転生弟属性少年エルフ魔法剣士エフリーク   作:扉の無い門の守護者

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 チョコレートは曇らせ!



後悔

 

 

 

 あれ?ここどこ?暗い…。てか身体が動かないんだけど?あー、夢か…。なんかふわふわする。これは食中毒で死ぬ前と同じ感じだなぁ…。いや、あの時はすごく辛かったからこっちの方がまだ楽だわ。

 

 

『エフリークは何になりたい?』

 

 

 あなたのお世話が生き甲斐です!!原作ほどでは無いとはいえ、今もかなりのぐーたらでしょ?勇者ヒンメルと出会うまでにぐーたらを完璧に直して立派な勇者パーティにするからね…!

 

 

『エフリーク……逃げろ』

 

 

 …どういうこと?あれ?こんなこと言われたっけ?嫌だなぁ。こんなこと言われる場面とか絶対不吉じゃん。思い出さないでくれ…!頼むから…!

 

 

『あれは私がなんとかする。だから逃げるんだ。知ってるでしょ?私は強いんだ。』

 

 

 …一緒に逃げようよ。確かにフリーレン様は村で一番強いけどさ。まだ子供じゃん。

 ……そうだよ。フランメも逃げたら良いと言ってたじゃん。すぐに逃げよう。そうしよう。魔族から逃げるなんて出来ないことはないよ。

 

 

『エフリーク!!』

 

 

 大丈夫だよ。どうせ村人はみんな死ぬ。僕もね。だけどフリーレン様は替えがきかない。正史で魔王を殺すのは…フリーレン様…あなたなんだ。

 

 

 だから…泣かないでくれ。

 

 

 あぁ……死にたくないよ。

 

 

 

▼▼▼

 

 

 

「……ハッ!!」

 

 

 ここは…どこだ?森…?僕は…そう…魔族に殺されたはずだ。なぜ生きている。あり得ない。

 

 

 蘇生魔法か…?だがあり得ない。蘇生魔法は原作でも伝説としての存在はあるが、実物の魔導書が見つかったことは無かった。では何故?

 

 

 転生か…?いや、僕はエルフだ。身体に違和感がないから僕はエフリークのままだ。ぴちぴちの若い肌。可愛らしい顔。銀髪緑目のハイスペエルフだ。てか、右腕がある。

 

 

「お姉ちゃんはどこ…」

 

 

 そうだ…。フリーレン様はどこだ。確か魔族の襲撃があって村が滅びたんだ。原作ではフリーレン様は魔王軍の将軍を撃退してフランメに拾われる。だけど不安すぎる。僕がもし悪影響を与えていたら?原作よりも弱かったら?何らかの手違いで死んでしまっていたら?怖すぎる。

 

 

 とりあえず確認しないと…。死体が無ければまだ希望が持てる。人喰いの魔族に喰われているという可能性はあるが、確証には至らないからだ。僕は祈る。フリーレン様の死体が無いことを。

 

 

 そして、僕は走り出した。太陽が森の中を照らす。夜はもう明けていたらしい。祈る。祈る。祈る。

 

 

「はあっ…はあっ…はあ…ふう…」

 

 

 村に到着した。魔族はやはりいなかった。みんな死んだのだろう。目の前の大樹に巨大な鎧を見つける。これは…バザルトの鎧だ。ならフリーレン様が返り討ちにしたんだ!フリーレン様は生きてる!

 

 

 その、はずなのに、なんだ…これは…。村を花が覆い尽くしていた。色とりどりの花々が村を隠すように、村を労るように、咲き誇っていた。

 

 

 これは…フランメの『花畑を出す魔法』だ。だが何故だ?彼女は知らない人の埋葬なんかする性格じゃない。それにこの村から急いで離れたはずだ。彼女は魔族と正面から戦わないし、避けられる戦闘は可能な限り避けるために何でもする。

 

 

 それに、村の人が埋められているわけではない。みんな村中に倒れている。なら何故?こんな魔力痕が残る魔法を使った?

 そう思っていると、ふと、ある場所には花畑がないことに気づいた。それは村の大樹の近く。破壊痕が激しい場所だった。

 

 

 ここは…原作でフリーレン様が項垂れていた所だ。そして見つけた。…見つけてしまった。

 

 

「……うそだ…」

 

 

 そこには少し大きな石がひっそりと置かれていた。分かる。分かってしまう。これが何を意味しているのかなんて誰にでも分かる。これはまるで…!

 信じたくなかった。あまりの拒否反応に吐き気がしてきた。過呼吸になる。涙が溢れて止まらない。

 

 

 これは…墓だ。フリーレン様の墓だ。フリーレン様は……死んだんだ…。

 

 

 全てに納得がいった。フランメがやってきた時、フリーレン様が生きていたのかは分からないが、フリーレン様が死んだことで魔族の追っ手が無く、何にも急いでいないフランメが、弔ったんだ。

 …とりわけ若く、魔王軍の将軍を殺した将来有望な魔法使いを。

 

 

「ぁ…ぁあ…ああああああああああああ!!!」

 

 

 心が虚空になる。

 僕は…愚かだ。転生者だとか、原作知識だとか、くだらないことで馬鹿になって…天狗になって…本当に僕は救いようがない!本当に僕は…!

 

 

 …もう死のう。

 

 

 そうだ。僕は生きてちゃいけない。

 僕はそこらにあった石の破片で喉を掻っ切ろうとして━━━━

 

 

「…!!」

 

 

 ━━あることに思い至った。

 

 

 待てよ。僕まで死んだら一体誰が魔王を倒すんだ?勇者ヒンメルは強い。強いがフリーレン様無しで魔王を倒せるとは思わない。

 もしこのまま時が過ぎれば、魔王が倒されない。ヒンメルは勇者に成れない。物語が始まらない。

 

 

 フェルンは自殺し、シュタルクは拾われない。人類は存続するだろうが、2人には死んでほしくない。助けたい。

 は?フリーレン様を殺したお前が?無理だ。僕じゃ無理だ。もう心が折れた。僕じゃ誰も救えない。

 

 

 だから僕は━━━━━━━━殺そう。

 

 

 これは怒りだ。村を滅ぼした魔族への。そして、無能転生者エフリークへのだ。

 

 

 これは贖罪だ。村を見捨てた無能転生者エフリークの贖罪だ。フリーレン様への限りない追悼の表れだ。

 

 

 僕の全てを使って人類の平和を乱すありとあらゆる存在を殺そう。救うのではなく、殺すことで未来を良いものとしよう。

 

 

 魔王軍の将軍を

 

 七崩賢を

 

 魔王を

 

 

 殺し尽くす。

 

 

 

▼▼▼

 

 

 

「…は」

 

 

 目の前の女性が何を言っているのか理解できなかった。エフリークが…死んだ?裏の森に逃した弟が…?

 

 

「嘘だ」

 

「ほんとだ。周りの森には魔族が潜伏していた。私も何体か殺したが一体二体洩れていてもおかしくはない」

 

「嘘だ!」

 

「本当だ。よく聞け。お前の弟は死んだ。これはもう変わらない。そしてお前は私の弟子にする。ここで死なせるには勿体無い才能だ」

 

 

 何も頭に入ってこない。私のせいか…?私がちゃんと守らなかったからなのか?あの時は一杯一杯だった。森にまで探知を充てる余裕なんてなかった。

 

 

『おねえちゃーん!』

 

 

 弟はもういない。心に穴が空いたみたいだ。目の前が真っ暗になる。絶望から脱却しかけていた心が折れた。

 

 

「チッ…。しょうがねぇ。背負うぞ」

 

 

 上の空な私は目の前の女性に背負われそうになってあることを思い出した。

 

 

「待って!」

 

「ん?なんだ?何か言いたいことでもあるのか?」

 

「お墓…お墓を作りたいんだ」

 

「そんな時間は…まあいい」

 

 

 そう言って女性は瓦礫の方へと足を向けた。何かを探しているようだ。そうして30秒後、一つの石を持ってきた。

 

 

 私はそれがお墓のためのものだと気がついた。彼女はどうしてこんなに色々やってくれるのだろうか。彼女も誰か大切な人を失ったのだろうか。

 

 

「これくらいの石しかなかった。これで我慢してくれ」

 

「ありがとう。あと花を…エフリークは花がとても好きな子だったんだ」

 

「フッ、花か…。ちょうど良い。今やるのはちと危険だが…」

 

「なにするの?」

 

 

 女性は何かを行おうとしていた。危険と言っているがエフリークのために何かしてくれようといているのは分かる。

 魔力が練り上げられる。

 

 

「なに…ただ弔うだけだ。…『花畑を出す魔法』」

 

 

 それは地面に染み込み、花を咲かせる。私の周り以外を花が覆い尽くしていく。この女性は…最高の方法でエフリークを弔おうとしてくれているのだ。

 

 

 私では決してすることのできない…最高の弔いだ。

 

 

 花が村を覆い尽くす。美しい花弁の数々が風に吹かれ舞い散る。私はそこにエフリークの幻影を見た。

 

 

「…ありがとう。これでエフリークが悲しい思いをすることは無くなる…と思う」

 

「…そういう時は、嘘でも弟は死後を楽しく生きていけると思っておけば良いんだ。弟だって、姉が自分の死を引きずってずっと暗い顔だったら悲しいだろう?」

 

「…うん。そうだね」

 

 

 そうだ。エフリークはいつも私を気遣ってくれた。私のことを愛してくれていた。

 

 

「…泣くな。泣いてここを出たら後悔するぞ?」

 

「……知ってるよ」

 

 

 ありがとう、お母さん。ありがとうお父さん。ありがとう、集落のみんな。

 

 

 ありがとう、エフリーク。私は行くよ。また、いつか話そう。

 

 

 

▼▼▼

 

 

 

 エルフの集落のある森から少し離れたところに人口が千にもいかない一つの小さな町があった。名をヴァクストゥーム。

 

 

「あぁー、どっこいしょ」

 

 

 その町に1人の老人がいた。おいぼれの爺さんと町で言われている彼は毎日暇を持て余していた。椅子に座るのも一苦労だ。

 

 

「どっかに孫が落ちてねえかな…」

 

 

 それが彼の口癖だった。彼には子供がいないのに孫を望むとはかなりヤバいやつである。

 故に彼は町一番の変人の称号を欲しいがままにしていた。

 

 

「こんにちは」

 

 

 そんなアフター人生な彼にも転機が訪れる。1人の少年が彼を訪ねてきたのだ。

 彼のその異常性から、彼の元に町の人が、とりわけ子供が訪れることは皆無だったため、老人はかなり驚いた。

 

 

 そして、この少年を孫だと決めた。

 

 

「お?お前さんはワシの孫か?」

 

「……そうだよ」

 

 

 少年の名はエフリーク。心を壊した破壊衝動持ちの異常者だった。彼はある理由で町外れの家の老人を探していた。

 

 

「おぉ…そうか…ワシの息子は……そういえばおらんかったな…まあいい、おい孫よ。お主の名は何と言う?」

 

「僕の名前はエフリーク。率直で悪いけどさ、お爺ちゃんって魔法使いだよね?」

 

 

 そう、彼は魔法使いを探していた。この世界において最も重要な要素が魔法である。そして、魔法使いは基本、魔法を師や魔導書から教わるものだ。

 

 

 故に彼は魔法使いに魔法を乞おうと思ったのだ。

 

 

「お?エルフか…かわいいのお。ワシも昔はブイブイ言わせておったものじゃ。きっと…」

 

「…僕の名前はエフリーク。率直で悪いけどさ、お爺ちゃんって魔法使いだよね?」

 

「ワシは魔法使いではない。ただ魔法を知っているだけだ。ワシは魔法使いだった…?」

 

「そっか…お爺ちゃん。僕に魔法を教えてくれない?主に修行とか。どうやれば良いのかさっぱりでさ」

 

「おお、おお、かわいい孫よ。魔法を学ぶのか?なら教えてしんぜよう。じゃが一つ、約束して欲しいことがある」

 

「なに?」

 

「魔法を習っていることは誰にも言ってはならん。帝国がうるさいからのお。そして、ワシのことはお師匠と呼ぶのじゃ」

 

 

 ここは原作の1000年前。今は統一帝国が武で覇を唱える時代。魔法は魔族の技とされ、忌み嫌われてきた。

 しかし、人類の中にも魔法を使う者は多くいた。ゼーリエを筆頭とし、さまざまな魔法使いがいるのだ。

 

 

 エフリークは、フランメが両親から魔法を教わったという描写から魔法を扱う人類はそれなりにいたと言う予測をつけていた。

 

 

 そして、町からの情報で魔法使いらしき人がこの町にいることが分かり、今こうしてこの老人のところへやってきているというわけだ。

 

 

「ふたつじゃん…」

 

「ひとつはマナーじゃ。…約束は二つじゃった…?」

 

 

 晴れた陽気の昼下がり、2人は邂逅した。

 マナーもクソもない2人な気がするが、混沌にも秩序あり。1人は笑い、もう1人は目が死んだままニコニコしていた。

 

 

 





 これが物語の始まりだ!!
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