作中では語られない裏設定的なものが書かれていることもありますが、基本的には無理に読まなくても大丈夫です。
【登場人物】
『狩人』
主人公。『魔の森』で狩りをして生計を立てている。齢はちょうど三十。銃の名手であり、銃身が横に二本並んだ猟銃(二連装式のフリントロックライフル)を愛用。五感(特に嗅覚)が鋭く、身体能力も極めて高い。
魔女の手下であったが、白雪姫を殺せなかったことで成り行き上決別。姫を魔女の手から守り切るつもりでいる。彼なりに通すべき筋があるようだが、その人間性にはいささか難がある。
原作では速攻死刑に処される気の毒な男。しかし魔法の鏡さえなければ完全な偽証が成り立っていたはずなので、知識と度胸を兼ね備えたなかなかの傑物であったと思われる。
『魔女』
主人公その2。『魔の森』に住む魔女。年齢不詳。先王の妃でもあり、彼が死んだ今、事実上この国の現統治者である。女王を自称するが、議会の承認がないため立場としてはまだ王妃のまま。王を殺害したと豪語しているが、真相は不明。基本的に冷酷だが、自身の所有物と認識したものには執着を見せる。
元々強い魔力を持っていたが、古き悪魔と契約を交わしたことで強力な権能の行使が可能となった。
狩人のことは可愛がっていたので、裏切られて激おこプンプン。どうやって後悔させてやろうかと考えている。
原作では狩人が差し出した猪の心臓の塩漬けを喜んでムシャムシャ食べていたので、魔女ではないとする説が有力(魔女は神聖な塩を嫌うため)。
『魔法の鏡』
現世と地獄を繋ぐ魔鏡の一種。魔女と契約を交わした悪魔が仮初めの肉体として使用している。彼は最も古く強力な悪魔の一人であるが、その人の良さに付け込まれ、魔女に四六時中こき使われている。おそらく作中人物の中では一番の常識人(人ではないが)。使い魔として蝿を使役することを好む。
『白雪姫』
説明不要。本名はブランカ王女。歳は十二歳。おそらく数ある童話のなかで最も有名なお姫様である。
死の淵から幾度となく蘇ったり、原作では一晩のうちに七つの山をその健脚で越えていたりするので、当時の人々の平均と比較しても相当なフィジカルお化けであることは間違いない。
よく漫画や映画などに出てくる不死身のキャラは大抵の場合用心が足りず、敵にあっさり先手を譲りがちであるが、彼女の場合も不死故の慢心があるのではないかと思っている。そう考えれば魔女の変装に何回も騙される説明がつく。己の肉体に絶対の自信を持っているが故の不用心なのだ。
『七人の小人』
廃村にて白雪姫を匿う個性豊かな小人たち。一人の例外を除けば全員が温厚で争いを好まない。以下に彼らを歳の順に並べて紹介する。
『先生』……最年長者。盲目で杖をついている。『魔の森の賢者』という二つ名を持つ。小人たちのまとめ役。
『寝ぼすけ』……その名の通り一日の大半を寝て過ごす。『先生』に次ぐ年長者だが、あらゆることに怠惰である。実は本気を出すと強いが出さない。
『幸せ』……過去のトラウマから逃れるためにシャブに手を出してしまった哀れな小人。現在絶賛監禁中。
『怒りんぼう』……若く荒々しい小人。怪力の戦士。キレると見境をなくすが、自分の非は素直に認めるので話は比較的通じる方。『先生』を尊敬しており、彼を傍で支える。
『くしゃみ』……鼻の粘膜が敏感な小人。彼が全力で放つくしゃみは地形を変えるほどの威力がある。
『おとぼけ』……髭のない小人。普段はぼんやりしているが、小弓の扱いに熟達している。臆病だが、仲間のためなら頑張れる偉い子。
『照れ屋』……隠密技術に長けた小人。ここ数年誰とも話していないし、誰も彼の姿を見ていない。夕食には毎回こっそり参加しているらしいが、誰も彼を認識できない。シュレディンガーの照れ屋。
『曇王』
この国の先代王。本名はヴァルデック。白雪姫の父親。病のせいで亡くなったとされている。現在は生ける屍として魔女の使い魔に成り果てているが、ときどき生前の勇敢で高潔な人格が顔を覗かせる。幼少から青年期にかけて『魔の森の賢者』に師事し、時代遅れの戦略や剣技などを学んでいた。
元々神聖ローマ帝国北部(現在のドイツ近辺)を任された一辺境伯に過ぎなかったが、故あって武力による独立を図る。後にローマお抱えの史上最凶とされる傭兵集団『ランツクネヒト』を味方に引き入れることに成功。小国ながら一騎当千の強さで陸戦最強と謳われるようになった。曇王という二つ名は、彼が前線に現れると空に黒雲が立ち込めることに由来する。
コイツが出てくると一気にダークソウル味が増す。一人だけ世界観が違う。一人ダークソウル。
【用語解説】
『この国』
今作の舞台となる国。現在のドイツ近辺に位置する。白雪姫の父親、ヴァルデックが一代で独立させた小国。『曇王』の項目でも述べたが、史実では神聖ローマ帝国北端の領土である。
曇王が病に伏してから周辺国によって徐々に侵略され、今は『魔の森』以外のまともな土地は残っていない。
『魔の森』
昼夜を問わず化け物が徘徊する危険な森。街道沿いの街や村の治安は兵士たちによって守られているが、そうでない場所を行く者に命の保証はない。
しかし実のところ、森に足を踏み入れた者の死因の殆どは底なし沼によるものであり、怪物の恐ろしさを語る話の多くは迷信や与太話である。
魔の森の底なし沼には文字通り底がなく、冥界に繋がっていると噂されている。怖れられる一方で、神聖なものとして崇める住民も多い。中世市民にありがちな森信仰である。この森信仰がマジで厄介で、これのせいで開墾が進まず、中世初期の農業は大いに出遅れていた。
作中の年代的には近世初頭(ルネサンス期?)だが、曇王がザ・ダークソウルという感じなのでみんなそっちの時代に価値観が引っ張られている。
『魔女狩り』
今作に登場する魔女狩りとは、ローマ教皇庁により審問や裁判なしの処刑を認可された武装集団である。教皇の免罪符こそ与えられているものの、各国の承認を受けずに国境を跨いで活動しているため、山賊紛いの無法集団として扱われることも多く、実際その認識は概ね正しい。16世紀後半当時は魔女狩り、魔女裁判の全盛期であり、彼らの活動にも気合いが入っている。
『死人返り』
生ける屍。いわゆるゾンビとは異なり、その身体は腐敗しない。『魔の森』の瘴気や沼、特殊な気候条件により屍蝋化しており、死霊術師にとっては保存が利く便利なアンデッドである。一定以上の電気的刺激を受けると魂が戻り動き始めるが、特に何かするでもなく森を当てもなく彷徨っている。
なお『死人返り』というのは元はと言えば歌舞伎用語で、斬られたやつがくるっと振り返ってから倒れることを言うらしい。
『混ざり』
獣と人の姿が混じった怪物。獣と人が交配した末に生まれたなとど噂されるが実態は異なり、要するに人狼のようなもの。森の瘴気に冒され、毛が抜け落ちたり身体の一部が変形してしまっている者が多い。俊敏で力も強いが、食べるものがほとんどないため栄養失調気味。人里を襲うことは滅多にないが、何故か国外からの侵略者に対しては異常な攻撃性を見せる個体が多い。正確には森を信仰せず、森を害そうとする者たちに対して襲いかかるようだ。
【その他解説など】
『時代設定について』
本作は原作の白雪姫と同じく、16世紀後半のドイツを舞台としている。しかし詳細な時代考証などが面倒なため、あくまで『お伽話の中の世界』という体で物語を進めることにした。筆者のこだわりや偏見により史実と異なる部分も散見されるが、その辺りは後々この解説の場で言い訳させていただく。
『史実の魔女狩り』
魔女狩りとは一般に魔女を吊しあげる行為そのものを指し、史実に魔女狩りという名の組織が実在したわけではない。教皇庁が発行した許可証で好き勝手やっていた連中がいたのは事実である。
『狩人の猟銃』
上記の登場人物の項でフリントロックライフルなどという謎の言葉が飛び出したが、16世紀当時の主流はマスケット銃(火縄銃っぽいもの)であり、フリントロック式(撃鉄に付いた火打ち石で火薬に着火する)が流行るのはもう少し後の時代である。さらに言えばライフルという言葉も当時は存在しない。ライフリングがあればライフルと呼称できるが、それが流行るのも少し後の時代である。銃は基本的に全てガンであり、片手で撃てる物はピストルと呼ばれたり呼ばれなかったりした。もっと言えば猟銃という括りもアバウトで、猟で使われる銃なら何でも猟銃である。銃が開発されてから間もない時代だったため、散弾銃と普通の銃の区別もない。散弾を込めればそれは散弾銃となり、普通の弾を込めれば普通のままだった。
ちなみに二連装式というのは文字通り銃身が二本付いたものだが、当時の現存品は二丁の銃を無理やりくっつけただけの代物であり、引き金も撃鉄も二つずつあった。当然、重さもほぼ倍である。狩人が力持ちということにすれば使いこなせなくはないが、猟銃としての運用は無理がある。そもそも引き金が二つあるとか使いづらい事この上ない。ここら辺でもう面倒くさくなったので、筆者はそのうち考えるのをやめた。
『こいつの撃ち出す鉛は音を超える』
一つ前の話で狩人が魔女に言い放った超絶かっこいい台詞であるが、ぶっちゃけ間違いである。当時の銃では弾は音速を超えない。また射程や命中率もひどく、百発百中とはいかなかったのが実情である。いいよもう何でも。面倒くさい。
『王様の超人設定』
何度も死の淵から生還して目立った後遺症もない、とんでもない生命力を持つ白雪姫。その父親ならさぞかし豪傑なのだろうということで、盛りに盛られた結果こういう感じになった。あと単純に強いおっさんが書きたかったというのもある。原作では全然こういう感じではない。影か薄いどころか影すらない。
白雪姫のモデルとなった人物の父親がヴァルデックという名の辺境伯であったのは事実。なんか雷操りそうな名前じゃね? せや、雷操らせたろ! という流れで曇王が生まれた。
『神聖ローマ帝国について』
現在のドイツからイタリア、フランスなど広大な領土を支配していた宗教国家。皇帝と教皇が権力を二分して統治し、ローマ帝国の正当な後継国を自称している。
この時代、免罪符なんて胡散臭いものを売り捌いたせいでルターくんがガチギレして暴れ回り、キリスト教世界はカトリックとプロテスタントに別たれてしまった。教皇の権威は凡そ半減、おまけに16世紀後半には皇帝まで落ち目になり(個人的には時代の流れを汲んだ名君だと思っている)、17世紀には神聖ローマ帝国は事実上分裂、小国家の連合体と化してしまった。その様を見たある哲学者からは『神聖wwローマww帝国wwwクソワロタwwww』とディスられている。
しかし教皇庁は魔女を含む悪魔の軍勢に立ち向かうための様々な機関や秘密組織を抱えており、ロマンは十二分にある。男はロマンさえあれば生きていけるのです。
『隣の国』
一口に隣と言っても色々あるが、本作において隣の国と言えばそれは大体イギリスを指す。物語が進むにつれ彼らにも焦点が当てられるので、詳細な解説は次回に持ち越すことにする。もう疲れた。面倒くさい。誰も読まねえよこんなページ。
誰も読まねえよこんなページと言っていたページが一番読まれているという卑劣な罠。