男が希少な世界で僕は、女っぽい格好してるけど実は男でしたムーブを満喫する 改訂版 作:霧夢龍人
「はぁ、酷い目にあったよ……元はと言えば遅刻した僕が悪いんだけど」
無事遅刻し、担任の教師である
ツカっちゃんって普段はほんわかしてて見てるだけで癒されるのに、こういう時に限って「ぷんぷん!湊ちゃんだめじゃないですかー!もう!次も遅刻したらもっと激おこですからねー?」なんて可愛く怒るんだ。
元の世界ならあざとすぎて嫌悪されそうだが、その愛くるしい見た目によって相殺しちゃってる。
ちなみに年齢を聞くと恐ろしい目に会うらしいので、命が惜しくない奴は是非聞いて欲しい。屍は拾うから……。
「うっ!?だ、だめだ思い出すだけで……ロリコンになりそうにッ!!いやまて、落ち着け僕。イエスロリータノータッチだ」
と、魅惑のロリボディーにメロメロになりかけている最中、僕は唐突に閃いてしまった。
───こういう男女比逆転モノの世界って、ロリに話し掛けても大丈夫なのでは?いやむしろ、逆に喜んで貰えるのでは?
QED、もちろん捕まります。
ここでもし僕がツカっちゃん(推定23歳児)に襲いかかろうものなら、この世界の女性は身体能力が異常なので、そのまま弾き飛ばされます。
何ならその後は、興奮した女性に馬乗りになられて18禁展開が繰り広げられます。結果、僕じゃなくて女性が捕まるでしょう。
「つまり、イエスロリータノータッチは変わらない……と。ま、まぁ別にロリコンじゃないから良いんだけどね?」
そもそも、ツカっちゃん自体僕のことをしっかり男子と認識しているか謎だ。僕のことをちゃん付けで呼んでるし距離感が近いけど、入学する時に男子としての手続きを済ませたはず。
それでも尚ちゃん付けで呼んでくるのは……いやよそう、考えたらダメな気がする。
「か、考えても仕方ないしね!」
と誰に言うでもなく大きな声で言い訳しつつ、勢いよく1-2組の教室を開けた。だけど授業中の雰囲気はない。今の時間はちょうど軽い休み時間みたいで、僕が遅れて入って来ても誰も気にした様子がなかった───ある2人を除いては。
「あっはは!お疲れ湊ぉ〜!け、結構叱られて……グフッ、ゥブッハハ!面白すぎ、て息が……ケホッ!?」
「自業自得。しかし怒られている様は面白かった」
僕を嘲笑うこの2人、どうやら僕が生徒指導室に連れていかれる途中まで教室で叱られていたから、通り掛かっていた時に目撃していたらしい。
そして今、それをダシにして滅茶苦茶バカにされている。
これって新手のいじめだよね?いいの?泣いちゃうぞ僕。
「う〜わ性格わっるぅ……はぁ、やれやれ。これだから君たちはモテないんだよ」
「「あ?今なんつった?」」
「ぴぃっ!?な、なんでもないですッ!」
なるほど、今のがバトル漫画モノでお馴染みの殺気か。オーケー、チビりそうだ。オムツの準備は出来てるか?
幻覚かもしれないけど、今二人の後ろに鉈をもった般若を幻視した。もしこれ以上モテないって言ったら……やばい、またチビりそう。
これからはもう二度と、二人にモテないなんて言わないようにしよう、
でないと最悪、僕の首が飛ぶ。男女比が逆転してる世界なのに、童貞卒業出来ずに死ぬとかどんな罰ゲームなんだ。
「と、ところでさ?なんか……ほら、気づくことない?」
それとなくモテない話題から話を逸らしながら、この日のためだけに習得した上目遣いで二人の顔を見つめる。遥はともかく雫に視線を合わせないといけないから、めちゃくちゃ腰を屈める必要がある。そうなると、僕のプリティーでキュートなおケツがプリッと出てしまうことが難点だ。
「けっ、はいはい可愛い可愛い。流石私らの湊ちゃんですこと」
「疑問。昨日の髪型の方が可愛いと思う」
反論やら嫌味やらが飛び交うが、僕が遥と雫の2人に見せたのは、昨日よりも短めに(肩にかからない程度)に切った髪型だ。
正直長い髪の毛も育成してる感じがあって好きだけど、手入れにも時間がかかる上にいつまで経っても男して見られそうにないので、決心して床屋さんで切ってもらったのである。
「ちっちっち。2人とも分かってないな。これは僕の流行が最先端すぎるだけだよ。時代が僕に追いつかないってやつ、分かる?アーユーアンダスタン?」
わざとらしく人差し指を左右に揺らして、ただのイメチェンを装う。きっと二人は今は、僕の髪型にしか興味が移っていないはずだ。それが、僕が企てた策の術中に嵌っていると知らずに……。
というのも、昨日寝付けない時に考えた、人類史に残る素晴らしい名案が頭に浮かんだのだ。
その名も───あれ?私の幼馴染ってこんなにカッコよかったっけ?作戦である。
分かりやすく例えるなら、男だと思っていた幼馴染と夏祭りに行った時に、ふとした瞬間に可愛いと感じて……あれ、俺の幼馴染ってこんなに可愛かったっけ?
何だろう、胸のトキメキが止まらないッ!───という心理状態に陥れる、極めて凶悪(当社比)なやつ。
だが僕はそれに、更なる改良を加えた。
ほら、性別不詳キャラっているじゃん?アレだよアレ。
僕の当面の目標は、男か女か分からないレベルで性別を分からなくさせることだ。
その第一歩として髪の毛を優先した。元々髪の毛が男にしては少し長かっただけに、今ぐらいの髪の長さなら男とも女とも判断がつかないと思う。
だからこそ感じるはず。
あれ?こいつって女だよな……?え、でも見た目はすこし男っぽいようなそうじゃないような───という脳のバグが。
心では女だと分かってるのに、もしかしたら本当に男なのかもしれないという淡い期待。そんな悶々とした感情を抱き始めた時に───ネタばらし。
ふっふっふ、我ながら惚れ惚れする。
まぁおかげで今日遅刻したんだけど、ネタバラシした時の二人の顔を想像すれば十分にお釣りが来るレベルだよね。
実になんと分かりやすく簡潔な説明なんだろう、と自分でも分かりすく悦に浸っていた。
「納得。アホのする解答」
……うん、呆れたような感情がそのジト目からビシバシ伝わってくる。間違いなく前世ならショックで死んでたなぁ。
「うん、アホだね。でもやっぱりなんか似合ってんの腹立つ」
そんな雫とは対照的に、椅子に寄っかかりつつもちゃんと褒めてくれる辺り遥は流石としか言いようがない。しかもおっぱいがでかい。よし、結婚しよ?
「へへ、そうかな〜?そう言って貰えると嬉しい!」
僕がイケメンビューティフルボーイなのは周知の事実だけど、似合ってるって言われるのはやっぱり嬉しい。だからアホって言ったのは、今回だけ許してあげよう。
イケメンな僕は心も広いのだ。
「「んぐふっ!?」」
「……え、どしたの?」
「「だ、大丈夫……ちょっと発作が」」
胸を張ってドヤ顔をかましていたら、二人とも急に胸抑え始めたけど……まぁ、大丈夫ならいいや(適当)
もし本当にキツかったり大変だったりしたらきっと言ってくれるだろうしね。
ま、それは兎も角───今日から二人……クラス全員に実は男でしたムーブをするとして、多分遥と雫は最初の僕の策にハマってくれたはず。
それに僕は知っている。雫は似合ってるって言うのが恥ずかしくて声に出さないけど、実はあとでLINEにこっそり似合ってたよって送ってきてくれる。遥は言わずもがな。
そう考えると───なかなかに順調な気がしてきた!
ネタばらしした時のクラスメート、特に親友である2人の反応が楽しみで仕方がない。
あ、ネタばらしはいつにしようか……またそれは今度でいいか。
今はとりあえず、次の授業の準備をしよう。
───
──
─
数学の時間。僅かな小休憩を挟んだ先にある、苦行とも言える数字の羅列にため息を吐くものが多数。襲い来る睡魔に耐えきれず、チョークを額に叩き付けられるもの数名。
だがその中でただ一人だけ、チョークを投げられることなく授業をやり過ごした女生徒(?)がいる。
「おーい湊?……ぐっすり寝てるじゃん」
「心拍良好。快眠中だから邪魔しない方がいい」
「それは分かってる。こんなに気持ちよさそうな顔で寝てたら起こせないって」
元気満々で遅刻してやってきて、生活指導の先生にネチネチと怒られてた私の親友『春峰 湊』。しょんぼりしてた顔が可愛らしくて、何万枚も保有している脳内湊メモリーにまた一枚刻まれてしまった。
今日は髪を切ってイメチェンしてるらしく、ちょっとボーイッシュな感じになっていた。前の髪型も好きだけど今の髪型も好き、kawaii。
雫も否定してたけど、あれは可愛すぎて自分の言葉が素直に伝えられなかったやつだ。長年友達をしてるから間違いない。
「……てか、遅刻って昨日夜更かしでもしたのかな?こんなに寝てるって珍しいじゃんね」
「不可解。私には分からない。けれど、この天使みたいな寝顔を見られただけで満足。湊メモリーがまた潤った」
嵐のように教室にやってきて、波のように静かに眠った
二人とも可愛いから、なかなか絵になるなぁ。これは眼福かも。
「こんなに可愛くて優しくてスタイルいいのに、なんで湊は男にモテないんだろうね。まぁ、胸はないけど」
「一言余計。だけど確かに不可解。湊は何かいい匂いがする。アホではあるけど馬鹿ではない。頭の回転は学年トップレベルの成績なだけあって早い上に、何かいい匂いがする。モテない理由がない。
あーほんと、いつ聞いてもどんな完璧超人なんだって紹介内容だけど、実際に目の前に可愛く寝息をたてている“女の子”がその完璧超人なんだから、世の中は理不尽だと思う。
さすがにムカついたから上から抱きしめた。
この子は胸がないことも、もはやチャームポイントだ。ギュッと抱きしめたらマシュマロみたいに柔らかいのに、本人が恥ずかしがってなかなか抱きしめさせてくれないから、こうしてこっそり抱きしめるのがマイブーム。
天はニモツを与えずっていうけど、この娘の場合は荷物以外の全てを背負ってるような、そんな出鱈目な量を与えられたようにしか思えないくらい、完璧に近い。
でもそんな子が私達の前じゃこうして可愛らしく居眠りをかましているところを見ると、やっぱり昔の小さかった湊と変わってないって分かって、嬉しくなるんだ。
「ほんと、男子って見る目ない。私が男子だったらすぐにお付き合いを申し込むのに……ねぇ雫?もし、湊が男嫌いになったらさ」
「……なに」
「私たちで幸せにしてあげない?」
「……議論の余地あり」