男が希少な世界で僕は、女っぽい格好してるけど実は男でしたムーブを満喫する 改訂版   作:霧夢龍人

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審判

「・・・えと、お久しぶりですトーカさん・・・?」

 

「っ!?せ、先日は大変申し訳なかった!!!」

 

困ったような顔を浮かべた春峰くんを見ながら、私はすぐさま土下座の体勢に移行し頭を下げる。

 

恥も外聞も捨て置いた。

 

というかむしろ、この程度で許されるとは思っていない。

 

「え?あ、あのえと・・・えぇ?」

 

私の土下座に対し、困惑したような表情で苦笑いを浮かべる春峰くん。

 

だが、私は土下座を辞めるつもりは無い。

 

そもそもなぜ、私と春峰くんが出会ったのか───それはほんの数十分前まで遡る。

 

───

──

 

時刻は22時半。

事態は1本の通報から始まった。

 

「はい、もしもし。こちら男性専用通話です、事件ですか事故ですか・・・?」

 

電話を取ったのは、新人警察官の相良(サガラ) (ユキ)だ。

正義感もあって仕事も出来るいい後輩で、電話でのやり取りもスムーズな将来有望株だ。

 

『あー・・・事件です!』

 

「男性が巻き込まれているタイプの事件で間違いないでしょうか?」

 

『はい!また不審者がお兄ちゃんを襲いに来てて、一応撃退したんですけど・・・その事後処理をお願いしたくて』

 

会話は聞こえないが、相良の反応から見てやはり男性が関わっているタイプの事件らしい。

ここ最近はイタズラ電話が増えてきており困ってしまうが、全て対応しなければ本当に緊急性のある電話だった場合手遅れになるかもしれない。

 

だからこそ私たちは全ての電話に律儀に応答しているのだ。

 

まぁ当たり前だがな。

 

「了解しました。それでは付近の警察官を向かわせますので、少々お待ちください」

 

『わかりました!』

 

通報が終わればすぐさまに電話を切り、そこから住所を特定し場所を割り出す・・・うむ、仕事が早い。

 

「あの、先輩・・・ここって・・・」

 

仕事のできる後輩の働きにウンウンと頷いていると、相良が困惑したような表情で私に目線を送ってきた。

 

「ん?どうした?」

 

基本的にあまり滞らずにテキパキと仕事をこなすため、質問してきたことが珍しく少し驚くものの、相良の疑問に答えようと彼女が操作しているパソコンの画面に近づいて───気付く。

 

「・・・あぁ、“そこか”」

 

照らし出された画面に表示されている地図には、何年も働いている私にとって見慣れた場所・・・言い方は悪いが常連のようなものだ。

 

私はこれで何度目になるだろうか・・・相良は初めてだからあまり分かっていなさそうだがな。

 

「先輩がよく言ってる・・・春峰さんのところですよね?」

 

「あぁそうだ。私が新人の頃からずっと、半年に1回のペースで通報の電話が掛かってくるところだ」

 

「・・・魔境、と聞きました」

 

「あぁ、間違っていない」

 

ただの事件ならいざ知らず・・・私たちに電話がかかってきた頃には全て終わっているのだ。

いや、出来上がっていると言っても過言では無いかもしれない。

 

なぜなら私たちが通報を受けて到着した頃には、気絶した女達がピラミッドのように積み上げられているからだ。

 

あれは恐ろしいという言葉以外では言い表せなかった・・・く、悪夢がッ!?

 

「どんなに恐ろしいところか分かりませんが・・・ともかく向かってみましょう」

 

そんな普通じゃない私の様子を察してか、心配するような声色で私の目を見つめた後に問いかける相良。

 

あぁ、こんな先輩ではダメだな。

 

後輩を心配させたあげく、頼りにならないと思われてしまったらまずい。

 

「あぁ、そうだな」

 

少しの不安と恐ろしさを滲ませながら、私はその場を後にした。

 

───

──

 

「ここですか・・・」

 

「そうだ」

 

目をパチパチさせながらパトカーから降りた相良は、テーザー銃と警棒を携帯したまま件の一軒家へと歩く。

ちなみにパトカーのサイレンは鳴らしていない・・・通報者の家族のひとりの男性に知られないようにするためだ。

 

自分のせいで、家族が襲ってきた女たちを片付けている・・・自分の尻拭いをしていると勘づいて傷ついて欲しくないかららしい。

 

かなり優しい男性のようだ。

 

対面したことは無い。

 

しかし・・・優しい男性と言えば、最近出会った春峰 湊くんという男性は、男性にしては珍しく腰の低い優しい男性だった。

少なくとも、今まで生きてきた中であそこまでお人好しとわかる好青年は初めて見たがな。

 

むしろ女の私なんかより断然可愛い。

 

その可愛さといえば、どんな人間でも最初は男であると気付かないと思う。

なぜなら私がそうだったから。

 

───しかも、思い切り・・・その、男根を握ってしまった事故もある。

 

男性がそんなことされれば、触った女性は即牢屋送りで実刑判決が下るだろう。

 

それを笑って許してくれる男性なんて・・・きっとあの子しかいない。

 

「元気にしてるだろうか・・・」

 

「ん?どうしました先輩?」

 

「いや、なんでもない。とりあえず訪問しよう」

 

パトカーを邪魔にならない位置に停車し、手錠を数十個括りつけていく。

 

今月はいったい何人だろうか?

 

「裏口から入れば良いんですよね?」

 

「あぁ、チャイムを鳴らさないようにとお願いされている」

 

ジャラジャラと手錠の金属音が奏でる不協和音を気にしながら、私達二人は裏口のちょっとした庭へ入り込んだ。

 

その先には・・・やはり、気絶した女達が積み上げられたピラミッドが出来上がっていた。

 

しかも、何故かいつもより数が多い気がする。

 

「し、死屍累々ですね・・・」

 

「死んではいないさ。全員気絶している・・・それと、こんばんは。遅くなり申し訳ありません」

 

呆然とした顔で呟く相良を尻目に、いつの間にか私たちの後ろに立っていた女性に向けて私は謝罪した。

 

「いえいえ、大丈夫よ。むしろ湊が気付かないように静かに来てくれて助かっていますよ?」

 

暗がりで見えにくいが、声色から判断して恐らく春峰夫人だろう。

 

「っ!?し、失礼しました!私、新人の相良と申します!」

 

遅れて気づいた相良が慌てて挨拶をする。

 

分かるぞ相良。

いつの間に後ろにいたの、だろう?

 

しかし残念だ。私も分からない。

いつの間にか後ろにいることしか分からない。

 

駄目な先輩ですまない。

 

「あぁ、新人さんよね?こんばんは、私は春峰(ハルミネ) 朱魅(アカミ)といいます。よろしくね?」

 

「はい!よろしくお願いします!」

 

「・・・やはり、この女たちの回収をすればいいのでしょうか?」

 

「えぇそうよ。“私たち”の湊ちゃんが家に帰ってくるのを見計らって襲いにかかってきたわ・・・だから全員潰しちゃった♪」

 

・・・こ、怖い。

やっぱり私は春峰夫人が苦手だ。

何故こうも何事もなかったような笑みで人の山を作れるのか・・・。

 

確かに春峰夫人の息子である湊さんが大事なのかもしれないが───ん?湊さん?

 

・・・待てよ?

春峰夫人の息子である湊さん?

 

───ッ!?!?!?

 

と、ということは、その男性の名前は・・・「春峰、湊?」

 

「んー?えぇ、そうよ。名前言ってなかったかしら?」

 

「な、なっ!?」

 

なん・・・だと?

では私は、春峰夫人のお子さんに・・・あ、あんなことを・・・?

 

「うぅぅぅぅぁぁぁぁッッ!!」

 

「ど、どうしました先輩?」

 

相良が驚いたように近寄るが、今は気にしてはいられない。

 

私は今にも叫び出したい気持ちを何とか抑えて蹲る。

 

なんてことだ。

私は・・・いったいなんてことをしてしまったんだ。

 

どうしよう、罪悪感が半端ない。

 

新人の頃からずっと顔を合わせていた人の息子に・・・あんな恥ずかしいことをして・・・。

 

むしろ私こそ!このピラミッドの一部になるべきだろう!

 

───いや、その前にもう一度しっかりと謝るべきだ!

 

「・・・その、春峰夫人」

 

「ん?何かしら」

 

「個人的に、湊くんに謝罪したいことがあるのだが・・・面会を頼めないだろうか?」

 

「へぇ、“私“の湊に謝罪するようなことを・・・なにをしたのかしら」

 

「ひっ!?」

 

頭を下げながら春峰夫人にそうお願いをすれば、その瞬間に凄まじいプレッシャーのようなものが私にかかる。

 

その威力は凄まじく、近くで見ていただけの相良も軽く悲鳴をあげていた。

 

すまない、しかし巻き込むつもりはないんだ。

 

「・・・今は言えない。謝罪をしてから詳細を話させて頂きたい」

 

分かっている。

明らかに苦しい言い訳だ。

 

だがここでいま話してしまえば、きっと春峰夫人に許して貰えずに謝れないまま人間ピラミッドの残骸になってしまうだろう。

 

それではダメだ。

 

しっかりと謝った上でピラミッドに私はなろう。

 

だが、出来れば痛くないようにスフィンクスくらいでとどめて欲しい。

 

「・・・そう、分かったわ。今までお世話になっていたし、その覚悟に免じて会わせてあげるわ」

 

「っ、本当ですか?」

 

「えぇ、女に二言はないもの。その代わり・・・手出そうとしたら、分かってるわね?」

 

「わ、わかりました!」

 

良かった、どうやら謝れるようだ。

・・・今のうちに相良に別れの言葉を伝えておくとしよう。

 

妹には・・・やはり、きちんとメールがいいだろうか?

 

「もしもし、私よ・・・えぇ、来たわ。けど、警察官の子が湊に合わせて欲しいらしいの。だから連れてきてもらえるかしら?事情は後でわかるわ」

 

暫くすると、右腕にセットされている時計に話しかけ始めた。

どうやらお姉さんか妹さんと電話をしてるようだ。

 

「というわけだ、すまない相良。少しの間この女たちの手錠をはめる作業を先にしておいてくれないか?」

 

「何がという訳でなのか分かりませんが、とりあえず了解しました・・・?」

 

まだなにがなんだが分かってなさそうだが、きっと大丈夫だ。

 

妹には・・・あんまり長ったらしく書くと疲れるだろうから、簡潔に伝えよう。

 

「来たわよ」

 

積み重なった女達をぎゅうぎゅうに警察車両に押し込み、私が妹にダイイングメッセージ送ってから数分ほど経過した後、春峰夫人が私に目配せしながら奥の扉を指さす。

 

やがて───その言葉通り、扉が開かれた。

 

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