それでは、ごゆっくりお楽しみください。
帝都東京 上野公園
綺麗な桜が咲く上野公園に遠くから来たのか、着物姿の少女が手に持っている鞄を近くに置いて東京の町を眺めている。
少女の名は真宮司さくら。
“ある目的”の為に生まれ故郷の仙台から上京してきたのだ。
さくらの表情は興味津々な笑顔で町を見渡している。
「きゃあああ!」
その最中、突然女性の悲鳴が公園に響き、声のした方をさくらが見ると、そこにはオレンジ色の足軽のような鎧武者が暴れいた。
体格が細く、顔から蒸気を発する見た目からして無人らしい。
人々が逃げ惑う中、さくらだけは逃げず、むしろ真剣な表情で手持ち鞄と共に持ってきた刀袋を手にし、結び目を解く。
『グオオオーーー!』
それに気付いた鎧武者は雄叫びを上げながらさくらに向かって突進していく。
しかし、さくらは軽い身のこなしで鎧武者の上を飛び越え………
「はあああっ!」
刀袋から取り出した日本刀を引き抜き、力強く上から振り下ろし、鎧武者を真っ二つに両断した。
『グオオオ……!!!』
斬られた鎧武者は断末魔をあげながら、崩れるように倒れた。
さくらが鎧武者を倒した事で逃げ惑っていた民衆は安心したように歓声をあげ、これで解決したかに見えた。
しかし……
『『『グオオオ!』』』
さくらが先ほど倒した鎧武者と同じ姿の鎧武者がさくらの前に現れた。
しかも1体だけでなく、13体くらいの数はいる。
それを見た民衆は再び悲鳴をあげて逃げていく。
13体の内の3体の鎧武者が刀を構えてさくらに斬りかかろうと突っ込んでくる。
「っ!」
かなりの数にさくらは驚くが、すぐに刀を構えて迎え撃つ態勢を取る。
その時……
バババァン!
上野公園に突如銃声が鳴り響きく。
さくらに斬りかかろうとした鎧武者達の頭には風穴が開いており、撃たれた鎧武者達は崩れるようにその場に倒れる。
突然の出来事で鎧武者達は動揺し、さくらは銃声の鳴った方に顔を向ける。
そこには紺色の着流しを纏い、紺色の宗十郎頭巾を顔に巻いた男が右手に拳銃を構えて立っていた。
先ほどの銃声は頭巾の男が撃ったものらしい。
「あっ!帝狼天狗!」
母親に手を引かれながら逃げている少年が頭巾の男を見て嬉しそうに叫ぶ。
「君、あの人を知っているの?」
帝狼天狗の事を知っている少年にさくらが声をかけて尋ねる。
「お姉ちゃん知らないの?帝狼天狗。この帝都や僕達をいつも助けてくれるとっても強い人なんだ」
少年が帝狼天狗を知っているという事は、彼はさくらが帝都に来る前からこの帝都を守っている事になる。
「帝狼天狗……」
さくらの呟きに気付いたのか、帝狼天狗はさくらと少年の方に顔を向ける。
「……いつまでそこに立っている。さっさとそこの小僧を連れて避難しろ」
「え?あ、はい!」
帝狼天狗に声をかけられた母親の女性は慌てながら返事をする。
「ありがとう帝狼天狗!」
少年は帝狼天狗に手を振り、母親と共に上野公園から避難していった。
「お前も早く避難しろ」
「あ、あたしは戦えますから大丈夫です」
帝狼天狗に声をかけられたさくらは少し慌てながらそう返答する。
「さっきの抜刀を見たが、余りにも力を入れすぎだ。相手が単独ならともかく、複数相手ではすぐに力尽きるぞ」
「なっ!?」
帝狼天狗に指摘されたさくらは驚愕する。
しかし帝狼天狗はそんなさくらには気にする様子もなく話を続ける。
「お前に本当の戦い方を見せてやる」
そう言うと帝狼天狗は、なんと持っている拳銃を右腰のホルスターに収め、左腰に差している日本刀を抜いて片手で構える。
「……いざ、参る」
そして次の瞬間、さくらは目を疑った。
帝狼天狗は無駄に力を入れ過ぎず、流れるような鮮やかな太刀筋で10体の内の4体を一撃で斬り倒す。
3体の鎧武者は帝狼天狗を無視して逃げ遅れた民間人を狙って襲いかかろうするが、それに気付いた帝狼天狗は再び拳銃を抜いて鎧武者の頭部を一発で撃ち抜いて撃破する。
残った3体の鎧武者はなるべく隙を作らないように連携技で帝狼天狗に斬りかかるが、帝狼天狗はそれを余裕を見せるように体を少し動かす程度で回避したり、片手で握っている刀で防いでいく。
そして1体、また1体と帝狼天狗は隙を突いて鎧武者を斬り倒し、残りは後1体のみとなった。
『グオオオーーー!!!』
最後の1体である鎧武者は雄叫びを上げながら帝狼天狗に斬りかかる。
上から勢い良く振り下ろす鎧武者の刀を持った右腕を帝狼天狗は下からの斬り上げで斬り飛ばす。
鎧武者は今度は左腕で殴りかかるが、帝狼天狗はそれを余裕で回避して上からの縦斬りで斬り落とす。
両腕を失った鎧武者は自棄を起こすように帝狼天狗に向けて頭突きを繰り出してくるが、帝狼天狗は横に回避し、鎧武者の腹部に向けて横に一閃する。
そしてとどめに背後から縦に両断する。
斬られた鎧武者の体は四つに別れ、崩れるように倒れていく。
「……………」
鎧武者の脅威が去り、再び民衆が歓声を上げる中、さくらは驚いた表情で帝狼天狗の後ろ姿を見ていた。
鮮やかで見事な帝狼天狗の太刀筋にさくらは声が出なかった。
背を向けてもさくらに見られている事に気付いていた帝狼天狗はそれを気にする事なく、刀を一振りしてから鞘に納める。
そして民衆からの称賛の声を浴びながら何処かへ歩き去っていく帝狼天狗の後ろ姿をさくらは見えなくなるまで目を離さなかった。
基本はサクラ大戦の作品を更新していきますが、時々『未来を担う剣』の続編であるDestiny編も更新していこうと思います。
それでは次回もお楽しみ。