転生弟属性少年エルフ魔法剣士エフリーク   作:扉の無い門の守護者

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【炎上都市】

 

 

 

『ワシはすごい魔法使いなんじゃ』

 

 

 あえ?お師匠?なんで……いや、夢かぁ。うわ、じゃあ魔族の魔法で気を失ったのか!やばい、早く起きないと!

 

 

『はいはい。すごいですね』

 

『信じておらんな?これでもワシは魔王軍の将軍を………そう!20体は蹴散らしておるのじゃ!』

 

『絶対嘘じゃん…』

 

 

 あー、この時の夢か。この時は全く信じなかったが、今なら本当かもと信じるかもしれない。

 フェレライが言っていた。『人類の英雄。追放されし魔法使いゲハイムニス』と。さすがにあれが嘘だと思いにくい。

 

 

 魔族は魔法に異常に拘る魔法生命だ。おそらく自身の魔法を使う時はあのような口上を述べているのだろう。

 

 

『ワシも50年前は帝国に隠れてブイブイしておったわ』

 

『隠れてたらブイブイじゃないだろ』

 

『パーティにも入ったのお。ワシよりも20歳は年下じゃったから居心地が悪かったが、今こうして思い返せばそれなりに楽しかったんじゃ。その何倍も辛かったが…』

 

『認知症もここに極まれりだな』

 

 

 魔法が認められていない統一帝国時代にパーティ組んでたとかなんの冗談だよ。お師匠のパーティメンバーは時代の最先端を駆け抜けてたんだなぁと今なら分かる。

 

 

『みんな、ワシなんかよりも出来た奴らじゃったよ…』

 

『??』

 

『エフリークよ。『大魔族一覧』は見たな?そこに描かれていないが、火を使う大魔族と接敵したならすぐに逃げよ。お前では勝てん』

 

 

 …そうだ。お師匠は火を使う大魔族について何か言及していた。ここの記憶はあまり記憶していないのが悔やまれる。

 

 

 おそらく何かがあったのだろう。お師匠は苦い顔をしていた。

 僕は少し不安になる。長い年月を生きた魔法使いが極度に警戒する相手だ。そして、おそらく僕が今敵対している魔族の可能性が高い。

 

 

『ワシらは昔依頼を受けた。当時帝国を騒がせた【巨竜】の捜索・討伐の依頼じゃ。ヤツは火を吹く巨大な紅竜でな。いくつもの町や都市を破壊し、甚大な被害が出ておった。じゃがな、その影に隠れて都市を襲ったナニカがおった』

 

『ナニカって、なんで影に隠れて都市を襲ったヤツがいるって分かったの?』

 

 

 この時の僕はどうせ嘘だろうとおとぎ話を聞く気持ちでこの話をふんふんと聞いていて、設定ミスっぽい点は指摘するウザいやつになっていた。

 

 

『襲われた都市はな、2パターンの崩れ方をしておったのだ。局所的に焼けこげ、巨大な鉤爪で破壊された跡のある都市、ほぼ全てが灰燼に化していた都市。ワシらは途中で気付いたのだ。都市を襲っているのは巨竜の他にもいる、とな』

 

『ほー、ミステリーは好きだよ』

 

『巨竜を討伐した後被害は無くなったが、ワシはずっと疑っておった。その時は色々ごたついておったから探すことが出来ず、その後はこの町で隠居しとったからもう分からんがな』

 

『…なんだ。結局分からなかったのか…』

 

『……じゃがおそらく魔族じゃ。それも狡猾で永い時を生きた大魔族じゃ。ワシが手がかりを掴めなくてもしょうがないのじゃ!』

 

『わ、分かったよ。ごめんごめん』

 

 

 くそ…フェレライらしき存在のヤバさしか伝わってこない。彼女の弱点みたいなのは無いのか?

 いや、さすがに無いか。それはさすがに都合が良すぎる。

 

 

『ワシらは都市を襲ったナニカと言うのは不便じゃったからその存在をこう呼称しておった。【炎上都市】とな』

 

『いやダサ……』

 

 

 

▼▼▼

 

 

 

 …ハッ!!

 

 

 やばい。気を失ってた。フェレライはどこだ。今の状況…は……

 

 

 衝撃。

 

 

 あり得ない。いや、あり得ないなんてあり得ないんだ。これが……魔族の魔法か…。

 だが僕は目の前の光景が信じられなかった。信じることなどできるわけがなかった。

 目の前に広がる赤、赤、赤。

 

 

「町が…燃えてる…」

 

「あら?起きたの?直撃を受けて生きてるだけでなく随分早く目覚めるのね」

 

「…フェレライ!!」

 

 

 町が業火に晒されていた。家が燃え、壁が燃え、英雄の銅像すら溶けている。町の住人の生存は…絶望的だ。

 

 

「おや、意外と冷静ね?私、もっと君が喚くのかと思っちゃった」

 

「〜〜ッ!………ふぅ……傷は付けることが出来た。もっと上手くやれば……殺せる」

 

「本当に冷静だね。まだやるの?」

 

 

 間違えるな。今やるべきことは一刻も早くコイツを殺すことだ。最短で殺して、生存者を探す。

 殺して救う。それが今の僕にできる最善の行動。

 

 

 抑えろ。この鼓動を抑えろ。焦りを悟られるな。冷静になれ。僕は強い。フェレライに勝てるほどに強い。傷は付けられる。ならあとは死ぬまで斬るだけだ。

 

 

「…大丈夫。今度はもっと上手く斬る」

 

「はぁ…魔族狩りの魔法使いが来る前に早く食べたいんだけどなぁ。さすがに時間をかけ過ぎてる」

 

 

 僕の最大の武器はなんだ。魔法、剣、肉体、そして"呪い"!

 僕なら出来る。出来ないわけがない。僕の…魔法だ。

 

 

「振動を業火に変える魔法(ヴォルグランベル)」

 

 

 彼の周りに炎が燃え始めた。だが彼はまだ燃えていない。ジリジリと炎が彼を覆い尽くしていく。

 

 

 "お師匠…どうか見ていてください"

 

 

 そして僕はその名を叫ぶ。

 

 

「全てを拒絶する魔法(ノグジェクト)!」

 

 

 その時、壁の上の燃え盛る石畳の、特に損傷の激しい道の炎が吹き飛んだ。

 

 

 

▼▼▼

 

 

 

「いや、これはちょっと予想外かな」

 

 

 エフリーク君が魔法の名を口にした瞬間、炎がかき消された。魔族である私が作り出した魔法の炎はどんな状況下でも消えることはない。水をかけようとも、風を起こそうとも、決して消えることのない炎なのだ。

 

 

 やはり"呪い"ね。自分に向けられた攻撃以外も消すことができるのか。これは拙いな。弱火で使ったとはいえ私の生まれ持った"魔法"をいとも簡単にかき消されるのは堪えちゃうね。

 

 

「けど、エフリーク君の魔力はそろそろ尽きるんじゃない?」

 

「尽きない!!」

 

 

 そう言ってエフリーク君は消えた。

 !? 速い。先ほどの加速も速かったが、今のはさらに加速している。

 

 

「破滅の雷を纏わせる魔法(ジュドラジス)!!」

 

「!?」

 

 

 防御魔法が破壊された。高威力の魔法を付与した剣戟は危険ね。

 少しまずいな。あちらの攻撃が通るようになり始めているのに比べて、こちらの魔法が届かない。

 

 

 だけど、対策はある。

 

 

「振動を業火に変える魔法(ヴォルグランベル)」

 

「熱っ…!」

 

 

 彼の"呪い"では私の"魔法"を相殺できない。威力を上げれば燃やせる。

 

 

 火力を間違えないように、焦げが付かないようにしないと。

 

 

「裁きの光を纏わせる魔法(カタストラーヴォール)!!」

 

「くっ!?」

 

 

 それにしても速い。彼の行ういくつかの動きは人類にできる芸当ではないはず。どういう仕組みなの?

 …いや、そうか。かの"呪い"は物理法則すらも拒絶しているのか。それなら納得する。

 

 

 わざわざ技名を言っているのに気付いた時には斬られている。傷は付かないけど少し焦るなぁ。こんなに戦いの中で進化するのは魔族では出来ないことだ。

 人類には稀にいるんだよね。ものすごい成長を見せつけてくる化け物が。

 

 

 …とりあえず町に逃げて、人質を探さないと。綺麗に食べられてくれるように。

 

 

「止まれ、町にもっと強い火をつけ━━━がっ!?」

 

「いまさらぁぁ!!」

 

 

 腕を少し斬られた。欠損するほどではないがここで本格的に焦る。離脱しなければ…!

 

 

「振動を業火に変える魔法(ヴォルグランベル)!」

 

「チィ!!」

 

 

 そして、壁上の道から飛び降りる。町は弱火で焼いているから建物に生存者はいるはず。それを使おう。

 

 

「待てぇぇぇえええええ!!!」

 

「もう…しつこいなぁ!」

 

 

 エフリーク君も飛び降りていた。人類は飛行魔法が使えない。なのに飛び降りるだなんて正気ではない。

 

 

 私は彼を引き離すために地上から10mほどの高さで水平に旋回し、町に侵入する。

 

 

 出来るだけ彼と親しい者を選ばなきゃ。

 

 

「とりあえず、虱潰しに建物を覗こう」

 

「裁きの光を放つ魔法(カタストラーヴィア)!!」

 

 

 巨大な十字光線が飛んでくる。それを緩やかな動きで避ける。彼は焦っているようだ。狙い通り。

 戦闘において感情とは不要の産物。これこそが人類の弱点。エルフである彼にも人並みの感情はあるようだ。

 

 

 だがそうして飛行していると何か真上からの衝撃で地面に叩きつけられた。

 大地の大剣を放つ魔法(グランソーン)だ。先ほどの魔法はこれを隠すためのものか。

 

 

 戦い方が上手くなっている。もはや別人と呼べるほどだ。

 

 

「もう!まだ魔力は尽きないの!?幼い人類が保有する魔力量はとっくに使い終わっているはずなのに!」

 

「獲った!」

 

「なっ!?」

 

 

 振り向くと光輝く剣が首に迫っていた。だが魔族の反応速度はこの危機を覆す。

 空間を歪曲させる魔法(ヴィルペセラ)で首回りを覆う。剣は歪みに弾かれた。

 

 

 だが今の攻撃は彼女の狩人(ハンター)としてのプライドを傷つけた。

 この私が、獲物に首を掻かれかけた…?劣等種で、獲物で、食材のエルフに?

 

 

 生まれて100年も経っていないエルフに…?

 

 

「屈辱。だけど、久しぶりに高揚してきたよ…!狩りの記憶が蘇ってくるよ!!」

 

「全てを拒絶する魔法(ノグジェクト)」

 

「がっ!?」

 

 

 巨大な圧力に吹き飛ばされる。馬鹿な。先ほどまで"呪い"を扱うことすら出来なかったのに!

 

 相(・)手(・)の気配は不気味なほどに静かだ。気配が、認識が、魔力量が、小さくなるほどに彼は強くなっている。

 

 

 …いや、違う。認(・)識(・)出(・)来(・)な(・)く(・)な(・)っ(・)て(・)い(・)る(・)。何故か、拒絶の魔法の出力が上がっているんだ。私が"魔法"を使ってから彼の"呪い"は大きくなった。操れるようになった。

 

 

「まずい…」

 

「裁きの光を纏わせる魔法(カタストラーヴォール)!」

 

 

 ここに至るまで彼に一度も傷を付けられていない。魔力が無くなるのを待つつもりだったけど、魔力量が最初見た量だとは到底考えられない。

 

 

 初めに見た魔力量は認識を拒絶する許容量を超えた残り滓だったのでは…?

 

 

「空間を歪曲させる魔法(ヴィルペセラ)」

 

 

 これ以上の進化は許容できない。彼はもう獲物ではない。彼はここで仕留める。

 

 

 少しだけでも食べられる部位が残ることを女神ではないナニカに祈る。

 

 

「振動を業火に変える魔法(ヴォルグランベル)」

 

 

 "魔法"の全力行使。範囲を絞り、"呪い"の許容を許さないほどの威力で彼を燃やす。

 

 

 彼の周りの見えない壁を突き破り、彼は炎に包まれた。

 

 

 そして━━━

 

 

「ぐっ!?」

 

 

 ━━━私の左腕が切り飛ばされた。

 

 

 

 

 

いつか(すぐ)来るエフリークの旅路について

  • 一人孤独に旅しろや!!
  • あれは…クラフト!クラフト様じゃないか!
  • 大魔族!大魔族!大魔族!大魔族!
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