「そんなわけで、急遽遊ぶことになったけど特に予定もなくいろいろ考えた結果みんなで映画を見に行くことになった私たちですが」
「あらすじ不要な説明をありがとう」
数十分移動しただけなんだけど、なぜか長いこと時間が経っている気がしたので状況説明をしました、はい。
現在、私たちは映画を見るためにこの町で一番大きなショッピングモールへとやって来た。ちなみに私はここへ向かう途中ずっと無言でした。
なんだろう…、最近星川さん達と一緒にいる事が多いせいか、あこちゃん達と話す事に緊張してしまう。
そんな事を考えながら歩いていると、目的の場所へと到着した。しかしこういった時にはハプニングがつきものである。とマンガで見た。
「あ〜、もう上映始まっちゃってるよ」
「次の上映まで2時間近くあるね」
「どうする? 先にお昼ご飯食べる?」
「そうしよ!あこ、今日が楽しみすぎて朝ごはん食べて来なかったんだ〜」
「えぇ〜⁉︎あこちゃん、朝ご飯はしっかり食べんと〜」
「いやー、昨日眠れなくてさー」
3人は楽しそうに会話をしているけど、私は内心穏やかではない。だって…
「じゃあさっそく何か食べよう。フードコート行く?」
「そうしよー!あんこもそれでいい?」
「あ、はい……それで、いいです、よ………」
「杏、知り合った時より話せなくなってない?」
「そ、そうでしょうか………?」
「なんで敬語なの?」
「いやぁ、そのぉ……」
「まあいっか。とりあえず行こっか」
「うぅ……」
そんなこんなで、4人でフードコートへと向かった。
席に着くなり、早速メニューを開く。
「わぁ〜!どれにしよっか迷うねぇ〜」
「そうだね。どれも美味しそうなものがいっぱいだもんね」
「うん!でもやっぱりここは王道のハンバーグかなぁ」
「たしかにそれもいいよね。だけど、オムライスとかも良いと思うんだよ」
「わかる〜!どっちにするべきか悩むよね〜」
フードコートに行くと言ったな。あれは嘘だ!失礼、黙ります。
あれから紆余曲折あり、レストラン街のとある洋食店に入った。フードコートに行くと言っていたあのやり取りは何だったのか。
でもあるよね。フードコートに行くつもりだったけどやっぱりどこかお店に入って食べることって。仕方ないことなんだよ。宇宙の真理というやつだよ。何言ってるんだ私は。
それにしても、あこちゃん達は本当に仲が良いな。この中に私なんかがいて良いのかとも思ってしまう。しかし、こうして誘われてる手前そのような考えは胸の奥にしまっておく事にする。
やっぱり、人との距離感を考えるのは難しい。
…そして、何を食べるか決めるのも難しい。
こういう時、自分の優柔不断な性格を恨むよね〜。
そんな私が注文するものを決めかねていると、突然後ろから声をかけられた。
「あれ〜?あこちゃんだー!ヤッホー!」
「宇多川さん?こんなところで奇遇ですね」
「あっ、紗夜さん、ひなちん!こんにちは!」
「え、生徒会長⁉︎」
そこには生徒会長である
でも、まさかこんな場所で生徒会長に出会うとは思ってなかったのでびっくりした。しかし、よく見ると他にも見知った顔があることに気づく。
というか、その顔を見た瞬間、嫌な汗が背筋をなぞった。
「あー、杏じゃん!久しぶりー!」
「おや、君はいつかの子猫ちゃんではないか。まさかこんなところで会うとは、これは偶然を通り越して運命だね」
なんで数ある先輩の中で、リサ先輩と瀬田先輩なのー⁉︎ただでさえ今日はあこちゃん達との初めてのお出かけなのに!
これ以上は私のキャパ的に無理であります!助けて神様仏様!
「あの、大丈夫ですか?」
と、生徒会長に似た人が私に声をかけてくる。
「あ、はい、大丈夫です。えっと………」
「お会いするのは初めてでしたね。私は氷川
「あ、こちらこそよろしくお願いします………」ジ-...
「どうかしましたか?」
「あ、いえいえ!」
挨拶しただけだけど、直感した。氷川先輩、今まで出会った先輩の中でもかなり親しみやすい人かもしれない。真面目そうだし落ち着いてるし言葉遣いも丁寧だし。ちょっと見習いたいかも………
「あ、というか私たちまだ注文してなかったじゃん!」
「本当や。杏ちゃん、決まった?」
「え⁉︎ちょ、ちょっと待って!」
突然の乱入で注文のことをすっかり忘れていた。
「こういうのは呼び出しボタン押してからの方がすぐ決まるんだよ!」ピンポ-ン!
ってちょっと待ってあこちゃん!それは私にはハードルが高すぎませんか⁉︎
「わ、私はこの日替わりランチセットで………」
すぐに店員さんがやって注文を聞いてきたので、もうほぼ反射的に答えた。
結局無難に日替わりランチにしてしまった。まぁ今日の日替わりはチキングリルと海老フライのセットみたいだし、ハズレはないだろう。
それにしても、あれだけ悩んでたのにスッと決めれるものだね。ちょっと強引だけど、ボタンを押してから決めるのは私にとって一番いい方法かもしれない。ただ、一人で飲食店に行く勇気が私にはないので、この方法を使う時が来るかはわからないが…。
「あ、あと机くっつけさせてもらいますね!お冷やも4つお願いします!」
「あのー、自然と混ざらないでもらえますか?」
4人だけのお出かけのはずが、思わぬ事態になってしまった。まぁ、こういうハプニングはあるあるだね。ここは小説の中のお話、そういう世界だから。
「急にメタいこと言わないの」
「言いたくもなりますよ………」
果たして、今日の私は最後まで持つのだろうか………
ーーーーーーーーーー
ーーーーー
ーー
そんなこんなで映画も見終わりました。
いや、話飛びすぎじゃない?もっと会話膨らませるとかさ。あ、陰キャの私にはそんな高等テクニック無理でしたわ。
「いやー、映画面白かったね〜」
「うん!最後ババーンって感じで凄かった!」
「もうちょっとなんかないの?」
「素晴らしい演技を見られて、私も満足だよ。あぁ、儚い………」
「出た!薫くんの儚い!」
「あのー、良かったんですか?映画まで一緒に来ていただいて………」
「えぇ。もともと私たちも今日偶然会って、これから何をしようか考えていたところでしたから」
思わぬ事態になってしまったけど、あこちゃん達も先輩達も満足したようで何よりです。
「よーし!じゃあ今からみんなでゲームセンターに行くよ!」
「っ!?」
ゲームセンター。そこは、陽キャの集う場所の代名詞。そして、私が行きたく無い場所の一つでもある。
そうだ、ここにいるのは私を除く全員が陽キャ………ゲームセンターに行くのも必然的っ!くそっ、回避する方法は無いものか……!
「杏は何と戦ってるの?」
「あはは!杏ちゃん面白ーい!」
くっ、こういう時だけ都合よく心を読み取ってくれないんだから!かくなる上は………!
「………あ、あのー…私本屋さんに行ってくるので、どうぞ皆さんで行ってきてください…」
「え〜、杏ちゃん来ないの〜?」
その反応は予想していた。でも、ここで引き下がったら私の負けだ。
「ちょっと買いたいものがあるので。それでは、行って来ま…」
「あ、待って。私も行く」
「え?」
「あ、それならアタシもついて行こうかな〜」
「え?」
「じゃあ、あこも!」
「私もいいですか?」
「ふむ、では私も同行させて貰おう」
「よし、決まりだね!」
いやいや、ゲームセンター行きなよ!なんでついてくるの⁉︎これじゃあ私が逃げようとした意味ないじゃん!
で、こうなりました。
「なんでみんなついてくるかな………」
本当は買いたいものなんて無いのに。
「いいじゃん別に!」
「とはいえ、こんな大人数で固まって本屋の中を歩くものではありませんね。花村さんが本を買っている間、私たちはお店の中で別々に行動するのはどうでしょう」
氷川先輩、ナイスアシストです!別行動なら何も買わなくても買ったと嘘をつける!もう、氷川先輩だいすきっ!
「わかりました。じゃあ私はパパッと買ってきます!」
そう言って一目散にその場から立ち去りました。もとはといえば私がゲームセンターを拒んだ事が原因だけど、この際お言葉に甘えさせていただきます!
と、時間稼ぎに店内をウロウロしていると、ある本が目に止まった。
「『初めてのバンド入門』。これ、星川さんがオススメしてた本だ………」
それは昨日、バンドを組むという話になった時に星川さんが是非読んでおいてほしいと言っていたものだった。まぁ、その時はいきなり話を進めてどうするのとか思ったりもしてたし、真面目に聞いてはいなかったけど。
「………せっかくだし、この本だけ買っていこうかな」
べ、別にバンドに興味が出た訳じゃないけど、何か買った方が余計に嘘つかないで済むし、本代もみんなに買うものがあると嘘をついてしまった私への罰として…
「……よし」スッ
「…………」スッ
「え?」
私が本に手を伸ばした瞬間、反対側から別の手が伸びてきた。
隣を見てみると、そこには私と同じくらいの身長で、青みがかかったセミロングの髪が特徴の女の子がいた。
ちなみに、ちょっと手が触れた。
「……………」
「……………」ジ-...
どうしよう。なんか気まずい。女の子は無言でジーッとこっちを見てるし。
いや、何かしましたかね⁉︎あ、ちょっと触れてしまいましたね。
もしかして神経質な人だったのかな…。不可抗力とはいえ悪い事をしてしまったかな…。
「……………」ジ-...
「あ、あの………」
「………こういうのって、恋が始まったりするものだよね?」
「ヘァっ⁉︎」
まさかの質問返しきたー!予想外すぎてウルトラ◯ンみたいな声が出てしまった。
ていうか、そんなこと私に聞かれても困るんだけど!それに、私は百合に興味は………いや、そうじゃなくて‼︎
そんな事を考えながらあたふたしている私を見て、女の子はクスッと笑った。
「冗談だよ。この本、いるんでしょ?」
「あ、えっと………」
「私はこっちの本にするから、それはあなたにあげる」
「あ、ありがとう、ございます……」
そう言って別の本を手に取りその子は行ってしまった。
なんか不思議な子だったな。同い年か、年下くらい?
「………とりあえず、これ買ってこよう」
考えるのは後にして、早く買っていこう。みんな待たせてるんだから。
「すみません、遅くなって」
「おかえり〜。杏ちゃん、何を買ったの?」
「あぁ、えーっと、その……」
「ん?どうかしたのかい?」
「いえ、なんでもありません!それじゃあゲームセンター行きましょうか!」
もうこの際ゲームセンターでもなんでも行ってやる!このメンバーが集まった時点で諦めてるっての!これ以上の抵抗は虚しいだけだし!
「あー、それなんだけど、私たちちょっと急用が出来ちゃってね」
「え?」
「先輩達はここでお別れなんだって」
な、なんじゃそりゃぁぁああ‼︎私がさっきまで必死になった意味は!嘘をついてまで本屋に行った意味は⁉︎
「じゃあみんな、また学校でね!」
「はーい!みんなバイバーイ‼︎」
こうして、先輩達は私を振り回すだけ振り回して帰っていった。ほとんど私が勝手に暴走してただけな気がするけど…。
「リサ姉達は帰っちゃったけど、ここからはあこ達だけの時間だよー!さあ、ゲームセンターにしゅっぱーつ‼︎」
「あ、結局行くんですね………」
リサ達が杏達と別れてから数分後。
「会長…?」
「あれ、
「会長こそ………」
先程本屋で杏と話していた少女が日菜と出会っていた。
しかも、顔見知りのようだ。
「あれ?悠ちゃん、なんか良い事でもあった?」
日菜は悠の表情を見て、質問する。その問いに悠はクスッと笑って答えたのだった。
「はい。ちょっとだけ…」
そんな悠の頭の中には、先程本屋で出会った杏の姿があった。
(やっと、見つけた………)