ダンジョンで飯を食うのは間違っているだろうか?   作:超高校級の切望

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迫る戦火

「今日は魔石が多いな〜」

「何カ、早急に力を求めル理由があったノでしょうカ?」

 

 

 

 などと迷宮の何処かで会話されてる中、リリウスは魔石を食わせて強者にしたモンスターの血肉を貪る。

 新たに手に入れた魔石も後で隠れ里とやらに送ってやろう。取っておいた普通の魔石を地上で換金する。

 

 昨夜出会った女。何故か見逃されたが、あれはヤバい。【ヘラ・ファミリア】と断言はしてなかったが、間違いなく今の最強(オッタル)を超える最強。

 発言的に、同格がもう一人居てもおかしくない。

 

「グオオオオオオ!!」

「やかましいぞ、考え事してんだ。喰い殺すぞ餌が」

 

 ゴライアスの手足を吹き飛ばし、頚椎を抉り出し喰っていく。魔石は………流石にゴライアスだから持っていくか。討伐は人に知られすぎる。

 

「この程度じゃ大した糧にもならねえか」

 

 同レベルの階層主。強化も魔法もなしならかなりダメージも負ったがアンフィス・バエナの時程上がった感じはしない。まあそれも当然だが。

 

「もっと手っ取り早く力を得られる方法がありゃ良いんだが」

 

 一通り食い終え魔石を割る。残ったドロップアイテム(かわ)は捨てるか売るか………売るか。

 

 

 

 

 

 地上に戻ると大通りが荒れていた。確か炊き出しがあったはずだが、『爆撃』でも受けたのか瓦礫の山だ。老いも若きも喚き散らす悲鳴に怒号、鼻腔をくすぐる焼け焦げた血と木材の匂い。

 

「ぼ、冒険者様! お願い、お願いします! お母さんが……………!」

 

 縋り付いてくる子供の走ってきた方向を見ると瓦礫の山から血だらけの手が伸びていた。まだ動いている。

 Lv.4の膂力でどかしてやる。この程度ならアミッドが治すだろう。

 

「ありがとう………ありがとうございます! 冒険者様!」

「それ寄越せ」

「え? あ、えっと………はい!」

 

 少女から受け取った飴を口の中に放り込み血肉の味を洗い流す。

 

「へえ、意外と優しいんだね」

「……………神?」

「そ、神様。よろしく〜」

 

 そのままギルドに換金に向かおうとするリリウスにかけられる声。振り返れば何処か軽薄そうな神が居た。まあ神などだいたいどいつもこいつも軽薄だが。

 

「君って【飢鬼(ラークシャサ)】でしょ? ラークシャサってね、俺達とは派閥が異なる神々の間で伝わる悪鬼の名前なんだ。そんな名前を持つ冒険者だから、どんな凶悪なやつなんだろうって思ったらこ〜んな可愛い女の子だったなんて」

「俺は男だ」

「え、まじ? 男の娘?」

 

 何故か『男の子』発言に違和感。しかし下界の子に神の言葉の真意など解るはずもなく。

 

「あ、ちなみに俺はエレンね。話は戻すけどさ、君はどうしてあの子を助けたの?」

「……………?」

 

 何故そんな事を、というよりはそういえばという風に首を傾げるリリウス。言われてみれば何故?

 と、口の中の甘味を思い出す。

 

「報酬があった」

「報酬? 報酬か! 良いよね、俺もさっき人助けをしてみたんだけど、見返りはあったよ。気持ちがいいんだ! 助けてあげるっていう優越、感謝される快感、施しを授けるという満足!」

「そうか」

「待って待って〜!」

 

 と、エレンが追ってくる。

 

「ちょっと聞きたいんだけどさ、君は『正義』ってなんだと思う?」

「【アストレア・ファミリア】に聞け」

「いやまあ、答えは【アストレア・ファミリア】のある子に出して貰う予定だけどさ、別視点って気になるじゃない? 特に君は、正義が取りこぼした正義の瑕疵だ」

「…………………」

「そんな君にとって、正義とは?」

「大声を聞くこと」

 

 それだけいうと今度こそ立ち去るリリウス。エレンはふむ、とその背を見つめる。

 

「大声、大声ねえ………なるほど。声を聞いてもらえなかったからこそ、なのかな?」

 

 正義になんの期待も持っちゃいない。大多数の叫びを聞いて、小さな声などに耳を傾けない。それが彼にとっての『正義』という存在。

 

「俺は君にとっての正義と聞いたんだがなあ」

 

 正義の味方とはどういうものかではなく、リリウスの思う正義とはなんなのか、そう質問したつもりだが伝わらなかったらしい………或いは、伝わった上で無視してきたか。

 

「『正義』に救われず悪も正義もかなぐり捨てた獣へと堕ちた子か。これだから、下界は可能性に満ちている」

 

 

 

 

 

 

「各【ファミリア】代表、揃ったな。ではこれより、定例の闇派閥(イヴィルス)対策会議を始める」

 

 【フレイヤ・ファミリア】のオッタル、アレン。

 【ロキ・ファミリア】のフィン、リヴェリア、ガレス。

 【ガネーシャ・ファミリア】のシャクティ。

 【アストレア・ファミリア】アリーゼと輝夜。

 【ソーマ・ファミリア】のリリウス。

 各派閥の団長や副団長、或いは幹部が集まる中派閥内最強ではあるものの1団員でしかないリリウスはクァ、と欠伸をする。

 

「その前に、現状の体たらくはなんだ、お前達! 連日のように襲撃は絶えず、つい先日には大規模な奇襲を許しおって!」

 

 くわっと目を開いて怒声を散らす。工場襲撃事件を始め、闇派閥(イヴィルス)の被害はここに来て積もりつつある。

 つい先日の炊き出しを行っていた大通り襲撃では一般人に死者を出した。

 

「さっさと害虫を駆逐してえなら、闇派閥(イヴィルス)も追ってダンジョン攻略も進めろなんざ、間抜けな注文を押し付けるんじゃねえよ豚が」

 

 すかさず殺気を放つのは【フレイヤ・ファミリア】副団長のアレンだ。

 『遠征』の帰りに都市中を回らされ不機嫌のようだ。

 

「し、仕方なかろう! 男神(ゼウス)女神(ヘラ)が消えた今、都市内外にオラリオの力を喧伝するのは急務! でなければ、第2、第3の闇派閥(イヴィルス)を生み出しかねん!」

 

 第一級冒険者の殺気に怯えながらも、ロイマンは舌を回した。

 

「ダンジョンの『未到達領域』に辿り着き、都市の威光を示さなければ、世界には余計な混乱が!」

「てめぇの趣味の(わり)(いす)が後生大事だと、素直に吐きやがれ。その脂ぎった体で権力にしがみつきやがって」

「未熟の分際で最強の(いす)に座ってるだけはあるな。居るだけで闇派閥(イヴィルス)に活動自粛を強いていた先代に遠く及ばぬまま席を奪ったくせに、席にしがみついて良いのは自分達だけとは」

「ああ、何か抜かしやがったかクソ小人族(パルゥム)……」

「獣人のくせに耳が遠いのか? 食い千切ってやるから耳を貸せ」

 

 ピリッとリリウスとアレンの間で空気が張り詰める。リリウスは敵について調べられるだけ調べたからこそ、闇派閥(イヴィルス)の台頭は今の最強達が舐められているからだと判断している。

 

 そして、そんな世だからこそその程度気にする必要がないと被害者を無視して悪事が見逃されているとも。

 

「そもそも闇派閥(イヴィルス)を倒したとしても第2、第3を警戒しなきゃならねえのは、ようは今のオラリオじゃ勝てたとしてもまぐれ勝ちとしか思われねえってことだろうが。なあ、都市最強の派閥様」

「轢き殺すぞ、チビ」

「吠えるな、猫」

 

 アレンは口が悪く、仲の良い冒険者などまず居ないが、リリウスとの相性が特に悪い。

 お互い何に対してムカつくのかは解らないが、兎に角ムカつく。根本的に波長が合わぬのだ、彼等は。

 ある意味ではそっくりなのかもしれないが。

 

「アレン、リリウス、止めよう。話が進まない。僕達が率先して啀み合う必要はないはずだ」

「その口で俺の名を呼ぶんじゃねえ、小人族(パルゥム)。虫唾が走りやがる」

「偉そうに仕切るなあ最強の小人族(パルゥム)様がよぉ」

 

 派閥間に介在する敵対視の発露に、リヴェリアが目を瞑り苦言を漏らす。

 

「意思の疎通さえ出来ない眷属の態度、神フレイヤの品性が疑われるな」

「──殺されてえのか羽虫」

 

 アレンの双眼に、今回一番の殺気がこもる。【ファミリア】達に緊張が走り事の発端のロイマンは顔を青くする。気絶しないだけ大したものだ。

 

「ねえねえ、どうして貴方は文句言われなかったの?」

「俺の言葉に反論できなかったからだろ」

 

 空気を読まず話しかけるアリーゼはクッキーを渡しながら尋ね、リリウスもクッキーを食いながら答えた。

 

「もう既に帰りたい。何で初っ端から殺気が行き交ってるんですか、この会議」

「【ロキ・ファミリア】と【フレイヤ・ファミリア】、【女神の戦車(ヴァナ・フレイヤ)】と【飢鬼(ラークシャサ)】の険悪さは何時もの事なので気にするだけ無駄かと〜」

 

 派閥会議初参加のアスフィは胃痛から腹を擦る。気にするななど無理な話だ。

 

「そもそも何で派閥会議に新参者の副団長(わたし)が駆り出されるんですか! 殴るっ、絶対にあの主神と団長殴る!」

「うんうん、【万能者(ペルセウス)】とリオンが仲良くなるのも解るわね!」

 

 二人共真面目過ぎて、周りに振り回されるのだ。ある意味そっくりだからこそ嫌い合うアレンとリリウスとは真逆に、波長がうまく噛み合ったのだろう。

 

「でも安心して! リリウスはご飯あげてたら怖くないから!」

 

 アリーゼが渡した袋からガサゴソとクッキーを取り出すリリウス。会談の空気を毎回悪くする者達は居るが、その中でもリリウスは制御が楽なのだ。

 

「飢えた犬ですかその人は」

 

 周りの【ファミリア】は何でこの空気の中あんなふうに会話してんだ彼奴等、というような視線を送る。

 

「ロイマンをかばうわけではないが、先の奇襲を食い止められなかったのは儂の責任だ。詫びのしようもない」

 

 口を開いたのはガレスだった。重々しい声音に会議室が一瞬静まり返りリリウスのクッキーを食う音だけが響く。

 視線はガレスと、マジか此奴とリリウスに集まる。

 

「白昼堂々、しかも往来の中心での凶行など、予想出来たとしても止められるものではない。ましてや【殺帝(アラクニア)】の仕業ともなれば」

 

 それを擁護するのはシャクティ。

 

「フィンや憲兵団(われわれ)が想定していたのは『爆発物』による混乱……ガレス達に不審物に注意するよう伝えたのが仇になった」

「『爆発物』? どういうこと?」

「一連の工業区の襲撃において奪われておった『撃鉄装置』、あれの用途は『爆弾』の製造ではないかと踏んでおった、ということじゃ」

 

 アリーゼの質問にガレスが答え、更にリヴェリアが補足する。

 

機構(スイッチ)を取り付け、誰でも作動できる『爆弾』と化せば十分脅威になりうる。それこそ魔石製品を扱うようにな」

「? なら、不審物に限定しないほうが良かったんじゃねーの」

 

 と、リリウスが首を傾げた。

 

「後から後から湧いてくる信者に爆弾入れたバッグでも持たせて、往来で爆発させりゃいい。あの趣味の悪い白装束脱ぎゃ解りにくいからな」

「自爆特攻? なるほど、その可能性もあるか……」

 

 とはいえ、オラリオの冒険者相手にも通じる量の爆薬を抱えるとなると流石に怪しい。それこそダンジョン産のアイテムで作ったならありえない話ではないがダンジョンの入口はガネーシャの眷属達が見張っている。

 

(もしダンジョン産アイテムが大量にあるとしたら、それこそ暗黒期初期から集めていたか或いは………)

 

 ダンジョンにもう一つ入口があるか………。

 隠された入口………現実的ではないと普通なら考えないがもし、それをダンジョンから探す場合、隠れ里が見つかる可能性もある。

 

(なら、良いか………)

 

 十中八九地上から探すだろうが、万が一を考えリリウスはその言葉を飲み込んだ。

 

「しかし、そういう情報は先に共有しておいてほしかったものですね」

 

 と、輝夜。小言めいた響きにシャクティ達と共に『先日の作戦』を立案したフィンが隠すことなく真意を語る。

 

「あくまで予想に過ぎなかったと言うのが一点。もう一点は警備を厳重にするあまり、敵の動きを誘いにくくしたくなかった」

「………勇者様の中では、あの奇襲さえ予定調和であったと? 犠牲者の数も算盤で弾いて、小さな方を切り捨てたと?」

 

 ヴァレッタが行った襲撃は『陽動』。フィン達は先んじて『本命』の敵部隊を制圧した。それは周知の事実で、輝夜の言葉に明確な棘が交じる。

 

「被害の規模までは読めなかった………と言っても、言い訳にしか聞こえないだろう。だが、おかげで敵の本体を叩くことが出来たんだ」

「大した勇者が居たもんだ」

「全くだ、常に選択を迫られる今の状況と、それを覆すことの出来ない自分がつくづく嫌になる」

「嫌に? くだらねえ、自分に被害がねえんだから放っておけよ。いや、出来ているのか」

 

 ただ、気にした雰囲気を出しておきたいだけ。

 実際気にはしているのだろうが、そもそも切り捨てる選択をしたのだからその時点で自分の感情に影響を与えない存在として認識すればいいのだ。

 気にされたところで切り捨てられた者達が幸せになるわけでもないのだから。

 

「はい、この話題ヤメヤメ! 私、こんな不景気な話、聞きたくないわ! 嫌な気持ちになってお菓子を自棄食いしてしまいそう!」

 

 アレンや輝夜など一部の冒険者がフィンに厳しい視線を注ぎ、フィンが数を救った事実があるゆえに責められない者達が閉口する中アリーゼが喧しく声をばらまく。

 

「アリーゼ・ローヴェル……貴方という人は………」

「だってそうじゃない! 皆都市を守るために最善を尽くしているのに、それを責め合うなんておかしいわ!」

「「「!!」」」

 

 その場の誰もが目を見張る。リリウスは都市を守るためではなく食費のためなのでどうでも良さそうだ。

 

「反省するところはする、いいところは称え合う! それが正しい話し合いというものよ! 子供だって解るわ!」

「俺は子供だがわからんぞ」

 

 と、十歳児(リリウス)

 

「えっと……11歳になれば解るわ!」

「そうか」

 

 張り詰めていた空気が緩む。

 

「ふふ、明るい話題は生憎ないが、彼女の言う通り建設的な会議をしよう。まず、リリウスが制圧した『悪人共の違法市(ダーク・マーケット)』に付いての情報と共有を──」

 

 フィンが議長となって階段が進む。話題は尽きない。

 都市の中は勿論、ダンジョン、都市外、話し合う必要は多岐に渡る。会議は長丁場を極めた。それを面倒に思い、厭う者は昼寝を始めたリリウスだけ。寝ぼけながら机喰ってる。

 

「今日まであった事件、及び伝達事項はこれくらいかな。誰か、他に共有しておきたい情報はあるかい?」

 

 大型時計(ホールロック)の長針が3周もしようかという頃、アリーゼがリリウスを起こす。

 おもむろに口を開いたのはオッタルだった。

 

「………闇派閥(イヴィルス)に最低でも一人、手練れが居る。恐らくは生粋の戦士」

「あ、例の超硬金属(アダマンタイト)の壁を破壊されたっていうアレね。でも、交戦したわけでも、姿を見たわけでもないんでしょう?」

 

 都市最強に物怖じせずアリーゼが言葉を投げかける。その現場に居たアレンが代わりに答えた。

 

「確認する必要もねえほど離れ業だった。それだけだ。少なくとも闇派閥(イヴィルス)の幹部共が出来る芸当じゃねえ」

「ンー…精査する情報は少ないだろうが、オッタル、敵の能力値(ステイタス)を仮定するとしたらどれ程になる?」

 

 オッタルは常より声を低くしてフィンの問いに答えた。

 

「……Lv.6以上。以下はありえん」

 

 途端、会議室は驚愕に包まれる。

 

「なっ!?【猛者(おうじゃ)】と同じ!?」

 

 Lv.6は現在のオラリオの最高位。都市最強のオッタルしか到達できていない領域だ。彼と同等以上の『怪物』が闇派閥(イヴィルス)に与している可能性がある。その情報は冒険者達に衝撃を与えた。

 

「俺も違法市(ダーク・マーケット)制圧した後、手練れの女に出会った。戦闘にこそなっちゃいねえがあれは相当強かったな。多分魔導士」

「戦闘にはならなかったのかい?」

「見逃された」

 

 と、Lv.4が相手の慈悲で生かされたと言い切る。それはオラリオにおいても、その女と勝負になる存在が1割を切るということ。何せ殆どの第2級冒険者はLv.3だ。

 

過去の強豪(オシリス・ファミリア)の例もある。第一級冒険者並みの戦力を隠し持っていた可能性も捨てきれんのう」

 

 まだ男神(ゼウス)女神(ヘラ)が健在だった頃、2大派閥と鎬を削り合っていた勢力が幾つか存在した。

 その中には複数のLv.6と、そしてLv.7の団長の戦力報告をギルドに報告せず秘匿していた派閥も存在する。まあぶちのめされたのだが。

 多くの眷属を失い主神達は逃亡したが、一部の派閥は残っている。凋落した【セベク・ファミリア】などがその例だ。

 

「……後多分、女はヘラの残党」

 

 リリウスの言葉に再びざわつく会議室。

 

「………何故そう思う?」

「尋ねてみたが肯定も否定もしなかった。ただ、あれは………期待? 面白がっていた? まあ、明らかに動揺はしていた」

「確証はないと?」

「確信はあるな」

 

 もしかして男の方はゼウスの残党だったりするのだろうか? なら、目的は? 復讐?

 そういう気配は感じなかったが………。

 

「そうか………だけど、彼女達が闇派閥(イヴィルス)に与するとは思えない」

「そうか」

「………本題に入ろう。【ヘルメス・ファミリア】の偵察によって、闇派閥(イヴィルス)の新たな拠点が見つかった」

 

 それもかなりの規模が3つ。内部までは見れなかったが、一般人を装った数からして『本拠地』と言っても過言ではないだろう。

 

 その情報を精査し、ギルド上層部もアジトであると判断した。その3つの拠点を同時に叩く。

 

「一つは【アストレア・ファミリア】が行くわ! うーん、頭数が心配だからリリウス、貴方も来て!」

「断る」

「今度リオンの特製料理を食べさせて上げる」

「余計断る」

「仕方ないわねえ、アストレア様特製のスープでどう?」

「鍋十個分寄越せ」

「オッケー、契約成立ね!」

 

 Lv.4のリリウスが仲間になった。フィンとしてもリリウスを民衆の目がある場所で動かしたくなかったので寧ろ助かった。

 

「作戦の開始は──3日後」

 

 多くの冒険者達が膝の上においた手を握りしめた。

 

「敵に気取られないよう準備には細心の注意を払ってくれ。ここで戦局を決定付ける」

「任せて頂戴! やってやるわ!」

 

 

 

 

 

「ジャガ丸くん、この金で買えるだけ全て」

「え、あ………えっと」

「食い終わる前に次揚げとけ」

 

 リリウスの言葉に困惑しながらも、店主はジャガ丸くんを揚げていく。揚げ立てのそれを喰っては受け取り、喰っては受け取り。

 

「………………ぶるじょわだ」

「何だそれは」

「ロキが、沢山買う人はそういうって………」

 

 ちっこい女が話しかけてきた。装備は小人族(パルゥム)のものだが、ヒューマンの子供だ。

 

「ジャガ丸くん、小豆クリーム味5つ」

「あ、えっと………ごめんねアイズちゃん、残りは全部その人が買ってて」

「!?」

 

 バッと振り返るアイズ。

 リリウスをじっと見つめる。

 

「他の屋台に行け、この店のは全部俺のもんだ」

「どうしても、駄目………ですか?」

「駄目だ、失せろ」

「………………」

 

 ガーンと落ち込みトボトボ背を向けるアイズ。リリウスはふと視線を感じる。店主からだ。

 

「ちっ、おい小娘」

「?」

「5つだな? 喰っていいぞ」

「……………!」

 

 パァ、と表情の変化が解りにくいが周りの空気がなんとなく嬉しそうなアイズ。トテトテ戻ってきた。

 

「貴方は、リリウスさん?」

「ああ」

「今、すごい勢いでランクアップしてる?」

「そうだな」

「どうすれば、出来ますか?」

 

 アイズの目には何処か必死さが感じられる。同時に、黒い影。焼け付くような強い思い。自分にどこか似ていると、そう思った。

 

「簡単だ。切り捨てれば良い」

「切り捨てる? 何を斬ればいいの?」

「お前の邪魔になる全てだ。お前自身の安全も、お前の安否を気にして足を掴む者も全て……飢えがスキル()に変わるまで自分の身を血に染め自分が歩いた道を自身と切り捨てた全ての者の血で赤く染めるまで」

「………………」

「神の恩恵は可能性を引き出す。そして、嘗ての子供達は強い意志で器を砕いた…………お前の意思が本物なら、ステイタスはお前に応えるだろ。家族も、復讐も、何もかも忘れてただただ力を求め続けろ」

「……………貴方は、何を捨てたの?」

 

 切り捨てろと助言するならば、リリウスも何かを捨てたのかと尋ねるアイズ。

 

「………………さて、何だったか」

 

 リリウスは思い出そうとして、揚げ立てのジャガ丸くんの匂いに腹が鳴りどうでも良いかと切り替えた。

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