ダンジョンで飯を食うのは間違っているだろうか?   作:超高校級の切望

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野外調査

古の怪物アンタレスの素材は、神の恩恵のルールを破り主神でなくともスキル、魔法の発現、ランクアップを可能とした。

 

結果、異端児からの手紙に『フィルヴィスとフィルヴィスが喧嘩してる!』と書かれリリウスは首を傾げた。

 

 


 

 

 今回は野外調査(フィールドワーク)

 本来なら小隊ごとに分かれるらしいが、今回は複数の小隊の合同。

 リリウスは何時ものようにシャバラに乗って歩く。

 

 空ではスパルナが監視してる。

 

「我々も鳥に恩恵を与えてみようか………」

「よく懐くなら問題ねえだろ」

「レオン先生が、鳥と!?」

 

 レオンの言葉に第七小隊のアリサはその姿を想像する。レオンが差し出した片手に降りる鳥、何故かレオンにのみ日差しが差し込む曇り空! なんか知らんが集まった動物!

 

「え、絵画?」

「あれはなんだ?」

「ああ、気にするな。学区じゃよく見る光景だ」

「そうか」

 

 なら良いか、とリリウスは気にしない事にした。

 野外調査(フィールドワーク)は主に植生、動物の調査などを行う。

 

 以前この地に訪れた先達の情報と照らし合わせ、モンスターが移動してきてないか、或はモンスターを倒した結果生態系が回復したかなどをレポートに纏める。

 

「海の魚が棘だらけに進化したように、地上の植物も結構進化したらしいな」

 

 と、食えば腹の中に火をつけられたような苦痛を与え内臓を溶かすといわれるカエンタケを食いながら呟くリリウス。神によると元々強力な毒キノコだが、モンスターが現れる以前に比べて毒性が強まったとか。

 

「皆は食べないように。『耐異常』を持っている冒険者でも苦しむからね」

「リリスは?」

「彼女は『悪食』という発展アビリティらしい。経口摂取に限っては『耐異常』を超えるし、Lv.4だ」

 

 だから毒茸も食える。

 発展アビリティはランクアップまでにどのような経験値(エクセリア)を積んだかを示す。『狩人』ならモンスターとの交戦経験が多いこと、『耐異常』なら毒を食らっていた証、『逃走』なら逃げることが多く、『魔導』なら魔法を使っていた証拠。

 

 ならば、『悪食』なんてアビリティに目覚めるのは…………。

 

「……………?」

 

 集まる視線に首を傾げるリリウス。

 と、空でスパルナが叫ぶ。

 

「来たぞ」

 

 その言葉に即座に構えを取る学区の生徒。なるほど、よく訓練されている。

 

 森の奥から現れたのはライガーファング…………の群。

 

「!? なんだ、この数!」

「この森で討伐されたの、1年前だろ!?」

 

 1年前は付近の村から依頼を受けた『戦闘任務(バトル・ボランティア)』でライガーファングの群を討伐している。その時の数は5匹だが、今回はどう見ても10匹以上。

 

「…………………」

 

 レオンとリリウスはそのうち二匹を見つめ、森の奥を睨む。

 

「ガアアアア!!」

「来るわ!」

 

 アリサの言葉に前衛が飛び出し後衛が詠唱を始める。地上のライガーファング………有能な教師の師事を受けたLv.2も交じるこのパーティなら油断さえなければ問題はない。

 

 もっとも、()()を油断と呼ぶのは少し厳しいだろうが。

 

「!?」

 

 ライガーファングの獣毛が剣を弾く。僅かに斬られているが、本当に僅か。驚愕に固まりかける一同はしかし直ぐに矢や短文詠唱魔法で支援をする。

 

「なっ!? 嘘…………」

「ガルルル」

 

 威力の低い短文詠唱といえど、地上のモンスターに耐えられる威力ではないはず。なのに、健在。それが意味することは一つ……

 

「強化種!?」

 

 それも、群の全てが。偶然? いいや、必然だ。

 

「レオン! せんせー………」

「ああ!」

「あんたも気づいたのが一人、遠くでスパルナが一人見つけた」

「解った!」

 

 レオンはすぐさま飛び出していく中、リリウスは布に包まれていた得物を抜く。

 それはリリウスの身の丈よりも長いハルバード。リリウスが作り出した第4級武装『フォーク』。ただし素材は超硬金属(アダマンタイト)という、重量武装。

 

「よっ、と」

 

 軽い言葉で振るわれたハルバードの一撃が、ライガーファングを()()()()

 お世辞にも叩き切ったとすら言えない。獣毛、獣皮に防がれる程度の切れ味のなまくらを力任せに叩きつけただけ。

 

 それでも通常の地上モンスターなら叩き斬れたろうが。まあ、殺す分には問題ない。

 

「ッ! ガアアアア!!」

 

 と、後方に控えていたライガーファングが叫ぶと群の中の一部が大きく前衛を飛び越える。狙いは後衛!

 

「ひっ!?」

 

 巨大な猛獣の接近に思わず固まる魔導師。リリウスは舌打ちしながら突き飛ばし、前足が顔に叩きつけられる。

 

「っ!? リリスさん!」

「………………」

 

 強化種のライガーファング。迷宮の怪物にも匹敵する大型種の一撃を頭部に食らえば、Lv.4と言えど危険だろう。だが、ガジュッと湿った音が聞こえた。

 

「────!!」

 

 ライガーファングの前足が消えていた。リリスはグチャグチと咀嚼音を響かせる。

 

「お前か」

「!!」

 

 視線を向けられた後方のライガーファングが体を震わせ後退ろうとするも、不自然に固まる。リリウスがぶん投げたハルバードが頭蓋にめり込む。

 

 それでも耐えたこの個体は、Lv.3にも匹敵するだろう。リリウスがハルバードに飛びつき刃を蹴りつければ、頭蓋を砕きながら頭部を引き裂く。

 

「ガア!」

「ガルァ!?」

「…………?」

 

 明らかにライガーファング達が狼狽え始めた。リリウスは気にせず後方のライガーファング………群のボスの頭部を引きちぎり残った一匹に牙をぶん投げた。

 

「ギャウ!」

「グガア!」

「!! に、逃さないで!」

 

 アリサの言葉にハッと学区の生徒達が動き出す。趨勢は決した。迷宮の原種クラスと言えども、迷宮のように後から後から湧いてくるわけではないのだ。

 

 群のボスがやられ困惑した群など彼等の敵ではない。

 

 

 

「怪我人はいないようだね」

「レオン先生!」

 

 リリウスがライガーファングのボスと副ボスを食っているとレオンが戻ってきた。誰かを抱えている。

 

「そいつらが?」

「ああ。調教師(テイマー)だ………妙な道具を持ったね」

 

 と、レオンが鞭のようなものを見せてきた。リリウスはライガーファングの死体から水晶のようなものを取り出す。

 

 この2つはセットで、これで群のボスを操ることで群そのものを操っていたらしい。

 

「オラリオの闇派閥(イヴィルス)から受け取ったらしい」

「根を張ったカビの様にしつこい奴等だな。まだ残ってやがるとは」

 

 それも、こんな高度な魔道具(マジックアイテム)を作成できる施設を持っていると来た。オラリオの何処でそこまでの研究施設を作れるのか。

 

 救出した異端児(ゼノス)達によれば地下施設とのことだが………。

 

「ただ、口ぶりからして本命はこれじゃなさそうだ」

 

 

 

 

 森の奥。力を与えた人間が力に溺れていくのを見るのが大好きな神の眷族達は、今日も神から与えられた新たな力に酔っていた。

 

 モンスターを操る鞭。自分より強いモンスターを操り、魔石を食わせて強化種にし、群のボスに仕立て上げ群ごと手にする。

 

 もう一つは、モンスターを進化させる宝玉らしい。

 それをあるモンスターに与え、魔石製品から抜き出した魔石を大量に与える。

 

 そのモンスターは、美しい女の姿を象った。

 怪物趣味のない彼等ですら見惚れてしまった。誰一人悍ましさを覚えない。それがどれだけ異様なことなのかを理解せず、美しき我等が女神と崇め魔石を、生き物を捧げる。

 

 主神は既に一部を引き連れ逃げていた。残された眷族達は、自らの身体が生きたまま腐り落ちるのも気にせず、身体が動かなくなるまで彼女に尽くした。いや、死んだ後も彼女に尽くした。

 

 自らの眷族が死に絶えていくのを感じながら、邪神は嗤う。

 腹を抱えて笑い、名を与える。

 

 

 その名は、屍を操り世界を蝕む魔女。エリクトー。

 

 


 

 

エリクトー

ギリシア神話の魔女。死体を蘇らえらせ操る力を持つ。推定Lv.5階層主。ダンジョン、地下迷宮内で発生した場合Lv.6階層主級。ただしこれは単体。

操られたモンスターが溢れる場所では『耐異常』持ちでパーティを組んで挑むべし。

だいたい全部酔っ払いが悪い。

 

 

 

とある死神との会話

 

 

 それは何時か、過去の出来事。獣と死神が出会った、特に何も起こらず何も変わらなかった一時。

 

「苦しいか、迷える子よ……な〜んていってみたけど、こりゃ無理だね。うん」

「…………?」

 

 ダンジョン中層。今日も今日とてソロで潜っていたリリウスの前に現れたのは一人の男。いや、気配を隠しているが神?

 

 死臭はしないのに、『死』の匂いがする。

 

「いや〜、君を誘うように言われてね。人形姫ちゃん……あ、今は剣姫ちゃんか。その時の借り返せって言われると何も言えなくてさあ」

「………………」

「あ、まってまって! ほら、ご飯あげるからあ」

 

 基本的に奪われてばかりで、狩って喰らうようになったリリウスにとって食材を分け与えられるのは数少ない経験だ。

 

「改めて、俺はタナトス。念の為聞くけどさ、俺達の仲間になってオラリオに死を振りまかない?」

「まかない」

「だよねえ。知ってた。君、剣姫ちゃんよりよっぽどだけど、優しすぎるもん」

「…………?」

「君に再会したい死んだ誰かがいれば別なんだろうけど」

「死んだとしても再会したいやつなんざいねえ」

「またまたぁ」

 

 あっはっは、と笑う神にリリウスは特に気にすることもなくサンドイッチを食う。

 

「………」

「美味しいでしょ? それ、もう地上じゃ食べれないよ。うちに入れば、俺から頼んであげる。あの子も息子みたいな年齢の君が食べたいって聞いたら喜んで作ってくれるよ〜」

「息子は死んだのか?」

「うん。でもねぇ、俺が再会を約束してあげたんだぁ。そしたら、ふふ、あっさり命を捨てる兵の出来上がり」

 

 愚か者を嘲るような笑みを浮かべながらも、この神は人類を嘲笑っていない。なんならそこらの神より人類に愛を向けているだろう。

 

「皆も頑張ってるからさあ、俺としても願いを叶えてあげたいわけよ。皆必死に生きてるんだぜ? だからさ、仲間になってくれない?」

「断る」

「そっか………再会したい人が死んじゃったら、何時でも来てね〜。俺、強い思いが起こす奇跡って見てみたいし」

「俺にそんな奴はいねえが…………いたとしたら、俺は生まれ変わるより天界に残ることを望む」

「そっか。じゃ、またね〜」

 

 

 因みにこの会話があったからこそ幼女の自爆に反応出来てたりする。

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