ダンジョンで飯を食うのは間違っているだろうか? 作:超高校級の切望
森の奥へと向かうリリウスとレオン。
リリウスは現在上着を脱いで腰に巻いている。シャツを着てようと、全てきちんと着ないと効果を発揮しないので、腰に巻いておくだけで効果は消える。
「面倒な胞子だな」
視界を遮るし、喉に張り付く。根は張られないが、鬱陶しい事この上ない。
後この胞子、魔力に干渉する。魔力が拡散される。
「茸の森だな」
木のように巨大な茸が生えている。色や形が様々だが、味は全部同じ。強いて言うなら、毒の強さで刺激が変わる。
「ここまで来るとちょっとしたダンジョンだな」
と、茸が裂け襲いかかってきたがハルバードを叩きつけるリリウス。繊維質な体は、打撃に強い。が、Lv.7の力には敵わない。
「これも魔石がねえなあ。モス・ヒュージなんかの苔の囮と同じだな。次元が別物だが」
「私は先の報告にあった沼の王を思い出すな」
「ああ、確かに」
大群に見えて、その実超巨大なモンスター。環境そのものが敵。
それは確かに沼の王を連想させる。精霊の力を感じる、という意味でも。
「フフ、ウフフ」「アハハ」「オ客様?」「遊ンデホシイ?」
「…………………」
と、大量の白い美女が現れた。彫刻のように白いそれらは、恐らくは精霊を象っているのだろう。大群に見えてその実全て同一個体。
「邪魔だな」
「ああ………」
Lv.7二人の轟撃が、文字通り精霊を消し飛ばした。
「…………」
当然ランクアップ可能なリリウスの方が力は上だが、レオンの剣術もレベルを差し引いても只者ではない事が分かる。
【
「ウフフ」「無駄ヨ」「アハハ」
精霊は再び現れる。どれだけ破壊されようと、髪の先を斬られた程度のダメージなのだろう。
早いとこ本体を見つけないとジリ貧だ。
毒で森ごと…………この森は人里に近いからレオンの許可が下りないか。
「【突キ進メ──】イギッ!?」
胞子の濃霧の中では魔法の威力は弱まるが、リリウスの放つ毒は魔法ではない。猛毒の竜巻が槍のように鋭く伸び貫かれる。
ジワリと黒く染まっていく白亜の如き体が切り離され、崩れ落ちる。
毒は通じる。精霊のオリジナルに劣るとはいえ、この程度の紛い物の精霊の奇跡に無効化される程弱くはない。
リリウスは地面に手を埋める。無数に伸びる菌糸の一部に触れ、毒を流す。
「アアアアアア!!」
と、地面を突き破り巨大な精霊体が現れる。魔石を含む本体を地中深くに隠していたが、埋まったままでは毒に侵されると思ったのだろう。
「アァ!」
フゥ、と吐き出される大量の胞子。これまでのものに比べ、明らかに脅威の増したそれらをレオンとリリウスは得物を振るうだけで払う。
「!!」
その僅かな隙をついてリリウスの肩を貫く茸の欠片。それだけなら大した傷ではない。
茸の根は植物の吸収器官と違い、その本質は消化器官。リリウスの体を溶かしながら根を掘り進め栄養を貪り増殖し………。
「キッ──」
リリウスの手刀が
発展アビリティ『悪食』とスキルによる『耐異常』を持つLv.7のリリウスは本来茸に寄生されたりしない。
今のは、
地上のモンスター同様魔石を切り分けて生み出した新種の怪物。リリウスの毒を脅威と判断し、確実に殺そうとしたのだろう。
ここにはもう一人、自分を殺せる存在がいるのを忘れて。
「【火ヨ来タレ──】」
「そこまでだ」
レオンの斬撃が精霊を真っ二つに切り裂いた。
切り口から菌糸が伸び、体を繋げる。忌々しそうにレオンを睨む精霊。だが、もう終わりだ。
なるほど、確かにしぶとさは大したものだが、Lv.7の2人を相手どれるほどではない。
リリウスが再生中の精霊の魔石を砕く。どんなモンスターでも、魔石を砕かれれば終わり。精霊は灰となって崩れ落ちた。
「んじゃ、戻るか」
「そうだね。君の腕をついた茸のように魔石を持たされた個体がいるかも…………!」
「………!」
リリウスとレオンが村の方角へと振り返る。
「…………なんだ、この気配」
「急ごう!!」
時間は少し遡る。
村の護衛、とは名ばかりの待機組。ルークは見張りを引き受けていた。
確かに村を守るのも大事だが、それは他の生徒達や教師がいる。自分は強くなりたいのに、と憎らしそうに森を睨む。
強くなりたい。誰よりも早く、黒竜を倒せるほど。だって、早くしないと世界が救われたとしても多くの命が失われる事になるのだ。
何故冒険者はオラリオで完結する。外の地獄を目にも留めない。
そう、ルークは地獄を見た。
石造りの家すら砕かれ、手足が瓦礫の山から生え赤い湧き水が小さな川を作る地獄。
人の焼ける匂いが充満し、まだ小さな人だったものが崩れる地獄。
モンスターに畑を焼かれ、国民の為に他国を攻めねばならぬ地獄。
その地獄を一つでも消し去る為に、誰も泣かないように、ルークは世界を救いたい。アフロディーテに言わせれば、世界を知り力を得てしまったからこその『英雄願望』。誰もやらないなら自分がやらねばと、視野狭窄に陥った典型例。
今にも森に飛び出しそうな自分を心配している少女など目に映らぬほどに。
「おい、なんだあれは!?」
「…………?」
不意に聞こえてきた声に振り返る。皆が見てるのは、空?
「キィー!」
空の見張りをしていたスパルナが落ちてきた。怪我をしている。
空には大きな影。鳥? いや、あれは……
「ドラゴン!?」
ズゥン! と大地を揺らし、黒竜の鱗の欠片を収めた祠を踏み潰すのは7
元々ひび割れ砕けた鱗の欠片、1000年間の刻を経て乾いた鱗はわずかに砕けて、赤竜は周りの村など気にせずスンスンと鼻を鳴らし顔を近づける。
「ファイアドレイク!!」
教師が叫んだように、その赤竜の名はファイアドレイク。地上に進出したモンスターの中でも強力な竜種の一体。その戦闘力は地上においてもLv.2を超える。
「キュルル?」
鱗を見て首を傾げ、怯える様子はない。黒竜の欠片に怯えぬ竜。まさか、竜の谷から? ならば、その強さはLv.2でも足りない………!?
「お前達! 逃げろおおお!!」
教師が叫びながら剣を振るうが赤竜の鱗に弾かれる。
「グウウ……」
鬱陶しそうに尾を振るう。教師は剣で受け止めるも体が浮き上がり、靴裏で地面を削りながら減速する。
「っ! 何をしている! 早く逃げろ!」
推定Lv.は4。教師と互角。
だが竜だ。それも、ヴァルガング・ドラゴンのような射程も威力も持たないが、
「…………」
炎に警戒する学区の人間を尻目に鱗の欠片を咥え、飲み込むファイアドレイク。
1000年経っても、放つ威容を衰えさせぬ黒竜の一部。それを、モンスターが飲み込んだ。
「──────!! グルアアアアアア!?」
赤竜の鱗が赤黒く染まる。
体の周囲を赤黒いオーラが包み、片目が腐り落ちる。
明らかな強化。しかし強化種とも違う未知に、ルークは足を止め振り返る。先程の時点で教師と互角………ならば今は、一人では相手できない程に……!
自分は村を守るために此処に残った。
自分は強くならなくてはならない。
死ぬ気はない。勝って、糧に………!
「グルアアアアアアアアアア!!」
そんなルークの蛮勇は、竜の
黒竜の因子を得たファイアドレイク(♀)。鱗は赤黒く染まっている。
赤黒いオーラを放っているように見えるが、実は体が崩壊して舞っている鱗の破片。魔力で体を癒しながら保っているが、例えるなら自転車発電で発生させた冷気で氷の形を保つようなものでほっといても死ぬ。
戦闘能力はLv.6。
エリクトー
可哀想なかませ。ちゃんと育てられた精霊の柱ですらLv.7一人で吹っ飛ばせるからね。仕方ないね。
情報の暴力ミニ
『リリウスの死ぬ気で努力した奴なんているわけねーだろ』『だが俺は生きている』はフラグだよ。
まあ元々確実に死ぬ冒険を避けてるだけで九割死ぬ戦い(アンフィスバエナとか)は避けないからね。