陰キャな私のバンドライフ   作:ハナルーナ

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14話 推しとのイベントスチルが現実で起こるなんて普通思うだろうか。いや、思わない。

 

 みなさんは、マ◯カで好きなコースは何ですか?ちなみに私はクッパキャッスルが好きです。個人的に妨害とかしやすいので。

 はい、そんなどうでもいい話でした〜。

 

 とまぁそんな話は置いておいて。

 

 現在私と岸峰さんは、星川さんとリラさんが演劇部室に行っている間に衣装について話し合っています。

 ……いや、話し合っていたと過去形で言った方がいいですね。

 

「ねぇねぇ、次はどこにする?」

 

 そんな私たちの邪魔をするかのように現れたこの人、虎門(こもん)くいなさん。話を聞くところによると、岸峰さんの友達だそうです。

 というか、岸峰さん、友達いたんですね。

 

「失礼なやつだな」

 

「だってあなた、星川さんを追いかける事に夢中で、周りに誰かいるところを見た事ないんですから」

 

 そのせいで、自分と同類なのかなと少し思った事があるのは秘密にしておきましょう。

 

「それにしても伊月へたっぴだね〜。3回連続最下位は流石にひどいよ?」

 

「普段からそんなにゲームやらないからな」

 

「そっか〜。伊月って暇があれば星川さんばっかりみてるもんね〜!そりゃ下手にもなるか!」

 

「一言余計だ」

 

「逆に花村さんは上手だね〜。あまり友達もいなさそうだし、ゲームばっかりしてたのかな?」

 

「ま、まぁ、そうですね。あはは………」

 

 うん、なるほど。この人、いろいろと一言余計ですね。考え無しなのか何なのか、失言が多いな……。

 あの岸峰さん相手にナチュラルに煽れるとは………。この人、出来るっ!

 

「まったく……」

 

 と岸峰さんがため息をつく。

 

「今は大事な打ち合わせ中なんだけど」

 

 そう。私たちは大事な衣装(星川さんに似合うものを岸峰さんが延々と語っているだけ)の打ち合わせ中だったのだ。

 私的にはこれ以上聞くのに疲れてきたから、中断してもらって少し助かったが。

 

「いやさ〜。剣道部の朝練あると思って早めに学校来たんだけど、今日無かったの忘れてて〜」

 

 次のコースを選択しながら、虎門さんは話を続ける。

 

「それでA組を覗いてみたら伊月がいてねー。ちょうどゲーム機持ってたから、ホームルーム始まるまで一緒に時間潰そうかなって」

 

「なるほどね……。でも今大事な(ルルナ様の)衣装決め中だからさ」

 

「え〜?でもこっちだって大事なんだよ〜!だって私5話から一回も出てないから、読者から忘れられそうなんだよ!」

 

「出番少ないのは悪かったが落ち着け!」

 

 メタい事を叫びながらジタバタする虎門さん。もはやこの小説でメタネタが鉄板になってきつつあるのは大目にみてください。

 

 

「それで、本当は何の用なんだ?」

 

「あ、やっぱり気付いてた?」

 

 ふとそんな事を聞く岸峰さん。それに反応して虎門さんはゲーム機をしまう。

 そして、虎門さんの表情が急に真剣なものになる。

 

「最近の伊月、楽しそうだなって思ってね」

 

「え? そう?」

 

「うん。やっぱり星川さんと一緒にバンド活動出来るようになって、嬉しいのかなって」

 

「……まあね」

 

 虎門さんにそう問われる岸峰さんは、顔を伏せて肯定する。

 私だって、岸峰さんが憧れの星川さんと一緒にバンドを組めたのは、彼女にとってどれほど嬉しい事なのかは容易に想像できる。

 

 以前、私は岸峰さんにこんな質問を投げかけた事がある。

 

 「それにしても、よくそこまで星川さんを愛せますね。いつから推してるんですか?」

 

 それに対し、岸峰さんは、

 

「中学3年の頃からだから、一年ほど前だな」

 

「あれ?思ってたより最近………」

 

 岸峰さんほどの信者なら、てっきりデビューした頃から知ってるのかと………

 

「歴なんて関係ねぇよ。好きな気持ちがあれば古参だろうが新参だろうが一緒だよ」

 

 そう言う岸峰さんの顔は照れ臭そうだったが、どこか楽しそうだった。

 

「なんか、いいこと言いますね」

 

「それが私の幸せだからな。昔は遠くから見ていた推しが今は一緒にバンドするような関係になって、今が人生のピークなんじゃないかって思ってるよ」

 

 そう言う岸峰さんを見て、私は少しだけ羨ましく思った。

 

 陰の者とはいえ、周りと足並みを揃えるほどには生きてきた自信はある。けど、私は心から、今この瞬間が幸せと思った事は無いかもしれない。

 高校に入って知り合いも増えて、毎日が充実してると思ってた。でも、心のどこかでそれを否定している。私には、こんな日常は似合わないと思っているから。

 

 だけど、それを私は嫌だとは思わない。

 これからも私が陰キャとして確立していくために。

 

 だからこそ、今が楽しそうな岸峰さんは、私とは違う人間なのだと改めて実感した。

 好きなものを全力で好きと言える岸峰さんは、それだけで凄いと思ったのだ。

 

「でもさ、本当にそれだけ?」

 

 そんな中、虎門さんがふいにそう聞いてくる。

 

「え? いや、それだけだけど……」

 

「……ふーん」

 

 その岸峰さんの返答に対して、虎門さんは何か言いたげだ。しかしそれ以上は何も言ってこなかった。

 

「ま、いっか! それよりさ、ちょっと伊月に渡したいものがあるんだけど」

 

「渡したいもの?」

 

「うん。これ」

 

 岸峰さんがそう言って鞄の中から取り出したのは、2枚の紙だった。

 

「これは?」

 

「遊園地のチケットだよ。仲良くなった花咲川の剣道部の人がくれてさ〜。ほら、この前話したモデルしてるって人」

 

「ああ、この前言ってたような……」

 

「仕事仲間の人にもらったみたいなんだけど、余ったからってくれたんだよね」

 

 岸峰さんと虎門さんが話しているのを、私は離れたところで聞いている。

 遊園地か。もう何年も行ってないな……。まあ、別に今でも行きたいとは思わないが……。

 

 そんな事を考えていると、ふと虎門さんと目が合う。すると虎門さんは私に向けて満面の笑みを浮かべた。何?なんか嫌な予感がする……。

 そして、虎門さんは岸峰さんにある提案をした。

 

「ねえ伊月」

 

「何?」

 

「今度の週末、星川さんと一緒に行ってきたら?遊園地」

 

「……へ?」

 

 虎門さんの言葉に岸峰さんは目を丸くする。

 

「せっかくチケットあげたんだし、どうせなら使わないと!」

 

「なっ、い、いや………ま、まあそうだけど……」

 

 虎門さんの発言に戸惑う岸峰さん。

 そりゃ、急に推しと一緒に出かけてこいと言われたら、全オタクは夢だと思うよな。そんなイベントスチル、人生で発生するかどうかすら未知数なものだし。

 

 そんな事を考えていたら、戸惑っている岸峰さんの視界に私が入るや否や、彼女が全速力で私の方に駆け寄ってきた。

 

「あ、ほら!杏、一緒に行きたいよな?」

 

「え?あ、いや、私は……」

 

 私が発言しようとしているところに、虎門さんが急に肩を組んできた。

 

「いやー、実は今週末は花村さんと一緒に遊ぶ約束してるんだよね〜!」

 

「えっ!?」

 

 いや、初耳なんですが!?しかも今日初めて会ったばかりですよね!?この人も陽キャすぎて怖いんですけど!!

 

「ねっ!花村さん!」

 

 虎門さんは笑顔でそう言う。そんな虎門さんの顔を見て、私はハッとした。

 

 その笑顔からは、どことなく何か“悩んでいる”ように見えたから。

 

 隠キャの私にはこの提案を断る勇気はなく、とりあえず話を合わせる事にした。

 

「そ、そうですね……」

 

「………マジで?」

 

「うん!だから私達の事は気にせず2人で楽しんで来てよ!」

 

「で、でも……」

 

 まだ何か言いたそうな岸峰さんだが、それを遮るように虎門さんが続けて言う。

 

「もしかして……星川さんと2人だけで行くのって、嫌?」

 

「ちがっ!!そうじゃなくて……」

 

 慌てて否定する岸峰さん。しかし彼女の顔は赤くなっているのが見えた。

 ……あれ?もしかしなくてもこれ、また面倒なことに巻き込まれそうな予感。

 

「じゃあ決まりだね!まずは誘うところからだよ!頑張ってね伊月!」

 

「えっ!ちょ、くいな!」

 

 そのまま岸峰さんを置いて去ろうとする虎門さん。しかし彼女は私の横を通り過ぎる時に、小さい声でこんな事を呟いた。

 

「巻き込んじゃってごめんね、花村さんっ」

 

 そして彼女は走り去ってしまった。

 

「…………」

 

 残された岸峰さんと私は、無言のまま立ち尽くしていた。

 

「……ど、どうすればいいんだろ……」

 

「……さあ……」

 

 気まずい空気が流れ始める教室。すると突然ガラッと扉が開いた。

 

「ただいまー、伊月、花村さん!」

 

「ただいま戻りマシタ!」

 

 タイミングが良いのか悪いのか、星川さんとリラさんが帰ってきました。2人が帰ってきたとはいえ、依然として微妙な空気が漂っている始末。

 

「アレ?お2人とも、どうしマシタか?」

 

 このまま黙っているわけにもいかないし、岸峰さんはどうしていいのか分からないようだし。仕方ないので、私の方からこの件について聞いてみる事にしましょうか。

 

「……あの」

 

「ねぇ伊月!」

 

 私の言葉を遮るように、星川さんが声を上げた。

 

「は、はい!」

 

「今度、一緒に遊びに行かない?」

 

「うぇぇえ!?」

 

 なんでこうもタイミング悪いのか。いや、この場合はタイミングが良いのか?

 

「あれ?それ何持ってるの?」

 

「あ、いや………これは……………」

 

 流石は陽キャ。岸峰さんが持っているチケットにすかさず反応しました。察する力は人一倍ですね。私の気持ちには気づかないくせにっ!

 なんかめんどくさい彼女みたいになってしまいましたが、断じてその気は無いので皆さんは勘違いしないでくださいね。

 

「遊園地のチケット?」

 

 もうここまでバレてしまっては隠すわけにもいかず、岸峰さんは観念したように話し始めた。

 

「えっと………友達にもらったんです。あの…………よかったら、一緒に行きますか?」

 

 やはりオタクにとって推しをお出かけに誘うのは相当な勇気がいるのだろう。岸峰さんの口調はどこかぎこちなく感じる。

 しかし星川さんの方を見ると、岸峰さんの緊張とは裏腹に満面の笑みを浮かべていた。

 

「遊園地!?私大好きなんだ!行こ行こっ‼︎」

 

「そ、そうですか!よかった!」

 

 嬉しそうにしている星川さんを見て岸峰さんの顔は更に赤くなっていた。良かったですね、岸峰さん。

 

「いやー、まずは第一段階成功だね」

 

「虎門さん!?」

 

私の背後に、いつの間にか虎門さんが立っていました。あなた帰ったはずでは?

 

「まったくケハイを感じませんデシタ。もしやニンジャデスか!?」

 

 あのリラさんでさえ気配を感じないとは。もしかしたらこの人、相当手強いかもしれない(?)

 

「さて、実は花村さんとリラさんに一つお願いしたい事があるんだけど」

 

 虎門さんは岸峰さんと星川さんに聞こえないように、こっそり私とリラさんの耳に近づいて言いました。

 

「今週末、空いてる?」

 

 

ーーーーーーーーーー

 

ーーーーー

 

ーー

 

 

 そんなこんなで、やってきました日曜日。

 お話の中だと日が経つのが早いですね。もう慣れました。

 

「おはよう‼︎」

 

「お、おおおおおおおおおおはようございます………!」

 

 駅前で待ち合わせをした星川さんと岸峰さん。今日は他のメンバーはおらず、2人きりである。

 

「じゃあ、さっそく遊園地に行こっか!」

 

「は、はい!」

 

 岸峰さんは開幕から緊張MAXだが、2人は並んで遊園地に向うのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そんな2人に気づかれないように、後ろで見ている人影があった。

 

「どう?」

 

「今ゴウリュウしたみたいデスね!」

 

「何で休日に尾行なんて………」

 

 無論、それはリラさんと虎門さん。そして嫌々連れてこられた私だ。

 

 さて、どうしてこんな事になったのかというと………

 

「伊月って、星川さんに対して少し距離があるじゃない?せっかく友達になったんだし、もっと仲良くなってほしいんだよね!」

 

 と、虎門さんが提案したからである。

 しかし………

 

「なんで私まで一緒に行かないといけないんですか?」

 

「それは、この件に関して花村さんも関係あるからだよ」

 

「なんでですか……」

 

「ほら、伊月と星川さんが話すきっかけになったのって花村さんが原因でしょ?」

 

「あの時は私が原因というより、私を連れ去った岸峰さんに原因があると思うのですが?」

 

 分からない人は4話を読んでねっ!

 布教を忘れない私、えらい!

 

「でも、ビコウなんて探偵みたいでなんだかワクワクしマス!」

 

 と、リラさんが言った。とはいえ、今回はそんなほのぼのしたものではない気もするけど……。

 

「今日の私たちの使命は、2人の距離が縮まるように、なんかいい感じにしようーってところだね」

 

 と、虎門さんが言う。余計なお世話な気もするが、これも虎門さんが岸峰さんを思ってのことなのだろうか。

 

「でも、どうやって2人をいい雰囲気にさせるデスか?

 

 とリラさんが聞いた。

 

「それは……まぁ、何とかなるよ!」

 

 いや、この状況を作っておいて作戦何もないんかい!

 適当すぎるが、星川さんも同じくらい適当なので、これくらいじゃ動じなくなりました。慣れって怖い。

 

「そんな行き当たりばったりで大丈夫なんですか……?」

 

 そんな会話をしながら尾行が始まったのであった。

 

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