運転手転生~異世界いったから旅をする~   作:TSっていいよね

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心理描写をねっとりやろうとして一週間何も出来なかった馬鹿は自分です。
あとタグを色々追加しました。


才能

 

 

 

 

 

やあ。我が名はリィリル、元運送企業で働く旅行が趣味の一般トラック運転手。

今はギルさんのパーティーと一緒に町の外までパスクコヨーテを討伐しにきたところさ。

 

 

さて、あれからなんやかんやあって、ギルさんたちのパーティー、『屑鉄の斧』+α&俺で即興パーティーを組むことになった。組んだ理由はお察しの通り、俺の介護。

 

 

 

そしてその肝心のメンバーはというと、

 

 

まずは『屑鉄の斧』のリーダーで、赤い肌と胸に付いた大きな引っかき傷がトレードマークのギルさん。

ギルさんはゴツい見た目通り力が強いらしく、背中に背負ったその大きな戦斧を振るう…らしい。今回のメンバーの中で…というかあの町の中で一番強い。因みにパーティー名の由来はギルさんのこの戦斧だそう。

 

 

そして『屑鉄の斧』の剣士で、人族の血が混じってるらしいランゼル・ガーダンドさん。因みに見た目はほとんど人族と一緒。

北神流の中級剣士で、確か北帝オーベールの……兄弟弟子の曾孫弟子の弟子…?だとかなんとかで、もはや忍者だろ!って言いたくなるような技を使う、いわゆる奇抜派というやつ。だから全然普通に鎖鎌とか持ってるし、煙幕も持ってる。あと、斥候もやってるらしい。

 

 

次に『屑鉄の斧』の魔術師で、エルフっていう種族上何百年と生きてる…というわけではなくて、というかなんなら俺を除いたこの中で1番若い16歳のシークミルン・ドラゴンロードちゃん。

この歳で風の上級魔術師っていう結構…いや、とんでもなく凄い人。そして余談だけど、実はシークミルンちゃん、俺と同じような経緯で1年半前くらいから『屑鉄の斧』に仮加入してるらしく、そろそろ脱退して独り立ちするらしい。凄いよね。そうしたらギルさんが怒り…はしないとは思うけど泣き喚きそう。

 

 

 

それから『スターゲイジー』というどこかの魚のパイが脳裏をよぎる名前をした男女二人組のパーティーの、ローア・ミグルディアさんとロイズ・ミグルディアさん。ローアさんが女性でロイズさんが男性ね。

どっちもミグルド族っていう種族で、幼い見た目に青髪とかなり特徴的な外見をしてる。実年齢は30代らしいんだけどね。

そしてどっちも剣神流の中級剣士とそもそもそれなりに強いのに、種族特性である念話能力でコンビネーション抜群の連携をとってくるから、二人合わさり最強に見える。

因みにどっちもミグルディアだけど、ミグルド族は全員同じ姓を名乗るから血縁関係とかではない。夫婦とかカップルでも()()ない。うん、そう()()ね。この二人、ピュアッピュアな両片想い繰り広げてるからすっごい和むんだよ。同時に焦れったくもあるけど。

 

 

で、最後に討伐見習いの俺、リィリルと。

 

 

 

さて、これでもう何となくでもわかったよね。

そう、Cランクの魔物に対して町最強、北神流(奇抜派)中級剣士、風属性上級魔術師、剣神流中級剣士×2と馬鹿みたいに過保護なんだよ。

そりゃあ俺一人じゃあCランク依頼なんて達成出来ないだろうけどさ、いくら何でも人数多すぎるよね、これ。同行してくれるパーティー、『屑鉄の斧』か『スターゲイジー』のどっちかだけでいいじゃん絶対。

 

 

ほら、ギルさんとランゼルさんを先頭に左右に『スターゲイジー』の二人、後ろにシークミルンちゃんって感じで、俺をぐるっと囲んでるんだよ?もうこれは俺に同行してるっていうより俺を護衛してるって感じになってるじゃん。

確かに、俺が不死魔族っていうことは秘密にしてるから自分でいうようなことじゃないけど、未来ある若者ってことで過分なほど護られるっていうのはわかるけど。

 

 

 

まぁでも、ここらへん一帯は魔大陸の中でも安全地帯らしいから、やっぱりもうちょっと緩くていいと思──

 

 

 

 

 

「全員走れッ!!」

 

 

 

 

 

 

ギルさんが叫んだその瞬間、背後にドスンッ!と重い物が落ちるような音が鳴り響く。

 

 

 

 

思わず、ギルさんの指示も無視して振り返る。

 

そこには光沢のある、ヌラリとした流線型の細長く白い酷く巨大な影、それに張り付き怪しく『黄色』に光る、気味の悪いほど丸い双眸。そしてパックリと裂けているようにも見える赤い三日月のような口。そんな口から覗く特徴的な長く鋭い牙。

 

 

白牙大蛇(ホワイトファングコブラ)

魔大陸に生息する、危険度がBランクに指定されており、硬く魔術耐性のある鱗に覆われていて俊敏性の高い魔物。

 

 

現実逃避のように、そんなことを考えてしまう。

だって仕方ないじゃないか。誰が想像つくっていうんだよ、こんな状況が。Bランクなんていうバケモノと何も遮ることもなく相対して、睨み付けられるこの状況が。

 

 

さっきまでの、どこか遠足に行くような雰囲気はこいつの強襲によってまるでこれから地獄にでも行くような空気に一転する。

 

 

そんな空気に、死にたいと願っているはずなのに魂に染みついた下らない本能が逃げろと叫んでくる。

 

 

 

そんなとき、ふと疑問が浮かんだ。

 

 

 

………あれ?何で俺とこのバケモノとの間に何もないんだ?だって俺は他の冒険者達にぐるっと囲まれてて、こいつは背後から現れて、でも俺の後ろにはシークミルンちゃんが…───ッ!?

 

 

 

()()()()に気付いたと同時に、足にじわり…と妙な冷たい感覚が広がっていく。履いているブーツに、ナニカ液体が染み込んでいく。

 

まるで条件反射のように、俺はその理由を確認しようと下を見る。

 

見て、しまった。

 

 

「──ッッ…!?」

 

目線の先、そこにはつい先程まではなかった赤黒い水たまりが出来ていて、その中心には残り火のように淡く、されど深い『藍色』が色づいたシークミルンちゃんの頭がこちらを見上げていた。

 

シークミルンちゃんの瞳は嫌に虚ろで、ピクリとも動くことが無かった。

 

心が視えるこの魔眼があるせいで分かってしまう。この魔眼には死んだ者の心は映らない。映らないのに、シークミルンちゃんのこの頭には『色』が、心がまだ映っている。つまりまだ生きてるんだ、シークミルンちゃんは。

でも、もう助からない。その事実が、まるでシークミルンちゃんを見殺しにしているようで、既に荒みきった俺の心を更に死んでしまいそうな程に酷く痛め付ける。

 

しかし、目の前のバケモノはそんな俺を配慮なんてするわけもなく、鋭く不気味な視線を突き刺して、俺の恐怖を煽ってくる。

 

 

 

 

 

 

 

 

怖い恐いこわい怖い恐いこわい怖い恐いこわい怖い恐いこわい怖い恐いこわい怖い恐いこわい怖い恐いこわい怖い恐いこわい怖い恐いこわい怖い恐いこわい怖い恐いこわい怖い恐いこわい怖い恐いこわい怖い恐いこわい怖い恐いこわい怖い恐いこわい怖い恐いこわい怖い恐いこわい怖い恐いこわい怖い恐いこわい怖い恐いこわい怖い恐いこわい怖い恐いこわい怖い恐いこわい怖い恐いこわい怖い恐いこわい怖い恐────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

スパァン!と辺りに木霊するその数瞬前、俺の視界がブレる。

 

 

 

瞬間、何故か俺はさっきまでいた場所から離れた位置で寝そべっていた。

 

 

「ッグ…!?」

 

突然痛みが体全体に駆け巡る。

いつの間にか右脇が大きく抉れていたらしい。多分、あのバケモノに尻尾で吹き飛ばされたか何かだとと思う。

そのせいで、当然のように腕も背骨も肋骨も肺も胃も肝臓も腸も壊れてしまっていて、腸に至ってはお腹から零れ出てきてしまっている。他にも脚や頭なんかの体の至る所から血が流れ出ていく。

 

 

途轍もない寒気と激痛だ。

 

 

でもそれだけ。

 

 

『痛い』というだけで、意識が朦朧とするなんてことはない。

不死魔族は外傷を克服している種族なのだから、感じる痛みで悶えることはともかくとして、それが原因として意識が途切れるなんてことは起きない…らしい。改めて、俺が不死身のバケモノになったという事実を突き付けられているようで吐き気がする。

それに、体感でどういう怪我がどこにあって、この傷じゃあ治りきるのに時間が掛かると分かってしまうのが、生前に死因が分からぬまま死んだ俺を嘲笑っているようで、不愉快だ。

 

 

 

 

 

 

 

そうして、俺が俺を嫌悪してる間に、バケモノとの戦闘は始まっていた。

いや、戦闘というのは満点の表現ではないな、どちらかといえば蹂躙の方が近い。

 

俺の目に映るのは、死ぬ気でやった攻撃をあのバケモノがあしらう。そんな光景だった。

 

 

これが、Bランクの魔物とCランクの冒険者の差。

 

 

 

 

ランゼルさんの決死の攻撃は、『スターゲイジー』の二人の阿吽の呼吸で放たれる数多の斬撃は、バケモノには全くもって通用していない、とは言わないけども、明らかに効果が薄い。

その理由を挙げるとするならば、ランゼルさんも『スターゲイジー』の二人も、一撃の攻撃の軽さを速度で補うスピードタイプだから。ついでに言えばそんなタイプのために、三人は共通して軽装だった。

 

 

「ぅッ…!?」

 

だから、こんな風にバケモノのちょっとした攻撃でいともたやすく吹き飛んでしまう。

こうして、いともたやすくロイズさんが脱落した(死んだ)

 

 

 

 

本当の意味で戦いになっているのはギルさんだけだった。

ギルさんは豪快にその大きな戦斧を振るって、バケモノのその頑丈な鱗を叩き割っていく。少しでも多くランゼルさん達がダメージを与えられるように。

ただ、ランゼルさん達とは反対に、ギルさんの攻撃は一発一発が重い代わりにお世辞にも素早いとは言えない攻撃間隔。

それでも一応戦えてはいるのだから、町最強の称号は伊達ではない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

でも、それまでだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──少し、聞いたことがある。

CランクとBランクの差は()()()()だという話を。

 

冒険者の才能というのは、魔物を討伐出来るかどうかに重きを置かれている。そして当の討伐依頼はCランクからの為、そこでそいつがCランクを一つの通過点にするか終着点になるかで凡人と、そうでない才能ある者とがふるい分けられる。

これが本当のことなのかは分からないし、どこで聞いたかも忘れたようなこと。でも納得出来る話だ。

 

 

 

だって、現にBランクの魔物一匹にCランクパーティーが全滅させられたんだから。

 

 

ただ無残に負けたわけではない。あのバケモノの胴体に大きな傷を、一生治りきらない傷を与えた。鱗の多くを叩き割って、それを躰に張り付く無意味な物に変えた。

 

 

この戦いは無意味に終わったわけではない。

 

 

でも、それだけ。

 

ギルさんも、ランゼルさんも、ローアさんも、ロイズさんも、シークミルンちゃんも、才能がないわけじゃなく、

 

 

ただ高くない才を経験で取り繕っていただけ。

 

 

ただそれがありふれた凡庸な才能だっただけ。

 

 

ただ相方に依存しきった戦い方だっただけ。

 

 

ただいともたやすく全力を凌駕されただけ。

 

 

ただその才能以外が育つことがなかっただけ。

 

 

その全員が、ただ良くも悪くもCランクの冒険者なだけだ。

 

 

 

 

そして、俺がCランクでも何でもないただのDランクの冒険者というだけだった。

 

 

俺は何も出来なかった。指をくわえて、自分の体が治っていくのを感じながらただ呆然と、その悲劇を見ていることしか出来なかった。

 

 

不本意かどうかは関係なく、俺は転生してこの異世界に来て、心のどこかで自分が特別になったんだと、そう思っていた。

そう、思っていただけだった。

俺はずっと俺だ。これは言うまでもないような当たり前のこと。だけど、中途半端に死ななくなったせいで、俺は俺ではない何かに成った気分になっていたんだ。

違うだろ。前から何も違っていなかったんだ。体が違っても、気が違っても、俺は俺で、俺は一切俺という存在から違っていなかったんだ。

 

ずっとずっと俺は何処にでもいるような凡人だったんだよ。

悲劇も喜劇も群像劇も何もないただの背景の一部だったのが、どこかの何かが間違って異世界に来てしまっただけの、ただ死なないだけの凡人が俺だった。

 

 

 

だから、俺は何も出来なかった。

 

 

 

 

あぁ…眠い。

 

 

 

 

 

 




いい機会なので言っておきますね。
自分は、物語の主人公を主人公に物語を書かないつもりです。

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