陰キャな私のバンドライフ   作:ハナルーナ

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4話 校舎裏への呼び出しは大体ロクなことがない

「じゃーねー、花村さん!」

 

「あ、はい………」

 

 最近、クラスの人に話しかけられることが多くなった。

 モデルの星川さんとよく話していることといい演劇部の件といい、少し目立つところにいたのは確かだけどね。

 

 でも、いろんな人と話せるようになって、少し学校が楽しくなってきた気がする。人と話すのは苦手だけど、クラスのみんなは今井先輩みたいにグイグイ来ないから大丈夫。

 

 あれ?もしかしたら、私ってもう陽キャの部類に入ってたりする?

 

 そっか、そうだよね!だってモデルの星川さんや演劇部の期待の新人のリラさんと一緒にいるんだもん。陽キャオーラに毎日あてられていたおかげで、私の陰キャオーラが消え去ったに違いない!これからは『杏の陽キャ学園生活』の幕開けだ!さらば、私の陰キャ生活!

 

「花村杏」

 

「あ、はいっ」

 

 そんな事を思っていると、後ろから声をかけられる。振り返ると、緑色の髪色をしたショートカットの女の子だった。

 クラスで見かけたことないから、別のクラスの子かな?本当に最近声かけられること多くなったなぁ〜。さてさて、何の用かな〜?

 

「命が惜しかったら、一緒に来い」

 

「……………………あ、はい」

 

 『杏の陽キャ学園生活』、完。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

ーーーーー

 

ーー

 

 

 そんなこんなで連れてこられたのは校舎裏。

 校舎裏の呼び出しって何か始まるフラグだけど、だいたいは恋の告白かカツアゲのどちらかがほとんどだ。(私調べ)

 

 とはいえ相手は女の子だし、告白は決してありえない。となれば残るは後者しかない。

 あれ?これ詰んだよね?

 

「おい」

 

「は、はいっ‼︎お金は持ってませんよ⁉︎」

 

「は?金なんか取るかよ」

 

 あ、よかった。カツアゲじゃなかったんだ。

 …あれ?そうなると、もしかして告白っ⁉︎いや、でも女の子同士だし、私もまだ心の準備が〜!

 

「しばらくここで大人しくしてろ。お前はエサなんだから」

 

「エサ⁉︎」

 

 え、エサって何⁉︎ていうか、私なんか連れてきても誰も来ないよっ⁉︎あ、自虐オツでーす、私。

 

「えっと………」

 

「私は隣のクラスの“岸峰(きしみね) 伊月(いつき)”。花村杏、お前のことはいろいろと調べさせてもらった」

 

「い、いろいろとは………」

 

「ここ1週間ほど、帰り道を尾行させてもらった」

 

「ストーカーじゃないですかっ⁉︎」

 

 やっぱりヤバい人だよこの人っ!堂々とストーカー宣言してきたよ危なすぎるよ!

 

「ストーカーじゃない。私はファンなだけだ」

 

「うぇっ⁉︎」

 

 え、ファンって、もしかして私のファンって事⁉︎そんな、今さら(・・・)…。

 ていうか、こんなクソ陰キャな私のこと好きになっても何もいい事ありませんよー。私が言うのもなんですが。泣)

 

「そ、それは………また物好きなもので………」

 

 あれ?でも、それなら“エサ”って何のことだろう………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一方その頃、杏の教室では………

 

「ヤッホー!杏、いるー?」

 

「リ、リリリサさんっ‼︎お、おぉお久しぶりでございますですっ‼︎」

 

「久しぶりー、ルルナ♪」

 

 杏に絡みにきたリサと、久々のリサ登場で興奮しているルルナの姿があった。

 

「杏に会いにきたんだけど、今日はいないの?」

 

「また花村さんですか………」ボソッ

 

「え?」

 

「あ、何でもないです〜。花村さんなら、学校終わった後すぐにいなくなりましたよ?」

 

「そっかー。せっかく遊びにきたのにな〜」

 

「じ、じゃあ今日は私と一緒にどこか行きませんですかっ⁉︎」

 

「た、たたた大変デス、ルルナさんっ‼︎」

 

 と、ルルナがリサとの会話を楽しんでいる間に勢いよくリラが割り込んできた。

 

「ちょっとー、空気読みなさいよー」

 

「こ、これがワタシの机の中に⁉︎」

 

「え?」

 

 そういうリラの手から一枚の紙が手渡される。そこに書いてあったのは………

 

『花村杏は預かった。返して欲しければ星川ルルナ様を連れて校舎裏に来い』

 

「何これ、脅迫状?しかも私の名前が………」

 

「ど、どどどうしマショウ⁉︎アンさんにもし何かあっタラ…」

 

「これ、私行かなきゃダメ?」

 

「何言ってるんデスかっ!アンさんの命かかってるデスよ‼︎」

 

「命って………流石にそこまでの事じゃないだろうし、ほっといても大丈夫なんじゃない?」

 

「ルルナさんのハクジョウモノー‼︎」

 

 さすがに学校内でそんな事起こらないし、ましてや本物の誘拐犯なら教室に忍び込んで書き置きを置く事なんてできない。

 

 そんな考えから、ルルナはこの事を軽く受け止めている。そんな事よりも今は久しぶりに会えたリサとの時間を大切にしたい。リサの前では例え友達であろうと杏の事などどうでもいいのである。これが星川ルルナである。

 

「さ、リサさん。私と一緒にショッピングでも………」

 

「あ、杏が………誘拐………?」

 

「リサさん?」

 

「ルルナ、ごめんね。私、杏を助けに行ってくるっ!」

 

 しかし、リサにとってはルルナと一緒に帰る事よりも、お気に入りの杏が誘拐(?)されたという事の方が放っておけなかったのだ。幼馴染の友希那しかりRoseliaしかり、自分の大切なものを傷つける奴は許さない。それが今井リサである。

 

「ええええぇぇ〜⁉︎ち、ちょっと待ってくださいー‼︎」

 

「ワタシも行くデス!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、あのー………」

 

「何だ?」

 

「私は、いつまでここにいれば………」

 

「目標が釣れるまでだ」

 

 私がここに連れてこられてもう10分くらい経った。そして、今はなにかと気まずい沈黙が続いてる。

 だって考えてみてよ。今日初めて会ったんだよ!まだ私にはそのハードルは高すぎるよ!

 

 最初こそ会話してたけど、話が全然続かず最初の2分くらいで沈黙が生まれた。

 最近はいろんな人と話す機会が多かったけど、それは向こうが一方的に話しかけてくれるからで。

 岸峰さん、ムスッとしてるし全然会話続かないし。あと、少し怖いし………

 

「今何か失礼なこと考えなかったか?」

 

「い、いいえなにも⁉︎」

 

 ほら、こういうところだよ‼︎私が一番話しにくいタイプの人‼︎

 

「それにしても全然来ない………ひょっとしてこいつをエサにするのは失敗だったか?」

 

「だ、だから私なんかで来る人なんて………」

 

「いたっ!杏、大丈夫⁉︎」

 

「………あぁ、いたよ。いつも来る人が……」

 

 休み時間でも放課後でもしょっちゅう会いに来るこの先輩がいたな。てことは、岸峰さんの目的の人って今井先輩…?

 

「杏を返しなさい!」

 

「………………………えっと、誰ですか?」

 

 って違うんかーい!

 

「たしかに杏を攫いたい気持ちは分かるよ。でも、杏は私が最初に目をつけてたんだから、勝手に攫わないでよねっ」

 

「何言ってるんですか今井先輩⁉︎」

 

「リサ先輩でしょ‼︎」

 

「そこは今どうでもいいですっ‼︎」

 

「良くなーい‼︎」

 

(かたく)なですねっ⁉︎」

 

「え……っと、計画と違うんだけど………と、とりあえず、こいつを返して欲しかったらあの方を連れてきてください!」

 

「来たでしょ、私が」

 

「あなたじゃないです‼︎」

 

 あぁ、岸峰さんがオロオロしてる。これはもしやチャンスなのでは?

 

「さ、杏。帰ろ♪」

 

「あ、はい………」

 

「ち、ちょっと、話はまだ終わって………」

 

「やっと見つけました、リサさん〜‼︎」

 

「あ、アンさん!無事デシタかっ⁉︎」

 

 と、そこに星川さんとシャリエールさんがやって来た。もしかして、私の心配してくれて…?

 いや、星川さんは違うな。それだけは分かる。

 

「っ⁉︎」

 

「あの人が元凶デスか⁉︎ワタシが退治しマス‼︎」

 

「もう、あんたのせいでリサさんとの大切な時間が………」

 

「ぁ、あああああの………」

 

「あれ?岸峰さん?」

 

 あれ?なんだか様子がおかしい。さっきまでの堂々とした態度が消えているような………

 

「ル、ルルナ様………」

 

「え?あの…岸峰さん?」

 

「ハッ!こ、コホンッ……よ、ようやく来たな、ルルナさm………ルルナさん」

 

「…もしかして、私で釣ろうとしてたのって…」

 

 はい、賢明な読者の皆様ならもうお分かりだと思いますが、この岸峰さんが待っていたのは星川さんだったのです。ていうか、キャラ変わりすぎでは?

 

「花村さん、その子は?」

 

「あ、岸峰伊月さんといって、隣のクラスの子です」

 

「ル、ルルナさん…。ここに来てくれたということは、あの手紙を読んでくれたという事ですね…?」

 

「まぁ、手紙を見つけたのはリラなんだけどね………」

 

「〜〜〜〜ッッッッ‼︎生ルルナ様………尊い………」

 

「え?」

 

「あ、いや何でもない」

 

 なるほど、そういう事ですか。なんとなく、岸峰さんがしたかった事が分かってきました。

 

「さぁ、ルルナさん。花村杏を返して欲しかったら、私のささやかなお願いを聞いていただけないでしょうか?」

 

 態度は変わらないけど丁寧語になってますよ岸峰さんっ!

 

「別に、どうしても返して欲しいってわけじゃないけど………」

 

「星川さん、それはそれでショックです!」

 

「そうですよ、ルルナさん!」

 

「リラさん………!」

 

「相手がハタシジョウを送ってきたのであれバ、正々堂々ショーブしなけれバ!」

 

「そういう問題ですかっ⁉︎」

 

 神様、私の味方は一人もいませんでした………かなしみ。

 

「そ、そうですっ!ルルナさんは花村杏をどうしても返して欲しいに決まってます!」

 

 それにしても、どうして岸峰さんは私で星川さんを釣ろうとしたのだろう。私と星川さんは最近話すようになっただけのクラスメイトというくらいなのに。

 それに、星川さんを釣りたいのなら、今私に引っ付いている今井先ぱ

 

「リサ先輩ね♪」

 

 ………リサ先輩の方が適任なのでは?

 

 ていうか、いつの間に私にくっついてるんですかリサ先輩っ。あんまり会話に入ってこないと思ったら。

 こら、私の頭の上にアゴを乗せないでください。でも背中に当たってる良い感じの膨らみが気持ちいいので良しとしましょう。いや、良くない。さっきから星川さんがすっごい睨んできてる。これは後でお仕置き♡確定だね。

 

「だって、ルルナさんと花村杏は、こ、恋人同士なんですよね⁉︎」

 

「「ハァァァァァァァァァァァアア⁉︎」」

 

「え?そうなの杏」

 

「違いますっ⁉︎」

 

「お二人はヒミツな関係………」

 

「リラさんも勘違いしないでくださいっ‼︎」

 

 いきなりの驚愕発言に私も星川さんも意味がわからなくなってる。ていうか、どこからそんな噂が………

 

「この前、花村杏がルルナ様を押し倒したと聞きました!」

 

「あれかー………」

 

 話が分からない人はこの小説の第1話を読んでねっ!

 

「それに、最近よく一緒にいるのも見かけます」

 

「まぁ、いろいろあって………」

 

「だから私は思った。この二人は付き合っているとっ‼︎」

 

「いろいろ話ぶっ飛びすぎじゃありませんかねっ!?」

 

 いや、それだけで恋人認定はもう訳わからないよ!星川さんもポカーンとしてるし、さすがのリラさんもハテナマークを浮かべてるし。

 あと、さっきからリサ先輩の抱きしめる力が強くてちょっと苦しい。いきなりどうしたのでしょうか……

 

「杏とルルナが………ふーん、良かったじゃん」

 

 いや、違いますからね!先輩まで誤解しないでいただきたい!

 あとさっき以上に背中に当たる感触が強くなって苦しいのでもっと強く抱きしめてくださいお願いしますっ!

 

「あー………岸峰さん?」

 

「はい、ルルナ様!」

 

 というか岸峰さん、興奮して様呼びになってるの気づいてないよ。

 

「……お茶でも飲みながらゆっくり話さない?」

 

「はい!喜んで‼︎」

 

 その言葉、ナンパ以外にも使えるのだと初めて知りました。

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