万魔殿の大切な2年生   作:アンクシャTYPE=B

3 / 4
 はい。始まる前に、皆さんにお伝えしなければならないことがあります。まず一つ、今回の話は前回と比べて短いです。6000くらいでしたかな......ちょっと忙しくて、あまり詳しく書けなくて......申し訳ありません。

 それで二つ目なんですけど、後書きに今後の展開が貼ってあります。よかったら見て見たいものとかあれば、ちょっと教えてください。それと後半にイアちゃんのプロフ貼ってみたので、よかったらそれも.....

 流石に毎日投稿は無理ですが、これからも週2、3くらいでは出せるようにしたいので、皆さん是非とも応援をよろしくお願いします......!ルーキー日間1位ありがとう.......!


もう変わることのないであろう、始まりの一日

「......はぁ......」

 

 あのパーティーから数週間が過ぎた。結局あの後、私は救急医学部の元へと運ばれ、心因的な問題による味覚障害と診断された。正直、未だに実感が沸かない。ついこの前までは、イブキが料理の練習と称して作ってくれた料理を食べられたのに。

それが今では、パーティーでマコト様がわざわざ練習をしてまで作ってくれた料理を一口も食べれないという有様だった。味がせず、何かを口にした瞬間どうしても吐き出してしまって......

 

 もう、正直に言って......自分が、ここにいる意味というものが分からなくなってきた。いても、ただ迷惑をかけているだけだし......マコト様やイロハさん、サツキさんにチアキさんといった万魔殿の皆は私が必要だ、のような言葉を言ってくれているが、それは多分......私への、一種の情けのようなものじゃないかって思ってる。

 

 みんなが私を介護している時間で、どれくらい皆が幸せになれるのだろう。私さえいなくなれば、例えばだけどチアキさんは私なんかよりよっぽど綺麗な写真をたくさん撮れるだろうし、イブキはもっといっぱい皆と遊ぶことが出来るし、マコト様は使えない私なんか捨てて、もっと前を向いていくことが出来る。そして私は、この私を苛む罪悪感のような気持ちから逃れられる。

 

 全員にとって、私がいなくなるという事はいいことずくめなんだ。マコト様は違うって言ってたけれど、どうせたかが私一人がいなくなった程度じゃなにも影響はないだろう。それよりも、皆にとってより最善の道を選ばないと......役に立たないて足手まといの私が出来る、唯一の事だから。

 

私がここを出ていったら、正直私が生きていられる自信はない。こんな四肢の一部が欠損している能無しなんて、誰にも求められはしないだろうし。もしかしたら、野垂れ死んでしまうかもしれない。でもそれでも構わない、それで皆が幸せになるんだったら......この身一つくらい......

 

 今の時間はもう夜で、誰もここにはいない。今逃げ出せば、多分......ここから離れられると思う。私は足がないから、その分の時間も含めて余裕を持って出ないと......もしマコト様が起きていたら、連れ戻されてしまうかもしれないから。

 

「よいしょ......」

 

 そっとベッドを離れて、ふらつく体を抑えて立ち上がる。ここは万魔殿の中でも最上階に位置しているし、深夜はエレベーターが止まっているから、階段で降りるしかないのが厳しいけど......なんとかしないと。車椅子は使えない。あれはマコト様がわざわざ私の為に発注したものだそうだから、勝手に持っていっちゃだめだ。持つのは私の身一つ、それだけだ。

 

 外に出たらどうしようかな......行く宛てもなく彷徨って、一人で朽ちていくのかな。私を拾ってくれる人はいないだろうし、路地裏でゴミでも食べて生きていくしかない......かな?そこまでたどり着けるかもわからないけど......

銃もないし、お金もない......腕もなければ足もない、追加して左目もない......振り返ってみれば、酷すぎるほどにボロボロだ。だけど我慢しないと、私の責任だから。

 

 長い廊下の端っこまで来て、とりあえず階段までは辿り着けたし、後は降りるだけ_______________『イアせん......ぱい?』

 

 

 

 

 

 

 

「......えっ......?」

 

 後ろから聞こえるはずのない声に、ふと耳を傾けてしまう。いなくなるんだから、心苦しいけど無視してでも先に進めばよかったのに......

 

「イア先輩......どこに行こうとしてたの......?イア先輩のお部屋はあっちだよ?」

 

「......イブキ......」

 

「それに今は真夜中だよ?トイレならお部屋にあるし......イブキはイア先輩と一緒に居ようと思って来たけど......どこに行くつもりだったの......?」

 

「............」

 

 失敗した。今すぐ、イブキから離れないと......今更戻る訳にはいかないから、これ以上余計な迷惑をかけれないから......!

 

「イア先輩、答えてよ。こんな深夜に、一人で、何も持たずにどこに行こうとしてたの?まさか、またいなくなろうとしてたの?ダメだよ、イア先輩、早くこっちに戻ってきて。外は寒いし、イブキと一緒にあったかいベッドで寝て温まろう?大丈夫、今ならまだ間に合うよ......?」

 

「怖いならさ、イブキがずっと一緒に、傍にいてあげるから......イア先輩だって、もうあんなに怖い思いをしたくないでしょ?きっと一時の気の迷いで、ここから出ようとしちゃってるだけだよね?それならさ、イブキが隣にいて癒してあげるからさ......」

 

「本当にもしイア先輩がいなくなっちゃったら、イブキは......またあの苦しい思いをしなくちゃいけないの?あの一人ぼっちで、誰にも見つけられないような暗闇の中で過ごすような、とっても辛い思いを?そんなのやだよ......!お願いだから、こっちに戻ってきて......!」

 

 

 

 

「......ごめんなさい、イブキ......!」

 

「!イア先輩!!待って!」

 

 心苦しいけど、今は離れないと。階段の扉を急いで開けて、滑り落ちるかのように階段を下りていく。鍵は閉めて少しでも時間稼ぎをして、イブキ以外にもこのことが露呈する前に、早くここから出ないと......イブキが思っているほど、私はそんな存在じゃないから......って、なにこれ......!?

 

「警報......?」

 

 避難訓練などで聞く、火災報知機の警報とはまた違う音をした警報。聞いたこともない音だけど、どっちみちこんな音の大きい警報が鳴ってしまっていると人が集まってきてしまう......早く、早く......逃げないと......!いなくならないと......!

 

私なんかが、ここはいていい場所じゃないんだ......!もっとみんなを幸せにできる人が、ここに相応しいんだ。こんな四肢欠損した私なんか、その足元にも及ばない、ただの塵芥だから......みんなの足手まといだから......!

 

 無理やりに体を動かした影響で悲鳴を上げている体を無視して、ひらすらに片足を前に進めていく。私の身体なんてどうなっていい、今はみんなを幸せにすること......ここから逃げ出して消えることだけを考えないと!

 

「ついた......!」

 

 そしてどうにかして、1階へと辿り着くことが出来た。ここから先はもうないも同然、やった、イブキや他の皆が来る前に、なんとか来れたんだ......!あとは目の前の扉を開いて、外に出れば私の_____________っ!?

 

「ううっ!?」

 

 しかし横から突き飛ばされて、外へ出ることを防がれてしまう。一体誰だろう、もし事情を知らない人だったら話して解放してもらわない..............と......

 

 

 

 

 

「マコト......様?」

 

「......よかった。間に合ったんだな。」

 

「イブキが知らせてくれてよかった......もう少しで、また取り返しのつかないものを失うところだった。本当に良かった......」

 

「ぁ......」

 

「イア、私は......言ったはずだ。次離れようとしたら、もう耐えられないかもしれないって......」

 

「だから、無いとは思ったがな?念のために、イアが逃げ出そうとしたときのための警報を付けておいたんだ。そうしたら、本当にイアがまたいなくなろうとしてて......」

 

「どうしていなくなろうとするんだ?イアの代わりはいないって、あれだけ言ったじゃないか。私たちは、イアが、ただいてくれるだけで幸せなのに......それなのに、目の前の幸せは、また手からこぼれようとしていて......」

 

「もう、とり逃したくないんだ。失いたくないんだよ......!やっとの思いでたぐり寄せた大切な人を......!分からないのか.......!?イアが、私にとってどれだけ大切な存在なのか......こうして、イアを抑えつけてまでしないと、分からないのか......?」

 

「とりあえずイア、部屋に帰るぞ。今日はもう遅いからな。イブキも待ちくたびれているし、せっかくだから一緒に寝よう。イアもこんなにボロボロなのに走ろうとして疲れただろ?ほら、私の手を取れ。その体じゃつらいだろう?私が背負って部屋まで運んでやるから。帰って疲れが取れたら、イアがどれだけ私たちに必要とされているかいっぱい教え込んでやる。」

 

 マコト様が私に向かって、光のない目をしながら手を伸ばしてくる。違う、マコト様は私なんかに構っているような人じゃない。もっと上を向いて、万魔殿の皆を幸せにするお方なんだ。私なんかが、マコト様に求められるようなことは、あってはならないんだ......!

 

「マコト様、手を離して下さい......!」

 

「駄目だ。行くぞ。」

 

「......なら!」

 

 無理やりにでもマコト様の手から逃げて、地面を這うように逃げ回る。あと少しで外に出られる、外にさえ出られれば、なにか手があるはずなんだ、外にさえ......出られれば......!

 

『......本当に、分かっていないんですね。』

 

「っ......!?」

 

 しかしまたしても、その道は阻まれてしまう。今度は......イロハさんによって。どうして、私を止めるんだろう......?

 

「な、なんでイロハさんまで......なんで、私を止めるんですか?私なんて、いなくなったほうが、皆は幸せになれるのに......どうして......!」

 

「......やっぱり。まだ、そんなこと思っているんですね。マコト先輩も言っていましたが、私もあれだけ言ったのに。イアを愛している、イアは愛されていると、言ったのに。どうしてそんなに自分を低く見てしまうんですか?」

 

「ぁ.......」

 

 目に光を宿していない二人が、こっちに迫ってくる。片手だけでどうにか後ろに下がっても、じりじりと追い詰められていって逃げられない。挙句の果てには、背中に壁であろうはずの硬い感触まで感じられるようになってしまった。そして分かってしまった。『もう逃げられない』、と。

 

「やだ、やめてください......!こっちに来ないで......!来ちゃダメなんです......!」

 

「......どうして私たちを拒絶するんだ?」

 

「不思議ですね。イアは私たちに一生守られていれば、何の不安も感じることもなく、また痛みを感じることもなく、ずっと穏やかに暮らしていけるはずなのに。」

 

「そうだよ......イブキと一緒にいようよ。イア先輩がいなくなる恐ろしさを感じるのは、もう嫌だから......イア先輩がずっと隣にいてくれれば、そんな気持ちを感じることも、二度とないし......お互いに幸せだよ......?」

 

 周りを囲まれる。後ろにはサツキさんにチアキさんもいて、明らかに私一人にかけるような労力でないことくらいはっきりとわかる。あぁ、ダメだ、ここで私がいなくなって、みんなの前から消えないと、皆が幸せになれなくなってしまう。イブキはお互いに幸せだって言ってるけど、本当にお互いが幸せになれるんだったら、私は消えた方が絶対いいはずなのに。

 

違う、違う、こんなのじゃダメなんだ......どうして私なんかに......こんな......

 

「マコト様、お願いです、消えさせてください.......!どうやっても、そうだ、死んででもいいですから、お願いです......!こんなの、お互い幸せになんてなれません......!」

 

「.............何を言ってるんだ?死んでもいいだと......?本当に......それ、言っているのか......?」

 

「!そ、そうです!それくらい私になんて価値は......」

 

 

 

 

 

 

「なら、余計自分がどれだけ大切に想われているかを教え込まないといけないみたいだな。」

 

「私も、イロハも、イブキも......みな求めているのはただ一つ、イアが隣にいてくれることだけなんだ。私は、イアが隣で支えてくれて、笑ってくれるだけで幸せなんだ。」

 

「一緒に本を読んで、二人だけでまったりしながら映画とか色んなものをイアと楽しむ......それだけでいいんです。」

 

「イブキも、イア先輩と一緒に遊んで、一緒に寝たりしているだけでも十分満足なんだ!」

 

「イアの写真を撮ってるだけで、私も満たされるからね~!」

 

 

「...............」

 

 手を掴まれる。そしてまた、降りてきたはずの上階へと戻らされて、やがてまた、部屋へと入れられる。私は......一体何を間違ったんだろう。もうこうなってしまっては、いなくなることも叶わない。みんなを幸せにすることも......もう叶わない。多分は私は、ここで、何かがあるその時まで、一生を過ごしていかなければならないのだろう。私は......失敗したんだ。

 

「こんなはずじゃ......なかったのに......」

 

「私はただ......皆を幸せにしたかっただけなのに......いなくなった方が最善だって、思ったのに。」

 

 涙が溢れて出てくる。皆が何かを持ってくるといって部屋を出ていったから、この涙を見られることは多分ない。私がしたことは......結果的に、皆を私という価値のないものに縛り付けてしまって、不幸にして......本当に許されないことをやってしまった。

 

「イア、戻ってきたぞ。とりあえず今日は夜遅いから、一緒に寝よう。こういう時の為に、ベッドを大きくさせておいてよかったな。」

 

「キキキッ、朝起きた時が楽しみだ......あとで私以外も来るからな。」

 

 

 

 

 

「......もう二度と、手放さないぞ。イアに価値がないなんてこと、二度と言わせないように、徹底的に教えてやる......」

 

「......おやすみ。」

 

 

「..............おやすみなさい、マコト様。」

 

 ......ごめんなさい。

 

 

 

 

 


 

イア

 

 ゲヘナ学園2年生 万魔殿所属 161cm

 

 万魔殿議長のマコトのために頑張って働こうとしている2年生。マコトのことをとにかく信じている。

 本人の性格としてはあまり気が強い方ではなく、むしろ気が弱く自己肯定感もかなり低い方ではある。具体的に言えば「私が死んでもマコト様は気にしないだろう」レベル。

 

 本人の能力としては事務系はともかく戦闘能力としては正直頼りない。だがそれを抜きにしてもマコトからは信頼されており、他の人にも話さない秘密をイアには言うレベル。

というか万魔殿の全員から信頼されている。迷ったらとりあえずイアに話しとけって感じ。イロハからサボり場所に招待されるし、イブキとはよく遊んであげるし、サツキ&チアキともよく話す。

 

 万魔殿所属ではあるが割と風紀委員との関係も良好な方ではある。

 

 普段の言葉遣いは基本的に敬語。マコトからは「使わなくていい」と呼ばれているが、私なんかがマコト様を敬称以外で呼ぶなど不敬....だと思って敬語で呼んでいる。




 今回の話は色々と分岐点があります。

1.イア脱走成功√
2.イアが躊躇してしまい、イブキに捕まる√
3.脱走はしないが、代わりに自死をしようとする√

 ぱっと思いつくのはこのようなものです。よければ感想・高評価をくれると......ありがたいなぁ......って.....

 よかったら、教えて下さい。とりあえず、これで本編は多分完結で、あとはifルート扱いになります。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。