ダンジョンで飯を食うのは間違っているだろうか? 作:超高校級の切望
あの後、周囲を改めて捜索。
結局邪神は既に逃亡済み。捕らえた眷族から得られた情報も断片的。
そもそも彼等は変異したモンスターについては詳しく知らないらしい。
手にした『鞭』と『宝玉』の内、鞭を選んだからだ。
とりあえず『商品』ということは解った。つまり、量産されてる可能性が高い。直ちに対策本部が設置され、学区を始めとした『世界勢力』やオラリオとの情報整理が行われる。
「愉快犯だな」
「あら、そうなの?」
確かに強力。オラリオの外で対抗できるとしたら、レオンやリリウスぐらいだろう。だがあれは強化種だし、あくまで単体で対抗できるのがリリウスとレオンというだけで、恐らくはトール、ポセイドン辺りも対抗可能。
テルスキュラ辺りも出来るか?
「というか、今回が異常に育てられただけで本来はあの馬もどきが地上での姿だろ」
リリウスが思い出すのはケルピーが変異したモンスター。あれに大量の魔石を食わせ、進化させた姿があの精霊もどきだろう。
ダンジョンならともかく、地上でそう何匹も生み出せる存在じゃない。今回の精霊もどきは元々が広範囲に広がる特性、怪物趣味の男達、かつてモンスターが住み着いていたように、モンスターが寄ってくる豊かな森と環境が整った事に加え、
「その『最高級』が売られる場所次第だな」
後何個あるか。まあ、何個もないからこそ最高級品なのだが。
「目的が見えてこねえ。無駄に警戒心を高めてしたいことが、結局ただ騒がしくしたいだけだ」
だから愉快犯。パーツが揃えば他の目的も見えてくるかもしれないが………強いて可能性を上げるなら、売名行為。だが誰を?
「まあ、地上でも強力な眷族が増える。利用させてもらえばいい」
アフロディーテが切り分けフォークに刺したパンケーキを食いながら、リリウスは地上で得られる
ダンジョンは意思を持つ。
それは冒険者ならなんとなく感じている事実であり、怪物との交流を持つリリウスからすれば確信済みの事実。
地上のモンスターはダンジョンの原種より弱いが、それ以上にダンジョンの悪意が無いのが大きな違いだとリリウスは思っている。
「そこに人の悪意が組み込まれたのが今回の事件だ。警戒しな」
と、冒険者の意見として生徒達に伝えるリリウス。
『ダンジョンと地上の違い』なんて面倒な説明を現役冒険者だからという理由だけでさせられて、とても面倒くさそう。
頷いているアリサと牛と
牛は以前教師が提示した階層を超えて階層主とモンスターの大群に襲われた事があると言っていた。理解しているのは、その時のメンバーだろう。
「突発的な
「知るか」
「…………え?」
「地形、モンスターの種類、数、パーティ構成、連携熟度、どれ一つとっても答えは変わる。正解はねえ。即席で対応策を思いつくとしたら、ゆーしゃ様ぐらいか」
「本物の【
「当時7、8歳の俺に求婚する変態だなぁ、としか」
え、と講堂の空気が固まる。アフロディーテがリリウスの講義の邪魔にならないよう声を殺してぷるぷる震えながら笑っていた。
憧れが砕かれた
「種族の頂点に立つ人が
なんかやたらキラキラしてる
「ダンジョンに挑むに当たって必要な事はなんですか?」
「仲間」
ソロで挑みまくっているリリウスの言えた義理ではないが、実際動けなくなったリリウスを【アストレア・ファミリア】や
「あの猪……【フレイヤ・ファミリア】の団長も大抗争の際、他の奴等に露払いさせたからこそ勝てた」
「オラリオで有名な美の女神、フレイヤ様とイシュタル様、どちらがオラリオ一美しいですか!?」
「アストレア」
「美の女神では誰が一番美しいかしら?」
「アフロディーテ」
フフン、と胸を張るアフロディーテ。
「リリウス・アーデについてどう思いますか?」
「………………」
「世界を救うためにオラリオを飛び出し、エルリアの青銅巨人、ベルテーンの沼の王、秘境の魔蠍を討ったそうですが」
「ん〜、まあ………頑張ってるな」
「あそこで正体明かしてたら、面白いことになったかしら?」
「面倒なことになっただろうよ」
シハチとモハチが獲ってきた真珠を見つめながら笑うアフロディーテにリリウスは真珠貝の中身を果実酒で煮込みながら返す。
バターを入れ、味を整えると皿代わりの貝殻ごと食べる。
「キュッ、キュイ!」
「キュルル!」
「んあ?」
「ガウ!」
「ワン!」
「キュイ、キュルル!」
「キュウ!」
「……………どうしたの?」
何やら
「シハチとモハチが貝を食いたいと言って、シャバラとシュヤーマが今は主が食ってると言って、獲ってきたのは俺達だとシハチ達が反論した」
「ふ〜ん」
犬や狼などは序列によって食う順番、食える量や部位が決まっている。その辺りに食い違いがあるのかもしれない。
「喧嘩するな。食事のルールは俺が決める」
「「ワウ!」」
「「キュウ」」
と、今度は空からウミネコを捕まえたスパルナが降りてくる。
それが一ヶ月前の出来事。
とれたての貝も魚も美味かったのになぁ、と空を見上げるリリウス。
「おい居候! なにぼーっとしてんだよ! 頼んでた畑仕事は………終わってる!?」
1週間前、
濁流に流されながら辿り着いたのはモンスターも殆ど寄り付かぬ不毛の大地。
毎日3時間かけて水を汲みに行き、痩せた野菜を育てる集落。地図もない。
川を辿って戻れないかと思ったが複数の川が複雑に絡み合っていた。どうも山の柔らかいところを削る内にこのような形になったらしい。
後一応、川岸で救助を持つために寝ていたリリウスに食事を持ってきた恩もあるし、スパルナ辺りが見つけてくれるまで暫くとどまることにした。
「小さい体なのに、俺より働いてる…………」
「小せえは余計だクソガキ」
「クソガキじゃない! 俺はもうすぐ、お兄ちゃんになるんだからな!」
目の前の母親の腹は膨らんでいる。妊婦だ。
そう言えば、子供が生まれるのを見るのは■の時以来だ。碌に金も貯められねえ、栄養も取れねえ母親に産めるか心配だったが生まれてきた。
母親………?
何だっけな…………。
「二人共、ご飯よ〜!」
「はーい! ほら、行くぞ居候!」
「ああ」
その頃のアフロディーテ。目茶苦茶取り乱している。
現在スパルナとシャバラ達が捜索中。