男が希少な世界で僕は、女っぽい格好してるけど実は男でしたムーブを満喫する 改訂版   作:霧夢龍人

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ナニカが起きる気配がする

「ただいまー……ってまだ帰ってきてないか」

 

鍵のかかったドアをガチャりと開けたが、やはり中には誰もいない。というのも、一昨日くらいから軽い小旅行に出掛けるからと、姉と妹を連れてどこかに行ったのだ。

 

え、そういうのって男女比が歪な世界なら湊が心配だから!なんて理由で無理矢理連れていくか、結局行かないの2択なんじゃないの?って思わずツッコミそうになったのは記憶に新しい。

 

けどこういう突発的な旅行に行くことは何度もあるから、正直今更なんだよね。旅行先は教えてくれないのに、何故か毎回ボロボロになって帰ってくるし……優しい家族だけど、ちょっと変だ。

 

ちなみに僕を置いていく理由を聞いたら、そんなのじゃ将来湊に奥さん達が出来たときに困るのは湊だから、今のうちに家で待てるようになっとかないとね!───とのことだ。

うん、普通に正論なんだけど、寂しかったら死んじゃうのかな?ってくらいこの世界の男性への一般認識が低いことを改めて再認識させてくれた。

 

家族がいないのをあらかた確認したあと、重いスクールバッグを背負いながら2階の自分の部屋へ駆け上がる。

 

実はこのスクールバッグ、かなりの高性能なバッグなのだ。

見た目は女子用と見分けがつかないが、男子用に区分されるこのバッグは、もし女子に襲われたという時に電気ショックや火炎放射などして背負っている本人を守ってくれるスグレモノだ。

 

でもそんなバッグにも弱点がある。

それはひとえに───重い、重すぎるのだ。大型犬を二匹背負ってるみたいな重さをしてる。

 

だからこそ、前世の世界と比べて明らかに運動能力の差が出ている男子達がこんなものを背負いたくないからと、学校への登校を拒否しているらしい。そりゃそうだよ……。

 

本末転倒じゃん。

 

だが、今の僕はそんなもの鼻で笑って許せる自信がある。なぜなら───

 

「新しい新刊もう来てるじゃん!?急いで買いに行かないと!」

 

───好きな漫画の発売日だからだ。

 

モタモタしてはいられない。

 

僕の好きな『女が少ない世界で私は逆ハーレムを築く』という漫画は、結構マイナー寄りだがコアなファンが根強くて、なかなか発売日当日には入手することが出来ないのだ。

 

あまりにも続きが気になりすぎて、発売日の数時間前から並んだことだってあった。

これを思えば、まだ学校内で知らない女子に話しかける方が簡単なレベルだと錯覚してしまうほど。つまり、僕が向かおうとしているのは戦場なのだ。

 

まぁ、外に行くための服装とかはいつも準備してるから、着替え終わるのは早いんだけどね?

 

カーディガンと白の制服を脱いで、上を緑のセーターと紺のネイビー。下を明るいジーパンに履き替える。その次に髪をボーイッシュハンサムショートのように軽く整えて、後は黒のキャスケットを被るだけ。

クラスメートに会った時に気まずくならないように、白マスクをつければ完璧だ!

 

「ふっ、流石僕。めっちゃ似合ってるわ」

 

鏡の前で何度もポーズを取り、おかしい所がないかを確認する。

男性用服がほとんどないから女性服を着るしかないのは仕方ないけど、ここまで似合う男はきっと僕だけだと思う。つまり僕は美しい。

 

「いやぁ、自分ながら僕の容姿って美少年過ぎてなんでも合うんだな」

 

と安定の自画自賛。それとドヤ顔。

まぁ僕におかしいところなんてないから、唯の事実確認なんだけどね。

 

「よし。じゃあ準備も出来たし、早速買い物にしゅっぱーつ……ん?なんだこれ?」

 

財布をポケットの中に入れて、一応クラスメイトに見つからないように黒のマスクを着けいざ出発、というところでジーパンのポケットに違和感があった。

 

ポケットに手を入れて取り出してみると、薔薇の形をしたバッジが出てきた。よく見ると、男性権利保証バッジって書かれてるけど……あ、これあれだ。

小さい時に母から貰ったやつだ。

確かほとんど付けてなかったけど、まさかジーパンのポケットの中に入ってるなんて。

 

「入れた覚えないんだけどなぁ」

 

とは言え捨てる訳にもいかないし、結構思い入れもあるので引き出しの中に大事に閉まっておいた。

でもこれ、一体何のために使うんだろ───まさかこれがないから男扱いされてない、とか?

 

いやいや、冗談はよしこちゃんよ。流石にバッジだけで判断なんてするわけないでしょ。

 

「よし、気を取り直して。準備万端だ!早速しゅっぱーつ!」

 

意気揚々とドアを開けて、 目的地である駅の方へと足を進める。

 

因みに『女が少ない世界で私は逆ハーレムを築く』の著者は、夜ノ帳(ヨルノトバリ)さんという名前らしくて、いかにもこの世界の女性の夢と希望を詰めたような名前をしている作品の著者が、まさかこんなお洒落な名前をしているなんて思わなかったのも記憶に新しい。

 

しかし───夜ノ帳先生って、一体どんな人なんだろう?

 

まぁこの世界の人ならきっと美人なんだろうけど、会ってみたいって考えちゃうくらい僕もかなりこの作品を気に入ってる。

なんて考えてたらいつの間にか目的地の駅周辺に着いた。家から駅はかなり近くて、十数分も歩けば到着出来る距離だ。

 

友達……否、親友の遥と雫達とはよく出掛けるけど、そこまで周りの風景を気にするわけじゃないから、何かちょっと新鮮な気分。

そんな空気を味わいながら、キョロキョロと周りの風景を眺めていると───肩をトントンと叩かれた。

 

え、なに?と思うのも束の間。

 

「ちょっと君、さっきから怪しいな……少しいいだろうか?」

 

低い声で耳元に囁かれ驚いて振り返ると、そこにはちょっと怖い表情を浮かべた婦警さんが、怪しいものを見る目つきでこちらを覗き込んでいた。

いや、正確には婦警さん達だろうか。

 

「うぇ!?け、警察官さん?もちろんべ、別に大丈夫ですけど……?」

 

職務質問(ちょっといい?)にしどろもどろに応えると、2、3人くらいのペアになった警察官さん達が僕の周りを取り囲む。

 

え、僕何かした!?そりゃ結構キョロキョロしてたけど、そこまで疑われるの!?

 

「ふむ、そうか。実はな、最近素顔を君のように隠して銃や包丁などの危険物を所持している女性の発見が相次いでいてるんだ。その対抗策として、怪しいと思う人物に声をかけてボディチェックの協力をしてもらっているんだ」

 

「な、なるほど……?」

 

素顔を隠してるつもりはないから、多分マスクとキャスケット付けてるから怪しまれてるねこれ。婦警さんたちの手を煩わせる訳にはいかないから、さっとマスクを外してポッケに突っ込む。

 

キャスケットを上にあげれば、僕のイケメンフェイスが顕になった。

 

「これでどうですか?」

 

「ッ!君もしかして何かのモデルでもしてるのか?」

 

「ふふっ、自分でもそう思います」

 

「……そ、そうか」

 

自分でもモデル顔負けだと思う。そう同意したはずなのに、何故かドン引きされた。いやなんで?

 

「……とりあえずだ、君にはボディチェックの協力をしてもらいたい。嫌だと思うが、我々としても街の平和のためにしなければいけない。そこを分かって欲しい」

 

「ボディチェックですか?全然問題ないです!」

 

「そうかそうか、助かるよ」

 

特に何の不都合もないので、パッと腕を上げてボディチェックの体勢に入ろうとした───その時だ。

脳内に一つの閃光のようなものが走った。

 

僕、男ですやん。しかもボディチェックってことは、こんな綺麗な女性方に体の隅々までまさぐられるってこと!?

 

そ、そんなご褒美がこの世にあってていいの?あっていいに決まってるだろありがとうございます!(自己完結)

……でも待てよ?例え警察官でも、男性に不用意に触れてはいけないっていう法則が出来たばっかりじゃなかったっけ。

 

この場合、不用意に触れるに値するか分からないけど一応やめておいた方がいい気がするんだけど、言った方がいいよね?

 

「あのやっぱり……」

 

「ん?どうした?何かあったか?」

 

「な、なんでもないです……」

 

断りを入れようとして───無理でした。

だってやる気まんまんなんだもの。ご丁寧に手袋までつけて、職務を全うしようとしてるんだもの。

 

溢れる誇りと、溢れるおっぱいを胸に蓄えている女性相手に、僕は断りを入れる勇気なんてないよ……。

 

「そうか、それじゃあ検査するぞ。あぁ、別に手をあげる必要はない、そのままでいい」

 

「は、はい」

 

そう言って尋ねてきた婦警さんが脇に手を入れてきた。

そしてその手が徐々に下へ下っていく。何か手つきがちょっと……いや落ち着け僕。そんな邪な考えを抱くことは失礼だ。

 

「ふむ。脇や横腹の武器の携帯はなし、か。では次」

 

次にまさぐり始めたのは、腰辺りだ。

なんだろう、滅茶苦茶くすぐったいし何か恥ずかしい。しかもこの婦警さん、めっっっちゃいい匂いする。

 

柑橘系の香りですね(断言)

 

いやいや待て待て、なに匂いに虜になっているんだ僕は。このままいけば、間違いなく婦警さんのえっちな手は下まで降りてくる。

そして僕は男だ。流石に()を触られるのは恥ずかしい……でも、他の婦警さんたちは周りを警戒してるし、真面目に取り組んでるところに水をさす訳にもいかない……ええいままよ!

 

このまま僕は運命を受け入れるしかない!

僕は受け入れることにした───この美人婦警さんに股間を掴まれる未来を!

べ、別に望んでるわけじゃないからねっ!!

 

といつ触られるかバグバク鼓動する心臓とは裏腹に、婦警さんの手が止まる。

 

「んー、足や腰ともに異常なし、か」

 

「………へ?」

 

あれ、嘘でしょ終わったの?

なんだよチキショウ!期待した僕が馬鹿だった!……まぁいいけどね。

流石に婦警さんでも、男の僕の股間を掴むのはダメだったようだ。そりゃそうか。

 

まぁひとまず、検査はこれで終わりかな?

 

なんて思っていた。そう、僕は完全に油断していたのだ。

まさかいきなり婦警さんが───

 

「あぁ、すまない。あとここも検査してな………い……?」

 

───いきなり触れてくると思わなかったから。

 

ふわり。

 

本当に、さりげないひと触りだった。

そのために僕の回避反応は遅れたんだろう。

 

「へっ!!?」

 

気付いたら僕の股間を、思いきり婦警さんが握り締めていた。

───もう一度言わせて欲しい。

気付いた時にはもう、思いきり婦警さんが僕の股間を握り締めていたんだ。

 

「………君、股間に一体何を入れているんだ?これは何だ!」

 

「ッ!?えっと、何を入れてるんだと言われても……ナニを入れているとしか言いようがないです……」

 

「ん、なに?もう一度言ってくれないか?」

 

いやほんと待って、ナニこの状況。もしかして、これって言わないといけない流れ?

 

「ナニは……ナニです」

 

僕は震える声で、婦警さんだけにしか聞こえないくらいの大きさで答えた。だが婦警さんはどういう意味か分かってないようで首を傾げている。

 

ナニっていったらナニでしょ?僕の股間触ってるんだからあるの当たり前じゃんっ!?───ま、待って。もしかして僕、また男って気づかれてない?

 

そう考えると婦警さんが平然とボディチェックしてきたのにも説明がいくし、なんの躊躇もなく()()を鷲掴みしたのにも納得出来る。

 

だとしてもおかしいよこの世界。

なんでこんなに男だと思われないの、ほんと。てかどうやって答えればいいのこれ。答えたとしても通用しないから、黙って俯くくらいしか出来ないんだけど。

 

「答えられないか……答えにくいものなのか?」

 

「ッ!えぇ、はいっ!」

 

ある意味救いとも見れる婦警さんの言葉に、多分過去一でいい返事をしたと思う。本人である僕が言うんだから間違いない。

 

「そうかわかった。でもやましいものではないんだな?」

 

「……やましくはないですね、はい」

 

いや、やましいモノか?いやらしいものではあると思うけど。

けどやましいよねって言われれば否定は出来ない。

 

「よし、じゃあ私だけにでいい。出してみてくれないか?」

 

───え?

 

「なにを?」

 

「ん?君のいうその“ナニ”をだが?」

 

───あぁ、なるほど。そういう事ね?オーケーわかった。

 

ごめん母さん。そして姉さんと妹よ。

僕はどうやら逮捕されるみたいです。

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