ダンジョンで飯を食うのは間違っているだろうか?   作:超高校級の切望

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学友

 リリスは獲ってきたマグロをシャバラとシュヤーマ、スパルナにも分けてやる。シハチとモハチは可愛らしい顔の割にシャバラ達にも喰いやすく切り分けて喰わせてやる。

 

「もうリリウスったら、あんなんじゃ友達出来ないわよ?」

「? 必要か、それ」

「私としては作って欲しいわね」

 

 主神の言葉にリリウスはシャバラ達を指差す。

 

「そうね。いたわね。でも、何人いても困るものじゃないわよ?」

「……………1人増えた」

 

 変な牛が。

 

「嘘じゃないみたいね」

 

 リリウスは神に嘘をつけるが、それは神と神同士の様に嘘か真実か解らぬようにするだけ。少なくとも今はそれを解るようにしていた。

 

 

 

 

 でも増やしなさい、じゃないと英雄譚読んであげないわよ、と言われたリリウスは面倒に思いながらも仕方なく友達を作ることにした。

 

 しかし、今日は何やら周りが余所余所しい。

 

「昨日の今日でなんだこの態度の変化は?」

「ふえ!? ええと…………」

 

 と、ハーフエルフの少女に尋ねるリリウス。突然話を振られた少女は言葉に詰まる。そう言えば、この少女はやたら世話を焼こうとしていた敵意のない者達の中でも友好的な生徒だ。

 

「その、昨日の………親に売られたって事が」

「そうか。ところで俺と友達になってくれ」

「どういう話の流れ!?」

「主神に友達作るように言われた」

「そ、そうなんだ………いい神様だね」

「そうだな。アフロディーテはいい神だ。俺はそういう神は他にはアストレアとガネーシャとタナトスとアルテミスとエレボスとデメテルとニョルズとゴブニュとヘファイストスとミアハと、少しあれだがディアンケヒトぐらいしか知らん」

「意外といるね……………」

 

 一柱(ひとり)はダンジョンで出会い、一度話しただけだが………まああれはいい神ではあっても人類の味方ではないが。それはエレボスも同じか。

 

「オラリオに大量にいる神の中では少ない方だがな」

 

 そういう意味では、バルドルもいい神の一柱(ひとり)だろう。いい奴すぎて自分を嫌う奴は珍しい、と受け入れ余計怒らせそうだが。

 

「オラリオって、そうなの………?」

 

 英雄の生まれる街。栄光、名声欲しくばオラリオへ向かえ。

 オラリオに行けば自分も英雄候補になれる、成功できると向かう者は後を絶たない。

 後を絶たないけど、溢れることはない。

 

「まあ、基本暇つぶしが大半だな。神がどれだけいようと、天国には程遠い」

 

 ぶっちゃけてしまえば、リリウスは自分を幸運な方だと思っている。闇派閥(イヴィルス)のクソみたいな美的感覚の芸術家気取りの『作品』になることも無ければ、物心付かぬ赤子にしか興奮出来ない変態の相手をさせられたこともないのだから。

 

 生き残れる内の底辺であっても、その下に志し半ばどころかそれすら持たずに死んだ命に溢れていたのが暗黒期なのだから。

 

「それでも、お前が今日まで生きてこれたのは誰かがお前を守ったからだろ!?」

「…………だから俺も守れって? 赤子の俺を育てたのはソーマだ。顔も知らねえ誰かじゃねえ」

 

 後は、アミッドとアーディ、【アストレア・ファミリア】に異端児(ゼノス)………一応アンフィスバエナ戦のあと地上へ連れて行ってくれたリヴェリアか。

 

「オラリオに義務があるとすりゃ、それは三大冒険者依頼(クエスト)を確実に達成することだ」

 

 それを願いオラリオを支援する多くの国もあるわけだし、冒険者に義務があることは否定しない。

 

「他の危機なんざ知らん」

「でも、あんたは強いじゃないか! 俺達全員相手にしても、勝てるぐらい!」

「……………………ああ」

 

 漸く納得がいったと言うように、リリウスが呟く。

 

「お前、冒険者に憧れてたのか」

 

 オラリオの冒険者、世界を救う英雄候補(冒険者)に憧れ、故郷を飛び出し見たのはオラリオの名声に隠されたこの世の地獄。

 

 なまじランクアップを経験したからこそ、オラリオの冒険者は万能にでも見えたのだろう。昔日の英雄が後世の逸話で神の如き万能性を持つように、オラリオの冒険者の名声を聞き理想(ゆめ)を見た。

 

「英雄に夢を見るのは勝手だが、夢は夢だ。それを英雄(ひと)に押し付けるな鬱陶しい」

 

 

 

 

「主義主張のぶつかり合い。これもまたアオハル………☆」

「これ友達できるかしら」

 

 食堂の端で食事をとっていた二人の女神の片方はウンウン、と頷き片方は不安そうな顔をしていた。

 

「ていうかイズン、アオハルの一言で片づけんじゃないわよ。オラリオの代表者に文句言うように教育しなさいよ」

「う〜ん。学区の生徒って冒険者全員をごろつきと思ってるからなあ。リリスちゃんは初日で反感持つ子達わからせちゃったし」

 

 それも歯牙にもかけないという屈辱的な結果で。アフロディーテに言わせれば、それは寧ろリリウスが大人しくなった証拠なのだがそんな事学区の生徒には解らない。

 

「まあ、世界が救われてほしいという願いは綺麗よ。それが間違いであって良いわけはない。それは私も認めてあげる」

 

 彼女もまた下界の救済………救世(マキア)を望む神なれば、ルーク達の言い分も解る。だが、それを表向きには10にも満たない子供に言うのは………14でも相当だが。

 

 そりゃ神の恩恵を持てば幼女だろうと恩恵を持たない歴戦の剣士に勝てるが。

 

「皆オラリオの冒険者なら世界を救える前提で話してる。まあ、候補は確かにオラリオに集まっているのは否定しないけど」

 

 それでも彼等はまだ候補止まり。嘗て彼等ならと期待された最強達に、【フレイヤ・ファミリア】は足元に及び【ロキ・ファミリア】は影を踏んだ程度。

 

「世界を救う為には今のオラリオじゃ足らなくて、足りる為に足掻いている内に街や国が滅びる。『世界勢力』はそうならないためにオラリオから支援を受けているんでしょうに」

「オラリオに世界救済を望む国は多いし、それを誰よりも見てきてるからねえウチの子達は」

 

 だから、逆にオラリオの冒険者を見ていない。憧れる者も確かにいるが、ならず者と見下す者も多いのだ。

 

「俺が世界を救えるわけねえだろ」

 

 と、リリウスが言えばルークを筆頭にその一部が顔を歪める。

 

「俺が世界を背負えるわけもない。世界を好きでもないのに救おうとするなんて、救えないらしい」

 

 そう言うとパクリと朝食の魚の頭を口に含んだ。骨ごと噛み砕く。

 

「聞いた!? 今の、私が教えた言葉よ! ちゃんと覚えてたのね!」

「アオハルね!」

 

 アフロディーテがイズンの肩を揺らしながら叫ぶとイズンも最早鳴き声なのではと思うほどよく言う台詞を叫んだ。

 

「なら、俺がやる! あんたらがのんびりしてるなら、俺が強くなって、英雄になって! 世界を救ってやる!!」

「? 最初からそうすればいいだろ、面倒くさいやつだな」

 

 お前は世界を救いたいんだろ、と否定することもなく、肯定もしないがそうすればいいと言うリリウスに、逆にルークの方が困惑した。

 

「我が主神の言葉を借りるなら、お前のような奴が世界を救うのが正しいんだろうよ」

 

 

 

 

 『鍛冶学科』。言葉通り、鍛冶を行う学科。

 生徒はオラリオでは【ヘファイストス・ファミリア】や【ゴブニュ・ファミリア】等の生産系ファミリアに入団を希望する。

 

 そこにリリウスは訪れていた。

 

「うん、無理だ」

「………………」

「高温で熱しても柔くならねえし、叩いても少しも歪まねえ。鉄として強すぎる。不壊属性(デュランダル)に加工済みの鉄を打てと言われたようなもんだ」

 

 学区の鍛冶技術は存外高い。最硬金属(オリハルコン)の製造も行っている。なんなら生産量は世界トップクラス。

 

 砕けたマーダの修復を依頼したのが、無理と断られた。

 

「愛着のある武具を失うのは辛いことだろう。だが、これを機に新しい剣を手にするのも一つの手だ」

 

 と、胸にバラを挿したキザったらしいドワーフが言う。リリウスは首を傾げた。

 

「加工できてねえ時点で、俺の剣のほうがお前等の武器より硬いことは証明されてんのにか?」

「「「…………………」」」

 

 ド正論に固まる鍛冶師達。修復を依頼された教師もううむ、とマーダを見つめる。

 

「どんな使い方をしたらここまで痛むんだ…………」

 

 復活した陸の王を斬ったり神の鎧ぶった斬ったり数百年ものの強化種であり大量の精霊を食った沼の王を斬ったり世界を蹂躙する古代の魔蠍の力の凝縮体に殴られたりしたら………とは口にしなかった。

 

「元冒険者、これなんかどうだ?」

「魔力を流すと剣が伸びる! 威力も上がるんだぜ!」

 

 と、差し出された剣を受け取るリリウス。激しく光り、爆発した。

 

「「えええええ!?」」

「何もしてないのに、壊れた」

 

 それは学区の発明品である『機構武装』という。魔力を使い剣の射程(リーチ)と威力を底上げし、その上で強度も保っている。

 

 ただし精霊を大量に取り込んだ魔力を想定していなかった。まあ、吸い取る魔力を制限する機能があるとしてもリリウスなら要らないが。魔石灯を光らせる機能を残したまま戦えなんて言われてダンジョンに向かう冒険者は居ない。

 

「近接じゃなく遠距離前提に作れないのか? 剣に魔力の鎧を纏わせるよりよっぽど有用だ」

「う〜ん。でもまだ魔力を飛ばすだけで相当な魔力消費だし、威力もなぁ………ゴブリンすら倒せねえかも」

 

 そう言えば、そういう魔道具(マジックアイテム)をフェルズも作っていた。魔咆手(マジック・イーター)といったか。

 

 あちらは燃費はともかくゴブリンを消し飛ばす威力もあったが、仮にも元賢者の作品だ。比べるべきではないだろう。

 

「それより、これの加工が出来ないのは硬いからなんだよな?」

「ああ」

「なら、俺が叩く。そもそもこの素材の怪物も俺がぶち殺した」

「…………迷宮都市(オラリオ)のLv.4なら、下手すりゃ俺よりも力は上か」

 

 と、教師も納得を示す。

 

「炉の温度は?」

「魔法」

「…………分かった。ただし、それだけの素材を適当に打つなんて、加工出来ねえくせに何をと言われても俺の鍛冶師としてのプライドが許さん。暫く、『科目』に鍛冶も入れろ」

「……………………………」

 

 

 

 

「リリスちゃ〜ん? そろそろ晩ごはんだよ〜?」

 

 リリウスの新しい友、ニイナはアフロディーテに送り出されリリウス……リリスを探しに来た。武器を見てくると言っていたが………。

 

「飯?」

「あ、リリスちゃ───!!!??」

 

 ヒョコッと現れたリリスにニイナは振り返り、驚愕で固まる。

 

「解った。すぐ行く」

「ちょっ!? まっ、待って!!」

「………………?」

「服は!?」

 

 何と、リリスは上着を脱いでいた。絶壁の如き胸もさらけ出している。

 

「女の子がそんな格好しちゃ駄目!」

「? …………………ああ。きゃー」

「反応遅いよ!」

 

 しかも全然恥ずかしがってないし! それに、呼びに来たのはニイナだけでない。

 

「お、そこにいたかベストフレンド!」

 

 ニイナはよく知らないが、先輩方から絶対近づいてはならない男、変態牡牛と名高いバーダインもいるのだ。

 

「だ、ダメー!」

 

 その時! ニイナの体は限界を超えた!

 教養学科とは思えぬ速度でランクアップを果たしたバーダインの反応すら間に合わぬ速度で機構武装を抜き、顔面を峰でぶっ叩く!!

 

「ガフ!」

「はっ!? ご、ごめんなさい!」

「気にするな膨らみかけの少女よ! 後、安心していい! 俺はおっぱいは好きだが、やはり巨乳と爆乳に限る!」

 

 もう一発ぐらいならぶん殴ってもいいかな? 品行方正のハーフエルフの少女らしからぬ、物騒な考えがニイナの頭をよぎった。

 

 

 

 数日後。

 学区は再び陸地に訪れる。戦技学科は『野外調査(フィールドワーク)』や『戦闘任務(バトル・ボランティア)』などを熟す。

 

「目標を定めておくのがいいらしい。お前等、俺が戻ってくるまでにアクア・サーペント4匹とドドラ2匹ぶっ殺してこい」

「きゅう!」

「きゅい!」

 

 海から離れられないシハチとモハチに修行を言いつけるリリウス。氷を作ってやり2匹に喰わせてやる。

 

「シャバラ、シュヤーマ、スパルナ……行くぞ」

「ワウ!」

「バウ!」

「キィー!」

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