運転手転生~異世界いったから旅をする~   作:TSっていいよね

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※前々話を読めば分かりますが、小鳥とはリィリルの二つ名です。一回だけ出てきました。

ルーデウス視点から始まります。


『デッドエンド』と『小鳥』

 

 

 

『狼の足爪亭』で『トクラブ村愚連隊』の野郎三人衆と『小鳥』ことリィリルと一悶着ありつつ出会った翌朝。

 

 

宿の食堂で、マズいが食えない事はない朝食を食べていると、奥からアメジストのような紫の髪を揺らしながら、俺と同い年くらいの山羊のような角と黒曜石のように黒い肌を持つ、虹色に潤むオッドアイを輝かせる幼い少女、リィリルが顔を覗かせる。

 

昨日はエリスと互角の怪力と謎の結界的な魔術ばかりに目がいっていたから気が付かなかったが、今改めてリィリルの服装を見るとこれがかなり際どい服装してる。

 

肩だしで真ん中も空いていて臍が見えているような、黒い布を紐で結って留めただけのような服に、ショートパンツとブーツ。そして装備としての籠手。

あとは角にアクセサリーを付けてるだけの為、肌面積がとんでもないことになっている。ナニがとは言わないが、こんな状況じゃなければとても捗りそうな見た目だ。眼福眼福。

 

 

「あ、おはよう」

「おはようございます」

 

挨拶を交わしてからは俺たちの間に会話はない。

昨日会ったばかりの浅い間柄だから当然だ。

 

だが、何日もかけて少しずつ親密な仲になっていき、俺たちが魔大陸を出る時、魔大陸に残るリィリルとまるで今生お別れのように抱擁を交わし…そして幾年かの時を経て運命の再会をする。やがて俺たちは人生を伴にすると誓う──…

 

と、そんな感じでいずれはうっふんあっはんな関係になってみせる!目指せハーレムエンド!

 

 

…あ、いや、やっぱり辞めておこう。俺は紳士な男、パウロみたいなお手つきをあちらこちらに作るクズではなく、ちゃんと妻に操を立てるナイスガイなのだ。

あとついでにさっきからエリスの視線が途轍もなく痛いからな。うん。

 

すると突然、リィリルから声をかけられる。

 

 

「そういえばルーデウスくん、この後ちょっと時間ある?話したいことがあるんだけど」

「はい、大丈夫ですよ」

 

 

おいおいおい…!これってまさか…告白か!?

 

ごめんシルフィ、エリス。

俺、一足先に大人になってくるよ。

 

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

 

「着いてきて」

 

俺もリィリルも朝食を食べ終わり、リィリルに言われるがまま宿の外に出て直ぐの路地に入っていく。

 

その路地はヤンキー漫画よろしく町の不良どもが生息している…なんてことはなく、むしろ怖いくらいに人の気配がない。

 

 

告白とか冗談のつもりだったんだが…本当に告白なんじゃないのか?これ。

 

俺には将来を誓った幼馴染みと契りを交わしたお嬢様がいるんだ。申し訳ないが君と付き合うことは……

 

 

「さて、ここまで来れば良いかな」

 

突然、ピタリとリィリルが静止して、俺の方へ振り返る。

 

 

 

「こんなところまで連れてきて僕に話って何でしょうか?」

「ごめんね。でも、お互い人に聞かれたくない内容だろうから許して欲しい」

 

おいおいおい、おいおいおいおいおいおい…!!

お互い人に聞かれたくない内容って…本当の本当に告白なのか!?

 

とても嬉しい…だが、こんな状況で受けるわけにはいかない…!最優先事項はエリスと共に故郷へ帰ることと、スペルド族の汚名返上。

 

そこを履き違えてはいけない。

俺の私情で無駄に時間を浪費するなんてもってのほかだ。

 

だからこの告白は断るしかない…

クソッ…こんな状況だったばかりに…ッ!!

 

 

 

「それじゃあさっそく本題から言おう」

 

来たっ…

 

「ルイジェルドってやつ───」

「ごめんなさい!!」

「──え?」

 

……あれ?今、「ルイジェルド」って言った?

 

 

………………………………………

 

…………………………………

 

……………………。

 

もしかして:俺の早とちり?

 

 

「すみません…続けてください…」

「?えーと、それじゃあ…続けるよ?」

 

 

そうして、リィリルは話し出す。

 

 

「ルイジェルドってやつ、スペルド族でしょ」

 

…え?そんなこと?

もしかしてギルドで俺たちの話を少し聞いたとかか?そしてそれを事実かどうか知ろうとしてるみたいな。

 

なら昨日と同じようにすればいいだけだな。

 

「ええ、そうですよ。…もしかして貴方も嘘だと言うんですか?」

 

よし、これで完璧だな。

 

 

「ああ、違う違う。嘘だと思うように思考誘導してるのは分かってるから」

 

 

 

 

 

 

 

 

──は?

 

 

 

 

なんで…なんでバレた?

どこでバレた?

 

いつ俺はボロを出した?いや、エリスか?…違う、リィリルに人間語を理解している素振りは無かったはず。

 

 

額から汗が噴き出す。

 

 

まさか町に入る前に見られた?…違う、そんなことあのルイジェルドが見落とすはずがない。

 

分からない。なんでバレたんだよ。

俺は完璧にやってたはずだ、少なくとも、一日でバレるようなことはしてない。

 

そんな疑問と底知れない恐怖が思考を占拠する。

 

体中から血の気が引いていく。

 

 

 

 

 

違うだろ。今考えなくちゃいけないことは。

 

口止めだ。口止めをしないといけない。

でもどうやって?

 

 

金か?

でも今持ってる金なんて雀の涙程度の量、とてもじゃないが口止めできるわけない。

 

却下。

 

 

 

何でも言うこと聞くとか?

でもここは前世みたいな平和な世界じゃない世界の更に一際危険な場所だ。何をさせられるか分からない。

 

却下。

 

 

 

………殺すか?

でもリィリルが突然いなくなったら不審がられる。

 

 

 

 

…………本当に?

だってリィリルは冒険者、姿を消しても町を出たとか魔物に返り討ちされて死んだと思われても違和感はない。

 

 

ないのだ。殺さない理由が、ない。

 

心臓の鼓動が、呼吸が荒々しさを増していく。

 

 

殺したくない。

けどダメだ。だってそれは俺の我が儘でしかない。

 

 

 

 

俺はこの世界で本気で生きるって決めただろ。

 

 

 

 

だから…ここ(殺し)を踏み止まっていたら、ダメだ。

 

 

 

 

震える手を持ち上げる。

 

 

杖は使わない。

リィリルは俺が無詠唱で魔術を使えると知らないのだから、杖を使ったら無詠唱の強みである予備動作の少なさの意味が弱まる。

 

 

両腕を、リィリルに向ける。

 

 

「あ、安心して良いよ。これを言いふらすつもりはないから」

 

リィリルが何か言っているが、脳がそれを処理しようとしない。いや、わざと無視しているのかもしれない。

 

でもそんなことは今どうでも良い。

 

 

 

 

震えるせいで合わせづらい照準を、何とか合わせる。

 

 

心臓が煩い。

 

 

 

 

 

 

そして俺は─────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

────ドタッ…

 

 

 

 

一つ、ナニかが倒れることが響いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 

 

 

 

やあ。我が名はリィリル、元運送企業で働く旅行が趣味の一般トラック運転手。

今はルーデウスくんに「ルイジェルドってやつが本当に『デッドエンド』なこと知ってるぜ」って言ったら、何故か突然手のひら向けてきて気絶されたところさ。

 

 

さて…え?本当になんで気絶した?

俺何もしてないよ?ただ単にさっきのこと伝えただけだよ?

そしたらさ?急に『色』が暗い紫になっていったんだよ?これ、俺悪いのか?

 

まぁ、間違いなく精神状態を悪くしたのは俺が切っ掛けではあるんだけどさ。

 

でもしっかり「言いふらすつもりはない」って言ったし、俺に絶対の責任はないよね。うん。

そう言ってもルーデウスの精神状態を良くすることは無かったけど。

 

 

……あ、もしかして精神が限界過ぎて聞こえてなかった可能性とかある?

 

………それでも俺は悪くない。

 

 

 

 

さて、今はそんなこと置いといて、俺は気絶した人をこのままにしておく外道になった覚えはないから、とりあえずルーデウスくんをお仲間のところまで運ぶか。

本当にごめんね。ルーデウスくん。

 

 

 

そうして俺は、気を失ったせいでぐったりしたルーデウスくんを背負う。

 

背負ってみて思ったのは、ルーデウスくん、魔術師やってる割にはしっかり鍛えてるんだなぁ…っていう。

 

そりゃあ俺とかクルトくんたちとか、あと『デッドエンド』の女の子改めエリスちゃんとかと比べるとそこまでなんだけどさ、意外にもがっしりしていて男の子って感じの身体付きなんだよね。

 

 

あと、別に俺は筋肉の専門家とかじゃないから分からないけど、何となく最近急造した筋肉ではなさそうなんだよ。

 

何でそう思うかって言われると言語化しにくいんだけどさ、こう、筋肉に振り回されてなかったというか…身体の使い方が分かってる動きをしてたんだよ。

 

まぁでも、もっと鍛えた方がいいんだけどね。俺個人の意見としてはだけど。

 

 

………いったい何の話してるんだ?俺は。

 

 

 

閑話休題。

 

 

ルーデウスくんを背負った俺は、路地を抜けて宿の中へ入る。

するとロビーには、ルイジェルドさんと、エリスちゃんが準備万端な様子でルーデウスくんを待っていた。

 

因みに、エリスちゃんの『色』がオレンジがかった黄色をしている。少し待たせちゃったからかな?

 

 

更に待たせることは申し訳ないが、俺とエリスちゃんとでは言葉が伝わらない。それでもせめて心の中では謝っておこう。ごめんね。

 

よし、それじゃあルーデウスくん降ろしてさっさとギルドに行きますか。

 

 

 

 

そうして、ルーデウスくんをゆっくりと降ろし、ロビーにある椅子に座らせる。

 

もう装備とかの準備はしてあるから、そのまま宿を出ようとすると、渋い声で待ったの声をかけられる。

 

「一つ質問だ」

「何か?」

 

その声の主はルイジェルドさん。つまり、『デッドエンド』所属の『デッドエンド』役をやってる『デッドエンド』本人様だ。

…こう言うとなんかチープな雰囲気だな。不思議。

 

 

 

 

 

そんなくだらないことを考えていると、元々険しい顔を更に険しくして、俺に問いかけてくる。

 

 

「ルーデウスに何をした」

「何をしたも何も、ただ話しただけ。そしたら突然気絶したんだよ」

「そんなわけがあるか」

 

ルイジェルドさんは俺に殺気にも似た敵意を向ける。

 

信じられないかもしれないけど、あったんだよ、それが。

 

 

「言え。お前は何をした」

「さっき言った通り、話したこと意外何もしてないよ」

 

昏いマゼンタに覆われたルイジェルドさんは、それでも背中にある槍を抜いてこない。こんな『色』になるほど怒ってるのに。

噂より理性的なんだね、『デッドエンド』って。『会うと死ぬ』は名前負けだったらしい。だって俺含めてまだ誰も死んでないし。

 

 

 

……そういえば、確かスペルド族って生粋の槍使いの種族だったよね。

そんな種族の頂点に立つ(『デッドエンド』)の槍なら、()()()()()かな?

 

うーん…まぁ、試してみる価値はあるよね。

 

 

 

 

「ところで、そんなに聞きたいなら槍を抜けばばいいんじゃないかな?」

「そんなこと──」

 

「『会うと死ぬ(デッドエンド)』なんだよね?なら子供を殺すくらい朝飯前のはずでしょ、悪名高きスペルド族サマ?」

「っ…!」

 

軽く煽ると、俺の発言のどこかに地雷でもあったのか、ただでさえマゼンタ一色だった『色』の彩度が更に上がっていく。

 

「貴様に何が分かる…!噂に流されているだけの貴様に、誇り高きスペルド族の何が分かるッ!!」

 

 

どうやら地雷はスペルド族を貶すことだったらしい。

槍は抜いてくれなかったけど、胸倉…というか胸にある服を留める紐を掴んで、俺の軽い体を持ち上げた。

 

良いね。そのまま俺を殺してくれるとなお良しだ。

 

 

 

けど、そこで邪魔が入る。

 

 

 

『■■■■■■!■■■■■■■■■■■■■■■■!』

 

 

エリスちゃんだ。

 

やっぱり俺にはなんて言っているのか分からない。

もしかしたら、俺が分からないのを良いことに好き勝手悪口言ってたりするのかな?

そうならそれは是非とも止めて欲しい。俺は死にたいだけで罵倒されたいわけじゃないんでね、悪口は普通に傷付く。

 

 

 

すると突然、重力に逆らっていた俺の体はストンと落ちて、地面と再会する。

理由は単純。エリスちゃんがルイジェルドさんの説得に成功したからだ。

 

そして、エリスちゃんが俺をキッと睨んだあと、ルーデウスくんを背負って部屋へと帰っていった。

 

 

 

 

 

 

うーん、残念。

 

まぁ、思いつきだったから期待はしてなかったし、良いか。

それじゃあ今日もギルドに行こう。

 

 

良い害虫駆除の依頼、あると良いなぁ。

 

 

 

 

 






これまでリィリルの精神が狂ってる描写がなかったんでね、やっとこういうの出せました。
あと外見描写もですね。公式キャラ紹介風のイメージ絵載せときます。

【挿絵表示】


どうでも良い裏話ですが、今までリィリルの見た目の情報が出てこなかったのは今世の自分を見てなかったからです。
ずっと今までも、これからも自分のイメージの見た目は前世の見た目のままなんです。気持ち悪いですね。


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