ダンジョンで飯を食うのは間違っているだろうか? 作:超高校級の切望
リリウスはザルドの全てを知らない。
魔法やスキルはフィンやオッタルから聞いているが、直接目にしたことはない。
リリウスの記憶から読み取った悪夢ならば、その強さはリリウスが知る程度のはず。
『オオオオオオオオオオッ!!』
「!?」
号砲の如き咆哮。剣を包む炎の勢いが増し、リリウスは即座に飛び上がる。街の一角が吹き飛んだ。
【レーア・アムブロシア】? リリウスはその魔法を知っていても威力は知らないはず。
イメージ……いや、ベヒーモスの記憶か。
『─────!!』
「チッ!」
オッタルはLv.6の時勝利した相手だが………よく勝てたな。猛毒で弱体化していたのだったか?
雑多な武器では破壊される。即座にフロストペインを抜くリリウス。
「凍てつけ」
周囲の建造物など比較にもならない巨大な黒い氷山が生み出される。両手が凍りつき激痛を訴えるがこの程度は無視。
氷山を破壊し追撃してきた悪夢へ、砕けた氷山を足場に迫る。
「アグニ」
ドゥルガーに生み出させた炎を足に纏い、蹴りを放つ。オリンピアの空で轟音が響き渡る。
「…………!」
片腕を犠牲に受け止められ、反対の手で掴まれた。
ギシ、と骨が軋む万力の如き握力。そのまま地面にぶん投げられた。
「チッ………」
掴まれた足が僅かに焼けてる。リリウスの抵抗を突破した超高熱。身体性能は純戦士で、ベヒーモスの記憶を元にしてるということは肉を喰らい、巨獣を滅ぼした時の強さ。おまけに………
「再生か…………」
炎で象られただけの体は容易く再生する。恐らく毒も効かないだろう。
なら………
「
『………!?』
リリウスの髪が黒く染まり、ベヒーモスの毒を混ぜた火炎を放つ。
咄嗟に避けたようだが、僅かに触れた黒炎が蝕むように炎の体を染めていく。が、切り離された。蜥蜴の尻尾切りのように切り捨てられ、蜥蜴のように再生した。
「大蜥蜴が………」
どんな傷でも治るなら、そうするか。
リリウスだってそうする。
つまりは一撃で吹き飛ばす必要がある。あれを相手に?
「上等」
黒く染まった髪の半分が再び白く染まる。いや、霜に覆われていく。溢れ出した冷気に足元が凍りついていく。
『オオオオオオオ!!』
「
精霊の氷と古代の怪物の氷が合わさった天を突かんばかりの氷柱が形成される。今度のは、そうそう砕けない。
「【月を喰らい太陽を飲め暴食の化身。首となっても歯を突き立てろ】」
炎を吹き出しながら氷を溶かし中を泳いで出ようとしてくる。かなりの速度だが、リリウスの詠唱の方が早い。
「【
汎ゆる防御を無視して食い千切る牙獣の牙が空間ごと食い千切ろうとした時、トテテ、とその場に似つかわしくない軽やかな足音が聞こえた。
戦場の真っ只中を微笑みを浮かべ掛けるは、幼い少女。
「わたし、シオン! このお花はね、妹のシアテが大好きなお花なの」
笑顔で伝えるように、彼女の腕には花束。いや、何故此処に? 避難してない? 視線が合わない。周りが見えて………いや、音で気付くはず────
「シアテのために、お花をもっていくの! びょうきで、ベッドからでられないから!」
数秒の混乱は、悪夢が氷の拘束から抜け出す時間を与えた。
『オオオオオオオ!!』
「チッ!」
轟音。
何棟もの建物をぶち破りながらリリウスは吹き飛ばされた。魔力が手綱から離れ、盛大に内から爆ぜる。
「………………」
「わたし、お姉ちゃんだから! シアテのためなら何だってするの!」
と、
「ありがとう、お兄ちゃん! またね!」
「…………なんだこれ?」
「ありありありがたありかとう。またたたまたまたまたね!
と、同じ言葉を繰り返す。壊れた体で、変わらぬ笑顔で。
「シアテのために、お花をもっていくの!」
「シアテのために、お花をもっていくの!」
「シアテのために、お花をもっていくの!」
「わたし、わたし、わたし、わたしわたしわたしわたしわたしわたしわたしわたしわたしわたしわたしわたしわたしわたしわたしわたしわたしわたしわたし」
「わたし、おねえちゃんだから」
バクリと少女の形をした何かを食らうリリウス。
「うっぷ、うえ!」
己の中に取り込めない何かを
改めて周りを見れば、兵士や女達以外はこの状況でまるで当たり前のように日常を過ごしている。
『オオオオオオオ!!』
「!!」
どいうことか考える間もなく悪夢が襲いかかる。沼の王の使っていた偽物などとは性能がまるで違う。
鬱陶しい。
『────────』
「…………あ」
炎に包まれた
「キィ〜!!」
スパルナが宙を舞うリリウスを捕まえ、空高く飛び上がり悪夢達から逃げる。そのまま海の中に落とした。
「………………クソが」
河豚を噛み千切り、暴れるウツボの首の骨をへし折りながら岸へ上がるリリウス。ブルブル体を振るい水を払う。
落ちきらなかったので凍らせて落とす。
「
リリウスと悪夢の戦闘が始まった時点で退避していたアフロディーテ達と合流し、炎が具現化させた2人について話すリリウス。
かつてオラリオを壊滅の危機に追いやった2人の覇者。その似姿。この中でリリウス以外に勝てる者は間違いなく居ないだろう。どちらか片方で
「でも妙ね。追ってこないなんて」
「俺を街に近付けたくないんだろ。てかなんだ、あの街?」
「
「ああ、だから炎は魂が薪になるって知ってたのか」
だから燃え広がるために魂を求めるのだろう。
「じゃああれは、なるほど………」
吐き出した何かは魂だったか。
流石のリリウスも、炎は食えても魂は食えなかったらしい。と言うか本能的に混ざっては不味いと吐き出したのだろう。
「街を守るあれが厄介だな」
「守る? あれにそんな意思はないわ。近くにある何かをただ燃やすだけ。オリンピアも終わりかしら」
「? スパルナが無事って言ってたぞ?」
「は? じゃあ何? 穢れた炎が、リリウスを近づけないために生み出したの? いやいや、あれ炎よ? 燃え広がる事に悪意も善意も、意志もないのに」
ありえない、と言いたげなアフロディーテ。アルテミスやアポロンも………神々の意見は一致しているようだ。
「炎が穢れることも、神の予想を超えたんだろ? なら何が起きても不思議じゃねえさ」
「あの炎は天界由来のはずなんだけど…………」
「それこそそこの目隠れのいう無垢な悪意って奴だろ」
何せ天の炎は負の感情で穢れたのだから。ならばそこに悪意がないとも限らない。問題は、何故リリウスが関わるかだ。
神殺しの力が関係しているのか?
「後、其処にいるのは誰だ?」
「何だ、気づいていたのか貴様」
「その反応からして、好奇心旺盛なお前達の仲間というわけではないんだな?」
リリウスの質問にヒュアキントスとレトゥーサが茂みの奥に目を向ける。シャバラとシュヤーマが飛び込んだ。
「きゃあああ! ちょ、や、やめなさい! 服を引っ張──破けてる破けてる!」
茂みから出てきたのは、褐色肌の少女。ヒーン、と涙目になりながら連れてこられた。
「…………」
「リリウス? その顔はなんだ?」
クワ、と口を開け少女を見つめるリリウスに首を傾げるアルテミス。
「ああ、その娘の漂わせる香ね。リリウスは嗅ぎなれない匂いを嗅ぐとこうなるのよ」
またの名をフレーメン反応。
ザルド、アルフィアの
ダンメモでは炎人が合体して強力な単一になっていたけど、穢れた炎はリリウスが嫌いなので惜しげもなく炎を使います。まあ抑えるウェスタも居ないしね。