陰キャな私のバンドライフ   作:ハナルーナ

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2話 陰キャはなるべくしてなるもの

「ハァ〜……さっきの数学の小テスト、すっごく難しくなかったー?」

 

「まさか抜き打ちでやるなんてね。ちゃんと予習しといて良かった」

 

「明日香ちゃん凄いなぁ……私もあまり出来なかったよ。杏ちゃんは?」

 

「あ、えと………ま、まあまあかな………」

 

 この学校に入学して数日経ち、それなりにクラスにも馴染めてきたようにも思える。お昼休みもこうして一緒にお弁当を食べる友達が出来た。

 入学して初めの頃は、今まで通りひっそりと過ごそうと思っていたが、改めてみると今の私の学園生活は充実しているように思う。

 

 しかし、一つだけ分からないことがある。

 

「私は小テスト全然出来なかったわ!」

 

「ルルナ、そこ威張るところじゃない」

 

 あの日から何故か星川さんが一緒にいるようになった。

 

 何故だ?あの日私は不可抗力とはいえ星川さんのペェに思いっきり顔を埋めてしまった。普通なら向こうから近づこうとしないんじゃないか?

 考えられる理由は………

 

「星川さん………もしかして、百合に目覚めたとか………?」

 

「断じて違うから安心して」

 

 よかった、その線は無かったようだ。もしそうなら私から距離を取るつもりだったけど。

 

「花村さんと仲良くしてたら、巡り巡ってリサさんとかRoseliaの皆さんと仲良くなれるかなーって思っただけよ」

 

「あー………」

 

 なるほど。つまり私と一緒にいたいわけじゃないんですね。そうですか。分かってましたよ(泣

 

「でも、それと同時に花村さんと仲良くなりたいと思ったのは事実よ」

 

「あぇ?」

 

 不意にそんな事を言われて、思わず変な声が出てしまった。

 

「私ね、分け隔てなくいろんな人と仲良くなりたい主義なの。でも花村さんってガード硬そうだったからきっかけがなくってさ。こうして今話せてるだけでもちょっと良かった………って、こんな事本人の前で言う必要ないわね……///」

 

 そう言いながら顔を赤くする星川さん。

 もしかして、これが俗に言うモテ期っていうやつですか?(多分違う

 

「あ………ありがとう、ございます………?」

 

「べ、別にお礼なんていいわよ。とにかく、せっかく一緒なクラスなんだし、仲良くしましょ」

 

「あ、はい………よろしくお願いします………!」

 

 まさか、星川さんが私に対してそんな事を思ってくれていたなんて………

 私、もう人生悔いはありません!

 

 はっ‼︎もしかして、私って陰キャじゃなかったのかな?

 こんなに人に囲まれてるって事は、そういう事だよね!

 

 そっか!そうだよね!今までの人生は全部夢だったんだ!良かった〜。

 

「失礼しマス!あなたがインキャで有名なハナムラアンさんね!」

 

「ウグァっ!?」

 

 そう思っていたのも束の間、金髪碧眼のクラスメイトの一言で一瞬で夢から覚めた。

 

「ちょっとー、うちの陰キャちゃんは繊細な生き物なんだから言葉には気をつけてよねー」

 

「ソデスカー!すみません!」

 

「い、いえ………むしろこんな私が一瞬でもリア充だと思ってしまっていたことがおこがましかったというか………」

 

 元はと言えば、浮かれてしまっていた私が悪いのです。私は陰キャです。そう生きる運命なのです。

 自分で言ってて悲しくなりました。

 

「ところで、どうしたのリラちゃん。杏ちゃんに何か用?」

 

 いろいろとダメージを負っている私の代わりに六花ちゃんが聞いてくれました。ありがとうございます。

 

 一応紹介しておきますと、この金髪碧眼の女の子は“リラ・シャリエール”さん。見た目や名前から分かる通りイギリス人の女の子です。ですが、両親がイギリス人というだけで生まれも育ちも日本なので日本語ペラペラなのです。だけど心なしか少しカタコトな気もします。いやどっちだよっ。

 

「ご紹介ありがとござマス♪」

 

「もう心を読まれることにはツッコまないです………」

 

「実は、ハナムラさんに協力して欲しいことがありマシテ………」

 

「協力、ですか………?」

 

 困惑する私をよそに、リラさんは私の両手を掴んで真剣な眼差しでこう言った。

 

「私を、ハナムラさんの弟子にしてほしいデス!」

 

コノコ、ナニ、イッテルデス…………?

 

 

ーーーーーーーーーー

 

ーーーーー

 

ーー

 

 

 なんやかんやあって放課後になったよ。リラさんに呼ばれて彼女の所属している演劇部の部室にきたよ。いい仕事をするよっ!

 

「やぁ、君がリラの言っていた子猫ちゃんだね。ようこそ、私たち演劇部の部室へ。楽しんでいってくれたまえ」

 

「すみません、リラさんがいきなり呼んでしまったようで。お時間とか大丈夫でしたか?」

 

「あ、大丈夫です。今日は何も予定がなかったですから………」

 

 本当のことを言うと、今日に限ってあこちゃん達全員予定があったため放課後は暇になっただけなのだ。

 さらに本当のことを言うと、帰らなかったのではなく帰れなかったのだ。この人のせいで……!

 

「全然大丈夫です!演劇部のスターである“(かおる)”先輩を一度近くで見てみたかったんですよね!」

 

「ふふ、そう言ってくれてとても嬉しいよ」

 

 放課後になるや否や、星川さんが私の腕を引っ張ってここまで連れてきたのだ。あなた呼ばれてないですよね?私を口実に演劇部に来ないでください。あなた仲良くなった相手には容赦ないですね。

 

「じゃあ花村さん、こちらで説明させていただきますね」

 

「あ、お願いします………」

 

 星川さんが演劇部のスター(?)である薫先輩の方に行っちゃったから、今私はこの“大和(やまと) 麻弥(まや)”先輩と2人きりになってしまっている。

 いや星川さん、ついてきたのなら責任持って私のサポートしてよ、知らない場所で一人きりにしないでよ!もう心の中で愚痴ったりしないから!お願いします!

 

「今回の劇は、ある一人の少女が夢を見つけるお話なんです。その少女は何をやっても上手くいかない、なんでも悪い方向に考えてしまう女の子で、そんな彼女がいろんな人の心の温かさに触れて前向きに生きようとする、そんな劇ですね。その主役の女の子に、新入部員のリラさんが抜擢されたというわけです」

 

「な、なるほど………で、私が呼ばれた理由は、まさか………」

 

「はい、この少女に似た人がクラスにいるとリラさんがおっしゃっていました。それが花村さんだったんですね」

 

「話は分かりましたけど、なんとなく失礼ですねっ!」

 

 役作りのために参考にしてもらうのはいいけど、その役が問題だよ。

 何をやっても上手くいかない、なんでも悪い方向に考えてしまうって、まぁ当たってるけど。当たってるけど、そんなはっきり言ってくるかなぁ?それで私を連想するのは失礼じゃないですかリラさん!

 

「いやいやー、ハナムラさんがいてくれて助かりましタ。こんな人私の周りにいなかたカラ〜」

 

「また煽ってきてるし………」

 

 この金髪少女はどうしてこうデリカシーというものがないかな〜?さてはおちょくってるなー?私が反論してこないのをいい事に。私だって怒る時は怒るんだぞー!

 

「うがー‼︎」

 

「ハナムラさん、どしましタ?あ、ハムスターのモノマネデスね!」

 

「このタイミングでしないよ………」

 

 全力で威嚇したつもりがハムスターと言われた。私ってもしかして怖くないのかな?あ、今更だね。

 

「というわけでハナムラさん!さっそくインキャをご指導くだサイ!」

 

「陰キャをご指導って………言っておくけど、陰キャはなろうと思ってなるものじゃないよ。自然になるんだよ」

 

「おぉ〜、さすがはインキャのシショー!カッコいいオコトバ!」

 

 なんか感動されたけど、自分で言ってて悲しくなった。だってそうなんだもん。何もしてなくても陰キャになったんだもん。あれ?でも陽キャになるにはそれなりの努力は必要だよね………?

 

 はっ!もしかして陰キャの方が努力しなくてもなれる分いろいろと凄いのでは?(←謎理論

 

「ということは、ワタシもそのままのワタシでいればインキャになれるデスね!」

 

「あー………まぁ、その内………?」

 

 そうは言ったけど、リラさんはもうすでに陽キャの分類だよ。金髪碧眼で演劇部の期待の新人なんて、陰キャから程遠い存在すぎて私と話す事自体もおこがましいというかなんというか………私から何かを学ぼうとしている事すら何か罪悪感を感じるもん。この陽のオーラを陰のオーラで塗り替えてしまってはいけない気がする。そもそも私に出来るわけがない、いや出来ない(反語)

 

「分かりましタ。教えを乞おうとしたワタシが間違ってましタ。ワタシ、自分で考えて立派なインキャになってみせマス!」

 

「うん、いいんだけど………目的変わってるよね?」

 

「解決して良かったですね、リラさん」

 

「解決したんですか⁉︎これで⁉︎」

 

「あ、終わったー?花村さん」

 

「終わったー?じゃないですよ星川さん!」

 

「ふふふ、人と関わる事で新しい自分を見つけていく………あぁ、なんと儚いことなのだろうか………!」

 

「儚い……のかな?」

 

 なんだろう、このツッコミ不在の状況は………あまりツッコまない私でもついついツッコンじゃうよ!

 あと、私今日呼ばれたのに何もしてないよ。勝手に解決したんですがそれは?

 

「ありがとござマス、ハナムラさん。いえ、アンさん!ワタシ、今日アンさんに教えていただいた事をサンコーに今度の劇を素晴らしものにしマス!」

 

「そ、そう………頑張ってください」

 

「リラの劇、絶対見に行くからね」

 

「はい!アンさんもルルナさんもお待ちしております!」

 

「何勝手に決めてるんですか?」

 

「いいじゃんかー、あこちゃん達も連れて見に行こうね、花村さんっ」

 

「もう………」

 

 勝手に約束を取り付けられたのは正直癪だけど………

 

 入学してからというもの、毎日いろんな人に囲まれて多くの刺激をもらっている気がする。

 そんな毎日を、心のどこかで満更じゃないと思っている私がいるのも、また事実だ。

 

「じゃあ、私は帰るね」

 

「はい、アンさん。また明日!」

 

「っ…!また、明日………」

 

 リラさんみたいにキラキラした人とは、なるべく距離を置きたいけど………

 

 あこちゃん達や星川さんと同様に仲良くなりたいなと思ったのは、私にとっていい変化なのかな………?

 

「ていうか、私はもうとっくに友達でしょ?花村さん」

 

「私のことを敵視していたのはどこ行ったんですか?」

 

「まぁまぁ、細かいことは気にしないっ!」

 

 第一印象はアレだったけど、今では星川さんとも普通に話せてる。

 高校に入っても陰キャのままでいようと思ってたけど、いろんな人と関わるようになったおかげで高校生活が充実してきている。そんな気がちょっぴりしました。

 

 余談ですが、その後の演劇部の講演が瞬く間に有名になり、その影響でモデルとなった私の周りにすごく人が集まるようになりました。

 少しの間陽キャの気分を味わえて浮かれたけど、やっぱり一人でいる方が落ち着くなと改めて思いました。

 

 やっぱり陰キャ最高。




登場人物紹介

リラ・シャリエール
 日本生まれ日本育ちのイギリス人の女の子。日本語がカタコトなのは母譲り。演劇部では主にヒロイン役を務める。
誕生日:12/3
家族構成:父一人、母一人、姉一人の4人家族
好きな食べもの:寿司、おはぎ、柿
嫌いな食べもの:納豆、海苔の佃煮
マイブーム:天体観測
自分を一言で表すと?:元気
全体像(作成元:カスタムキャスト)

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