ダンジョンで飯を食うのは間違っているだろうか?   作:超高校級の切望

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別れと旅立ち

 アポロンは眷族を連れオラリオに帰り、アルテミスも次のモンスター狩りに向かっていった。

 

「それで? 貴方達はどうするの?」

「我々はこの地に残り、復興してみせます。長年苛まれた土地でも、我々にとっては故郷ですから」

 

 アフロディーテはそう、とレアに返す。

 

「…………貴方はどうなさるつもりだ。外に憧れていたというのは嘘でも、神とは退屈を嫌うのだろう?」

 

 偉業、驚嘆溢れるオラリオならともかく、千年、同じ日常が続くオリンピアに居続けたというのが中々異常なのだ。

 

「私は此処に残るよ。子供より愚かな罪滅ぼしを、私は続ける。私はお前の、神様だから」

「………そうか」

 

 エピメテウスの笑みに含まれた意味は、リリウスには解らなかった。きっとプロメテウスだけが理解したのだろう。

 

 

 

「私も歌劇の街(メイルストラ)に戻るわ。結構長い間放置した眷族に嫌味言われそうだし」

 

 と、アフロディーテ。

 リリウスに証文を渡す。

 

「オラリオに戻るまでは使っていいわよ。使いすぎないでね? 冒険者依頼(クエスト)の為に貯めてるから」

「ただで受けるぞ?」

「駄目よ。それに、()()()()()()()………」

 

 強さが必要なのではなく、数が必要らしい何かにアフロディーテは備えているようだ。

 

「…………それと、告白の返事だけど」

「ああ……」

「まだ、応えてあげない。世界を救って、私に相応しい男になってから出直しなさい!」

「………………そうか」

「それと、たとえ相手が貴方を求めても貴方が求めてないなら受け止めちゃ駄目よ! 特にアポロン!」

 

 アフロディーテは全員抱く宣言をしたリリウスにしっかり言い含めておく。そうじゃなければ、相手だって幸せになれないからだ。

 

「………またね、眷族(ばかむすこ)。愛しているわ」

「また会おうアフロディーテ。愛している」

 

 その時互いの言葉に込められていた恋ではなく、だけど確かに愛が込められていた。

 アフロディーテは微笑むと渡り板を歩き乗船した。

 

 

 

 

「それで、俺達はこれから何処に向かう? オラリオか?」

「その前に精霊の分身狩りだな。あれ放置してたら、世界は救えても国の10や20軽く滅ぶ」

 

 海岸沿いを進みながら、ノッチノッチと歩くバカでかい齧歯類に乗るリリウスの言葉に、エピメテウスは「精霊?」と首を傾げた。

 

 彼の時代精霊を見かければまず人類の味方であったはずだが。

 

「3000年もあれば世界も変わるさ。モンスターと融合した精霊が出てきたりな」

「それは………厄介だな」

「ブブブ」

「ん、此処までがお前の縄張りか」

 

 リリウスは齧歯類から降りるとシャバラに乗り換える。

 茂みの奥には心配して付いてきた齧歯類の妻と子供達。

 

「じゃあな、達者で暮らせよ」

 

 

 

 

■■■■■■■■■■■■■■■■■■

 

 

 

 モンスターに食われ、されどその自我を保ちモンスターの肉体を奪い、されどモンスターの本能に侵食された大精霊がいる。

 嘗ての同族を何体も喰らい成長した、下界を滅ぼしうる破壊の化身の一つ。

 

 幼き英雄候補が大英雄に「まあどうせ黒竜に蹂躙されるだろうが」と話した数日後、オラリオの誰も知らない何処か。

 

 そこで神は新聞を読んでいた。

 それはオラリオのみならず世界中を賑わせるニュース。伝説の神域の実在証明と、ゼウスとヘラ以来の新たなるLv.8の誕生の報せ。

 

 神域の災害については封じられていた怪物とあるが、その神は事情を知っている側の神だった。

 故に、震えが止まらない。この幼き英雄は、神域を救ったなどと生優しいものではなく、文字通り世界を救ったのだ。それだけの力を手にしたのだ。

 

「嗚呼、なんて………素晴らしい!!」

 

 勇者の印象操作も相まり、嘗ての追放だの討伐だのという出来もしない寝言は消え、彼を称える声が世界中に響く。

 

 世界に見向きもされず、世界を見限った獣が今や世界に待ち望まれる英雄となった。

 

 彼は世界を見限ったのであって、憎んでいる訳では無い。掌返しで称える世界を特に拒絶することもないだろう。

 

「希望から、絶望に変わる時………どうなるだろうなぁ…………!! ……………ふぅ」

 

 はぁ、と熱い吐息を吐く神は、ブルブル痙攣したかと思うと唐突に冷静になった。

 その手に持つのは各地にばら撒いた精霊の種を使用した者達から集めた資料。

 

 ただ深層のモンスターに食わせるよりもよほど面白い結果を残しているようだ。

 特に複数のモンスターを取り込んだ海賤頭(カイセン・ドン)や眠りを誘うアイレンなどは面白い。

 

 ダーク・ファンガスも中々だが、耐異常持ちの冒険者にはあまり有用とは言えないだろう。

 そして、彼はそんな小細工など正面から叩き潰せるだけの力を持っているだろう。

 

「……………やはり、あれを使うか」

 

 偶々、突然消えた彼の足跡を追う過程で見つけたとある竜の存在についての報告書を見る神。

 竜……半年でのLv.2からLv.3も確かに偉業だが、彼の名を真に世に知らしめたのは、何と言っても遥か格上の竜退治。

 

 海底に長い間放置されながらもフジツボも苔も恐れるようにつかなかったとある海竜の牙の一本……そして、まだ人間に見つかっていなかった終末の欠片。

 

「うん、竜だ。竜がいい………」

 

 神は一人納得したようにウンウン、と頷いた。

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