運転手転生~異世界いったから旅をする~ 作:TSっていいよね
やぁやぁ。我が名はリィリル、元運送企業で働く旅行が趣味の一般トラック運転手。
今は自称『馬鹿の魔王』、バーディガーディを父に持ち、魔大陸でぞんざいな扱いをされている『魔界大帝』、キシリカ・キシリスを母に持つスーパーミラクルな5歳のお姫様さ。
さて、分かっていると思うがどうやら俺は生まれ変わって女になってしまったらしい。
と言うのも色々動き回れるようになってちらっと息子を見てみたら何とびっくり!家出してるではありませんか!暫く飲み込めなくて我が息子を探し回ったけどこの世界の何処にもいませんでした。
いやー、今世最大のショックだったわ。アレは。もう前世に還りたい。
それで話変わるけど、母上も父上も長生き過ぎて時間感覚狂ってるんだよね。だから「ついこの前」が50年くらい前の話とかザラで二人から情報収集しようとすると大変過ぎるだわ。
まあ、その関係で3年くらい前から母上も父上も出かけてるから、城の中にある本とかで色々この世界の情報を調べてみた。
それで分かったことは
・魔術の存在
・魔物の存在
・種族について
・魔眼の存在
の4つだけ。
めっっちゃ少ないだろ?何でかっていうとね、そもそもこの城に本が2冊しかなかったんだよ!しかもその内1冊は文字分からなくて読めなかったからな!
実質1冊しかないの何なんだよ!母上も父上ももっと本読めよ!
まぁ嘆いても本の冊数が増えるわけでもないのでここら辺で辞めておこう。
その俺が読める唯一の本は『魔界大帝』キシリカ・キシリスのお伽話である。絶対に父上の本だな。
で、その内容はまあ、人族と魔族の戦争の中での母上の英雄譚だった。結局最後は負けてるんだけどね。
ま、そこからちゃんとした情報らしきものをかき集めたらさっきの3つになったって感じだ。
それぞれを調べて分かった範囲を説明すると、まず魔術について。
魔術は『攻撃魔術』、『治癒魔術』、『召喚魔術』の3つがある。
そして魔術には属性という物が存在し、得意な属性は人によって違う。規模によって等級が存在する。
はい。
え?もう終わりかって?そうだよもう終わりだよ。元が絵のない絵本みたいな子供でも楽しめるフワッとした内容だったからな!
むしろよくぞここまで纏められたなって褒めて欲しいくらいだわ!
んで、魔物について。
魔物と呼ばれるバケモノがいる。
以上。
…なんか文句あるかよ?
次、種族について。
人族、
以上。
…うん。
最後に魔眼について。
特殊な能力を持った眼。『魔眼大帝』とも呼ばれるキシリカ・キシリスは12の魔眼を持ち、他者に与えることができる。
まぁ、魔眼に関しては読むまでもなく存在は知っていた。なんせ母上の代名詞とも言えるものだしね。
そして面白いのが、実は俺も魔眼を持っているのだ。
ほら、母上っていつも黄色のオーラを纏ってるじゃん?たまにオレンジだったり黄緑っぽくなったりしてるけど。
それが俺の持つ魔眼の能力だ!
正確には心を色として視ることができるっていう物。
ただちょっとこれ分かりづらいんだよね。何でかっていうと…
イエロー:喜び
マゼンタ:怒り
シアン:悲しみ
彩度:感情の強さ
明度:精神状態
調べてた感じこれらを組み合わせて心が色として見える。
で、色の種類ってカラーサークルを知ってれば分かるんだけど、彩度と明度が一定でも割と分かりづらいんだよ。例に挙げるなら、単体でみると朱色なのか橙色なのか分からない。みたいな。
そこに彩度と明度が加わるわけだからもう大変。緑系統は判別がマジ難しい。
ま、それで面白半分で試しに自分を水面の反射越しに見てみたんだけど、くっろい緑色してた。
黒いと何を意味するかと言うと、答えは鬱状態。
どうやら俺は精神的に病んでるらしい。
…いや、本当は見るもっと前から気付いてた。気付いてないフリをしてた。
睡眠時間が赤ちゃんの頃から今に至るまでほとんど変わっていない。それに睡魔にいつまで経っても抗えない。
明らかに異常だ。何かしらの精神病に罹っているのは明白だろう。
それでも俺自身の異常に無視をしていた。だってその原因は異世界に来てしまった事だから。戻りたいと、還りたいと願ってもどうすることも出来ない。
仮に還れたとしてもあっちの俺は死んでいる。こんな幼い女の子が生まれ変わった俺だと言っても信じてもらえるわけがない。
と言うか今の俺は、リィリルは不死魔族。死ななくて角の生えた人間かも怪しい生物なんて研究対象に決まってる。
だから知らない世界で、魔物なんてバケモノが蔓延る物騒な世界で長い長い第二の人生を強要される。
不死だから死ぬ事も出来ない。死ねたとしてもまたリィリルとして復活するだろう。
想像しただけで辛くなる。
…眠い。
◇◇◇◇◇
夢を見る。
その夢は何気ない前世の一日。
朝目が覚めて、簡単な朝ご飯を食べ、着替えて出社する。
それで夜まで働いて、家に帰ってきたら疲れてる中で夜ご飯を食べて、お風呂に入って目を瞑る。
今となっては悪夢とも言える幸せで残酷な夢。
現実は母上も父上も帰ってこない自分だけの孤独な城で、独り黄色い空を眺めて異世界に来てしまったことを実感して枕を濡らす。
そんな無気力で怠惰な生活を…何年だろうか、とにかく沢山の月日を浪費した。
そんなある日、
『このままでいいの?』
電話越しの、本物とは少し違う声が俺の耳に木霊する。
「何のこと?」
俺は率直にそう返す。
本当に何のことだろうか?彼女と早く結婚しろということなのだろうか?だとしたら遠回し過ぎると思うのだが。
『だって…あんたずぅーっとここに入り浸ってるじゃない』
「…は?」
何を言ってるんだ?母さんは?だって俺は一人暮らしをしてるし、実家だって最近は帰省してない。そもそも今電話で話しているのだから、“ここ”が何処を指すのかも分からない。
『寝言は寝て…いや、今は寝てるんだったわね。とにかくさっさと夢から覚めなさい』
「は…!?…ちょ、待てよ母さん!何でここが夢って分かったんだよ」
本当に意味が分からない。だって母さんは夢の一部のハズだ。夢が夢だと気付けるわけがない。
『そんなの、俺だからに決まってるでしょ?」
母さんの声が段々と俺の声に変わっていく。
それに伴ってこの夢の世界がボロボロと崩れていく。
「俺だって分かってるんだよ…このままじゃただ辛いだけだって…」
「なら動こうよ」
「嫌だ…もう俺は生きたくない…何もしたくない」
「ああ、だから死のう」
「出来るわけ無いだろそんなこと…俺は不死魔族だ」
「大丈夫。俺を殺すのは七大列強の2位、龍神だ」
「会えるのか?父上の言っていたことが本当なら龍神は確か世界を放浪してるんだぞ?そもそも本当に殺せるのか?」
「分からない。だけど不死魔族を殺せないなら世界は不死魔族だらけになってるハズだ。だからとりあえず龍神に会えるように俺も旅をしよう、俺が死ねるために」
「…そうだな、そうしよう。じゃあまずは魔術を覚えるか」
「どうして?俺が強くなっていいことがあるか?」
「単純に金がないと動けないだろ」
「……確かに。ま、じゃあさっさと起きよう」
「だな」
こうして世にも奇妙な自分自身との人生相談は幕を閉じた。
◇◇◇◇◇
夢から現実に戻ってくる。
三者面談でも二者面談でもなく一者面談とは。
何ともおかしな夢だった。おかしな夢だったが、この苦痛しかない人生に目標は出来た。
さて、まずは世界を渡れるほどには強くならなければ。
そうだな……1年くらい…?…うん、そうしよう。とりあえず1年で魔術を覚えて強くなろう。
そして旅に出よう。不死の俺が死ぬための。
待っていてくれ龍神。いつかあなたに殺されに行くから。
過眠症をどうやって改善するのか考えてくれてましたか?
残念、改善しませんでした。