ダンジョンで飯を食うのは間違っているだろうか? 作:超高校級の切望
「
「なっ!?」
リリウスの言葉にルーク達が反応する。
「待て! 俺達だって、紛争に参加したこともある! Lv.2の眷族とだって戦った!」
「そうなのか……なのですか?」
と、レオンに確認を取るリリウス。レオンは困ったように肩をすくめた。
「それは間違いないよ。そこらの眷族なら、まあ問題はないだろう。私もいるしね」
「だが
死亡扱いになれど、死体の発見されていないヴァレッタなどはLv.5。レオンやリリウスの敵ではないが、学生を皆殺しにする程度は簡単にやれるだろう。
なんなら数に物を言わせた自爆特攻だって出来る。
そうなれば、幾ら強くともレオンやリリウスだけでは守りきれない。
「ん? 俺が守る必要はないのか?」
「まあ、義務はないね…………」
首を傾げるリリウスにレオンは困ったように笑った。実際リリウスの扱いは生徒なのだから、なんならリリウスより弱いもう一人の引率の教師はリリウスを守る義務があるほどだ。
「俺は守られるつもりなんてない! どんなに危険でも、逃げない! 俺は、強くなるんだ!」
「…………………」
「死ぬ気で頑張れば、俺だって…………!」
「死ぬ気で努力した奴なんているわけねーだろ」
と、ルークの言葉を切り捨てるリリウス。
「あ、あんただって、9歳でLv.4になって…………」
「ああ、だが俺は生きてる」
そもそも死ぬかもしれないことに挑んだだけで、リリウスは死ぬ気だったことなど一度もない。生き残って、強くなる為に戦い続けた。
リリウスが深層に挑みながらも途中で引き返すように………。
リリウスがオラリオの外に居ながら『竜の谷』に忍び込まないように。
リリウスがアフロディーテの頼みを直ぐにでも済ませようとせず力をつけようとするように。
順序がある。
挑むべき冒険はあるだろう。避けられぬ冒険はあるだろう。だがルークのそれは今ではない。彼は、守られているのだから。
「俺は、でも、死ぬ気なんて…………」
「じゃあ、それで死んだらどうすんだ? お前が、じゃねえ。後ろの…………なんだっけ、お前」
「彼女はナタリノーエ・クラッドフィールドだよ。ところで、彼の名前もわかるかい?」
「知らん」
「あ、えっと………ナ、ナノでしゅ!」
「知らん」
「あぅ………」
名前すら覚えられていなかったどころか覚える気もなさそうな態度にナタリノーエことナノはしゅん、と落ち込む。
一応は敵対したつもりのルークは覚えられていないことにグッと歯噛みする。
「で、そこのちっこいのが死んだらどうする?」
「ナノは関係ない! 俺一人でだって、ついていく!」
「アホか。そこのチビがいなけりゃさっき死んでたろうが。それ、何度目だ?」
神の恩恵は、平等に見えて存外残酷なまでに不平等。才能がある者に力を与えるが、それで何もしない者に力を与えたりはしない。
ナノの強さは、間違いなくルークを守るために無茶をした結果だ。
リリウスは知らないが彼等は他の生徒から『第七小隊』候補と噂されている。
エリート小隊とも呼ばれる伝統が教師達に──選ばれたと思い努力した結果結果的にそう呼べるだけになるが──非公式に学区生徒達に伝わる小隊候補。
レオン含めた優秀な教師達に育てられた学区生徒の中でそこに選ばれると思われる……それだけ認められるのは、並の経験では得られない。
ルークは無茶をし、それを守ろうとナノも無茶をし、結果的に高位の
「自分の命を対価に、世界に
「ルーク。少なくとも、私達も君達に不相応な戦場に行かせたことはないよ」
レオンも宥めるように言う。
オラリオでもそうだ。いきなり50階層にワープする第二級冒険者なんていない。
第二級冒険者で水場のアンフィスバエナに挑むリリウスがおかしいのだ。いや、リリウスの頭がおかしいのだ、常識的に考えて。
「それでも、俺は………!」
「…………チッ」
食い下がるルークにリリウスは舌打ちした。世界を守れない現実から目を背けるがゆえの逃避行動だとしても、守るために、いずれ訪れる未来に怯え力を求めたリリウスはそれ以上何も言えないからだ。
「………………?」
守るため………?
なんだっけ? と、ナノを見るリリウス。女、だった気がする。年下の…………。
「…………この近くに村があったはずだ。ルーク、君達はそこで待機。周辺の調査は私とリリスでする」
「え!? 二人っきりでですか!?」
と、アリサが思わず叫ぶ。
「ああ。彼女はLv.4。何より、未知を既知へと変える冒険者だからね」
「? この女はお前の番か?」
「え、やだ! そう見えちゃう!?」
「違うよ」
「まあ、お前なら子種だけでも欲しがる女はいるか」
「こだっ!?」
「……………ははは」
リリウスは最年少の第一級冒険者になった際のアマゾネスの群を思い出しながら言ったが、生々しい言葉に女子生徒達は固まり、レオンは苦笑した。間違いなくリリウスと同じ経験がある。
場の緊張が僅かに緩んだ。
「移動しよう。ルーク、撤回はしない、待機だ」
「……………!!」
暫く踏み鳴らされた道沿いに歩いていると、村が見えた。モンスター対策の杭を敷き詰めた槍衾のような外壁。
木造の門の前に、門番がいない。
「…………?」
見張りもいない。今回は
「あそこ、お前等の拠点か?」
村そのものが
まあ、それはないだろう。今回の彼等の目的は学区の生徒だったらしい。それなら村で囲んだほうがまだ確実だ。
「一先ず入ってみよう」
或いは
門の閂はされておらず、あっさり開いた。
「わ!?」
とナノが思わず叫んだのは、門の前に村人達が集まっていたからだ。
老若男女問わず、笑顔で出迎えてくれた。
「レオンせんせー…………」
「ああ…………
「え──」
と、村人達が笑顔のまま襲いかかってきた。常人の動きではない。全員が、邪神の眷族?
「うおおお!!」
バーダインの拳が村人の一人に叩きつけられ、村人の体が
「なっ!?」
「………糸?」
血は流れず、代わりに肉を繋ぐ細い糸のような何かが見えた。千切れかけた体を繋ぎ止め、まだ動く。そのモンスターよりも悍ましい光景に誰もが顔を歪める。
レオンすら思わず固まる中、真っ先に動いたのはリリウスと人の機微を介さぬ獣達。
「不用意に噛むな」
「ガア!」
「グルァ!」
主の命に忠実に、爪で引き裂く。動きこそLv.1から2とそこそこだが、脆い。腐った木のようだ。
木………?
「きゃあああ!?」
「あつ!?」
悲鳴に振り返れば魔導士達が地面から生えてきた赤い茸に焼かれていた。熱は発生してないが、強烈な刺激毒が肌をただれさせ、胞子が喉を焼いたのか喉を押さえ蹲る。
「…………菌糸類!」
ボコッと頭部を失った死体の首からキノコが現れた。他の傷からもだ。全部の死体がキノコの傘を生やし、胞子をばらまく。
「いづっ!!」
生徒の一人が指に激痛が走り視線を向けると、人差し指の爪を剥がしキノコが生えていた。手が勝手に動き、指が瞳を貫こうとして…………
「【響け】」
リリスが超短文詠唱を唱え雷を落とす。そのままシュヤーマの背へと飛び乗る。
「【太陽に先立つ光。夜闇は白ずみ、陽光が世界を照らす。目覚めよ、地に満ちる命。日輪の抱擁が我が身を消し去ろうと、新生の暁が
「ガウ!」
陽光があたりを包み爛れた皮膚と腫れた喉が治り、体から生えたキノコも消えていく。
ただし、それは生きた人間のみ対象。動く死体がブルブル震えたかと思うと傷口から、目から、口からキノコを生やす。
「【
偽装の詠唱を唱え、炎を放つ。死体は一瞬で根を張った菌糸ごと焼き尽くされた。
そう、菌糸類。主に根を張るのは、植物。
「────」
メキメキと音を立て木々が蠢く。建築物に張り付いた根が殻をかぶるように家の残骸を纏う。
「キィー!」
「…………避けられぬ冒険………はやいな」
空を飛ぶスパルナ曰く、この村を含めて森の一部が霧…………否、茸の胞子に覆われているらしい。
エリクトー
寄生モンスター・ダークファンガス。
本体は良くてLv.6だが、時間をかけ根を広げればその脅威は深層の階層主に匹敵する。
バイオのボスみたいな性能してるぞ。
ここでルーク君を矯正すると絆レベルはともかく、後に原作開始時にLv.3に成長出来なくなってしまいます。
私は優しいのでLv.3に成長出来る環境を用意する必要があるんですね。