男が希少な世界で僕は、女っぽい格好してるけど実は男でしたムーブを満喫する 改訂版 作:霧夢龍人
───ジリジリジリッ!!
「ッ?んぁ〜、あと五分……って訳にもいかないよねぇ」
けたたましく鳴り響く目覚まし時計の音によって、ゆったりと流れているようだった意識が急激に覚醒した。
閉じきったカーテンから漏れ出る陽の光が、朝の訪れを主張している。とはいえ、まだ睡眠を謳歌したい僕にとっては嫌なことこの上ない。
「ふぁぁ……」
にしても眠い。
自分で言うのもなんだけど、僕はかなり朝は弱い方だと思う。朝起きて数分はベッドの上から動けないし、冷静に動く頭とは違って、身体は言う事を聞かない。
だから僕は朝が苦手だ。
でも、そろそろ出ないと学校行きのバスに間に合わないよね。
「……起きよ」
眠たい目を擦り、欠伸をあげながらゆっくりと階段を下っていく。そのまま洗顔と歯磨きの直通コースだ。
でもこれは正直そんなに時間がかからない。パパっと済ませて、ご飯を食べるべくダイニングルームに向かう。
「ぬ、おはようだな湊」
食卓にはモリモリとご飯を食べている姉さんがいた。母さんと愛のすがたがないから、もう二人とも出掛けちゃったんだろうね。
姉さんは山のように積み上げられたご飯達を咀嚼しながら、スマホを弄ってる。行儀が悪いかもしれないけど、多忙な姉さんのことだからしょうがない。
……こうしてみるとやっぱり姉さんは、家族贔屓なしで“喋らなければ”超絶美人だ。切れ長の新緑のような碧眼に、くすみひとつない白い肌。肩まで伸びたプラチナシルバーの髪が美しさに拍車をかけてる。
「おはよーねーさん。今日も綺麗だね」
「んむぐっ!?こ、こら!食べてる時にそんなことを言うんじゃない!」
プンスカと怒る姉さんを眺めながら、食卓に置かれてある食べ物へと手をつける。どうやら今日は唐揚げとハンバーグと手羽先と味噌汁らしい。
朝だから“軽め”に作ってくれる母さんは流石だ。取り敢えず足でも舐めた方がいいのかもしれない。
ご飯をお茶碗に入れて、ぱぱっと食事を開始する。
「モッキュモッキュ……ゴックン」
時間がないので、急いでご飯を掻き込んだ。母さんの料理だから美味しいのは間違いないんだけど、今は四の五の言ってられないからね。
「………なるほど、小動物ってこんな可愛さがあるんだな」
「む、ねーさん何か言った?」
「いや、口を膨らませて食べてる湊を見ると、お腹いっぱいになるなって言っただけだ」
「えー?なんかそれ、僕が食いしん坊みたいじゃん!」
訂正するけど、僕は決して食いしん坊ではない。
精々ご飯なんて1回で15杯くらいしかお代わりしないし、その後に大盛りパフェを食べようとしても8杯くらいしか多分お腹に入らないと思う。
むしろ皆が少食なんだよ!姉さんなんかは僕以上に食べるのに、その栄養はお腹じゃなくて胸にいってるくらいだし。
この世界の女性達は代謝が良すぎるのか、今まで太っている女性を見た事がないんだよね。あるいは食べた栄養が全て胸とおしりに詰まってるのかもしれない。控えめに言って最高か?
ちなみに僕は、胸もお尻も貴賎なく愛するタイプである。
なんてくだらないことを考えながら、モッキュモッキュと朝ごはんを食べ進めていく。
そして、ふと時計を見た。
「───っ!?じ、時間やばいッ!姉さん僕先行くね!」
思ったより時間が経過していたことに気付き、急いでご飯を掻き込んだ後にドタドタと階段を駆け上がり、制服に着替えた。
「行ってきまーす!」
まだ半分頭は寝惚けたままだけど、何とか切り替えて家のドアを開ける。青空が眩しくて、目眩がしてるみたいに少しクラクラする。
けど時間がなくてゆっくりする暇がないから、僕は駆け足でバス停へ向かった。
───
「はふぅ……あ、危なかったぁ」
プシューと音を立てて閉まるドアと、急激に身体が斜めに揺れる感覚とともにバスが出発した。流れていく景色に視線が吸い寄せられて、フラフラと身体がバスの衝撃に合わせて揺れる。
これなら多分、学校にも間に合うはずだよね?
ちょっとした一抹の不安を抱えながらも、バスは学校へ向かって走り出した。窓から見える景色をぼーっと眺めていると、窓に移るそのほとんどを女性達が占めている。もちろんバスの中も、僕以外は全員女性だ。
それと今は絶賛通勤ラッシュ中だから、かなりの人数の女性がぎゅうぎゅうに敷き詰められてるわけで、ちょっとバスが止まったりしたら慣性の法則に従ってその───押し付けられるというか、うん。
でもこれは最初よりかは慣れたと思う。今となっては、初日におっぱいパラダイスだ!ってはしゃいでたのを忘れてしまいたい。
五感のうちの視覚と触覚の暴力がずっと襲ってくるから、僕のダニエルが呼んだ?と返事をしそうになるのを必死に堪ないといけなくて、もはや天国というより地獄と言った方が正しい、僕はそう思うよ。
ちなみにいい香りしかしないから、逆に自分が臭くないか心配になるのも玉に瑕なんだよね。僕の近くに来る人は皆、鼻をピクピクさせて頬を赤くしてるから不安になっちゃう。
まさか臭すぎて怒ってるとか……そんな訳ないよね?ないよね!?
「うぅ、皆近いってぇ……」
とはいえ、ある程度慣れたと言っても限度はあります。えぇ、例え目を瞑っていても分かっちゃうですよ!
例えば、背中に当たる胸の感触。
肩にふにょんとぶつかる胸の感触。
正面から襲い来る胸の柔らかい感触。
そして───どこかからお尻を念入りに撫でられる感触。
───ん?お尻を撫でられる感触?
なんて不思議に思ったのも束の間。
「ぴゃいっ!?」
お尻を撫でていた手が、今度はがっしりと僕のお尻を掴んできた。
予期せぬ感触に、思わず変な声が漏れる。反射的に触ってきた手を払い除けたけど、一瞬離れただけで再び僕のお尻にジャストフィットさせてきた。
しかも今度は念入りに、じっとりねっとりなでなでされている。
僕は視線を上に向け、バスの天井を仰ぎ見ながら察した。
───間違いなく、僕はこのバスの中の誰かから痴女されてるってことを。
そして、そう確信したのも束の間───ふにょん。
「んひっ!?」
なんと今度は太ももが標的にされた。変に緩急をつけながら、揉まれ触られ擦られる太もも。先程触っていたお尻は飽きたのか、太ももを熱心に触り続ける痴女。
ま、まさか僕のプリティーでキュートなお尻じゃ満足出来なかった……だと!?と驚愕するけど、擽ったさと言い知れ様の無い恥ずかしさが僕を襲う。
……くっ、痴女されるのは吝かじゃないけど!けどだよ!?
どれだけ我慢しても変な声出ちゃうし、なにより痴女してる女の子が誰かに見られて捕まったら、それこそもう言い逃れは出来ない。
そしてきっと重い罪に問われちゃう……よね?それにこの手馴れようからして初犯じゃないだろうし。
だからやめさ「はぁ!はぁ!美少女の太もも!なんで素晴らしいの!?」───うん、痴女してる女の子は大分盛り上がってるみたいだ。お陰で僕の尊厳がズタズタです……。
でも耐えるしかないよね。
あと五分くらい耐えきれば学校に着くから、それまで耐え忍べば何とか……っ!
「うぅ……くっ……」
口元を抑えてなんとか声を出さないように我慢するけど、その分責めは苛烈になっていく。と思ったら、今度は優しくなったり強くなったり弱くなったり変幻自在だ。どうやら僕の後ろにいるであろう痴女は、かなりのやり手らしい。
ふっ、だけど甘いね。この程度で僕は音を上げることはしないだよ!───って、あ、ちょ!?脇腹はダメぇ!?
「ふっ、くぅ!」
『ッ!?……ッ!!!!』
……なんだろう、僕が頑張って声を抑えているのを見て、余計痴女さんが興奮している気がする。だって、さっきまで片手だったのにいつの間にか両手になってるし!
でもこれもきっと、僕がイケメン過ぎるからなんだろうね。僕だって女性が少ない世界で美少女が現れたら、自分を律する自信が無いもん!
むしろこれはイケメンすぎる僕が悪い……そう思いながら、必死に耐え続けた。
───
──
─
「はぁ、はぁ、はぁ……」
滴る汗、火照った身体。恥ずかしさと擽ったさでパンクしそうになる頭。それでもなんとか冷静を装って、痴女のテクニックを凌いでいた。
それが功を奏したのか───『青峰学園、次は青峰学園です』という音ともに、僕にとって馴染み深い景色が人に埋もれた窓から垣間見えた。
……そ、そうか、僕は耐えたのか?そうだ、僕は……耐えた!耐えきったぞぉ!!!
「よ、よかったぁ……ッ!」
それがわかった瞬間、思わず安堵の溜め息がこぼれる。
これ以上続いてたら僕はきっと恥ずかしさで倒れたに違いない。
女性に痴女されるっていう天国と、バレたらヤバいっていう地獄をずっと行き来してるんだもん。でも正直、こういうシチュって興奮します。
残された問題は……この痴女をどうするかだね。
確かに、警察官さん達に突き出すのはやめにしたけど、ここで何も言わなかったらまた再発しそうな気がする。
だからちゃんと注意しとかないとね?
そうと決まれば即実行、未だに僕の脇を擽っていた手をガシッと掴んで逃げられないようにする。
『ふぇっ!?』
すると痴女さんの驚いた声が背後から聞こえた。
くっ、可愛い声しやがって!でも絶対にはなさんぞぉ!
がっしりと掴んだまま壁に追い込んで、壁ドンの要領で顔の真横に手を置いて逃げる隙間をなくす。そして顎を優しく掴んで、正面から痴女ちゃんの顔を見つめた。
『んぇあ!?か、顔が近い……ッ!?』
まず目に付いたのが、青峰学園の制服を来ていること。そして僕が知らない顔だから多分二、三年生の先輩であるということが分かった。
『あっ、あぁ……ご、ごめんなさい!』
そんな人が、僕に顔を見られてあわあわしていた。髪の色と同じ桃色の瞳がうるうると泳いでいて実に可愛いらしい。
だからこそ思う───やっぱりピンクは“いんらん”なんだ!(迫真)
漫画とかアニメでよくあるけど、ピンクの髪の女の子は大抵ヒロインだから淫乱みたいな仮説、僕は結構好きなんだけど……まさか本当に淫乱だとは。
異世界に転生して、十本の指に入るくらいの感動だよ。
『ひぁ、あ、あの……』
僕が異世界に感謝している間にも、淫乱ピンク先輩は動揺しているのか視線を忙しなく動かしていた。涙目なのも非常にいいんだけど、流石に反省させないとダメだよね。
「ねぇ、先輩?」
『ふぇ!?は、はいぃ!』
どうやら完全に意気消沈しているようだ。男子に痴女してると分かったからか、青白いを超えてもはや土みたいな顔色になっていた。
今にも泣きそうで、ちょっと可哀想に見えちゃうけどしょうがない。
こういう時は、さっと耳に口を寄せて“一言”言えば解決できる。
「先輩の─── え っ ち ♡」
『うっ、ご、ごめんなさぁぁい!!!』
……ほら、こうして謝りながら逃げていくんだよね。
一々数えてないから分からないけど、バスで痴女された回数はもう三桁いったんじゃないかな?
ふっ、モテすぎて困っちゃうぜ!
まぁ、お陰で痴女への必勝法を編み出せたんだけどね。ちなみにモチーフは前世でお世話になってた『わからせロリ』だ……うん、何も言うな。
同世代に痴女されたのは久々かもしれない。そういえばあの人───確か生徒会の方で似た容姿の人がいた気がするんだけど、後日行ってみよーかな?
制服で痴女って勇気があるのか、もしくは僕がイケメンすぎて我慢できなかったのか定かじゃないけど、個人的に気になるからもう一回会ってみたいよね。
油断してる時に生徒会室に行ったら、そこには今朝痴女しちゃった女の子がいた!……ううむ、何て面白そうなんだ(暗黒微笑み)
ふふっ、先輩のことといい、実は男でしたムーブといい……今日から本当に楽しみだね。