男が希少な世界で僕は、女っぽい格好してるけど実は男でしたムーブを満喫する 改訂版 作:霧夢龍人
「今日はなかなか良い買い物したなぁ。夜ノ帳先生のサイン付き新刊とか、棚に飾って拝んでおきたいくらいかも。しかも続きがめちゃくちゃ気になってた所だし……読むのが楽しみだ!」
鼻歌を歌いながら小躍りでもしたくなるほどにテンションが高い僕は、自室でこれでもかと寛いでいた。
灰色のTシャツ1枚にゆったりとしたハーフパンツという比較的にラフな格好でベッドの上に居座る僕は、今日購入した『女が少ない世界で私は逆ハーレムを築く』を読みながら、母さん達の帰りを待つ。
今日帰るって連絡が来てたから、多分そろそろだよね?
にしても、ほんと面白いよこの漫画。
最初の設定からぶっ飛んでて、男が極端に多い世界に転生した主人公(女)が、最初に目に付いたイケメン男性を落とそうと思ったら、それが実は政府から逃げ出した実験体のゴリラだった。しかもそのゴリラは、生体実験による恨みで日本を滅ぼそうとしてる……なんて、どう考えたらそんな設定が出てくんの?みたいなのが多くて飽きないんだよね。
まぁその……え、えっちな部分もある、というかえっちな部分の割合が約七割を占めてるんだけど、そのおかげでエッチなものへの耐性が出来た気がする。
自分で発する下ネタは大好きだけど、他人の下ネタだとちょっと恥ずかしくなるのは僕だけだろうか?
なんなら今日、トーカさんに股関を
そもそも前世から僕は、そういう知識を苦手としていた。だけど気付いたんだ……今後、遥と雫も含めたクラスメイトへのドッキリをしていくのに、えっちなモノへの耐性がなかったらダメだよねぇ。
覚悟を決めてやるしかなさそうだ。
兎も角として、今は漫画を読むことに集中したい。
最初のページに指をかけて、十分、二十分と時間が経過するのも構わずに指を進めた。部屋にはペラペラと紙を捲る音と、自分の微かな笑い声だけが響く。
そんな最中───ガチャリ、と玄関のドアが開いた音が聞こえた。
「ただいまぁ!あなたの愛しい母親が帰ってきたわよ〜!」
旅行から帰ってきても尚、相変わらずテンションが高い“母さん”に対して、「今降りるから待っててー!」と呼び掛けた。読んでいた漫画を途中で置いて、トタトタと急いで階段を駆け下りる。
玄関にたどり着くと、やはりそこには母さんと───姉の
……うむ、やっぱり僕の家族はこうして並ぶと存在感が半端ない。
この世界の女性達は皆なぜか美少女や美女ばっかりなんだけど、その中でも僕の家族は別格だと思う。
具体的に言えば、この世界でトップの女優を狙えるくらい。
そして、そんな世界的に見てトップクラスの家族の血を引いた僕もきっと美少年のはず、なんだけど……ま、まぁ?モテないのはしょうがないよね?……うん、悲しくなってきたからやめよう。
「みんなお帰り」
自分の不甲斐なさとモテない悲しみを抑えて、皆を出迎える。
三人とも結構ボロボロみたいで、今回の旅行先がとんでもないところなんだっていう予測がついた。
「ふっ、余が戻ったぞ湊」
帰ってきて早々、謎のポーズをビシリと決める姉さん───名前は『
姉さんは寂しがり屋な所があるから僕がいなくて大丈夫かな、って心配してたけど───うん、姉さんは相変わらずみたいだ。ちょっと安心した。
でもその黒い眼帯ダサいから外した方がいいと思うよ?
「おねえちゃ……お兄ちゃんただいま!」
……ん?一瞬言い間違えたよね?
なんて、茶目っ気たっぷりな中学二年生の我が妹が
両手をこちらに向けて、ハグの体勢に移行しようとしている。ハハハ、お姉ちゃんと呼ぼうとした罪は重いぞ妹よ。
僕はそれを華麗に回避し、そのまま姉さんに抱きついた。
と、ここで驚愕の事実が判明した……この大きさ、もしやまた大きくなってる!?
留まることを知らないな、さすが姉さんだ(白目)
「姉さんお帰り!」
「へぁっ!?……あっ、あっ、み、湊ちょっとまっ、あっ!?」
変な鳴き声をあげ始めた姉さん。でも部屋で毎回変な呪文とか唱えてるし、これくらい大丈夫でしょ?え、大丈夫じゃない?
まぁでも、僕は
ちなみに姉さんは、今年大学生になったばかりのJDなんだけど、僕と同じように大学の美少女ランキング一位を成し遂げてしまったらしい。
何でも、気付いた頃には立候補されてて、忘れた頃に一位になってたとののと。
うん、僕絶対姉さんと同類だよねこれ?
「うっ、お兄ちゃん……うぅ〜!」
愛が悔しそうに姉さんを睨んでるけど、当の姉さんは白目を向いて気絶していた。あぁ、どうりで反応がないと思ったよ……。
でも流石に、お姉ちゃんなんて言い間違えそうになった悪い妹には抱き着きません。抱きつこうとしてもお怒り心頭な僕はしませんからね?
「うぅ〜……せ、せっかく“お兄ちゃん”に抱き着こうと思ったのにぃ!」
ひしっと抱き合っていた姉さんから手を離し、愛に抱きつく。その反動でロングの銀髪がフワリと揺れて、鼻にフローラルのいい香りが広がる。
うむ、やっぱり僕の妹は世界一可愛いね!胸はないけど……異論は認めません。そして僕がこの子のお兄ちゃんです。
「愛もお帰りー!」
「ッ!?お兄ちゃーーん!!……ん?何か別の女の臭いが」
「な、なに?どうしたの?」
「……いや、何でもないよお兄ちゃん!」
なんだろう、一瞬だけど可愛い愛の雰囲気が変わって、恐ろしいものになった気がするんだけどま、まぁ、気のせいか!触らぬ神に祟りなしって言うしね!
僕は空気の読める子だから、目の前の地雷を踏み抜くような真似はしないのである。
「───あらあら、皆堂々と私の前でイチャつくわね」
「あっ。か、母さんお帰りー……」
「完全に忘れられてたわね、悲しいわ私!まぁいいわ、ほら───おいで?」
額をピクピクさせながらも、ガバっと腕を広げて僕の方に向ける母さん。銀の長い髪と、僕達兄弟と違う金色の瞳が僕を見つめる。セリフをつけるなら、『母さん が 抱き着いてほしそうに こちら を 見ている』だろうか?
いやその、ね?
確かに抱きつきにいきたいけどさ。でも、母さんが背中に背負ってるモノのせいで抱きつけないというか……何背負ってるのそれ?
へー、ピューマの皮?で、その首に巻き付けてる太いのは?
あーなるほど、キングコブラの亡骸ね。あるあるだよね、うん。
じゃあその脇に抱えてるのって…… あぁ、ヘラジカの角かぁ、ふーん。
「ごめん母さん、パスで」
「ッ!?な、なんでかしら!?」
「いや、流石に抱きつけないよそれ。ていうか何したらそうなるの、もしかしてサバイバルでもしてた?」
だってその姿、明らかにこのファンタジーな世界でも浮いてるよ?非日常にも程がありすぎて、温度差で風邪ひきそうだよ。せめてもっと普通の物を持って帰ってきて欲しかった。
「いいえ、普通に昔の人類の生態について研究していただけよ?そこがたまたま南米のアマゾンなだけで……まぁ、流石に危険だから湊は連れて行けなかったけどね?」
あぁ、成程。僕を置いていったのって将来の自立のためだけかと思ってたけど、そっちの理由もあるんだね。
だから三人ともボロボロなんだ。昔から頑丈なこの三人がこんなに傷だらけになってるのは見たことがないから、それだけアマゾンが大変だったってことだよね。
……果たして僕に彼女が出来たとして、その彼女がアマゾン帰りしてくる家族達を笑顔で出迎えてくれるか不安である。
「よし、じゃあ三人とも疲れてるだろうから、お風呂入っておいで?」
不安な未来が過ぎったのを見ぬふりしながら、お風呂場を指さす。
その瞬間───母さん達の目付きが変わった。
例えるなら、母さんが後ろで背負ってるピューマの様な(もう死んでるけど)そんな目付き。思わず身の危険を感じた僕は悪くないと思う。
「「「ゴクリ……」」」
「ど、どうしたの?まるで数ヶ月間何も食べなかった肉食獣みたいな目して……」
後ずさりしながらそう訪ねると、三人ともジリジリとにじり寄ってきた。な、なにされるの僕!?
と軽く身構えたけど、返ってきた返事は酷く理性的なものだった。
「うぬ、そのだな。出来ればだが……先にお風呂に入ってくれぬか?」
不自然に視線を逸らしながら、恥ずかしそうに告げる姉さん。
そう言われても、既に僕はお風呂を上がったあとだ。
「ごめん、もうお風呂入ったからシャワーでいい?」
「ッ!?お兄ちゃんお風呂入ったの!?じゃ、じゃ残り湯は!?」
「え?もう捨てたよ」
質問の意図が分からず事実を答えたら、母さんも姉さんも愛も、皆残念そうな顔を浮かべて項垂れていた。何がしたいんだろうこの人達は。
少し呆れた眼差しで三人を見つめていると、ハッと“迷案”が浮かんだのか、ふいに母さんが口を開いた。
「なら、もう一度お風呂に入った方がいいと思うわ。私達のためにね」
「うん、絶対そっちの方がいいよ」
「余も望んでいる」
母さんに続くように、愛と姉さんも賛同する。とうとう気でも触れたのかなと思ったけど、目に光が宿っていないこと以外は正常だ。
そこで一つ、もしやと思うことがある。
……もしかして僕臭かった?
それを母さん達は僕を傷付けないように、オブラートに包んで遠回しに伝えているのでは?
いや、絶対そうだもん!
だってもう一度お風呂に入っておいでって言ってた時に、滅茶苦茶目が泳いでたし!
「わ、わかった!急いでお風呂に入ってくるよ!」
こうしちゃ居られない。家族に臭いと思われ続けたら僕は死ねる。
猛ダッシュでタオルを取りにリビングへ向かう、
「「「ッ!そ、そう!」」」
そして何故か、そんな僕を見て嬉しそうにする三人。
……うっ、やっぱり臭かったのか。
この日から僕は、お風呂の時間を長く取るようになった
───春峰 叶side
「湊ってあんなにチョロかった?」
と、焦ったように風呂場へ直行する湊を見て、余はそう思った。
昔から何かと素直な子だけど、最近は特に素直な気がする。
「……何か心が痛いよ、お姉ちゃん」
奇遇だな、余もそう思う……めっちゃ心痛い。あの子が純粋すぎて、我らのような不純は浄化されそうだ。
こうして私と妹が心臓を抑えて苦しんでいると、母が堂々と胸を張って───
「貴女達は心を痛める必要は無いのよ。だって湊は天からニモツ以上のモノを貰った上に、イチモツも貰っているんだから……」
───と、清々しい顔で告げた。
何を言い出すかと思えばこの人は……。
「母さんは1回死んだ方がいいと余は思う」
「お母さんももう若くないんだから無理しないでね?」
「ゔぅッ!?ぐふ……」
と、我らの総攻撃を食らって母は倒れた。あれは効いたな、しかも
「よし、お母さんは死んだ。あとは私との勝負だよお姉ちゃん!」
「いいぞ、望む所だ……!」
ほう、余に挑もうと言うのか!ふふふ、だな甘いな。実は余、この手の勝負で殆ど負けたことがないんだ。
今日も勝たせて貰おう。
勿論、賭けるのは一つしかない。
「「(お兄ちゃん)の残り湯をかけて!!」」
「わ、私だってまだ若いのに!まだギリギリ30歳なのに!」
───
「なっ!?そんな……う、嘘でしょ?」
「ふっ、すまないな。またまた勝ってしまったようだ」
どうやら今回も、天が余に味方したようだ。
まぁ?私が敗北の二文字を辞書に刻まれたことなど一度もないがな!
「じゃんけん十回連続勝利なんて……あ、ありえない!確率を超越しすぎてるわ」
余と愛が互いに構えている傍らで。母さんが驚愕したような眼差しで余を見つめる。
だが何と言おうと結果は変わらない。多分今日の余は無敵だ。
排出率が低いアプリのガチャでも神引きしたし、すこぶる運気が高まっている。
「ふふっ、それじゃ!勝っちゃってごめんねぇ〜?」
と最後に項垂れる愛と母さんを煽ることも忘れない。
さて、向かおうじゃないか───
そして余は意気揚々と、風呂場へ突入すべく歩きだ───あっ?
「あ、次入るの姉さん?ごめんごめん、待たせちゃったよね」
「……ウブフッ!?」
───私は、この世の
銀髪から滴り落ちる水滴に、赤く火照った顔。そして、薄く割れた腹筋に程よく筋肉のついた体……っ!!な、なんてエロい身体してるんだ
あっ、ヤバい鼻血が止まらない!
溢れ出る鼻血を抑えようと努力はしつつも、視界は決して湊の身体から目を離さない。
多分今の余の目は、ギンギラギンに冴え渡っているだろう。
だが残念、どうやらここで
「む、そんなにガン見しちゃって……もー!姉さんの───えっち♡」
ちょっと照れたような顔から放たれたその凶悪なる
「ご馳走さま、で……す……」
良い景色を拝めた感謝とともに、私は意識を手放した。
なお、湊は面白半分で告げた模様。