「うーん………」
私、花村杏が高校生になって1ヶ月ほど過ぎた。流石にそれくらい経つと高校生活にも慣れてくるし、知り合いも当然増える。
なんだけど………
「ルルナさんって、休日は何してましたか?」
「んー………撮影も何もなかったし、一日中ダラダラしてたかな〜」
「そうですか!いいですよね、ダラダラするの!」
「イツキさん、ダラダラがお好きなんデスね!ワタシも好きデス!」
「岸峰さんの場合、多分そんな単純な意味じゃないと思う」
………なんか、私の周りクセの強い人たちが集まったなー。
今はお昼休み。入学当初なら、あこちゃん達とお昼を一緒にする事が多かった私なのだが、最近この4人で集まる事が自然と多くなった。
ていうか、私普通に友達(?)出来てるじゃんかっ!最初の陰キャ設定は一体どこに行ってしまったのだろうか………
「あ、ちょっと抜けるね」
そんな考えにふけっていると、星川さんが席を立つ。教室の扉の方を見ると別クラスの人が星川さんの事を呼んでいた。流石は星川さん。もう既に隣のクラスの子にまで手を出しているとは、やはり私とは住む世界が違うというか。
「ハァ〜………流石はルルナ様、交友関係も広くて憧れます……」
隣にも同じ考えをしてる人がいた。いや、この人の場合少し意味が違うか。
「岸峰さんも隣のクラスですよね?当然のようにいますけど………」
「ルルナ様との間に、クラスの壁なんて無いのも同然だ。なんならこっそり一緒のクラスで授業を受ける事だって出来るぜ」
「スゴイデスねイツキさん!そんな事出来るなんて、フリョウ極めてマスね!」
「おい、ちょっと黙ろうか?」
流石はリラさん。岸峰さんに対してもど真ん中でぶち込んでいくその姿勢、そこに痺れる憧れるぅ‼︎
すいません、私も黙ります。
「そんなに星川さんの事が好きなら、私とリラさんは邪魔になってるんじゃ?」
「バカかお前、私がルルナ様と二人きりになって正気を保っていられるとでも?」
「いや、そんな真顔で言われても………」
「もし私がルルナ様と二人きりになってしまったなら、何をしでかすか分かったもんじゃないぞ!」
「そんな自信満々に言う事じゃないですよね⁉︎」
むしろ今のセリフの方がよっぽど正気を疑ってしまうのだけど⁉︎
……でも正直本当に凄いなぁと思うよ、この人は。星川さんの事が好きすぎるあまり、他のクラスに普通にやって来るんだもん。
しかも、最近はこのクラスの人達とも普通に話すようにもなっている。まぁ私には星川さんにそこまで肩入れする気持ちは到底理解できないですけどねっ。
そうこうしているうちに、星川さんが戻ってきた。
あれ?何だろう、星川さんの雰囲気が変わったような?いつもより表情が明るいというか、なんだか楽しそうな感じになっている。
「何かありましたか?ルルナさん」
流石は星川さんオタク。すぐに食いついた。
「えー、わかる〜?」
「そりゃ分かりますよ。そんなにニヤニヤしてたら」
「そっか〜。どうしよっかなぁ〜、言っちゃおっかな〜?」
いったい何をもったいぶっているのだろうかこの人は。そして、しばらくニコニコしながら悩んだ後、ようやく口を開いた。
次の瞬間、私は言葉を失った。
彼女は言ったのだ。
今まで見せたことの無い満面の笑みを浮かべて………
「2週間後、私たちのバンドのライブが決まったのよ‼︎」
「…………………はい?」
今まで、忘れかけていたことを。
そうだった。私たちはバンドをすることになってたのだった。いや、私は許可した覚えはないのだけれども。ていうか、なんで岸峰さんも当然のように受け入れているのですか⁉︎
「いや、私はこの前ルルナさんにバンドに誘われたんだけど」
はい、説明ありがとうございます。もう私の心読まれることに対してはツッコみませんよ〜!
「実は隣のクラスにガールズバンドをやってる子がいて、その前座で出させてもらえないか交渉してたの。そしたらOKもらえたのよ‼︎」
「ナルホド!ワタシたちの初舞台デスね!頑張りマショウ‼︎」
え?疑問に思ってるの私だけ?
「そうと決まれば、早速練習しなきゃですね!ルルナさん!」
ダメだ。ここには私と同じ考えの人間が一人もいない。
言うんだ、花村杏。
ライブなんて、バンドなんてしたくないって!
「…………………が、ガンバロー(棒)」
まぁ反論する勇気が私にあるわけがないんですけどねっ!ここで出ましたよ、私の陰キャ設定。空気読め!
こうして、私たちの初ライブが決定した。果たしてこの先どんな展開になるのか……それはまた別のお話である」
「杏、誰に言ってんだ?」
「こういう雰囲気だと言いたくなるんですよね」
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「疲れた〜………」
時間も場所も変わって、私は今自宅の自室にいる。やっぱりこの場所こそ私の気が唯一休まる場所だ。学校のように他の人たちに私の時間を邪魔される事がない。まさに楽園。
「さてと、これから何をしようかな〜」
とりあえず、ゲームでもするとしますか。最近はいろいろあってあまりログインできてないから、今のうちにイベント周回しないと。
「……ん?」
パソコンを立ち上げゲームにログインすると、メッセージが2件入っていた。一つは運営からの連絡で、もう一つは何だろう?
……って、これあこちゃんからだ。
『あんこ、明日空いてる?』
なんでわざわざゲーム内のチャットで聞いてくるんだろう?
あ、そういえばまだ連絡先交換してなかったわ………
……明日は休日だけど、特に予定もないはず。というか、基本的に用事がない。休日は一人で家でゴロゴロするかゲームするかだ。つまんない休日だと思ったそこのお前、ちょっとこっち来い。
『まあ、暇だけど……』
と返信を打つと、すぐに返事が来た。
『じゃあさ、明日香と六花と一緒に遊ばない?』
突然のお誘いだった。
そういえば最近は星川さん達と一緒にいる事が多かったから、あこちゃん達とあまり話せて無かったな。
『わかった。いいよ』
『やった〜!それなら明日の朝10時に駅前集合ね!』
了解と送ると、そこでやりとりが終わった。そのままの流れでゲームするのかなとも思ったけど、その後すぐにあこちゃんはログアウトしたので、今日は一緒に周回できないのだろう。
それにしても、4人で遊ぶのはなんだかんだ初めてだな〜。
「……」
と、ここで重大な事に気が付いた。
私、誰かと休日遊びに行く事自体初めてだ。
……うわぁぁぁあぁああ‼︎どうしよう‼︎
今まで友達なんていなかったし、そもそも私と一緒にいてくれる人もいなかったから、そういう機会が無かった。
あぁ〜、なんか緊張してきた!何着よう?髪型は?メイクとかした方がいいよね?……よし、決めた。まずは服を買いに行こう。そして、美容院に行って髪を整えてもらうのだ!
「って、明日遊ぶのにそんな時間無いじゃんかーーー‼︎」
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ーー
そして翌日。私は待ち合わせ場所に一番乗りした。
いや、こういうのって待ち合わせの何分前とかに全員集まるものだってどこかの漫画で言ってたから早めに来ようとは思ったけど、どれくらい前に着いておけばいいのか分からなかったから、とりあえず1時間ほど前から待つ事にした。誰か一人くらいいるかなーと思ったけど、どうやら私が一番乗りのようだ。
「あれ?杏早いね」
それから30分後、やって来たのは明日香ちゃんだった。
「あ、お、おはよう、ございます………」
入学当初からの友達だというのに、最近喋ってなさすぎてものすごく挙動不審な挨拶になってしまった。
「おはよ。もしかして、結構待ってたりした?」
「あ、いえいえ!ものすごく楽しみだったので時間が過ぎるのなんてあっという間でした!」
一部嘘である。明日香ちゃんが来るまでの30分間、今日どのように振る舞うのが正解か不安でずっとドキドキしていた。
ちなみに今日の私は黒の短パンに白のパーカー、水色のリュックを背負っている。頭には黒のキャップを被りちょっと前屈みになっているため、どこからどう見てもオタクのそれである。オシャレは諦めた。
「へー、杏ってこういうの楽しみにするタイプなんだね。なんか以外かも」
そういう明日香ちゃんの服装は上は白地のシャツ、下はジーンズといったシンプルなものだ。だけど、同じものを着たとて私とはオーラが違う。明日香ちゃんと私では雲泥の差だ。陽オーラが眩しい!
「そ、そうなんですよ〜!あはは……」
「ふーん?」
「おーい、あんこ、明日香、お待たせー!」
そうこうしているうちにあこちゃんと六花ちゃんも到着した。あこちゃんはゴスロリ風のいかにもな格好。六花ちゃんはベージュを基調としたワンピースを着ていた。
「お待たせ〜」
「おはよう、二人とも。待たせちゃってごめんなさい」
「いやいや、待ち合わせよりも早いし問題ないよ」
明日香ちゃんの言う通り、当初の待ち合わせ時間である朝10時までまだ20分ほどある。やっぱり待ち合わせ時間よりも早めに集まるのが正解みたいだ。これからも参考にしよう。
「さてと、じゃあ早速行きますか!みんなどこに行きたい?」
「え?」
行き先は決めてなかったらしい。私としてはどこでも良いんだけど……。
とりあえずゲームセンター以外の場所を言おう。陽キャの溜まり場だからだ。知らんけど。
「んー、あたしは映画見に行きたいかな〜」
「あ、私も見たかったんだ。確か今話題になってるのってあのアクション系だよね?私、あまり詳しくないから教えてもらえると嬉しいな〜」
「おっけー!じゃあまずは映画館にしゅっぱーつ‼︎」
「「おお〜‼︎」」
うぅ、このノリやっぱりまだ慣れないな………本当に私が混ざっても大丈夫なのだろうか。
まあでも、あこちゃん達が楽しそうなら大丈夫だろう。
「あれ?あの人…」
そんな私達の事を、後ろから一人の女の子が見ていたことに気付かずに、私達はショッピングモールへと向かった。