とても自分好みの作品で、誰が書いたんだろうとユーザーネームを見ました。
自分でした。
自分しかこの作品の続きを書けないので、書くことにしました。といっても仕事の傍らなのでちょっとずつですが……
再び皆様のお楽しみになれば幸いです。
平穏と嫌疑
「あれ、副長! もうご飯いいんですか?」
「あ……うん。今日はお腹いっぱいだから」
この日、チヨコはいつもの半分ほどの量で朝食を終えた。
珍しい出来事に、今日の朝食係を務めるハナエが首を傾げる。
「アレだろ、ダイエットだろ」
「えっ!? ハスミ先輩みたいにですか!?」
「え、ケツ長、モチモチから卒業すんの? 需要あんのに?」
「ンもう。それ、どこの需要~?」
たゆたゆたぷたぷと見習班やハナエからの可愛がりを受けながら、チヨコはころころと笑う。
食事が喉を通らない、というわけではない。いつもの半分と言っても、そのいつもが2人前なのだから充分健啖だ。
ミネが見ていたらウンウンと肯いていただろう。そう考えながらも、チヨコは話題を変えることにした。
「セリナちゃん、風邪は大丈夫そう?」
「あ、はい。おかげさまで回復しました!」
「お、セリナちゃんどしたー?」
「D.Uの港から落っこちて風邪ひいたんだと」
「ありゃあ。あそこの海はきったねえからなあ、副長、精密検査してやんなよ」
「あはは……今は問題ないですよ。元気いっぱいです!」
チヨコの問いに、セリナが微笑んで返す。
先日、便利屋68の手助けをしていたセリナだったが、便利屋共々D.Uの海に落ちた彼女は風邪をひいてしまったのだ。
「……団長がいないのに私まで休んでしまって、申し訳ありません。これから、その分がんばって働きますから!」
「病み上がりなんだから、無茶すんなよなぁ」
「そーそー。ゴリ長がいねー分、患者の数だって減ってんだからよ」
「そ、それはまあ、そうだと思いますが……!」
救護騎士団の業務を休んでしまったことだけが、セリナが克己する理由ではないだろう。
僅かに見えたミネの後ろ姿。彼女が救護の為に戦っていることを知ったセリナは、彼女なりにできることを頑張ろうと意気込んでいるのだ。
「あんまり無理しちゃ、シャーレの先生だって心配するんじゃない?」
「う。で、でも、私だって先生のこと、いつも心配していますから……!」
「じゃ、お互い様で休んでもらえるよう、まずはセリナちゃんからしっかり休もう。ね?」
「そうです! セリナ先輩の分も、私がいっぱい頑張っちゃいますよぉー!」
「……ありがとうございます。今日はぶり返さないよう、無理しないようにしますね」
「うん、それで充分」
何も知らないまま……企みなどとは無縁でいてくれるのが理想であり、巻き込んでしまったことに心苦しく思ってはいるものの、セリナがこうして成長していることに、チヨコは先輩として喜びを覚えていた。
「見習班のみんなは、今日から応用薬学の領域だね。予習はちゃんとした~?」
「何言ってんだ。そんなの……」
「全然してねェワ」
「むしろ復習でいっぱいおっぱいだワ」
「うーん減点した~い!」
軽口で脅かしつつも、チヨコは内心で見習班たちの履修状態を「順調」と評価する。
彼女たちに与えている教育は、本来一年生がじっくり学ぶべきことを詰め込んだものだ。
復習を要するとしても、ついていけるなら及第点。チヨコはそう見込んでいたのである。
「へへへ。あたしらの優秀さに減点したくてもできないってか?」
「チヨコちゃんはアタシらにベッタリになっちまうなぁ!」
「いや態度は普通に減点だよ。救護班にも顔を出したいならマナー講習受けてもらわないと」
「ンだよケチ!」
「腹が太え癖によ!」
「よ~し、ダイエットはじめちゃおっかな~!!」
口汚い不良たちの冗談に、チヨコはにこやかに立ち上がる。
その笑顔に確かな怒りを見た見習班たちが、さっと顔を青ざめさせて座らせようと試みた。
「あ、ウソウソ冗談冗談」
「副長は今が一番だって。バストもヒップもトリニティいちだろ?」
「ウェストも~?」
「「うん」」
「痩せる!!」
「悪かった! アタシらが悪かったから!」
「心だけは! 心だけはデブのままで!!」
「痩せる!!!」
なんとか口にお菓子を詰め込もうとする見習班たちを引きずりながら、チヨコは今日の講習にマナーを追加することを堅く誓った。
偏に、この愛嬌ある不良たちがこのような不躾なじゃれつきを、他所の気難しい御令嬢たちの前でしないようにする為である。
そんな彼女たちをハナエが、セリナがくすくすと微笑ましげに見守っている。
救護騎士団は今日も平和であった。
***
救護騎士団は平和である。
しかしチヨコの暮らしは、一向に平和にはならなかった。
「……お疲れのようですね、チヨコさん」
「ま、まぁねぇ……通常業務を早回しして、見習班の講義時間を繰り上げして、緊急の製薬があればそっちもやって、そこからこっちだからぁ~……」
「本当にお疲れのようですね……誰か、カウチソファを持ってきてください」
「お気づかいどうも~……」
運ばれてきた背もたれのないソファに、チヨコはアイマスクと耳栓をつけて、ごろんと蹲る。
15分、外からの情報を遮断して刺激を抑え込むことで、眠れずとも脳を再活性化させる手法であり、儀仗兵たちがヒソヒソと囁く「まるでマシュマロ……」「いや餅……」という言葉も、それを嗜めるナギサの咳払いもチヨコには届くことはない。
「……はいおはよう! もう元気!」
「なァにを寝っ転がっていやがるんですの、黄瀬チヨコォ……!」
「ゲェーッ、シハルちゃん!」
だからこそ、眼前で待ち受けている儀仗兵長、風凛シハルには気づかなかった。
今にも起爆しそうなほどキレ散らかしている黒髪カルテットロール娘を「起き抜けにチョココロネ4本は重くない?」とティーパーティー伝統芸能でお迎えするのは簡単だが、そうなれば収拾はつかないだろう。
努めて笑顔を作りながら、チヨコはそれとなくこの厄介な後輩から逃れるべく、ナギサの方へ尻を動かすことにした。
「いやぁさっすがティーパーティーの家具だけあって、うちのおせんべソファより断然いいよね~……」
「それは当然ですわ。ティーパーティーの調度品は常にトリニティの至高! それを示す為、私共儀仗兵、そしてティーパーティーのお歴々にも家具には一定の知見が求められますのよ!」
「へぇ、じゃあけっこう儲かってたり?」
「当~然、ですわ! 貴方の家からぶん取ったスプリングのイカれた安物のソファやベッドなど、儀仗兵の宿舎のどこにも……」
「シハル」
「は、はいっ、ナギサ様!」
「捜査に基づく押収はあくまでお借りしているだけですよ。必要な検分だったとはいえ、押収品は軽々に処分することなく、きちんと直してお返しするように」
「エッ!?」
ナギサの言葉に、シハルはさっと顔を青ざめさせる。
猪突猛進気味なシハルのことだから家具の骨組みまで徹底的に調べたのだろうが、そうでなくとも日々チヨコに押し潰されてきたソファやベッドは既にスプリングもクッションも紙同然であり、骨組みだって少し動くだけでギシギシと音を立てる始末だ。
これを直すとなればいちから作り直しとそう変わらないオーバーホール作業が待っており、いっそ買い直した方が楽というのは誰しもが理解できることだろう。
「あー……で、でも、あれはもう使い物にならないというか、ネジが錆びて木枠が腐ってましたの。だから買い直して差し上げた方が~……」
「家具はその人が過ごした時間を示すもの。それを奪い取った、となればティーパーティーの捜査に頷く人も減っていくことでしょう。それは伝統ある威信を損なうことになります」
「そ、それは、そうなんですがぁ……!」
「ですから、完全に直してお返しするのが一番です。シハルなら理解できますよね?」
「ウグゥーッ! か、完全に理解してございますですわ……!」
ナギサの圧のある微笑みに、シハルは苦悶の表情を浮かべながら、壊れたオモチャのように頷く。
ナギサの言うことは至極もっともであり、被疑を受けたチヨコへの労りと謝罪の念を込めたものだろうが、シハルにとってはとんだとばっちりである。チヨコは内心でご愁傷さまとシハルに手を合わせた。
(立場上、ナギサがどれだけ心苦しく思おうと、軽々に頭を下げることができないのはチヨコも充分理解している。彼女が頭を下げるということは、トリニティの勢力図を塗り替えることにも繋がるのだ)
「とはいえ、調査を命じたのは私、実行の方針を考えたのはシハルですから……修繕の人手と予算に糸目はつけないという形で手打ちとさせてもらいましょう」
「ヒャイ」
「チヨコさんも、それでよろしいですか?」
「ついでにまだすっからかんだから、部屋のクリーニングもお願いしちゃっていい?」
「こ、こいつぅ! こいつぅう!」
「シハル?」
「ヒャイ、カンゼンニキレイニシテゴザイマスデスワ」
それはそれとして、チヨコは救護騎士団の後輩たちや寮の住人たちに心配させた分だけ、しっかりやり返すことにした。
チヨコの住む寮は良く言えば伝統的、悪く言えばボロ家であり、ティーパーティーの威信を示すならほとんどリフォーム同然になることだろう。
これだけやって手打ちとすれば、後々ミネが飛び込み救護せずに済む。シハルにとっては納得がいかないだろうが、シハルが苦労することで誰もが上手くいく構図が組み上がっていた。
(勿論、発端はシハルが必要以上に押収したことである。行き過ぎた職務への忠実さが後ろ指を指される遠因になることなど、枚挙に暇がないのだ。どんな世の中であったとしても)
「さて……今日お呼びしたのは、調査の沙汰だけではないのです」
「会わせたい人がいるってこと?」
「ええ。その前に、貴方にだけは伝えておきたいことがあって」
ティーパーティーが開くお茶会の席数は、必ず事前に決まっている。
それはティーパーティーの差配を越えようとする、不遜な権力者を牽制する為の厳格なルールであり、専らは大人たちが罵声の数を頼みに会話を押し潰そうとする……そんな稚拙な企みをさせない為に機能している。
今回用意された席は、チヨコの為に用意されたカウチソファを除けば5席であり、これはチヨコたちを除けばあと2名招かれるということであった。
「シハル。5分の間、耳目を塞ぎなさい」
「ハイッ! シハル、300秒気絶します!」
「私の時は怒ったのに!」
「ご命令なのですから仕方がありませんわ~! スヤァ!」
「あっ本当に寝た! えっすごっ本当に寝てる!!」
「すごいでしょう」
「すごい!」
弾かれたようにカウチソファにゴロ寝したシハルは、瞬く間にアイマスクと耳栓をつける。
意識を示す頭上のヘイローさえ消えている辺り、本当に気絶のような眠りであった。
ひょっとしたらこいつやべーやつかもしんない。チヨコはそう思いながらも、その更に上をいくやべーやつであるナギサの言葉に耳を傾けることにした。
「まず、これから話すことは非公式であり、他言無用のことと思ってください」
「オッケー。じゃ、これは預けるね」
そう言って、チヨコはシャツの襟を開き、胸の谷間……ナギサの手首が沈むほど深い……からボイスレコーダーを取り出してみせた。
ぎょっと目を剥きながらも受け取ったナギサは、妙にホカホカと暖かいそれを見つめた後、電源を切ってテーブルに置く。
「……ありがとうございます。そして、申し訳ありません」
「ちょ、ちょっと。いくら非公式だからって……」
「これは貴方に対し、過剰な疑いを向けたこれまでと、これから貴方に向けていただく疑いへの謝罪です」
頭を下げたナギサにチヨコは慌てて顔を上げるよう促すが、顔を上げた彼女を見てハッと息を呑む。
ナギサはいつもの薄く張った笑みを失っていた。
代わりに彼女の顔にあるのは、張り詰めたような緊張と、迷い憂う彼女らしからぬ顔。
彼女が今まで隠していた、苦しみの証であった。
「貴方は純粋に、ミネさんを守る為だけに行動した。その愛と献身は、ミネさんが離脱したことで私たちの脅威になり得ないと証明しました」
「買い被り過ぎだよ。私は……」
「たとえ主従であったとしても、貴方たちの想い出がティーパーティーを欺いた事実は免れませんよ」
「……話を進めましょうか」
「ええ。貴方には、ふたつの疑いをもって取り組んで頂きたいのです」
2種類の資料を渡され、チヨコは迅速に目を通す。
チヨコを含めた四人の生徒の資料と、四つのトリニティ分派……フィリウス・パテル・サンクトゥス・ヨハネ……それを支える大人たちの資料。
それらすべてをスマートフォンの写真に収めたチヨコは、すぐさま資料を暖炉に投げ入れた。見慣れた顔……風凛シハルの姿も、そこにあったからだ。
「その生徒たちと共に大人たちの調査を行うと同時に……」
「生徒たちが百合園さん襲撃事件に関わっていないか探る、と」
「ええ。共同作業が1番、相手を探れますから」
「シハルちゃんも?」
「彼女はセイアさんが襲撃された際、儀仗兵を率いてサンクトゥス分派へと出向しましたから」
「ああ、その時に工作に関与したかもってこと……」
百合園セイア襲撃犯の容疑者たちと共に、襲撃に関わった大人がいないか探る。
過酷な二重スパイを仰せつかったチヨコだったが、この程度の労苦ならば喜んで請け負うつもりだった。
「貴方を巻き込むのは本意ではなかったのですが……」
「これも救護と思ってるから。そう思ってほしいな」
「それは、私に?」
「桐藤さんだけに、にはならなさそうだね」
疑わずに済む相手が増えるのは、ナギサの心労が減るだけではない。
不要な嫌疑をかけられていた人々が晴れて自由の身となり、トリニティの保護を受け直すことにも繋がるのだ。
ナギサがひとり抱えるよりは遥かに健全、そう考え、チヨコは了承する。
「やるよ。任せて」
「……わかりました。では、この件はお願いします」
表情を和らげたナギサが、手元のベルを鳴らす。
すると儀仗兵たちがドアを開け、シハルが飛び起きた。チヨコはちょっとビビった。
「耳栓してたじゃん……?」
「ナギサ様のお呼び出しを聞き流しはしませんわ!!」
「こわ〜……」
「ナギサ様、お茶会の招待を受けた方々をお連れしました」
恐るべき忠誠心にチヨコがドン引きする中、儀仗兵たちはふたりの生徒を着席させる。
「え、えと。ここ、どこ?」
「……ティーパーティーの処刑場だろォ?」
「びぇ」
正義実現委員会の制服に身を包んだ、紫髪の小さな少女はオドオドとあたりを見回し、脅かされて泣きべそを浮かべた。守る側である筈の少女は導いた儀仗兵の袖をずっと摘んでおり、周囲の庇護欲を駆り立てている。
対して、脅かした少女は荒れた金髪をウィンプルに包んで、苛立たしげにテーブルに踵を乗せるというシスターフッドにあるまじき不良生徒ぶりを見せている。口の端に咥えたロリポップは、この場にはとても似つかわしくなく、同時に彼女にはよく似合っていた。
「どして……なんでぇ……!」
「さーな。そこの女主人を怒らせたんじゃねーの」
「ひ」
「安波マルさん」
「ぁぃ」
「これは査問ではありません。どうぞ気を楽にして聞いてくださいね」
「ぁぃい」
紫髪の少女、安波マルはナギサから名を呼ばれ、顔面蒼白で頷いた。
その引きつった声は誰がどう聞いても怯えきった小動物のそれであり、本来なら敵愾心を向ける儀仗兵たちでさえも同情的な眼差しを向けている。
「十都エレさん」
「ンだよ」
「ティーパーティーのテーブルは、我々にとって重要なもの。足掛けが入り用ならお持ち致しますので、降ろして頂けますか」
「へ。随分へりくだったコト言うじゃねェーの……どうせ退学処分だろうによ」
シスターフッドの聖女モドキ、十都エレは吐き捨てるように笑って足を降ろした。
マルが同情を誘う人物であるが為に、エレに対する周囲の目の冷たさはより強くなっているが、彼女の諦観を帯びた瞳は、その程度で揺れることはなかった。
このふたりもまた、チヨコが見た資料の生徒たちである。
つまりチヨコは彼女たちと共に大人を疑い、それを通して彼女たちを疑わねばならない。
……改めて過酷な仕事だ、とチヨコは肩をすくめた。そして、同じように考えているであろうナギサもまた、咳払いと共に言葉を重ねる。
「貴方達を呼び出したのは他でもありません。ティーパーティーより貴方達に、特別任務を依頼するためです」
「と、とくべつ……?」
「命令の間違いだろ」
「ホホホ。ティーパーティーからの任命です、謹んで拝命なさいまし!」
「うん、シハルちゃんもだよ〜?」
「よ、よよよよ喜んで拝命致しますわ!!!」
「震えてんじゃねーか」
「……これ以降は内密に、決して、他言無用で願います」
ナギサは厳かに、百合園セイア襲撃事件に関する詳細を明かす。
それに対してシハルはわかりやすく仰天し、マルは怯えたように震え、エレは胸糞悪そうに舌打ちをした。
冷静に全員を観察するチヨコは、彼女たちがセイアが襲撃されたこと……あってはならない暴行を受けたことに対し、それぞれ道徳的な忌避感を抱いていることを確信する。
「これに関与した大人たちがいないか探る……それにはティーパーティーの人員だけでは察知されてしまうでしょう」
「そこで私達部外者を、ってわけだね」
「ええ。それぞれのスペシャリストが動けば噂になりますから、ある程度ばらつきを設けています」
白々しい嘘ではあったが、納得がいく理由付けでもあった。
マルなどは明らかにぴかぴかの一年生であり、チヨコであれば組織を束ねる三年生。格の違いなどは明らかで、だからこそ結びつきを感じにくい。
実際は全員が百合園セイア襲撃事件の関係者として嫌疑がかかっているのだが、それを誤魔化すには、現状充分ではあった。
「以降、貴方達のコードネームとして『銀の一匙』という部隊名を与えます」
「名前をつけたんだから、アンタらの犬として喜べって?」
「勿論、特別な餌は用意するつもりですよ」
「……ッ」
喧嘩腰の態度に鋭利な返しができるのは、流石ティーパーティーのホストといったところだろう。
エレの反感こそ買ったが、怒りが真意への洞察を遠ざけている。うまいやり口だとチヨコは内心で感心した。
「調査対象は追って説明します。今は皆さん、それぞれの顔を……」
「はーい、提案がありま〜す」
「…………なんでしょう、チヨコさん」
しかし反感ばかり買っては、いつまでもナギサの心労がやむことはない。
そこでチヨコは、にこやかに朗らかに手を挙げ、呑気な提案をすることにした。
嫌な予感を感じ取ったナギサが、頬をひくつかせて問う。
「要はスパイをやるんだよね?」
「まあ、そうですね。映画ほど痛快かは図りかねますが……」
「じゃあコスプレしようよ!!」
「は???」
全員が何言ってんだこいつ、という顔を向ける中、チヨコはウキウキ気分で企画書を取り出す。
どれだけ過酷な難業であっても、楽しみはあった方がいい。チヨコは前向きに説明を始めた。
恐縮ですが、以降は不定期更新となります