ダンジョンで飯を食うのは間違っているだろうか? 作:超高校級の切望
太古の時代。地の底に通ずる穴があった。
その穴からは無数の異形なる者達が溢れ出す。鉄より硬い鱗を持つもの、槍より鋭き棘、刃より斬れる爪。
数多の怪物を生み出すその穴は大穴と呼ばれ、古代の人類はそれを封ずるべく引き篭もりを除き同盟を組み挑んだ。
最終的には恥知らずな引きこもりの一部も軍を率いて、槍を持つ勇者が道を開き………それでも、人は大穴を封じきることが出来なかった。そんな折に、天から何かが降ってきた。
それは人の形なれど人ではない。人でなしとは失礼な。人という存在を遥かに超えた
つまりは神だ。神が降りてきた。遊びに来た、暇つぶしと。
そして彼等は人々に恩恵を与えた。神の恩恵は、人類全体の中で僅かにしか居ない英傑と呼ばれる者達に匹敵する存在を容易く生み出す。更に少ない英雄に劣れど、数は膨大。到頭人々は溢れ出るモンスターを押し込め、穴の上に蓋となる巨大な塔を築いた。
地上から流れてくる魂の数は減り、これ幸いと残りの神々は仕事をほっぽりだし地上に降り始めた。結局神の数が減ったことにより一柱が行う仕事の量は変わらなかったり………。
そして全能の神々は地上に降りる際ルールを設けた。地上で許可なく神の力を使ってはならない。これを破れば天界に強制送還され、仕事をサボっていた分働かせる、というものだ。
使って良い権能は恩恵。神としてのあり方。たった一柱だけは、祈祷。千里を見通す神の鏡……ただし条件付きといった具合だ。
時代はまさに神時代。英雄跋扈の大穴の上の街ではやれ誰が強いだ何処の神の眷属達が最強だのと笑顔で語り合う。ただ、光あるところには影がある。
平穏、規律、正義を嫌い、混沌、無法、悪徳を好む神々もまた人々に恩恵を与え、人知を超えた恩恵持ち達の殺し合いが始まり、その混乱に乗じて私欲を満たす小悪党達も生まれた。
そんな小悪党の一人ザニスが運営を行っているファミリアの一つの名は【ソーマ・ファミリア】。依存性の高い、天上の酒
一度でも味わうとまた味わいたくなり、抜ける為に集めた金も
実は混沌の使徒たる邪神率いる
そんな派閥内の関係は当然険悪。少数で組み、他の奴らを蹴落とす。常に金を欲しがり他派閥からも忌み嫌われ、その苛立ちを派閥内の弱い連中にぶつける。
その
まあ、モンスターに食われて死んだが。
幼い妹を守るために母の腹を蹴り、父の鼻を踏み潰した彼は何時しか重しにしかならない妹を捨てた。
モンスターに怯え、震え、泣き喚く。力がないことを仕方ないと卑屈に笑うその顔が両親に重なったからだ。
両親よりかは価値があった。あの時妹を抱えて両親をモンスターの餌にしたのは、両親の価値が低かったから、ただそれだけだ。
不要な妹を捨てた彼は虐げられないために力を求めた。ダンジョンに潜り、金を稼ぎ、それでも奪われ、なんとか守りきった金をコツコツためザニスが商談で出かけている頃を見計らい神のもとを訪ね、それでも時折目ざといザニスに見つかり
妹は今日も下を向いて生きている。だから話しかけてくる奴等の顔しか知らない。あんな生き方はごめんだとダンジョンに潜る。
腹が減った。
非力な
腹がへった。
それでもあのくそったれの環境で生きていくには恩恵を更新する必要があり、そのために金がいる。多少食わずとも、と飯を抜いた結果がこれだ。
はらがへった。
槍でゴブリンの魔石を貫く。武器をまともに買える金などあるわけもなく、たまたま手に入れたモンスターの爪や牙を棒に巻いただけの質素な槍は半ばからへし折れた。
ハラガヘッタ。
残っていたヌラヌラと気色悪い体液で包まれた1つ目のカエルを殴り付ける。
人外の膂力がカエルの顎の骨をボキリと砕く。痛みにのたうち回ろうとするカエルの目玉をえぐり出し、もう一度手を突っ込み脳を引きずり出す。
思考が纏まらない。もう切り上げるべきか? 今日の稼ぎはどの程度だ?
買ったポーションの額以上は稼げたか?
ああ、腹が減った。飯が食いたい。肉が良い。そんな金がかかるもん食えるか。じゃが丸くんでも食ってろ。
と、彼は手に持っていた
あれってモンスターハラヘッタ
食えるのかあれ?食いたい
体壊さない?肉肉肉肉肉
グチャ
そのまま神の下まで向かう。幸運なことに、いつも酒を飲ませようとしてくるザニスは今回は絡んでこなかった。
「……………ランクアップが出来るぞ」
「な!?」
それを聞いて慌てるのはザニスだ。ランクアップされれば、耐性ができて
「ランクアップですか。おめでとう、アーデ………しかし、ランクアップか。となれば、別料金。そうだな、三百万ヴァリスで手を打ってやる」
「………ソーマ?」
「……好きにしろ」
これはザニスに言っているのだろう。舌打ちすると主神室からでていく。少しして戻ってきてヴァリス金貨の詰まった袋をぶん投げる。
「三百万ヴァリスだ。数えてきた」
神に嘘は通じない。数えてきたというのなら、本当に三百万ヴァリス用意されているのだろう。
再び慌てるザニス。
「ほう。なら、その金で
「いらねえ」
そう切り捨てた。ソーマはピクリと肩を揺らす。
「まあそう言うな。一杯だけでも飲め」
と、極東から伝わった猪口に酒を注ぐザニス。あの一杯を飲めば、満足出来ず直ぐにでもおかわりをくれと金を払うだろう。
「断る。近づけるんじゃねえ」
「………飲みなさい。飲まねば、更新はしない」
と、ソーマにまで言われてしまえば従うほかない。忌々しげに舌打ちして、呑む。相変わらず美味い。だが、空腹は最高のスパイスとでも言おうか。これ以上に極上の味を味わったばかりの彼は正気を保てた。
「では、おかわりを持ってこよう」
「いらねえ。おいソーマ、さっさと更新しろ」
「な!? ば、馬鹿な!?」
ザニスは驚愕し、ソーマも目を見開く。
「そ、その失礼な態度は何だ!? そんな無礼な者に、神の恩恵を賜る資格など……!」
「ザニス、黙れ」
と、尚も食い下がろうとするザニスをソーマが止めた。酒造り以外の事など無関心のはずのソーマが動いたことにザニスは固まる。
「更新しよう。ステイタスは、隠すべきだろう。ザニス、出て行け」
「い、いえ、しかし………!」
「聞こえなかったか?」
「…………っ!!」
ソーマに睨まれ退散するザニス。せめてもの抵抗か、ドアを乱暴に閉めた。
「…………お前は、何時からうちにいた?」
「生まれた時から。七年ぐらいか」
「七年………お前のような子供が居たのか?」
「…………はっ、なるほど。てめぇは俺等になんの興味もなかったわけだ。そりゃ神の救いなんざあるわけねえ」
忌々しげに、嘲笑うように吐き捨てた彼は服を脱ぎ背中を見せる。先程は気付かなかったが、小さな背に爪や牙、そして人間につけられた傷がある。
「発展アビリティはどれにする? あるのは『耐異常』『狩人』『捕食者』の3つだ」
「捕食者?」
「俺も知らない」
未知の発展アビリティ。つまり、今後のランクアップで目覚めぬ可能性もあるということ。
「捕食者で」
「わかった。これがLv.1のお前の最後のステイタスと、新たなステイタスだ」
【リリウス・アーデ Lv1→2
力∶B709→I0
耐久∶S965→I0
器用∶C678→I0
敏捷∶A891→I0
魔力∶I0→I0
捕食者I
《魔法》
【ラーヴァナ】
・狂化魔法
・詠唱式【傲慢なる悪意の王。血の河を啜れ、肉を貪れ】
【】
《スキル》
【
・
・強者を食らうことによりステイタス成長速度向上
・食事による回復効果の向上
・常に飢える 】
魔法スロットは2つ。小人族としては有望な方だろう。その一つが埋まった。
新たなスキルは、食うことによって強くなるらしい。逆説的に生き物ならなんでも食えるということだろうか? デメリットとして飢えるらしいが、丁度いい。
「お前は、次からただで良い」
「そうか」
ただし、フィン・ディムナは別だ。彼は
破落戸同然の【ソーマ・ファミリア】の中でも取り分け野蛮。気に入らない者を力で黙らせる典型的な冒険者。
同派閥の冒険者と争い花屋を営む老夫婦の店を破壊したこともあるらしい。同族の実の妹との仲も険悪で、暴力を振るう。
駄目だな。
そう思っていた半年後、その
リリウス・アーデ現在7歳。
妹より2年早く生まれた少年。愚図で卑屈で役に立たない妹を嫌っている。縋り付こうとする妹をよく蹴り飛ばす。
ソーマに特別扱いされ、ファミリア内でも嫌われているが強すぎて誰も手を出せない。
ショタコンのアマゾネスに食われかけたがまだ精通してなかったので未遂で済んだ。以来アマゾネスを発情猿と思っている。
容姿は妹と瓜二つで、髪を切るのが面倒なので後ろで結んでいる。前髪は流石に視界に影響するのでナイフで切っている。
酒と肉が大好きな不健康児。
嫌いなものは妹と怪我をするとやたら絡んでくる年上のチビ。
ラーヴァナ
リリウスの魔法。元ネタのラーヴァナにはシュールパナカーという変身能力を持った妹がいる