきまぁぁぁぁす!!』『美味しい…!』『幸せ……』『これぞ至福ですね、ふふっ』
そしてその間やってきたシュークリームはまさに天からの恵みだったようで、シュークリームを食べている時間は彼女達にとって最&高の瞬間だった。
「ま、まさか、また急に色々変わったりしないよね?」
「はい、今のところは……おそらく」
「そうですね、試験範囲は以前の通り、合格ラインも変わらず九十点以上、場所はトリニティ第十九分館、第三十二教室、本館からは離れていますが、そこまで遠くはありません――時間は、午前九時から………むしろ気になる点と云えば、昨日から本館が不自然な位静かな事です、人気がピタッと無くなってしまったようで」
「不気味、ですね」
そう呟き、ヒフミは目を伏せる。校舎から離れているこの寮では、トリニティ全体の動きを掴むことが出来ない。ここは完全に孤立している。
「……念の為、今晩も私の方で掲示板をずっと見ておきます」
「は、ハナコちゃんも寝た方が……」
「ふふっ、私は大丈夫です……私にはこれくらいしか出来ませんし……」
「そ、そんな事ありません! ハナコちゃんが凄く丁寧に勉強を教えてくれたおかげで、私もアズサちゃんもコハルちゃんも、すっごく成績が上がって……!」
「それは、皆さんが頑張ったからですよ――それに、先生の徹夜に比べれば、私の徹夜なんて可愛いものですよ」
ほぼ毎日眠っていない、そんな状況だったマッシュに比べれば自分の徹夜なんて可愛いもの、誇れるものではない。ハナコはそう言う。
「……何日も碌に睡眠を取れていなかったのに、必死に机に向かって……本当に、よく頑張ったと思います」
「それはハナコちゃんも同じ、頑張っていない人なんていないよ」
「―先生!」
「遅くなっちゃってごめんね………はいこれ、出来立てのシュークリー―」
パクッ!
「ありゃ」
「アズサちゃん!?」
「まるで獲物を刈り取る鷹……うふふっ、アズサちゃんも…獣だったと言うことですね」
「な、なんの獣よ! エ駄死!!」
「モグモグモグモグッ」
「でも食べてる姿はハムスターなんですよねえ……可愛い♡」
「ムググッ……可愛く、ない」
「いいえ……とっっても可愛いですよー?」
そう褒めるハナコの言葉にアズサは顔を赤くし、少し照れる。マッシュの作ったシュークリームをいつも通り食べ、いつも通り過ごす一同。
「後は明日の試験……ボーダーは九十点、正直、かなり厳しいと言わざるを得ませんが、問題が簡単だったら、きっと……!」
「っ、そ、そんな都合の良い事が起きる訳ない! 私はまだまだ深夜まで勉強するから!これを使って」
「はい没収です」
「えぇ!?」
「コハルちゃん、気持ちは分かりますが、今日はもう明日に備えてゆっくり休んだ方が……」
「そうですよ、コハルちゃんが頑張ったのは皆知っています、大丈夫です、きっと合格出来ます」
「う、うぅ……っ!」
「それに休むのも戦略の内だ、コハル」
「えぇ――そしてそれは、アズサちゃんも同じですよ?」
「……うん、今日くらいはゆっくり休もうと思う」
「もし起きてたら、強制的に寝かせるからね?」
「先生がそのセリフを吐くと……かなり、怖いんだが」
明日、全てが決まる。その緊張感からかコハルは不安で不安で仕方なかった、しかしここで徹夜をして、明日の試験に支障をきたしてしまったら……それこそ全て終わり。
「――いよいよ明日、私達の運命が決まるんですね……」
「もし――いや、縁起の悪い事は言わないでおこう、必ず合格してみせる」
「すびっ……! わ、私も……! 絶対に負けない、負けてなんて、やらないんだからっ!」
「そうですね、その意気です、コハルちゃん――泣いても笑ってもあと一回……全力を尽くしましょう」
「みんな、その意気だよ――…何があっても大丈夫、僕が防ぐから」
マッシュは手元にあるシュークリームを食べながら、そう告げる。
やれる事は全てやった、後は自分と仲間を信じて試験を受けるだけだ。
皆がそう決意を表している中、一人
「…………………………」
(……何か、あるな)
アズサだけは、何やら曇っている顔をしていた。それを、マッシュは見逃さなかった。
――――――――――――――――――――――
「――アズサ、日程が変わった」
「………?」
「明日の午前中だ、約束の場所で命令を待て」
「――は」
補習授業部・第三次特別学力試験前・最終日。あの後全員が眠ったのを確認したアズサは一人……アリウス分校にいた仲間、錠前サオリと話をしていた。
「ま、待ってサオリ、明日は……」
「何か問題が?」
「……まだ準備が出来ていない、計画よりも日程を早めるのは、リスクが大きすぎる」
「お前の言葉にも、一理ある、計画を前倒しにするリスクは確かに少なくない」
「な、なら……!」
「――だが、明日の決行は既に確定事項だ、計画を前倒しにするリスクよりも、この機を逃すデメリットの方が大きいと判断した、準備が出来ていないのならば出来ている範囲で構わない……最低限、動ける準備はしておけ」
「………っ」
アズサの言葉は、サオリの決定を覆すには至らない。もはやこの事実は変わらず、アズサは黙って受け入れるしかない。
「明日になれば全てが変わる、私達アリウスにも、このトリニティにも、不可逆の大きな変化が起きる事になる」
キヴォトスに於いて最大規模の学園として君臨してきた一角、トリニティを崩す。そうすればキヴォトス内でのパワーバランスは完全に破壊され……彼女達アリウスが天下を取る。
革命……もしくは侵略。
「トリニティのティーパーティー、そのホスト――桐藤ナギサのヘイローを破壊する……その為にお前は此処に居るんだ」
「……………っ」
これが、アズサがトリニティに潜入した理由。
友を裏切り、努力を裏切り、自分に光を見せてくれた先生をも、裏切る。
そんな自分が、幸せに、光に居続けられるのか?―――そんなわけがない。
「……分かっている」
「あぁ、お前の実力は信頼しているよ、上手くやれ――百合園セイアと同じ様にな」
「――了解」
そう頷き、アズサは無言で踵を返す。薄暗い廊下を歩いて行くアズサ。その背中を見送るサオリはふと声を上げた。
「アズサ」
「……?」
「――忘れていないだろうな、Vanitas Vanitatum」
「……全ては、虚しいもの」
呟き、アズサはその一句を口ずさむ。
「どんな努力も、成功も、失敗も……全ては、無意味なだけ――度だって、忘れた事はない」
「……あぁ、それで良い」
その答えを聞き届け、サオリは小さく頷いて見せる。
希望を持ってはいけない、幸福を求めてはいけない、それは自分達にとって害でしかなく、そんなもの必要ないのだから。
「……あの先生、マッシュ・バーンデッド」
「…」
「あれの言葉に耳を傾けるな……どうせ、偽善だらけの嘘だらけの言葉………
恵まれた環境で育った、痛みを知らない者の、くだらない言葉だ」
「―――…うん」
「では明日……準備を怠るな」
そう云ってサオリは踵を返す。アズサは去り行く彼女の背中を暫く見つめ、自身もまた身を翻した。
(………恵まれた環境…痛みを知らない、きっと違う……先生にも何か…痛みが……)
無敵の先生にそんなことがあり得るのだろうか……肉体的ではなく、内面的な意味で。そんなことを考えながらアズサは、部屋へと戻っていった。
「………」
そして、去り行く二人の後姿を、ハナコは物陰からずっと見つめ続けていた。
――――――――――――――――――――
第三次特別学力試験、前夜
「――眠れん」オメメギーン!
マッシュの眼はバッキバキに開いており、眠れていなかった。緊張もあるが……昨日見た悪夢のことが少し気になっていた。
(一部とか完璧とか……よくわからない人だったな……もしやあの人――いわゆるそう言うお年頃ってやつなのかな……だったらほっといてあげよう、うん)
いわゆる厨二病だったのだろう、そう思い一度忘れようと布団の中に潜るマッシュ……すると、部屋の外から気配がした。
「こ、こんばんは先生……まだ、起きていらっしゃいましたか?」
「ヒフミちゃんに……ハナコちゃんやコハルちゃんまで、どうしたの?」
「ふふっ、私も来ちゃいました♡」
「ヒフミ、何しているの……?」
「ふ、二人とも…」
夜中なのに、ヒフミ達はマッシュの部屋を訪れた、何かあったのだろうか、マッシュは心配になり話を聞く。
「…何かあったの?」
「わ、私はその……緊張で…」
「私は部屋に誰もいないから、気になって付いてきたの」
「……実は先程、シスターフッドの方々と少し会って来たんです、色々と調べたい事がありまして……」
「調べたい事?」
「はい、明日、私達が試験を受ける予定の第十九分館についてなのですが……」
「まさかまた変更?」
「いえ…場所は変わっておりませんが――」
ハナコは口を開き、どこか言い辛そうに言葉を続けた。
「この後、第十九分館には大規模な正義実現委員会の派遣が決定されていて、建物全体を隔離するとの事でした」
「か、隔離!?」
「しかも正義実現委員会……が?」
「はい、エデン条約に必要な重要書類を保護する――という名目でティーパーティーから要請があり、建物全体を正義実現委員会として守る厳戒態勢に入ったとか」
「な、なにそれ……」
「それから、どうやら本館の方にも戒厳令が出ている様です、昨日から妙に静かだったのは、このせいみたいですね」
「か、戒厳令……? そんなの、初めて聞きました……」
「恐らく、誰一人あの建物への出入りは許されません――エデン条約が締結されるまで、ずっと」
「………まじか」
マッシュは右手で頭を押さえ、ついにそう来たかとため息をつく。これはつまり『試験を受けたいのであれば、正義実現委員会を敵に回せ』と言うこと。
「そ、そんな……! わ、私がハスミ先輩に事情を説明して……!」
「……いや、それはやめた方が良いでしょう、ナギサさんはハスミさんに裏側の理由を知らせていないでしょうし……
それにハスミさんが私達を助ければ、それはティーパーティーに対する明確な離反行為と取られかねない、その場合、ハスミさんも正義実現委員会を追放されてしまう可能性があります」
「なっ、う、ぁ――うぅ……そ、そんな……!」
「全く――第二次特別学力試験の時も思いましたが、どうやらナギサさんは、本気で私達を退学させようとしているようですね」
「ど、どうして、そこまで……」
「………」
平和のため、自ら選んだ夢のため、大義のため、もうナギサは止まらなかった。たとえこの方法が、ナギサの目指す平和とかけ離れてしまっても……関係ない、ただ……全てはエデンのために。
「――私のせいだ」
不意に声が響いた。
補習授業部のとマッシュの面々は、声の響いた方向へと顔を向ける。アズサが、いつの間にか部屋に入ってきていた。
「あ、アズサちゃん! どこに行っていたんですか……!?」
「………」
「アズサちゃん、どうか―」
マッシュが手を伸ばしアズサへ駆け寄ろうとしたその時、ハナコがマッシュの手を掴み、それを止めた。
「ハナコちゃん……?」
「――アズサちゃん、私達に言うべき事があるのではありませんか?」
「……?」
「……ハナコの言う通りだ、皆、先生も、聞いて欲しい――話したい事が、あるんだ」
「アズサちゃん……?」
「アズサ、ど、どうしたの……? 具合でも、悪いの?」
「いつものアズサちゃんの雰囲気じゃない……ほんとに、どうしたの?」
アズサは愛銃を持っている手が震えていて、顔色も完全に悪くなっていた。マッシュは心配になり、ハナコの手を離して近づき、アズサの目線に合わせてしゃがむ。
「アズサちゃん、何があったか……話してくれない?」
「…………」
「先生が……僕が、力に『――ずっと、隠していた事があった』……?」
アズサは一歩、一歩と後ろへ下がりマッシュから離れる。
怖い、これを言って仕舞えば……自分は何を言われるのだろうか
先生は自分を信じると言ってくれた――けれど、ここで真実を話して仕舞えば……その信じてくれた気持ちを裏切ることになる。
「わ……――わたし、は……」
思い返されるのはこれまでの記憶、皆で合宿所の掃除をして、プールサイドでご飯を食べて、マッシュと共に筋トレをして、普段はしない雑談なんかに興じてみたりして、シュークリームを食べてみたりした。
楽しかった、人生で初めて、楽しいと思った瞬間の記憶――しかし……それも
「ティーパーティーの、ナギサが探している、トリニティの裏切者は」
この一言で……全てが、終わる。
(…先生……ごめん……なさい……)
「………私なんだ、先生」
「――なに……言ってるの?」
――ああ……やっぱり……全て……虚しい。
はいつらたんつらたん(血涙)
次回がおそらく、例のあははのシーンですね。内容はまた少し変えます……とりあえず、ハナコさんがガチギレするんだろうな〜と思っていてくれればありがたいです。
励みになりますのでコメントと評価、どうぞよろしくお願いします。
百花繚乱後に見たい話
-
まだ交流がない生徒との話
-
アイデェア箱から選んだお話
-
ラビット2章
-
愛が重い生徒との話