ダンジョンで飯を食うのは間違っているだろうか? 作:超高校級の切望
リヴェリアの手で運ばれるリリウス。
そのまま18階層まで運ばれ、待機していた連絡員が散った捜索班に連絡を取りに向かった。
その後すぐに地上に運ばれた。
「おいフィン、本当に無事なんだろうなあのガキは」
「リヴェリア曰く、ボロボロだが五体満足ではあったようだ。なら、アミッドが完治させてるはずさ」
「あ〜………最近噂の『聖女』様か?」
リリウスの見舞いに行くフィンとライラ。【ディアンケヒト・ファミリア】の治療院に訪れ、案内されるまま歩く。と………
「きゃああ!?」
「「──!!」」
突如聞こえてきた悲鳴にフィンとライラは扉を蹴破り部屋の中に飛び込む。
「シャムシャム………」
「寝ぼけないでくださいリリウスさん!」
部屋の中ではリリウスがアミッドに覆いかぶさり銀髪を噛んでた。
「…………ええっと、出ていったほうがいいかな?」
「邪魔しちまったか?」
「彼をどかしてください!」
アミッドの叫びにフィンとライラはリリウスを剥がそうとするがなかなか離れない。ブチブチと嫌な音もする。
「い、いた!」
「くっそ! こいつ、全然放さねえ! そんなに聖女の髪が美味いのか!?」
いっそ髪でも切ろうかとライラが思案すると、新たな人影が入ってきた。
「…………む?」
ソーマだ。だいたい察したのか、持っていた酒瓶を開けリリウスの近くに持っていく。
「………………」
リリウスはアミッドの髪の毛から口を放すと
「………おい、酒瓶ごと喰ってんぞあいつ」
「いや、よく見るんだ。瓶の欠片は吐き出した」
「…んあ?」
と、リリウスが目を覚ます。
自分の下に居るアミッドを見て首を傾げる。
「何やってんだアミッド」
「ぶん殴りますよ………」
アミッドはキレた。これはキレていい。
リリウスは気にせず腹を擦る。
「腹が減ったな」
「貝の
と、ソーマが料理を差し出す。リリウスは殻ごと喰った。
「なんか、ポーション見てえな味のするシャキシャキしたサラダを喰ってたような」
「治療院食ではないか?」
アミッドはそっと自分の髪を撫でた。
「少しいいかい?」
「ん? ああ、これはこれはブレイバー。俺に何かようか?」
「ああ。まずは、謝罪を。すまなかった、君が狙われると知りながら囮にした。そのうえで、君を守れるはずと思い上がりみすみす敵に捕らえさせてしまった」
「ああ、別に良いさ。お前に良いように利用されたのも、奴等に良いようにされたのも、俺の弱さが原因だ」
と、気にした様子もなくソーマから受け取った新しい
「ところで、その髪は?」
「知らん。気付いたら白くなってた」
「極度のストレスによるものでしょう。治るかは、わかりませんが」
と、アミッドが髪をとかしながら言う。
「どうでもいい」
「……そうですか」
リリウスは本当にどうでも良さそうだ。というか髪の手入れなど、視界の邪魔になる前髪をナイフで千切る様に切るくらいでほぼ何もしていない。
一応、匂いを消すために洗ってはいるが。まあ髪質自体はリリウスの一部だからか飯を食ってる限り傷んでも再生して常にツヤツヤなのだが。
「お〜い、邪魔するでえ」
「邪魔だから帰れ」
「おう、すまんな。って、ちょっと待てやソーマ!」
アミッドが噛み千切られた髪の先端を整えているとロキまでやってきた。
「なんなん、うちの子が迷惑かけた詫びしにきたのと、ちょいと何があったか聞こうと思っただけやん」
神を呼ぶとは、ずいぶん信用がないらしい。
「そんで自分、どうやって抜け出したん? てか
「未開拓領域の
「拷問…………」
と、アミッドがリリウスの髪を見る。その拷問が原因なのか。というかナチュラルに人食いを暴露した。いや、彼にとってそれが隠すようなことでもないのだろう。
「その後は武器もなくモンスター共に追い詰められ………ハーピィに攫われた」
「ハーピィ? 君は水の都に居たのかい?」
「大樹の迷宮だ。まあ、強化種だから魔石を求めて移動したんだろ」
「その強化種は?」
「美味かったぞ」
血しか味わってないけど。
嘘ではない。フィンがロキに視線を送り、ロキも肯定する。
「で、ダンジョン採取物を食って冒険者の落とし物を手にして階層主に挑んだ」
「うん、何言っとるん自分」
普通そのまま上を目指すべきなのに、何故下に向かった挙げ句階層主に挑んで、しかも勝ってるんだこいつ。いや、リヴェリアが居なければ良くて相打ちだが。
「力がいるからなぁ、最強が抑止力にならねえオラリオじゃ」
「それは…………そうだね。僕らの落ち度だ。後、一つ質問だ……君は、一人で助かったのかい?」
「あ〜、俺が人の手なんて早々信用しねえのは知ってんだろうが。そもそもあの時俺を助ける冒険者も
「………………そうだね」
嘘はない。だが、何かを隠している。そう確信するフィン。食い物を対価に聞き出せるか? そもそも、聞き出すだけの価値はあるのか?
「んじゃ俺は今からステイタス更新するから、他派閥はさっさと出ていけ」
「ああ、後日謝礼を送ろう」
と、フィンとロキが去っていく。
「あー、まあなんだ………」
ライラはガシガシ頭をかきながらリリウスを見る。
「無事で良かった」
「…………そうか」
ライラも出ていき、アミッドも頭を下げてから出ていった。
「また無茶をしたようだな」
「ああ」
「酒が飲めなくなるぞ?」
「別に構わねえ」
「!!」
ソーマはショックを受けたようだ。落ち込んだままステイタスを更新する。
【リリウス・アーデ Lv3→4
力∶A897→I0
耐久∶S999→I0
器用∶A856→I0
敏捷∶S943→I0
魔力∶C677→I0
捕食者E
悪食F
強食I
《魔法》
【ラーヴァナ】
・狂化魔法
・詠唱式【傲慢なる悪意の王。血の河を啜れ、肉を貪れ】
【ラーフ・シュールパナカー】
・変質魔法
・
・詠唱式【月を喰らい太陽を飲め暴食の化身。首となっても歯を突き立てろ。
《スキル》
【
・
・強者を食らうことによりステイタス成長速度向上
・食事による回復
・常に飢える
【
・嗅覚及び聴覚の強化
・
・
・
「新しいスキルか。それに魔法………
「初めて聞く魔法だ」
変質魔法ともある。変身魔法なら前例がまったくないわけではないが、変質とは?
「まあ良い。そういや、アンフィス・バエナの魔石とドロップアイテムは?」
「18階層、リヴィラに保管されている。【ロキ・ファミリア】の言葉もある。勝手に売られていることもないだろう」
「そうか…………」
「……………何ダコレハ」
「何って、魔石デスよ! リリウスが置いていったソうです! ほらほラグロス! これガ友情デす!」
24階層の隠れ里。そこに放置された巨大な魔石と通常サイズの魔石。フェルズ曰く、リリウスが置いていったらしい。
「これ階層主の魔石だ! 砕いて食べようぜ!」
「アラ、コノ魔石、モシカシテ強化種………?コンナニ沢山?」
「貴様等! 人間が置いていったものを簡単に喰うな! 奴は人間なんだ、信用できん! 何度裏切られたと思っている!」
「ラーニェ、ソレではリリウスさんニモンスターと同ジ扱いヲされた時文句を言えマせんよ?」
「ぬう………!」
命を救われた借りには程遠いとは思うが、魔石を置いて隠れ里から立ち去ったリリウス。
道中何かを探しているファミリアに絡まれ無視したら道を塞がれ剣を抜かれたので、新しい魔法やスキルの実験台にした。
「槍か…………」
フィンに新しい武器の代わりにと渡された武器。フィンの予備の武装だがまあまあ使いやすい。
「……………」
リヴェリアをババア呼びしたからか最近感じるエルフの敵意……襲撃されてもLv.3なら数人居てもなんとかなりそうだ。
そして、時は進む。
「魔石製品工場襲撃事件?」
「ああ、既に4つ………どうやら狙われたのは撃鉄装置のようだが」
第二級の上位であるLv.4となったリリウスは
「次狙われる可能性がある魔石製品工場の候補は【アストレア・ファミリア】にまかせてある。が、そちらにばかり人員を割くわけにも行かない」
何でも
都市外の組織、商人も動いているらしい。
都市の外の信者組織や魔石の利益が欲しい商人達が動くとして、理由は何だ?
冒険者が不甲斐ないというのはまあ現状のオラリオを見ても納得できるが、だからといってゼウスとヘラが敗れる程の黒竜のいる下界でオラリオの外の勢力で安全が保証されると思い上がるなどあまりにも愚か。
ただ混沌を望む者達も居るが、それだけで説明が付く規模ではない。
「…………冒険者に変わる『力』か……」
だとしても
暗黒期の始まりを含め、オラリオには何時でも滅ぼされかねないタイミングはあった筈。それでもあえて
「…………頭使いすぎたな」
食事を再開する。痩せ細った女の腕、欲と脂肪を溜め込んだ商人のバラ肉、なんか高そうな宝石………。
バリゴリグチャクチャと咀嚼音が響く朽ちた教会。と………
「おい小娘」
「ん?」
唐突に聞こえた声に振り返るリリウス。即座にその場から飛び退き声の主から距離を取る。
全く気付けなかった。仮にもLv.4の、獣以上の嗅覚と聴覚を持つリリウスが。声をかけられ、漸くその存在を認識した。
「これは貴様の仕業か?」
「…………ああ」
「よくもまあ、汚してくれたものだ。お前の髪が白くなければ磨り潰してやっていた所だ」
「………?」
灰色の髪をした女はよくわからない事を言う。
「失せろ。ここで音を立てるな…………」
「…………………」
アンフィス・バエナが蚯蚓に思える威圧感。
強い………そして、恐らくこの女が
商人達が勝利を確信し金を払うだけの価値を示した存在。
「………ヘラの残党か?」
「ほう………」
女がピクリと肩を震わせる。
「小娘、何故そう思う?」
「……………
「…………では、お前はどうする?」
「………………喰い殺す」
ピリッと張り付く空気。リリウスの殺気に、女はそうかと返す。
「なら、次会う時にしろ。ここをこれ以上荒らしたくはない。それに………」
と、女は食われた死体を見る。
「お前の相手はヤツの方が合うかもしれん」
そう言うと女は教会を後にした。
「片付けておけ。明日まで汚らわしい血を残していたら、幾ら白髪の小娘とはいえ殺す」
「………………………」
後で来る【ガネーシャ・ファミリア】にやらせよう。