ダンジョンで飯を食うのは間違っているだろうか? 作:超高校級の切望
サンニコラ聖夜祭二日目。リリウスはスカディとニイナを連れ再び屋台を回る。
ニイナに連れられ雪像コンテストにも参加することになり、面倒くさがりながらも象頭の巨人を作った。
オラリオに住む者は、どうしたって記憶に焼き付けられるのだ。
作品名『ユーアーガネーシャ』。
優勝した。
食品券ではなく、射的や輪投げなどのゲームを楽しむための遊戯券を貰った。
「ニイナのは…………」
「お、お母さん」
「…………ハイエルフか?」
「ううん。王家の傍系だけど、ハイエルフって訳じゃないよ。なんで?」
「リヴェリアより美人だから。ニイナは母親似か」
「お、恐れ多いよそんなの!」
ついでに言うと、リヴェリアとニイナの母なら十人が十人リヴェリアを美人と選ぶだろう。では何故リリウスがリヴェリアより美人と言ったかと言えば、まあ単純にリヴェリアよりタイプだったのだろう。
「……………………」
アフロディーテはともすれば口説き文句になっていたリリウスの台詞を聞きながら、女装は早まったかと考え込んでいた。
「ん?」
と、不意にスカディが走り出す。かなりの美少女であるスカディを、神と神の眷族で溢れた街で一人にするわけにはいかないと後を追う。
「うえぇ〜ん! お兄ちゃ〜ん!」
子供が泣いていた。栗色の髪をした
「どうしたの? 大丈夫?」
「ひっぐ、お、お兄ちゃん………居なく、て」
どうも兄と逸れたようだ。リリウスはスンスンと鼻を鳴らすが、祭りの雑多な匂いにかき消されて追いにくい。
「じゃあ、一緒に探したげる」
「近くに迷子センターあるわよ?」
「君はどうしたい?」
「………………」
キュッとスカディの服の裾を掴む少女に、スカディはニッコリ笑うと抱える。
「じゃあ、一緒に探そうか」
「…………ニイナ、アフロディーテ、迷子探してる奴ら探してきてくれ。シュヤーマ」
「ワフ!」
リリウスは仕方ないと言うように二手に分かれる。スカディは手伝ってくれると思わなかったのか、少し意外そうだ。
「俺はどうも、馬鹿やらかさねえ子供には無条件で甘い」
「そうなの?」
どうして手伝ってくれるのかと尋ねたスカディに、リリウスはそう答えた。今思えば、死の七日間でも子供に甘かったのは、きっと関わらないようにしていた妹の面影を無意識に追っていたのだろう。
「妹? 貴方に似て可愛い?」
「俺に似てるかは知らんが………まあ、可愛い部類だろ」
「お〜」
と、スカディとリリウスに両側から手を繋いでもらっている少女がリリウスの顔を眺める。
「じゃあきっと、そっくりだね!」
「…………………」
この子は将来大物になりそうだ。
「私も見てみたい。貴方と妹」
「オラリオにいんだぞ」
「じゃあ、オラリオに付いてく!」
「…………はぁ?」
「どうせ、何も覚えてないしね、私」
笑い事ではない気がするのだが、まあ良いか。
「それならまあ、何時か会わせてやる」
どの道、一人で会える気もしないし。
「うん、約束!」
「……………ああ、約束だ」
とは言えまずは、この子の兄を見つけてからだが。
背の低い彼等では周りを見渡せない。
「シャバラ」
「クウ?」
リリウスはシャバラの背中に少女を乗せ、縄を咥えさせ少女に握らせる。そのままスカディを抱え、壁を駆け上がり屋根の上に登る。
シャバラも少女を落とさぬようにしながら登った。
「わぁ………!」
スカディは思わずリリウスの服を掴む手に力を込める。色とりどりの魔石灯に彩られた街が綺麗だったからだ。
「綺麗………」
「ん〜…………」
スカディが見惚れる中、リリウスは視線を彷徨わせ少女に似ている
「あれは?」
「違う」
「あっちか?」
「ううん」
「彼奴は?」
「……………」
違うらしい。シュヤーマからの報告もない。
「うゆぅ……」
中々見つからぬ兄に涙目になる少女。スカディが慌てだした。
「ああ、泣かないで! ええと、ええと…………ほら、うさぎ!」
と、雪で兎を作る。楕円に固めた雪に葉っぱの耳と樹の実の目をつけた雪兎だ。
少女の顔にパァ、と笑みが浮かぶ。
「もう一つ作って!」
「ええ…………ああ、ほら」
「これ違う!」
雪を固めて削って作った兎を見て少女は首を振った。
「あ、お兄ちゃん!」
街を歩き回り、ようやく見つけた。
自分で使うつもりだった食品券も、お菓子などが景品にあるゲームに使うつもりだった遊戯券も使う羽目になったが、何とか見つかった。
「ありがとうございます!」
「うん。もう手を離しちゃ駄目だよ」
「俺達、花屋をやってるんで、良かったら今度買いに来てください!」
「入り用があればな」
と、不意に少女がスカディにだけに手招きする。
「あのね、私達の秘密のお花畑教えてあげる。冬でも、すごく綺麗だから、女神様達にも内緒で
と、少女は血の繋がらない兄を横目で見た後スカディに耳打ちした。
「? 何故?」
「あれ、二人は恋人じゃないの?」
「「違うぞ」」
二人揃っての言葉にな〜んだ、とつまらなそうな少女。
「じゃあお花畑の場所だけ教えて上げるね」
コショコショと耳打ちする少女。スカディの目はとてもキラキラしている。面倒なことになりそうなのでアフロディーテと合流しようとしたが、スカディが無言で服の裾を掴んでくる。
「……私、花見たことない!」
「………………………」
これは梃子でも動かないと判断したリリウスは、仕方なくスカディを連れ花畑を目指す。
「雪………」
残念ながら雪で埋まっていた。昨夜起きた吹雪のせいだろう。スカディは目に見えて落ち込んでいた。
「花畑………」
リリウスは雪面に手を当てる。沢山の氷の花が一面を覆う。ガラス細工のような、無色の花々。月光で輝くそれはそれで、幻想的だろう。
だけどスカディの胸には感動は芽生えない。と、リリウスは今度は無数の金属粉を生み出し、炎と共に空に放つ。
色とりどりの炎に照らされ、氷の花畑が彩られる。
「……おお…………おおおおお!! 花畑! 色んな色の花が! すごいすごい!」
「作り物だがな。オラリオに向かう途中か、オラリオで本物を見せてやる」
「ん〜………」
「?」
「でもきっと、どんな綺麗な花畑を見ても、この感動には届かないと思うんだ」
「………それは、喜べばいいのか?」
褒められた、と見ていいのだろうか? そんな事を考えながら、一先ずアフロディーテの下へ今度こそ戻ろうとしたその時………
「「────!!」」
炎の光をかき消すほどの眩い光が、山から天に向かい昇る。
これまで目にした怪物達すら凌ぐ膨大なエネルギーが天へと伸びる。
あの光景を知っている。あれは、神の帰還。
大気が震え、大地が揺れ、山に積もっていた雪が流れ出す。
市壁に守られたサンニコラならともかく、此処は山の中腹。リリウスは即座にスカディを抱えてシャバラの背に乗る。
スキルと発展アビリティでステイタスが向上したシャバラは音を置き去りにするような速度で山を駆け抜ける。
「……………氷の城?」
雪煙の奥で、リリウスは光の柱が昇った場所にいつの間にやら聳え立つ氷の城を見た。
「…………あ、あ」
「スカディ?」
「そうだ、そうだった………忘れていた。忘れちゃ駄目なこと!」
「お前、何か知ってるのか?」
「…………クランプスが、目覚める」
シャバラが大きく跳ねて市壁を飛び越える。
山の雪の殆どが流れてきたかのような雪崩が城壁とぶつかり轟音を立て、一部が市壁を乗り越えドザザと音を立て落ちた。
「……クランプス?」
「
巨大な鉤爪が、自らの胸に生えた女の形をした腫瘍に突き刺さる。
悲鳴を上げ、怯えるそれをブチブチと引き千切りながら恐ろしい牙の生えた口に運び、食い千切る。
コルル、と喉を鳴らす怪物は、20
黒い体毛、黒い角、黒い肌の漆黒の怪物。完全に目を覚ますと同時に、洞窟は崩れ死体も生き残りも纏めて潰した。
体についていた精霊の分身を引きちぎり食らったクランプスは、氷の城の中で忌々しげに咆哮を上げた。
「……………あ?」
パキピキと音を立て、と山の雪が形を変える。鋭い爪を持った、怪物へと。
魔石は無い。動く氷の獣達。空を飛ぶ者、素早く駆ける者、人を踏み潰そうとする者、とにかく多様な獣達。
氷獣とでも呼称すべきか、氷で出来た怪物が襲いかかってきた。
サンニコラ聖夜祭、二日目。少し早めの、聖夜の贈り物は、恐らく今後千年見通しても類を見ないであろう、最悪にして災厄であった。
ところでみんな、ダンまち世界の邪神が、モンスターと精霊混ざった怪物生み出す宝玉を手にしたら、間違いなく襲うであろう場所は何処だと思う?
ヒント∶リヴェリア