男が希少な世界で僕は、女っぽい格好してるけど実は男でしたムーブを満喫する 改訂版   作:霧夢龍人

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冤罪

ジリリッ!

 

自分の部屋に響く甲高い機械音。

誰もが一度は朝が来たことを恨む原因となるアラーム音が、寝ぼけ眼だった僕の意識を覚醒させる。

 

「んん・・・もうあさぁ?」

 

呂律の回らない口でベッドの上で愚痴を言うが、学校に行きたくないわけじゃない。

 

朝から起きる気力がわかないだけ。

 

「・・・にしても昨日は凄かったなぁ」

 

欠伸を噛み殺しながら、昨日の出来事を思い浮かべる。

 

───米倉トーカさん。

 

僕が《女が少ない世界で私は逆ハーレムを築く》を買いに行く途中に出会った女性で、真面目そうな婦警さん。

初対面でいきなりち○こを握られてしまった原因の人。

 

あわや僕がドロン(逃げる)か、ボロン(ち○こ)という最悪の選択肢を選びかけたお姉さんである。

 

だけどその人が昨日家に来て、そのことについてもっとしっかりと謝罪したいって土下座までして僕に謝ってきたんだよね。

 

急に姉さんと妹が外に出ようって言い出すからなんだと思ってたけど、これの事だったのかってあとから納得したんだけど・・・まさかあんなことになるなんて、ね?

 

正直思い出そうとするだけで頬っぺが赤くなりそうだよ。

 

トーカさんのことはとっくに許してたし、今も気にしてないけど、それよりも恥ずかしい事件が僕を襲った。

 

ああいうのをガチ恋距離っていうんだっけ?

 

足が痺れてたのか、歩いた拍子にコケて僕の上にトーカさんが覆い被さるように重なって・・・キスする寸前みたいな距離まで顔が近づいてた。

 

もし・・・あのまま母さん達が止めてなかったら?

 

あの場に僕とトーカさんしかいなかったら?

 

「どうなってたんだろ・・・うぅ、考えても仕方ないか。早く学校行こうかな」

 

あらぬ考えが頭をよぎったけど、あそこまで謝罪してくれた人にこんなこと考えるのは失礼だしやめておこう。

 

それよりも早く学校行く準備しないとね!

 

ちなみにあの後トーカさんは母さんたちと一緒に出て来たんだけど、顔が真っ赤になってた。

 

何したのか聞いたけど母さんたちは答えてくれなさそうだったし、トーカさん自身は聞かないで欲しい・・・とプルプル震えながら僕に行ってきた。

 

自分より年上の婦警さんが、涙目で頬を赤くしてプルプル震えながらそんなことを言うもんだから・・・ちょっと加虐心を擽られたのは内緒だよ。

 

あと、近くにいたもう一人の婦警さんの相良さん?っていう人は死んだ目してた。

 

お仕事頑張って・・・。

 

───

──

 

『まもなく列車が発車致します。ご注意ください』

 

めっちゃ重いバッグを抱えながら、スマホ片手に電車に乗り込む。

 

学校まで歩いてもそんなに遠くないけど電車の方が早いし、朝はやっぱり楽なのを選びたいよね。

 

・・・太ってないといいけど。

 

そんなちょっとした危惧をしながら、ワイヤレスイヤホンで音楽を聴く。

 

音が漏れていないか辺りを見渡していると、なんと珍しいことに自分以外の男性が電車に乗っていた。

 

周りに乗っている女性も少しソワソワしている。

 

2人ともちょっとぽっちゃりしてるとこを見るに、スイーツでも食べすぎたのかな?

 

その気持ちわかるよ・・・抗えないよね、お菓子には。

 

「ぐふ・・・ふふふ」

 

ぽってりと出た男の人二人のお腹を見ながら、うんうんと共感をしていると、桃色髪のアシンメトリーの髪型をした女の子が、ニヤニヤと笑みを浮かべながらスマホを覗いていた。

 

明らかにやばい人じゃ・・・って、あの人確か!?

 

「んひひ・・・ぐひひ」

 

───この人、前僕に痴姦してきた人じゃない?

 

顔にも見覚えあるし、制服の構成一緒だし・・・あとなんかやばい雰囲気放ってるし。

 

そのせいで隣に立ってる人もみんな離れてるから、その子の周りだけ人がいなくなってる。

 

「・・・あんな笑い声を出すくらい嬉しいことでもあったの・・・かな?」

 

正直ちょっと面白いけど、その子が何を見てるかは気になる。

 

覗く気にはなれないけどね。

 

まぁ、あんまり見続けるのもアレだし・・・と、例の子から目線を逸らし、スマホに目を向ける───がしかし、どうやら今日の僕はついてないみたいだ。

 

「ち、痴姦だぁーー!」

 

「へっ?」

 

突然目の前の男性のうち一人が悲鳴をあげた。

当然、視線はその男性に注目する。

 

「ど、どうしました?」

 

男性の近くにいた女性が声をかけた。

 

するといきなり男性は───今なお「デュフフ」とニヤニヤ笑っている例の女の子を指さす。

 

「ぐへ、ぐへへ・・・ん?え?な、なんですか?」

 

当事者である女の子は、いきなり自分が視線を集めたことで動揺し、事態がよく分かっていなかった。

 

そりゃそうだ。

 

だってあの子、ずっとスマホ見てたんだもの。

 

「惚けるな!こ、この子が俺のおしりを触ったんだ!」

 

「え?え?え?さ、触る?」

 

しかしどうやら、悲鳴をあげた男性はそんなことを気にせず一人喋りつづける。

やれいきなり触られただの、やれ胸を触られただのと・・・聞いてもいないようなことを延々と喋り続けていた。

 

しかし位置関係的にも、どう考えても触れない位置にいる事が分かるし、そもそもずっとスマホを見ていたんだから触れるはずがない・・・。

 

明らかに冤罪だって分かる内容だ。

 

けど・・・。

 

「こ、この女の子がやったんですね!?み、みんなその子を取り押さえて!」

 

みんな男性の言うことを信用し、例の女の子を取り抑えようとした。

 

「え!?ご、誤解です!私は何もしてないです!」

 

「いいから!大人しくしなさい!」

 

「で、でも、本当にちが・・・ッ!」

 

ようやく事態の全容が分かったのか、慌てて否定する少女だが、味方は誰もいない。

後で知ったことだけど、男性の権利はあらゆる内容において尊重されるらしい。

 

つまり、男女平等じゃないってわけなんだ。

 

そこら辺の社長なんかより位が高いから、仮に冤罪だとわかってても男性の言う通りにしないといけないらしい。

 

ハハハ、笑っちゃうよね?

 

僕はお人好しの自覚はあるし、目の前で困ってる人がいたら助けるくらいはしたいと思ってる。

 

それが前に痴姦してきた人でも、今回においては冤罪なのだから助けたい。

 

もしかしたら、痴女の子は因果応報なのかもしれないけど・・・少なくとも、あんな誰かに助けを求める顔をされて助けなかったら、男が廃るってもんだよね。

 

僕はせめて女の子の味方でありたいんだ。

 

「ごめんなさい。僕、その子のことが気になってずっと見てたんですけど、さっきからスマホばっかり見てたので、痴姦したとは思えません」

 

ワイヤレスイヤホンを外し、抵抗する女の子を取り押さえている女の人達に向けて僕は声を張り上げた。

 

もちろん何かあったら遅いから、昨日こっそり連絡先を交換したトーカさんに事の顛末を話した上で、録音も開始してある。

 

「はぁ!?なんだよ君!俺が嘘をついたっていうのか!?」

 

「そうだ!むしろ君こそ、あの子がやっていない証拠はあるのかね!?」

 

案の定、男性2人は逆上して怒り出した。

この反応からして、やっぱり冤罪っぽいね・・・さて、どうでるべきか。

 

「き、君!やめておいた方がいいわ!」

 

「そうよ!男の人に逆らったら・・・何をされるか」

 

どうやら周りの女の人も冤罪だとわかっているらしい・・・が、男性の権利の高さに怯えて従っている様子だ。

 

まぁそりゃ怖いよね。

 

ここでもし冤罪だ!って正直に言ったら、今度は自分も共犯だって言われるかもしれないし・・・。

 

痴姦はかなりの重罪らしいし、すぐに実刑判決が下るから、彼女たちも恐れて何も言えないようだ。

 

でも・・・。

 

「た、助けて・・・くださいっ」

 

こんなに可愛い女の子から、泣きながらお願いされたら・・・やるしかないでしょ?

 

腹をくくれよ僕。

 

「証拠、ね。もちろん証拠ならあるよ。そこで取り押さえられてる女の子って、実は結構有名な配信者なんだ。だからラッキーって思ってさ・・・さっきからずっとこのスマホでビデオ撮影してある」

 

もちろんハッタリだ。

その女の子が配信者かどうかなんて知らないし、動画なんて撮ってない。

 

かなり苦しい言い訳だけど、有名な配信者だから・・・とかじゃないと、なぜ女の子をビデオ撮影したのか分からないしね。

 

・・・なのになんで取り押さえられてる女の子はそんなに動揺してるの?

「なんでバレた?」って呟いてるけど・・・ほんとに何かの配信者だったりするのかな?

 

ちょっと気になるけど、今は気にすべきじゃないか。

 

「う、うそだ!」

 

「第一、なんでその女の子を撮ってたんだ!盗撮だろ!」

 

「だから僕、その子が有名な配信者ってさっき言ったよ?まぁ、盗撮は否定しないけどね・・・でもその時は、君たちも一緒に捕まってるよ」

 

痴姦の故意的冤罪は重罪。

確か数ヶ月くらい前に新しく法律が改正した時に、結構話題になってた内容だと思う。

 

悪質な痴姦冤罪に対する防止策だって言ってた気がする。

 

つまり、ここでこの痴姦が嘘で故意的なものだと分かれば・・・男性とはいえ無事では済まないわけだ。

 

「ねぇ、だから正直に言おうよ・・・今から謝ればきっと女の子も許してくれるからさ・・・嘘つきさん?」

 

僕はそう言って、強ばった表情を浮かべた男性二人に笑いかけた。

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