転生弟属性少年エルフ魔法剣士エフリーク 作:扉の無い門の守護者
登場するだけでお気に入り登録者を減らした女だ。面構えが違う。
「うーん、やっぱり固まっちゃうのね。人類の子供はなでなでが好きなはずなのに…」
「
乾いた破裂音が鳴り響く。
失敗した…。普通に魔族の言葉を聞いていた。魔族が話しているときはとりあえず奇襲しろと教わったのに…。
防御魔法が魔族を守っていた。さすがに今ので仕留めるのは無理か…。
まずいな。今の反応はかなり手慣れていた。身じろぎ一つなく防御魔法を展開するのは長く積んできた経験によるものか。
「酷いわね…。こんなに友好的なのに。仲良くなろうとか話を聞こうとか思わないの?」
「
風が斬撃となり、地面から10mほどの大剣が射出され、魔族……の前の魔力防護が爆発する。
やはり魔族の言葉は聞かないに限る。防御が硬いなら壊すまで…とりあえず、飽和攻撃だ。
「うーん、対話を放棄している。君はそんなことする子じゃなかったはずなのに……やはり敵対生命と思われてるのかな?大丈夫。私は君を攻撃したりなんてしないよ」
無傷の魔族がニコリと笑いかける。着ているヒラヒラした衣服も、長い髪も、その肌も、全くの影響が及んでいない。
やっぱり駄目か…。大魔族にもなれば傷を付けるのすら一苦労だ。原作でもソリテールを傷つけるには一苦労していたはずだ。あ、ソリテールも殺さなきゃ。
対策はなんだったか…たしか高密度の魔力の魔法を放つこと…だ!
「
「お?」
地上から大剣が射出されるが、大剣が当たる前に魔族が回避する。
だめだ。この魔法じゃ避けられる。遅すぎるんだ。
なら━━
「
雷が魔族を穿ち、激しい光と破裂音が鳴る。
ちゃんと当たった。これなら通るか!?
「夜に眩しい魔法を使う判断。実践経験の少なさ故の視野の狭さ。あと魔力が回復していないのに挑んでくる無謀。どれを取っても弱いね。簡単に背後を取れちゃったわ」
「!?」
外壁の上の、僕の背後にいつの間にか件の魔族がいた。
馬鹿な!ちゃんと当たってたはずだ!まずいまずいまずい!防御を━━━
「とりあえず、右腕貰うね?」
彼女の腕が歪む。いや、これは腕の周りの空間が歪んでいるんだ。その歪みは形を成し、鋭い刃物状になる。
そして、彼女の腕が僕の剣をもつ右腕を切らんとして右肩に到達し━━弾かれた。
「!? なに…これ?認識出来なかった。…いや、認識不能の魔法。これが一年間外界を断絶した"呪い"ね。それほど消耗していても使えるんだ。すごいね」
「!!
剣が光を放つ。僕は振り返り剣で背後を切り裂く。
何が起きたか良く分からないが九死に一生を得た。まさか間合いを詰められるなんて予想していなかった。
かの魔族は僕の剣をあっさりと避け、何かを放とうとしている。
どうする。このまま斬り込むか、間合いを取るか。いや、まだ相手の手札が分からない。今の空間を捻る魔法が彼女の固有魔法だと良いのだが、大魔族の彼女の魔法があんなものではないとも思う。
つまり!とりあえず間合いを取る!
「返すよ。
目の前の魔族が放った極大の雷が身体を貫く…その前に魔法が発散される。
これは…これが…
「…当たらない。これが…拒絶の魔法か」
「…すごい。本当にすごいよ。ここまで近づいてなお私には認識出来ない!魔法がかき消されて初めてその存在に気づくことが出来る! すさまじい"呪い"!」
…何故コイツはこんなに嬉しがってるんだ。気持ち悪い。原作の魔族とは何かが致命的に乖離している。これが…1000年前の魔族。
「私は嬉しいよエフリーク君。美味しそうだよエフリーク君。あなたの脳はどんな味がするのかな?」
▼▼▼
壁上が眩い光に包まれる。何かが炸裂する音。崩れる壁の一部。
「!!
四つの輝く十字光線が角の生えた人影に向かって放たれる。
人影は防御魔法を展開し、魔法をいなす。背後の石畳が吹き飛ぶ。
後退する少年。追う魔族。
「あはははは!次は〜、
「黙れ!
「だから効かないよー。そんな見え見えの魔法なんて。
外壁の石が鋼鉄の針となる。それらは僕を突き刺そうとするように下から、横から生えてくる。
だが足場が無くなるほどの針地獄に僕は貫かれることはなく、全ての針が僕に近づくと停止する。
「やっぱりすごい"呪い"だよ。その魔法は。理不尽なまでに強い。君がコントロールできないのが難点だけど防御に関してはどの魔法よりも頭一つ抜けている」
「お褒めに預かりどうも!」
魔法が全然直撃しない。どんなに速い魔法でもとんでもない反射速度で防御してくる。
近接にするべきか?けど相手に近づくのはリスクが高すぎる。
だからなんだ。これが続くとジリ貧だ。魔力量でこちらが負ける。
剣に魔法を込めて、相手に直接ぶち込む。もうこれしかない。
「ふぅ…
「またそれ?ああ、私は知ってるよ。他にも色々剣に纏わせてみたんだよね。けど炎も、雷も、氷も、危険だったからやめたんだよね。成功例は触れなければ害のない光と、切れ味が良くなる風だよねぇ」
「…お前。見てたのか…!今までずっと!」
僕の手札がバレている。意味が分からない。つまりあの魔族は今まで僕をずっと観察していたことになる。ストーカーみたいなことしやがって…!
「うん。今回のターゲットは君だからさ」
「は?ターゲット?」
「そう、私はこの子食べたいなっていう運命の食材と出会ったら、絶対食べようって決めてるの。こういうのは時期が大事だからね」
「…気持ち悪い。本当にキモい。マジでなんなんだよお前!」
「私?私はフェレライよ。覚えていってね」
「……」
「? 私は美食家でね、まず食べようと思った人間をよく観察するの。美味しい所を探すためだよ。頭が良い子は脳が美味しい気がするし、よく運動する子は筋肉が美味しいと感じる。魔力の高い子は肉質が良い気がするの」
…なんでコイツが原作の魔族と違うと思ったのか良く分かった。コイツは魔法よりも、殺人よりも、圧倒的に食事に関心が向いている。
永くを生きた大魔族だからか、それともコイツという個がおかしいのか。ゾッとする。
「殺したあとの一番新鮮な時に一番美味しい所を食べる。なんて素晴らしいのかしら。いつもは観察から一日、長くても一年の間に食べちゃうんだけど…。ゲハイムニスがいたからね。私はあの爺が怖いから二年も待ってたのに…干渉不可の魔法のせいで三年もかかっちゃった」
は?なんでここでお師匠の名が出るんだ?それにお師匠が怖い?何言ってんだコイツ。
「どういう…ことだ。お前はお師匠と知り合いなのか?」
「…そうだよ。友達だったんだけど、喧嘩別れしてね。どうにか謝罪しないとって━━」
「あぁ、もういい。聞くに絶えない雑音だった」
「酷いなあ」
くそ…人間の擬態が上手い。言葉を聞かないはずだったのに気がつけば聞いている。思考が人間離れしていることは分かっているが、言葉選びが絶妙に上手いのに加えて感情の発露が人間と然程変わらないと僕は感じてしまっている。
「聞きたくないの?ゲハイムニスの経歴。私知ってるよ?君は知らないみたいだけどね」
「もういい死ね」
光輝く剣を構える。『高速で動く魔法』による超加速で魔族との距離を詰め、剣を思いっきり振るう。
剣は魔族の防御魔法に当たり、防御魔法にヒビが入る。
「らァァァァァァァ!!」
「隙だらけ。けど反撃しようにも魔法が全然効かないんだよねぇ」
鋼鉄の針が僕に迫るが、やはり僕には当たらない。お互い負傷しない戦い。あまりにも異常だ。
魔族は少し気だるげな表情になり始めていた。腹が立って仕方がない。コイツが僕の魔法と、僕の肉体にしか興味がないのが伝わってくる。
僕という意思はその目には介在していないのだ。
「はあ…もういいや。ならやり方を変えよう」
「…!」
魔族の雰囲気が変わった。まるで拗ねた子供のようなイライラが伝わってくる。本当の感情なのかは読み取れない。
「自殺して。そうしないと町を滅ぼすよ?」
「…っ!?」
魔族の口からはよだれが垂れていた。
「私ね、エルフが好きなの。それでエフリーク君は頭も良いし、たくさん運動するし、魔力量は良く分からないけど多分多いから…とっても美味しいと思うの」
「…は…あぁ?気持ち悪いこと言うな!」
「私さあ、もう三年もお預け喰らってるの。君がどれだけ私を魅了したのか分かってる?それなのにまだ君を食べれていない。お腹すいたなあ。早く食べさせてよ。じゃないと町の子供を食べるよー?」
「…!!」
まずい。状況が変わった。彼女のターゲットが僕から町に向いたら僕では止められない。
どうする。どうすれば良い!言葉通り死ねば良いのか?だがコイツが町を襲わないという保証はないし、何より僕には誓ったことがある。何を犠牲にしてでも成し遂げなければならない誓いが。
なら逃げるか?…それこそあり得ない。大きな恩があるのに加えて、お師匠との思い出が詰まった町だ。死んでも守り切る。
なら、どうにか撃退しなければならない。
僕の全身全霊を賭けて。
「…ぼくは死なないし、町は襲わせない。代わりに…僕の全身全霊を持って、お前を殺す!!」
▼▼▼
雰囲気が変わった。今の言葉で何か激励されたのかな?
エフリーク君の周りに魔法が展開される。
好きだね、その魔法。早い、射程が長い、攻撃範囲が小さいだけの魔法なのに…。やっぱり町に被害が出ないようにしてるのかな?
「えー、じゃあ町を滅ぼします。それで良い?」
「死ね!」
目の前の少年が消えると同時に展開された魔法が飛んでくる。
最初と比べて随分速くなってるなぁ。けどその程度じゃあ全然駄目だね。
「
私の周りを地面から生えた鋼鉄の針が囲い、魔法の十字光線を撃退する。
さあ、どこから来る………あれ?エフリーク君全然来ないな。どこに━━いや、上か。
十時光線が私の防御魔法に直撃する。なかなか頭が使えるようになってきたね。魔族からしたら3次元機動の戦いは珍しくないけど、人類にはまだ早いからね。
けどそれだけか。弱い。弱すぎるよエフリーク君!せめて私の防御魔法を破壊できれば勝敗は分からなかったよ。けど圧倒的に足りてない。
君は頑張ったよ。私には通じないけどこうして防御魔法が展開されていない後ろから奇襲を企てている。
たしかに私は君の魔力を探知できない。けど、その剣に纏わりついてる魔力は辿れるんだよ。
「残念!━━あら?」
「魔法剣の弱点にはとっくに気づいてんだよ!バーカ!!」
後ろには先ほどエフリーク君が使っていた剣が放り投げられていた。魔力反応の正体はこれだ。なら…
━下から!?鋼鉄を斬ったの?すごいよエフリーク君!
そして下から現れた二本目の剣は眩い光を宿しながら私の脇腹を貫き、炸裂した。
▼▼▼
「はあっ…はあっ…はあっ…はあっ…ざまーみろ魔族が!!」
ギリギリだった。あの魔族が油断しまくっていた所を予想外の一撃で叩いたのだ。それでもなお当たる確率は運頼みだった。
だがまだ生きている。脇腹を刺し、体内で魔法を炸裂させたが、吹き飛んでいった方向から魔力の反応がある。
ソレは月の光に照らされながら壁の上の道の、僕よりも向こう側にいた。身につけていたヒラヒラした服は左脇腹のあたりが吹き飛んでいる。
「チッ!まだ立てるのかよ…」
「すごかったよエフリーク君。私一瞬焦っちゃった。まさか雷を纏わせるなんて…」
そうなのだ。今の僕ならどんなに危険な魔法でも影響を受けない。だから破滅の雷を付与してみた。危険なものほど威力が高いから当たり前の話しだが。
前述の通り、僕はかなりの威力の魔法を使ったはずだ。魔力もたくさん込めたし、かの肉体も切り裂いた。
だが何故こうもピンピンしているのか。
「あまり大事にしたくはないのだけれど、また一歩成長した君に敬意を払って私の"魔法"を見せてあげる」
「…くそ!」
何かヤバいものを放とうとしているのが分かる。早く殺そうと『高速で動く魔法』を発動し、彼女に全力で距離を詰める。剣に雷を纏わせる。
「人類の英雄。追放されし魔法使いゲハイムニスの弟子、エフリークに捧ぐ」
「…間に合わない!」
彼女が無秩序にばら撒いた鋼鉄の棘が最短経路の邪魔をする。『高速で動く魔法』は障害物に弱いのだ。
『
三つの十字光線が放物線を描くように魔族に殺到する。
「さようなら。
そして、世界は、町は、揺らめく炎に包まれた。
今更だけど
アンケート
・孤独:繁栄の魔法の章 時間は連続
・クラフト:聖典の魔法の章 500年後
・大魔族:服従の魔法の章 500年後
にします。
いつか(すぐ)来るエフリークの旅路について
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一人孤独に旅しろや!!
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あれは…クラフト!クラフト様じゃないか!
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大魔族!大魔族!大魔族!大魔族!