運転手転生~異世界いったから旅をする~   作:TSっていいよね

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運転手、『会うと死ぬ(デッドエンド)』と会った

 

 

 

 

──『会うと死ぬ(デッドエンド)

 

それはその名の通り、出会ってしまったら殺されてしまうと言われている、白亜の槍を操る種族、スペルド族。その生き残りの一体を現す呼び名。その個体は一際凶悪で、子供ばかりを執拗に狙うという。

そんな『デッドエンド』が最近、今俺がいるリカリス近辺にいるらしい。

 

 

 

 

 

 

 

やあ。我が名はリィリル、元運送企業で働く旅行が趣味の一般トラック運転手。

今は前述した『デッドエンド』を名乗る謎の三人の一団がギルドに入って来たところさ。

 

 

さて………これどういう状況?

 

いやさ、大前提としてスペルド族の髪って緑で、その上額に赤い石が付いてるんだよ。

それなのに人族らしき茶髪の少年は、その少年の後ろにいる()()のオッサンがその『デッドエンド』だと言い張ってるんだよ。確かに額に赤い石がありはするけどさ、明らかに違うじゃん。

 

しかもギルドにいる冒険者全員から笑われてるのに、怒ってる振りこそしてるけど『色』はみるも見事な黄色だし。

自分の言葉が嘘だと笑われてる状況で、何でそんな喜んでるんだよ。そんで何で怒ってる振りしてるんだよ。自分の心に正直になれよ。

 

 

あー…もしかしてアレか?気が狂ってるのか?いやでもそこそこ鮮やかな『色』してるから精神をおかしくしてるわけじゃないのか…

あ、でも後ろのルイジェルドって呼ばれてるオッサンは少し黒いな?ただそれは茶髪の少年の言動と心のチグハグさには全く関係ないもんな…

 

茶髪の少年の隣にいるフード被った女の子も何も喋らないし、『色』も少しくすんだ薄い黄色してるくらいで特に反応示さないし。

 

 

本当になんなんだよあの一団。

 

馬鹿にされて喜ぶなんてドMか何かなのかね。それとも凄腕の詐欺師とか?

 

 

……いや待って、この説十分あり得る。

仮にこの説が本当なら、俺が考え得る限りしっかり筋が通ってるはず…

あ、この説っていうのはドMの方じゃなくて詐欺師の方ね。

 

 

仮に、あのルイジェルドとかいうやつが本当に『デッドエンド』だったとして、あんな明らかに嘘っぽいことを言ってるやつがいたら嘘だと思うに決まってる。そうしたら『デッドエンド』は自らを『デッドエンド』だと喧伝していても合法的に活動できる。だってその『デッドエンド』は偽物だっていう共通認識があるんだから。

今青い髪は、騙すためってことで染料か何かで染めてるとかなら矛盾も疑問もない。

 

 

ほら、見事な『デッドエンド』は偽物だっていう思考誘導が完成したよ。

 

うん、我ながら良い推理じゃないかな?あ、魔眼で心を見るっていうズルはしてるのはご愛嬌ということにしてね。

 

ただまぁ、目的が一切分かんないってことだけが懸念点かな。町に入って人を殺し回るっていうなら『デッドエンド』じゃなくても怖がられるに決まってる。

 

だから結局、謎の一団であることには変わりないんだけどね。

 

 

 

そんな考察を無駄に繰り広げているうちに、その渦中の一団はギルドのカウンターまで移動していて、受付嬢の人に大声で話しかけた。

 

「おい職員!冒険者登録がしたい!」

 

 

 

瞬間、ギルド全体からうるさいほど愉快な笑い声が沸き起こる。勿論俺も笑った。

 

逆に誰が堪えられるんだよ!『会うと死ぬ(デッドエンド)』と恐れられてる存在が、新人冒険者になるって聞いて!

例えるならアレだ、国単位で名の通ったヤクザが真面目に就活始めたみたいな感じ。そんなこと聞いたら誰だって笑うに決まってるじゃん?

『デッドエンド』が偽物なら、そのヤクザを名乗っていながら就活に勤しむ馬鹿なやつって感じ。

 

 

「で、デッドエンドが、に、新人(ニュービー)だってよぉ!」

「げはっげほっ……腹痛ぇよ!」

「すげぇ、お、俺、デッドエンドの先輩になっちゃった!」

「そ、それマジ自慢できるわ!」

 

そうなれば『デッドエンド』をただ騙ってる馬鹿なやつだと思ってる連中は、此処ぞとばかりにあの一団を煽っていく。

本物だとしたら今笑ったやつら全員我先にと一目散に逃げだすのにさ。

俺もあの説が本当かどうかは五分五分って思ってるんだけど。

 

 

 

「うるせえな。職員の声が聞こえないだろうが!」

 

振り返りながらそう怒鳴る茶髪の少年。

今回のは振りじゃなくて本当に怒ってるね。喜びの方が圧倒的に強いけど。

 

「わ、わかった、わかったよ」

「さ、最初の説明は大事だもんな…ぷすす」

「くくく」

 

最後に煽ってたやつらはそう言って、そこからは僅かに笑い声が漏れ出るだけで静かになった。

まぁ、冒険者の彼ら彼女らも『デッドエンド』を騙ってる馬鹿なやつを酒の肴にしたいだけで、別に新人冒険者の誕生を邪魔したいわけじゃないんだろうね。

性格は悪いけど、取り返しがつかないほど性根の腐った悪人ってわけではないんだよ、大半の冒険者っていうのは。

 

 

 

 

さて、あの一団のことは正直気にはなるけど俺に関係ないし、いつも通り害虫駆除してくるとしようか。

 

うーん…今日はもう良い害虫駆除ないなぁ…一番良さげなやつでも石銭6枚で出来たての小さい蜂の巣の駆除か。備考もみた感じまだ成虫も少ないだろうし、その分速く終わりそうだけど。

 

それじゃあささっと駆除してくるか。もう夕焼けのオレンジ色が覗いてくる時間帯だしね。

 

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

 

想定通り依頼がかなり速く終わって、採ったハチノコをつまみながら『狼の足爪亭』に帰ってきた。

最近は俺の布教のかいもあって、クルトくん達も虫を食べ始めたからね、お裾分けに残して持って帰ってる分から一、二匹をつまんでるのさ。うまうま。

 

 

 

そうして聞き慣れた古い木材が擦れる音を立てながら宿の扉を押すと、クルトくんが何故か見覚えのあるフードのついたローブを纏った俺と同じくらいの身長の人─ここからじゃ性別は分からないけど多分女─をナンパしていた。

 

 

えぇ…クルトくん…何してんの?

 

あー…やっぱりそういうお年頃なのかな?まぁ、確かにね?確かに彼女欲しいっていう気持ちは分かるよ?よぉ~~く分かる。でもさ、ナンパはちょーっといただけないよね、うん。しかも無視してる相手にさ。これは紳士じゃないよね。

ほら、相手さんの『色』凄い赤いよ?しっかり怒ってるよ?だからもう辞めな?慰めてあげるからさ。

 

 

ただまぁ、それはそれとして成長したね。クルトくん。初めて俺に話しかけたときはあんなに声が震えてたのに、今は少しも震えてなんかいない。どこかで練習でもしたのかな?

何にせよおじさんは嬉しいよ。

 

 

 

…あ、ところで思い出したんだけどさ、そのクルトくんにナンパされてる人、あの『デッドエンド』を名乗る一団にいた女の子だよね?

ということは近くに残りの二人も…うん、カウンターのところにいるね。

 

 

そうしてチラリとクルトくん達から目を離した瞬間、ビッという布が千切れる音が聞こえた。

それだけならよかった。問題なのはその後に響いた女の子の叫ぶような意味が分からない言葉と、人を殴ったような鈍くて低い音。それに加えて大きな質量をもつ物が壁に叩き付けられる音が遅れて木霊する。

 

 

……ちょ!?え!?待っ!?え!?なんか三人纏めて吹っ飛ばされてるんだけど!?!?しかもクルトくんが沈んでるし!?

 

 

『■■■■■■■■■■■■■■!』

 

しかし、クルトくんが沈んだとしてもローブが破れて赤い長髪を露出させた『色』の赤い女の子は止まらない。そのまま女の子は足を思いっきり持ち上げる。

 

 

マズっ!?このままだと二人もやられる!?ちょ!?ああもう!間に合えッ!!

 

冗談抜きで二人の身の危険を感じ、俺は腰にこさえたナイフを瞬時に取り出して、そちらの方向に向かって魔力を込めながら全力で投擲する。

 

 

『■■■■■■■■■!』

 

ナイフを瞬時に取り出すといっても、僅かに生まれる小さなその隙に、女の子はまた意味が分からない言語を発して鳩尾を蹴りつける。

今度はバチロウくんに。

そしてそのまま女の子はその拳の照準をガブリンくんへ合わせる。

 

 

そして俺の投げたナイフは、狙い通り女の子に当たることなく、サクッと女の子から少し後ろの位置の床へと突き刺さる。

 

 

当然そうしている間に、怒れる女の子の握りこんだ右手がガブリンくんへ放たれてしまう。

しかし、ナイフが突き刺さったその瞬間、俺の投げたナイフを中心に透明のドームが展開されて、そのドームの壁は見事女の子の拳を受け止める。

 

 

ふぃー…間に合ったぁー…!

いやー、()()()()()()()()()()()()作っておいてよかったよ、ホントに。ありがとう過去の俺。

作ったときはこんなこともあろうかと…とかそんな感じでは無くて、完全にジョークグッズとして作ったんだけどね。

 

 

 

 

 

『■■■、■■■■■■、■■■■■■■■■、■■■■■!』

 

 

 

俺がお疲れムードを出してると、女の子は結界に向かって拳を叩き付け始めた。

……え?まだヤる気なの?三人中二人を落としておいて?しかもナンパの主犯は落ちたその内の一人だからね?それでもまだヤる気なの?いくら何でも獣過ぎないですかね、この女の子。

 

というか、そろそろ結界の魔方陣に込めた魔力切れる頃合いなんだけど……止めに入らないとヤバい…!ガブリンくんもヤられる…!

 

 

冷や汗を流しながらガブリンくんと女の子の間まで走る。

 

「ストーップっ!!」

『■■■■■!■■■■■!』

 

そうして魔方陣の魔力が切れる瞬間、何とか間に合って女の子の動きを止められる位置に潜り込めた…が、なんか俺と力が拮抗して押し返せない。

え?俺、これでも筋トレを毎日欠かさずやってるんだけど?同年代よりもかなり厳しくトレーニングしてる自信あるんだけど?

そりゃ、暴れるこの女の子を下から止めてる分、俺の方が強くはあるんだけどさ。そういうことじゃないじゃん。なんで同い年くらいの女の子が俺と拮抗できるの?自信なくして泣くよ?

 

 

というかさ…そこのお二人さん?この女の子のお連れ様…じゃないな、多分保護者かな?うん、それで保護者のお二人さん?見てないでこの子止めてくれません?

 

「見てないで、そこの二人も一緒に止めて!」

「あ、はっはい!」

 

 

俺の声にそう応えて、茶髪の少年は女の子を…説得?をし始めた。喋ってる言語は分からないけど、多分女の子が叫んでるのと同じ言語だと思う。

 

 

 

 

そして、茶髪の少年の説得が成功したのか、女の子は暴れるのを辞めてくれた。

言葉が分からないから憶測だけど、女の子の口からは謝罪の文言は出てこなかった。

 

 

 

 

 

 

 





ルーデウス(あの子、エリスと力で拮抗してる…怖っ…)


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