ダンジョンで飯を食うのは間違っているだろうか?   作:超高校級の切望

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炎の蛇

「ひとまず拠点を作るわ。後、陸路も確保しておきたいからシャバラ、シュヤーマ、来なさい。リリウスは皆とテント作り。スパルナは近隣の村を探しなさい」

「ワフ!」

「ガウ」

「キィ!」

 

 アフロディーテの言葉に返事するシャバラ達。

 

「貴方達はリリウスと避難所を作りなさい」

「避難所……」

 

 持ってきた資材からして、それなり人数の避難所になりそうだ。

 

「アルテミス様は何か知っているんですか?」

 

 と、ランテがアルテミスに尋ねる。

 アルテミスは都の方向を見つめる。

 

「………オリンピアについてはどの程度知っている?」

「『天の炎』が落ちた所だろ?」

 

 3千年ほど前の物語。天から神が授けた炎が大地に落ちた。一人の男、エピメテウスがその炎を使い数多の怪物を焼き尽くしたのだという。

 

 始まりの英雄と呼ばれるアルゴノゥトより以前の英雄。ただし、その男は英雄ではなく愚物。

 英雄譚ではなく子供を諌める時に使う物語の主人公。

 

「そいつがいなけりゃとっくに死んでたアホ共が、傷一つつけるどころかどうせ目にしただけで気絶するくせに負けた事を非難したんだろ? じゃあてめぇ等で戦えばいいのにな」

 

 ハン、とつまらなそうに吐き捨てるリリウス。脳裏に浮かぶのは冒険者を責めていた民衆。

 そう言えば自分も一応石を投げられていた気もする。

 

「『天の炎』は実在する。先程リリウスが食らった炎も、その一部だ」

「『天の炎』が!?」

「だから妙な味だったのか」

「『天の炎』は神の力(アルカナム)に最も近い、地上に顕現した神の力だ」

 

 なら、エピメテウスがことごとく敗走した怪物達は神殺しの怪物達か。神の如き力を振るおうと、その神の力が通じないのだから。

 

「俺は完全な無効化は出来ないみたいだがな」

「アフロディーテも心配していたな………」

 

 「大丈夫?」「お腹焼けてない?」とリリウスのお腹をペタペタ触っていた。

 リリウスのは無効ではなく抵抗。過剰な力は普通に効く。

 

「と言うか詳しすぎないか?」

「アフロディーテが前知識にと本を読んでくれた。著者は知り合いの爺らしい」

 

 世間一般には力がないくせに偉そうにするとエピメテウスのようになる、などと嗤われる凋落の英雄。

 その成果も詳しく載せないことも多いが、それには色々載っていた。

 

「リリウスちゃんはどう思ったの、その物語読んで……」

「馬鹿だなぁと」

「………………」

 

 アルテミスは目を伏せた。

 

「何もかも焼きゃよかったんだ。唾を吐くどころか、何もしねえくせに戦った奴に石を投げるカスどもなんざ」

「………ええ」

「差し伸べられた手を振り払うだけならまだしも、石を投げるってのはつまり死なせてくれってことだろう。死を望む愚物を焼いて、本当に助けてほしい奴等や、共に戦う奴等を探しゃ良かった」

「ええと、それってリリウスちゃんは、エピメテウスは英雄って思ってないの?」

「? 英雄だろ。少なくとも神の力に対策される前、数多の国を救った。ひょっとしたら俺等の祖先も救われているかもな」

 

 或はその背中に憧れ英雄を目指した誰かが、歴史に名を残す英雄になっていたかもしれない。それこそ英雄時代に欠かせぬ誰かだったやも。

 

「エピメテウスは下界を救った英雄だ………」

 

 

 

 

 

「下界を救った英雄、か…………」 

 

 オリンピア、神殿の中で一人の男は呟く。

 炎に閉ざされたこの地にも、外の世界の情報は届く。『天の炎』を守り続けながらも彼等の悲願もまた下界の救済故に。

 

 そして、名声の地オラリオの冒険者………英雄候補の名を飲み込むは現代の英雄。

 復活した陸の王者を食い殺し、荒ぶる巨人を打ち破り、厄災の谷より抜け出た雷を討ち、モンスターに支配されていた土地を解放し、新しく刻まれた英雄譚は古の怪物の討伐。

 

 ああ、まさしく英雄。【男神(ゼウス)】と【女神(ヘラ)】を失い、悲観に暮れ闇に染まった世界を照らしたのは【道化(ロキ)】と【美神(フレイヤ)】だったが、照らされた光に目を向けようと思えたのは彼、あるいは彼女の功績が大きいだろう。

 ああ、英雄よ…………肥溜めにでも落ちて死ぬが良い。

 

「凋落を知らぬ、クソガキめ………」

 

 

 

 

「クチュン!」

「え、くしゃみかわ………じゃなかった! リリウスちゃん、風邪?」

「Lv.2になってから風邪なんざ引いたことない」

 

 ついでに言えば花粉症なども問題ない。体に入った異物を追い出そうとする機能がそもそもリリウスに備わっていないからだ。

 

「誰か噂でもしてるのかな?」

「迷信だろそれ…………ん?」

 

 と、不意にリリウスは作業を止め辺りを見回す。

 

「どうしたのリリウスちゃん?」

「少し休むかい、リリウス君☆」

 

 ランテやベックリンが尋ねるが答えず視線を彷徨わせ、見つけた。

 

「…………あれが『天の炎』か?」

「「「え?」」」

 

 ゴッ! と森の一部が吹き飛ぶ。噴火のように炎が溢れ、姿を変える。

 

「馬鹿な…………早すぎる!」

「天の炎ではあるっぽいな………あの姿」

 

 アルテミスが驚愕する中、あふれ出した炎はその形を変えていく。

 全身が炎に包まれた、巨大な蛇。

 

「…………ヴリトラ?」

『ゴアアアアアアアアッ!!』

 

 見覚えがある炎の大蛇。理性のへったくれもなく怪物の如く迫る。

 

「てめぇは………俺に負けてるだろうが」

 

 ドゥルガーに作らせた槍で脳天を貫く。Lv.6の時、精霊との契約も無く勝った相手だ。強さが何故かその時のまま。つまりリリウスが勝つ。

 

 ヴリトラは体が解けて火の粉が舞った。

 

 

 

『『『………………』』』

 

 その光景を眺めるのは、人の形をした炎の群。

 何やら話し合うように互いに視線を向け合い、森の奥へと消えていった。

 

 

 

「戻ったわよ」

 

 仮設テントをある程度建て終えるとアフロディーテが戻ってきた。連れてきた男女は援軍の【ファミリア】だろう。となると主神は………

 

「ひっさしぶりだね、リリウスきゅ〜〜〜ん!!」

「死ねえ!」

 

 反射という言葉すら生ぬるい反応速度でアルテミスが矢を放った。

 

「げふぅ!」

 

 リリウスに飛びつこうとしていた男神アポロンのケツに矢が突き刺さった。

 

「…………………」

「……………?」

 

 アポロンの眷族達が駆け寄る中、駆け寄らない何人かの眷族の内一人、ジメジメした感じの美少女がリリウスを見ていた。

 

 


 

 

働くリリウス細胞。

多分赤血球から血小板に至るまで、雑菌を食い尽くす。

 

氷爪フロストペイン

クランプスのドロップアイテム『クランプスの双角』から作られた双剣。

『鍛冶』スキルを持つ教師と共に作った評価規格外特殊武装(スペリオルズ)呪剣(カースウェポン)

使用者の『精神力』と引き換えに黒氷を生み出す。因みに使用者の手も凍りつくので、痛みに耐性がないと使えない。

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