ダンジョンで飯を食うのは間違っているだろうか?   作:超高校級の切望

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嘲弄の巨人

 常人ならざる力を手にした神の眷族達は、結局どれだけ取り繕っても力に従う。

 【ロキ・ファミリア】のフィン・ディムナも、【フレイヤ・ファミリア】のヘディン・セルランドも、その強さを信頼されてるからこそ人を従えられるのだ。

 

 例えばもし優れた指揮官がいたとしても、それがLv.1や2なら、強い誰かに保証されない限り従わないだろう。従うとしても、それはお人好しと呼ばれる類の人間だ。

 

 だから正体をバラした。Lv.7………世界最強の3人の内一人としての顔を出せば、流石のエルフ達も黙り込む。

 神の眷族だからこそ、レベルが遥かに上の相手に逆らう無意味さ………を通り越した無謀さを弁えているのだろう。

 

「悪いなアフロディーテ、レオン」

「ま、そろそろ卒業してもいい頃かとは思ってたし、私はいいわよ」

「今回は戦力を分ける必要があるからね。最強が2人いるのは、寧ろ余計な揉め事を無くせて助かるよ」

 

 と、アフロディーテとレオン。

 山に封じられたクランプスを撃つ討伐隊と、クランプスが放ってくるであろう氷獣から街を守る防衛隊に分けるそうだ。

 

「俺一人が討伐に向かったほうが早いだろ?」

「それもそうだけどね」

「精霊が囚われてんのに、エルフ共が何もしないわけないでしょ? 信じてなかったくせにね」

 

 まだスカディを救えるとエルフの前で言ってしまったのが悪手になったようだ。こればかりは絶対に譲らないだろう。

 

「まあ置いてきゃ良いか」

 

 

 

「…………男の人………男?」

 

 ナノは角を取って正体を明かしたリリウスをまじまじと見つめる。

 髪も長く、元々中性的な容姿ではあるが、どちらかというと母似のリリウスはやはり女顔。

 

 ニイナはニイナで男の子と手を繋いだり、抱っこしてたと知り目茶苦茶動揺してる。最後にルークは………

 

「男? は、いや、別に………関係ないし? そう言うんじゃないし。いや、ほんとに男?」

 

 久々の男服に、アフロディーテは少しつまらなそうに髪をとかしている。

 

「まあ俺は多分、顔もあまり覚えてねえ母親似だろうからな。聖女(フィアナ)なんて勘違いされたし」

「そういえば噂のフィアナだったんだね、リリスちゃ………リリウス君………さん?」

 

 一応年上だが、小人族(パルゥム)はやはり幼く見える。ましてやリリウスは同年代でも小柄な方だし。何なら9歳児という設定ですら、小さいと思われていたぐらいだ。

 

「バーダイン先輩が残ってたらどんな反応したんだろう」

 

 と、卒業したバーダインを思い返すニイナ。

 

「彼奴最後の方は俺の性別気付いてたぞ。卒業式の時言ってた」

 

 胸に執着しすぎたバーダインは成長しない胸を見てリリウスを男だと気づいてたと言っていたが、ロキと会ったら男扱いするのだろうか?

 

「あんたは討伐隊なんだよな?」

「ああ。連れて行かねえぞ」

「行かないさ」

 

 と、ルーク。以前までなら、文句を言ってついてこようとしたものだが。

 

「成長したな」

 

 ちょうど良くしゃがんでいたので、少年の頭を一度だけ撫でてやるリリウス。詳しい作戦を立てるために部屋から出ていった。

 

「〜〜〜〜〜〜〜!!」

「ファ、ファウル先輩?」

「ルークは、もう駄目かもしれない……………」

 

 

 

 

「で、ついてくるのはそいつ等か?」

 

 リリウスは己を睨んでくるエルフ達を見つめる。ドゥルガーは引っ込み、スカディはリリウスの背に隠れている。

 

 精霊の隣人を名乗るエルフとしては面白くない光景なのだろう。と、一人のエルフが前に出る。男装の麗人と呼んでも違和感のない魔法剣士。レベルは3だが、その中でもトップクラス。

 

「契約者様」

「……? ああ、俺か」

 

 また新しい呼び名が増えた。

 

「囚われた精霊を救うのに、我等では間違いなく力不足。どうか、御力をお貸しください」

「…………他の奴等と違うな。此奴等は、今回の戦いで俺より優れてると見せつけるつもりだぞ? 俺より弱いのに」

「なんだと!!」

 

 と、他のエルフが激昂する中そのエルフはリリウスの前に跪く。

 

「お前に誇りはないのか!」

「誇りと思い上がりは違う」

 

 そう言ってエルフは同族を睨む。仲間意識が強いエルフはその行動に狼狽えた。

 

「出来ないことを出来ると思い上がり、契約者様の足を引っ張りスカディ様のみならずこの世界を滅ぼすなど、それこそ救いようのない」

「…………俺は基本、ドゥルガーと同じでエルフは嫌いだが」

 

 同胞を侮辱され、顔色を変えるエルフ達。跪いたままのエルフは、そのまま言葉を待つ。

 

「リューとか、お前とか、他にも………個人なら嫌いじゃないのもいる」

「ありがとうございます」

「さて、じゃあ………」

 

 日が昇る。長い影が大地に刻まれる。

 

「行くぞ。遅けりゃ置いてく」

 

 リリウスはフリューゼル・カルデネイアを解けるスカディを抱えたまま、走り出した。エルフ達も後を追う。

 

 

 

 

 置いていくという宣言通り、速い。

 エルフ達が見失わずにすんでいるのは、スカディに気を使った速度なのと、道中現れる氷獣を破壊しているからだろう。

 

「「「私達いらなくないか?」」」

 

 前方に出る氷獣はリリウスが相手し、エルフ達がやっている事と言えばまだ動けた壊れかけの氷獣を相手にするだけ。

 

 Lv.7は伊達でも酔狂でもなく、単身で大国すら相手取れる規格外の怪物。

 数年前の死の七日間でも、第一級が数人居たオラリオが事実上たった二人に落とされかけたというのは、誇張でもなんでもない。

 

「…………!」

 

 と、不意にリリウスの足が止まる。

 目の前に現れたのは氷の城の前に佇む幾つもの人型の氷像。ただし、その氷の色は黒い。

 

「この顔は………」

「クランプスの氷だ…………」

 

 氷像全てが歯をむき出しに、顔中に皺を刻んだ苦痛に喘ぐような、怒り狂ったような表情を浮かべている。

 

 スカディ曰く、クランプスの嘗ての呼び名の一つは『嘲弄の巨人』。

 全てを嘲笑うかのような顔をしていたことからついたらしい。

 

 そんなクランプスが、怒りん坊だのと歌われていたのは、この氷。

 『凍苦(とうく)の厄災』の異名の元たる苦痛の黒氷(こくひょう)。毒ではない。ただ、経験し生き残った者はベヒーモスの毒より恐れたという。

 

 この氷は鉄より硬く、それでいて実はそこまで冷たくない。だが()()

 焼きごてを押し付けられるような、酢を塗った針を刺されるような、そんな例えがされる苦痛を与える。

 

 鋼鉄の如き氷に動きを封じられたまま、凍死するほどの温度ではない氷で何日も苦痛に悶え、その形相は引きつり怒りに満ちたような表情を浮かべる。

 

 或いは、本当に怒り狂っていた者もいるかもしれない。

 その逸話が1000年の時で歪み、クランプスが怒り狂った怪物と伝わり、聖夜に合わせ悪い子を叱る怪物になったのだろう。

 

「でも、此奴等は一体………」

「クランプスを復活させようとした奴等だろ。あそこに神が居たのか」

 

 と、リリウスの視線の先には不自然に抉られた岩があった。位置からして、神が岩陰に隠れるもそのまま凍り付き、自害も出来ずに昨日、何らかの要因で死に天に送還されたのだろう。

 

 氷にまで神殺しの性質があるわけではないようだ。

 

「クランプスの氷は、凍死しない程度から生き物を一瞬で凍らせる程の冷気に変えることもできるの。今はそこに、大精霊(わたし)の力も加わって………」

 

 罪悪感を感じているのか、言葉に詰まるスカディ。リリウスはスカディを降ろすと氷像の一つを蹴り砕く。

 

「け、契約者様!?」

「此奴等が原因で、死者もでかかった。俺達がいなきゃ街も滅んでたろ。スカディ、責任を感じることを優しさとは言わねえよ」

 

 リリウスの脳裏に映るのは、救われなかった事を救おうとした者に八つ当たりする民衆。憎い『悪』を殺すために剣も取らず、抵抗しない『正義』に石を投げる者達。

 

「お前は1000年も封じた。邪魔した奴等が悪いだけで、お前は悪くねえ。それに、どうせ今からぶっ殺すんだ」

「リリウス…………」

「さっさと帰って、聖夜祭の続き。んで、学区にどっかの花畑まで送らせるぞ」

「…………うん!」

 

 スカディが氷の城に触れると、門が開く。

 一同は中へと足を踏み入れた。

 

 

 

 地獄の蓋が開いて、閉じた。

 

 


 

 

ダンクウこそこそ噂話

 

実は原作開始時、リリのほうがリリウスより背が高くなる。

因みにリリの原作時の身長は110。これは現代日本の人間ならだいたい5歳児に相当する。フィンは119で7歳児ほど。モンスターはびこる世界なら健康的に育てる日本より小柄な可能性はあるけど。

フィンはオラリオ1モテるらしいけど、オラリオやばいね!

しかし改めて数字で見ると本当に小さいな。まあ顔立ちは幼児ではないんだろうけど。

アーディはショタコンではありません。

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