万魔殿の大切な2年生   作:アンクシャTYPE=B

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 マコト様もイロハもイブキも口調が分からねえ,,,,,,許してお兄さん.....
 続きを待ってくれるんだったら続編書くかもしれません。


何の変哲もないはずだった一日

『キキキ!イア、貴様にこの任務を任せる!手早く済ませて帰ってこい!』

 

「ぅあ......マコト様......」

 

 全身が痛い。爪を剥がされて、肉を抉られて、あちこちを傷つけられてから一体どれくらいの時間が経ったんだろう。叫びをあげる気力も、もうなくなってしまった

ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい、マコト様。私は、せっかく与えられた任務を失敗してしまいました。マコト様が、私に期待して、預けてくれたというのに。本当にごめんなさい。

 

 私が、私がもう少し気を付けていたら。特に何もない地域だということを鵜吞みにせず、ちゃんと動いていたら。こうはならなかったはずなのに。全部私のせいだ、私が、気を抜いていたから。

マコト様は、いや万魔殿の皆は優しいから、きっとこんな出来損ないで落ちこぼれの私でも、少し戻ってこなかったら心配してしまうだろう。本当に私はどうしようもないやつだ。

 

「ごめん......なさい......ごめんなさい......」

 

 もうすぐであの恐ろしいロボたちが戻ってくるはずだ。あれらは万魔殿の情報を話せと言っていたけど、絶対に話さない。話してなるものか。こんなどうしようもない私が、最後にできる抵抗だから。もし話してしまったら、万魔殿の皆を裏切ることになってしまう。そんなことをしたら、本当に二度とみんなに顔向けできない。たとえ死んでも、絶対に話さない......

 

『......時間が経った。まだ話さないつもりか。』

 

「絶対に話さない......誰が話すものか......」

 

『そうか。ならばもっと痛めつけるだけだな。』

 

 そう言って、丸ノコギリのようなものを持って私の方にそれは近づいてくる。まさか、まって、それで私に何を......やめて、こっちに来ないで、怖い、怖い......!

 

「ち、近づかないで......」

 

『無駄だ。大人しく受け入れろ。』

 

 私の右腕が、何かの固定具のようなもので拘束される。そして、耳に耳障りで、恐ろしい機械音が聞こえてくる。

 

「あ、やだ、まってください、いやぁ!」

 

『お前が喋らないからだ。』

 

 

「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぁぁぁぁぁ!?!?い゛た゛いいたい゛いた゛いいた゛いい゛たいぃぃぃぃぃ!?」

 

『話す気になったか?』

 

 いまだ回転を続ける冷たい刃が、私の右腕を抉り続ける。グチャグチャと肉が裂ける音と激しい痛みが、ひたすらに私の心を折ろうとしてくる。いたい、いたい、いたいけどおれちゃだめ、そしたらみんなに迷惑をかけちゃう......!

 

「............」

 

 必死に痛みをこらえながら、それでも我慢して首を左右に振る。もう痛みで目は開けられないし、身体のありとあらゆる場所が悲鳴を上げている。そして右腕は、分かりたくないが分かってしまう、今にも千切れかけだという様子を。

 

『......残念だな。今話せば、お前の右腕はお前から別れなくて済んだというのに。』

 

『では右腕を斬り落としたのち、次はお前の左目を抉りだしてやろう。安心しろ、死にはしない。』

 

 無理やり閉じていた目を開けられる。目を閉じようとしても、強い力で押さえつけられて閉じれない。そして段々と、私の目の前に凶刃が迫ってくる。ジリジリと迫ってくるけど、抗えない。そしてそれは、やがて私の目に触れて、そしてそのまま、

 

 私の目を、抉りだした。それも、じっくりと痛めつけるように。

 

「キ゛ィ゛ッ_______!?あ゛......」

 

 刃が目淵に触れる音が、私の恐怖心を掻き立てる。恐ろしいほどの痛みと、目を抉り取られたことでの視覚の喪失が、ありとあらゆる身体の機関を騒ぎ立てる。けれども拘束されている体は一歩も動かすことが出来ず、むしろ揺れ動く度に突き抜けるような痛みが走る。

 

「あ......」

 

 押し寄せるような痛みが体を襲う。それと同時に、段々と体が重くなってくる。ここで眠ってしまったら、もしかしたらもう二度と起き上がれないかもしれないのに。でも抵抗できない、そのまま遥か彼方へと意識が落ちていく。

............ごめんなさい、マコト様............約束、守れませんでした............さようなら。

 

 

 

 

 


 

「まだ見つからないのか?」

 

「はい......万魔殿が直接的に使える兵力を総動員していますが、まだ......」

 

 ......遅い。イアを散歩ついでの軽い巡回任務に向かわせてから、すでに数時間が経過している。始めの一時間は聡明なイアが私を配慮して風紀委員へと嫌がらせに行ってくれたと思っていたが、あまりにも遅いから風紀委員会に連絡してみたが今日はそもそも来ていないという。

 

 もしも本当にイアに何かあったらどうしようか。とりあえずこの私に心配を掛けさせた罪として、一週間は私の傍にいてもらおうか。仕事をするときも風紀委員へ嫌がらせをするときもイブキと一緒に遊ぶ時も、ずっとだ。

 

それからいい加減あの敬語を辞めるように言ってやろう。前から使わなくていいといっているのに、訳の分からない言葉ばっか使ってのらりくらりと躱し続けているからな。そうだ、任務自体は成功しているであろうから褒美も一緒にくれてやろう。褒美は......私と一緒に居られる権利だ。

 

 だがその考えていることもまずイアを見つけないと始まらない。ここは非常に......非常に嫌だし躊躇われるが......風紀委員も導入して捜査を進めるしかない。さっきからイアが本当に大丈夫なのか胸の奥のざわめきが止まらない......イブキも泣き出しそうだし、苦渋の判断だが投入するしかないか......借りを作りたくないが.......これもイアのためイブキのためひいては私のため......

 

「もしもし?私だ、マコトだ。ヒナはいるか?」

 

『......マコト?何の用?また仕事?』

 

「仕事と言えば仕事ではあるがそうじゃない。緊急の案件だ。」

 

『何?』

 

「数時間前から行方不明になったうちのイアを探してくれ。可及的速やかにだ。」

 

『分かった。別の仕事を担当してる風紀委員以外を全て宛てるわ。』

 

 電話が切れる。私がこれだけイアの為に動いてるんだ、帰ってきた暁にはイアにも対価を払ってもらわねば。キキキッ、何をしてもらおうか......さっき挙げたのもいいが、やはり本人からも何かしらの対価を受け取らねばな......何がいいかな、それは本人に考えてもらうか......

 

「マコト先輩......」

 

「イブキ、どうした?」

 

「なんだか、嫌な予感がするの......」

 

「大丈夫だイブキ、心配するな。イアは帰ってくるからな。」

 

 ............こうもイブキも心配させるとはな。うん、やはり傍にいる期間を一週間から一カ月......いやずっとにしよう。だから早く帰ってきてくれ......

 

 

 

 

 

 イブキを膝に抱えながら、連絡を待ち続けて二時間が経過した。ただでさえイアがいないというだけで部屋の空気は冷たくなっているというのに、未だいい連絡がなく、いつもは寝ているはずのイブキはさっきから泣きだしそうになっている......いや、もう啜り泣いている。

風紀委員共は何をやってるんだ......!あれだけ動員しているのにまだ見つからないのか!?

 

「!マコト先輩!電話が......」

 

「イブキ!私が出る!もしもし!」

 

『マコト!今すぐこっちに来て!座標は送った、救急医学部も呼んであるから早く!』

 

「救急医学部......?まさか、おいヒナ!一体イアに何があったんだ!?」

 

 

「クソッ、切れた......イロハ!車を出せ、虎丸じゃなくていい!早くしろ!」

 

「マコト先輩、イア先輩は本当に大丈夫なの......?」

 

「......大丈夫だ。大丈夫なはずなんだ......」

 

 

 

 

 

 

「マコト、こっち。ついてきて。」

 

 指定された座標に着くと、そこにはボロ小屋と呼ぶのが相応しい一軒家が建っていた。周りを観察してみると、地面には血痕が付いているのが見える。まさか......イアの、血......なのか?いや、そんなはずはない.....そんなことがあっていいはずがない。なにか別のもののはずだ......

 

「っ......」

 

 だがその僅かな期待を裏切るかのように、奥に進めば進むほど、こびりつくかのような悪臭が漂ってくる。むせかえるような血の匂いに、下からせり上がってくるものを必死にこらえようとする。違う、これはイアのものじゃないと否定しても、脳の中ではもう既に薄々真実を感づかせている。

 

「う゛ぅ......」

 

「そんな......」

 

「イブキ......イロハ......」

 

 二人は既に耐え切れず嘔吐してしまっている。私は違う、私は......イアの為にも、万魔殿議長としても、耐えないと......この目で何が起こったかを知るまで、耐えないとダメだ。

しばらくすると、悪臭がより強くなってきた。冷たい空気が漂う地下へと向かう階段をふらつきながらも降りると、そこには牢屋のようなものがあった。そして理解した。理解してしまった。

 

「............イア?」

 

 目の前にいる、凄惨な現状をしているのが、私が探していたはずの、イアであるということに。

不安になったとき、私の手を暖かく包んでくれた右手は、生々しい断面と共に千切れ飛んでいて。

吸い込まれるように綺麗で美しかった青い瞳は、真っ赤に染まって地面に落ちていて。

足も、腕も、身体も、ありとあらゆる箇所がボロボロに傷つけられていて......イアが綺麗にしていたと言っていた爪も、全て痛みつけるように剝がされていて。

 

「な......なんで......イアが......?」

 

 口の中が酸っぱくなってくる。目の前にある非現実的な現実から、目を背けたくても、嫌でも目に入るイアの姿が、私を逃げさせてくれない。血まみれのイアの身体にすがりついても、イアは何一つ反応を返さない。唯一、その肌から感じられるほのかな暖かさだけが、最後の希望だった。

 

「イア......なぁ、目を覚ましてくれ。いつもみたいに私を呼んでくれ、笑ってくれ......どうして目を開けないんだ?頼む、いや、お願いだから......目を......」

 

「イア先輩......死んじゃやだよ.....」

 

 何回吐いたか。どこまでも変わらない過酷な現実に、何回見たくないと思っていても、現実は変わらない。胃の中が空っぽになって胃液だけが吐き出されるようになっても、それが変わることはなかった、むしろ時が経てば経つほど、その苦しみがより私を絞めつけているかのようにも感じる。

 

「......カメラ?」

 

 床に手をついていたときに、不意にそれとはまた違う、謎の硬い感触が手に触れた。拾ってみれば、それはカメラだった。側面にはUSBのようなものが刺さっていて、血にまみれている。

イアが拷問されていた場にあった、一台のカメラ。たった一つ、たった一つだというのにそれだけで、これがどれだけ恐ろしい用途に使われていたのか分かってしまう。これは......確実に、イアが苦しめられていた時の映像が入っているだろう。

 

 こんなもの、握りつぶしたくてたまらない。握りつぶしたくてたまらないが......見なければならない。きっとそうしないと、イアの苦しみを知らないと......イアが戻ってきた後、私がイアの苦しみに寄り添う事なんてできないだろうから。

 

「イロハ............一度戻るぞ。なんでもいいからUSBを確認できる端末を用意させろ。」

 

「マコト先輩......イアはどうするんですか?まさか付き添いもせず戻る気ですか?」

 

「これを見ろ。おそらくだが......これを見れば、イアがここで何をされていたのかが分かるはずだ。」

 

「待ってよ......!マコト先輩、本当にイア先輩を置いて行くの!?こんなに傷ついて、ボロボロになってるのに......!」

 

「イブキ......」

 

「マコト先輩にとっても、イア先輩は大切な人だったじゃん!なのに......なのにどうして!」

 

「............すまない。」

 

 分かっている。私だって本当は置いて行きたくない。イアの傍にずっといて、イアが目を開けるその時までずっと一緒に居たい......だけど、今のイアはそれが出来るかすら分からない状況だ。認めたくはないが、私達がいると邪魔だろう。セナは持てるすべての術を使って治療に励んでくれている。今私たちにできることは......この悪夢のような現実を認識し、少しでもイアの苦しみを理解することだけだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「マコト先輩、ひとまず周囲の人員に借りてノートパソコンを用意しました。見たくはありませんが......見なければならないのでしょうね。」

 

「あぁ。見なければならないが......無理して見ろとは言わない。これは私が背負うべき責任だからな。」

 

「いえ、私も見ます。イアがされたら恐ろしいものを、見なくてはなりませんから。」

 

 USBを刺す。しばらくの読み込みの後、ファイルが読み込まれた音がする。マウスを持つ右手が震えるのを抑え、一件の動画ファイルへとカーソルを動かす。

......引き下がろうと思えば、今がラストチャンスだ。だけどここで引き下がるな、イアが感じた恐怖はこの程度じゃない。この程度でへたり込むな、羽沼マコト。

 

「いくぞ......」

 

 動画が開かれると共に、画面には黒い部屋が映し出される。真ん中の椅子にはイアが縛られていて、不気味な甲冑のようなものを着た謎の人物がイアの目の前にいる。イアはもう既に体がボロボロで、暗くても血が飛び散っている様子が見て取れる。

 

『時間が経った。まだ話さないつもりか。』

 

『誰が......話すものか......』

 

「話す......?」

 

「万魔殿の情報の事でしょうか......?イアが情報を握っているといえば、それくらいしか心当たりがあるものがありませんが......」

 

 疑念を持ちながらも再び映像を回す。少しの間の後、イアの前に立つものが何かを持ってイアに近づく。右手には何か拘束具のようなものが、左手には......丸ノコギリ......まさか。

なくなっていたイアの右腕と左足。手に持たれた丸ノコギリと拘束具。それがこれから何が行われるかを暗示しているのは明確だった。

 

『ち、近づかないで......!』

 

『無駄だ。大人しく受け入れろ。』

 

 パソコンのスピーカー上でも耳障りな音が、部屋全体に鳴り響く。イアの右腕に向かって、悪魔の手が伸びようとしているのが分かる。ダメだ、それ以上イアに凶刃を振り下ろすな、やめてくれ、頼む............!

 

『あ、やだ、まってください、いやぁ!』

 

『お前が喋らないからだ。』

 

「ッ......!」

 

 そしてイアの腕が切断されようとする直前に、パソコンの電源が落ちる。イロハが耐え切れずに消したようだが、それでもこの先に起こったであろう光景を想像してまた吐いてしまう。もうダメだ。あんなに見なくては、見なくてはと思っていたのに、これ以上の勇気が起きない。

地面にUSBが落ちるが、それをもう一度差し込もうとする気力はない。拾おうとしても、手が震えて出来ない。

 

「マコト先輩......ごめんなさい。大事を吐きましたが、私には耐えれません。」

 

「............私にも出来なかった。」

 

 息が詰まっていく。自身の呼吸の感覚が段々と速くなっていくのが分かるが、それを抑えることはできない。むしろ余計に酷くなっていき、気道が狭まっているようにも感じる。イアが受けた苦しみはこんなものじゃないと分かっているのに......私は......

 

「......イアが帰ってきたら、私達でもう二度とこんなことが無いよう保護しましょう。これ以上、イアを傷つけさせてはいけませんから。」

 

「............イロハ、お前は凄いな。」

 

「イアは.........私たちがこんなことになっているのを望まないでしょうから。今は一刻でも早くイアが戻ってきてくれることを考えましょう......難しいですけど、前向きに......そう、前向きに......」

 

「そうだな......そう、考えないと。」

 

 

 

 

 

 


 

「............ここ、は?」

 

 白い天井と、窓から射し込む日の光。静かな機械音と、鼻につく消毒液の匂い。ここは............病院だろうか。

 

 ............何があったんだっけ。マコト様に命じられて、巡回に行って......それから............

 

「っ......ぁああああ!?私の......私の腕は!?」

 

 動悸が早くなる。咄嗟に確認しようとして____________ない。本来そこにあるはずであろうものが、ない。それに見えているはずの左側も、暗闇に支配されて全く見えない。

 

............そうだ、私、拷問されて......至る所を痛めつけられて......

 

「そうだ、マコト様は......マコト様は大丈夫_________っ......」

 

 慌てて立ち上がろうとして、ベッドから崩れ落ちてしまう。足も......ないんだった。うぅ、針みたいのも一緒に抜けちゃって痛い......

とりあえず、誰かを呼ばないと......みんなは大丈夫かな、あの恐ろしい......恐ろしい奴らに、何か.......されていないだろうか。

 

「んしょ......えっと、ナースコールは......」

 

 

 

 

 

 

 

 

『............イア先輩?』

 

「......イブキ?」

 

 扉の前にイブキが立っている。でもいつものように明快とした明るさはそこにはなく、代わりに呆然とした表情をしている。

でもまぁ、当然かな......こんな四肢が欠損してる姿なんて、見たくないだろうし......

 

「イブキ、あの、今の私はその......あんまり見てていい姿じゃないと思うから、入りたくないなら入らない方が......」

 

「イア先輩!!!」

 

「わぷっ!?イブキ、どうしたの?」

 

「よかった......目を覚ましてくれたんだ!!」

 

 イブキは私の胸辺りに顔をうずめると、そのまま泣きながらより強く体を押し付けてきた。ちょっと強く抱きしめられすぎて体が苦しいけど、それでもまた会えたんだなって、また会えるなんて.....こんなにも、幸せなことだったんだ。

 

「ごめんね、イブキ......心配、かけちゃったね。」

 

「ううん!イア先輩が目を覚ましてくれただけで......本当に......本当に......」

 

 私も抱きしめかえす。片腕がないせいで、あんまり強くは抱きしめ返せないけど......でも、嬉しいな。

あ、でも、皆がどうなっているか聞かないと。マコト様にイロハさん、サツキさんにチアキさん......大丈夫かな、私のせいで何かに巻き込まれていないかな。

 

「ねぇイブキ、マコト様とか、他の万魔殿の皆はどうしてるの?」

 

「............皆、イア先輩を心配してるよ。」

 

「......そう......」

 

「とりあえず、マコト先輩を呼んでくるね!イロハ先輩は用があって今すぐ来れないだろうけど、マコト先輩はすぐ近くにいるから!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「......はぁ......」

 

 私のせいで、万魔殿のみんなに迷惑をかけてしまっている。余計な心配を掛けさせてしまっている。マコト様にイロハさん、イブキまであんなに泣かせて......私はいるだけで、迷惑をかけるばかりの存在なのかな?前も大して何かが出来るというわけでもなかったのに......そんな私は今、何ができるんだろう。

 

もうマコト様の書類仕事を手伝うことはできない。風紀委員に仕事を届けに行くこともできない。

 

チアキさんと写真を撮っても醜く映るだけだし、サツキさんの催眠術もこの体では碌にできない。

 

イロハさんと一緒にサボり部屋で休むことも叶わないし、イブキと遊んでやったり、一緒にピアノを弾いてあげることもできない。

 

 腕も足も目もなくなった私に、できることって何だろう。探してみても、なにもない。私はただ、いてもみんなに迷惑をかけ続けるだけの錘だ。本当に生き続けてよかったのかな。どうせ、生きた所で何もできない癖に。私の代わりはいくらでもいるのに。

 

............そうだ、私一人が抜けたところで何も問題はない。私の代わりなんていくらでもいるんだ。だからもういっそ.............

 

 

「......あの場で、死んでおけばよかったのかな......?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『............イア?何を......言ってるんだ?』

 

 

「......え?」

 

 聞かれた。聞かれてしまった。聞かれてはいけない独白を、一番聞かれてはいけない人に。

 

「今......なんて言ったかと聞いてるんだ、イア。」

 

「ぇ......マコト様......?」

 

 どうしよう。どうしよう、どうすれば、この状況を丸く解決できる?迷惑をかけてはいけない、ちゃんとした応答を返さないと......でも一体どうすれば、正直に言っても悪化させるだけだろうし、えっと、えっと......

 

「どうしてそう思ったんだ......?答えてくれ、なんでなんだ......?」

 

「あ、その、それは......」

 

「なぁイア、私が悪かったなら何をしてでも謝罪する。権力でも金でも、イアが望むものならすぐ用意させるし、必要とあればこの身体だっていくらでも使っていい。いいから、だからそんな死ねばよかっただなんて言わないでくれ......」

 

「いや、違っ、マコト様は悪くないです!」

 

「!」

 

 あまりの豹変ぶりに思わず否定の言葉を出してしまう。そうだ、違う。マコト様は悪くなんてない。私が悪いんだ、私がいるからこんなことになっているんだ......

 

「悪いのは私なんです!私がいるから......みんなに迷惑を......」

 

「マコト様の役に立ちたくて、大した能力もないのに動こうとして.......!」

 

「それで腕も足も失って......余計な心配までかけさせて......」

 

「私の代わりなんていくらでもいるのに、無駄にでしゃばって......!ごめんなさい......!」

 

 

 

 

「......は?」

 

「え?」

 

「今、『私の代わりはいくらでもいる』と言ったのか?」

 

「......そ、そうです。別に私なんかいてもいなくても同じでしょうし......ましてやこの状態では......」

 

「ッ......!」

 

 マコト様はその言葉を聞くと、怒りと悲しみが混じったような顔でこちらに向いた。所々涙も零れている。違う、私はマコト様にそんな表情をさせるつもりはなくて......ただただ、マコト様のことを想って......

 

「あ、えっと、ごめんなさい......」

 

「......なんで。」

 

「なんで、そんなことを言うんだ......!イアの代わりなんているはずがないだろう......!」

 

「ですが......」

 

「ですがじゃない!もういい、イロハの言う通りにするべきだった......私が間違っていたんだ。」

 

「イア、これから絶対に万魔殿から出させない。私は少し自由を与えてもいいと思っていたが、そんな考えをしているんだったらナシだ。」

 

「イアがいなくなったときの私の気持ちが分かるか......?あんなにボロボロになって、至る所を傷つけられて死にそうになっているイアを見つけた時の気持ちが......!」

 

「それで目を覚まして、また一緒になれると思ったら、代わりがいるだなんて言い出して......もう二度とあんな思いはしたくない。」

 

「だからこうやって、私たちに......私に支えられながら、一生、もう二度とこんな思いしないよう、隣で過ごすんだ。」

 

「分かったな......?分かったならもう絶対に代わりがいるなんて言うな......」

 

「もうすぐでイロハも来る、そうしたら万魔殿に戻るぞ。お前のための設備も用意させている。」

 

 

 

 

 

「......二度と、離れるなどと口にするなよ。そうしたらもう、耐えれないかもしれないから。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




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