ダンジョンで飯を食うのは間違っているだろうか?   作:超高校級の切望

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世界に響く英雄の詩

 芸術の神アポロンは、詩にも精通している。

 オリンピアでの話をせがむ神々に自慢するようにその時のことを劇にした。

 

 とりあえずリリウスがアポロンに想いを寄せていることは嘘として無視していいだろうと誰もが判断しながら楽しんだ。

 

 『愚物』と罵られていた『()()()()()』と共に封じられし怪物を倒す新しい英雄譚。

 アポロンの脚本が良かったのもあるが、人々はその演劇に心を震わせた。

 

 

 

「ねぇ〜、アーディ? 元気出してよ〜!」

 

 そんな中、何故かその劇を見て元気を失う親友に話しかけるアマゾネス。彼女の名はティオナ・ヒリュテ。このオラリオにて()()()()と称される【ロキ・ファミリア】の幹部だ。

 

 都市の外でLv.3に至ったアマゾネスの双子姉妹。多くの派閥が欲し、返り討ちにあった末【ロキ・ファミリア】に落ち着いた。

 

 同じく三大派閥の一つ【ガネーシャ・ファミリア】のアーディ・ヴァルマとは英雄譚好きとして繋がった親友同士。今日も、最新の英雄譚とも呼べる劇を観に行った。そしたら落ち込んだ。

 

 アーディも、とても楽しみにしてたのに。

 

「だって、だってリリウスが神様と………!」

「ああ、アポロン様と?」

「そっちは嘘だろうけど、アフロディーテ様と!」

 

 男神と女神、2柱の神への愛で揺れる幼き英雄の心境に多くの女性が腐った道に進むが、アポロンをある程度知る者ならそれが嘘だとは解る。【アポロン・ファミリア】が根回しして他の派閥から引き抜きを行う際、当然根回し不可能な【ガネーシャ・ファミリア】は市民を守るために動くからアーディも知ってる。

 

「じゃあ女神様だけが好きなんだ」

「うぎゅう!」

 

 脳が破壊されるような衝撃に頭を押さえ唸るアーディ。

 

「でもさ、美の女神様なんでしょ? なら、魅了されてるだけかも…………」

「リリウスには神の力は効かないもん」

 

 完全に、とは言わないが少なくとも美の女神の魅了を無効化した実績はあるのだ。

 

「じゃあ本気で好きなんだね」

「うぅ……」

 

 泣きそうになるアーディ。ティオナはとりあえず頭を撫でてやる。

 

「アーディはどうしたのですか?」

「あ、リオン。なんかね、好きな人に好きな相手が出来たんだって」

 

 そんな二人に話しかけてきたのはリュー・リオン。構成員こそ少ないが、同じ数で競えば三大派閥にも匹敵すると言われる()少数精鋭【アストレア・ファミリア】所属のLv.6。

 

 昔、この酒場の倉庫を戦闘で破壊した過去を持ち時折店員として働かされているというティオナの友達だ。

 

「リリウスですか…………」

「アーディもフィンみたいに小さい人が好きなんだね」

「違うもん。好きになった人が小さいだけだもん」

「ティオネも荒れてたなあ…………」

 

 フィンを差し置き最強の小人族(パルゥム)と称されていたリリウス・アーデ。それでも世間からは「【ファミリア】として戦えばフィン・ディムナ」と呼ばれていた。

 

 ティオナはリリウスを知らないが【ロキ・ファミリア】はよく知っているので、皆で力を合わせればLv.7にだって負けるもんかと自信を持って言えるが、Lv.8となると別だ。

 

 それでもティオネは団長の方が英雄として相応しいです、とフィンに語りかけていた。

 

「フィンはあんまり気にしてるようには見えなかったけど…………」

「ま、結果として小人(こびと)の名を上げられるわけだからな。寧ろ、汚名撤廃どころか名誉をここぞとばかりに広めるだろ」

 

 話に割って入ってくるのはリューをからかいに来たライラ。小人族(パルゥム)の第一級という、現状7人の内の一人だ。その中では最弱だが。

 

「どんな人なの、そのリリウスって人」

「そうですね………あえて例えるなら飢えた獣?」

「迷子だろ」

「口は悪いけど優しい子だよ!」

「???」

 

 全然わからない。

 

「そう言えば、アイズがなんか変なんだけど、関係あるかな?」

「アイズですか…………」

 

 【疾風】と【剣姫】…………今でこそリューが前に立ったが風の魔法を使う剣士と、色々比べられる彼女達は【双風】などと呼ばれライバル同士と扱われているが、仲はそこそこ良い。

 

「彼女は、一時期リリウスに懐いていましたから」

「まあちょっと仲違い………とは違うが色々あってな。謝る前にリリウスがオラリオから出て行っちまったから……」

「強くなった姿見せたかったのに、向こうはもっと強くなってたからかなぁ…………」

「そっか。でも、アイズが昔懐いてたんなら悪い人じゃないんだね!」

 

 良くわからない理論を展開するティオナに、3人は微笑んだ。

 

 

 

「ガネーシャ様が踊り狂ってる?」

「ああ。あの劇に出てくる『必滅の矢』とやらについて聞いてから」

 

 珍しくホームから出ていたソーマもうんうん、と頷きながら彷徨う姿を目撃されたとか。同郷と言っていたし、彼等にしか解らない何かがあるのだろう。

 

「じゃあ私も踊りに行きましょう!」

「頭痛の種を増やすな」

 

 同じ街の治安を守る派閥の、Lv.6の()()()()良く話す2人だが突飛な行動が神々を思わせるアリーゼは良くシャクティを困らせる。

 そんな事が出来る程度には、オラリオは平和だ。

 

 

 

 

 ダンジョンの中を何かが引きずるような音が聞こえる。

 それは冒険者だった。ダンジョン内ではありふれた光景ではあるが、それでもそれを目撃した冒険者は目を疑うだろう。何せその人物はオラリオでも有数の強者、アレン・フローメルその人だからだ。

 

「無様だな、駄猫…………」

 

 そんな彼に話しかけるのはヘディン。

 

「………………」

「我々の制止を振り切りダンジョンに飛び込み、結局目的の階層にすら辿り着けず敗走とは」

「うるせぇ、どうせポーション持ってんだろ。寄越せ」

「また、潜るつもりか」

「当たり前だ………」

「いいや。お前は戻れ、次は俺だ」

 

 そう言って現れたのはオッタル。

 

「女神の威光を取り戻すのは、やはり俺だ」

 

 Lv.8となった冒険者がアフロディーテに愛を囁いた。別に眷族の強さで美しさが決まるわけではないが、世界は単純だ。Lv.8の英雄が惚れるなら、とアフロディーテを持ち上げる。

 

 同じ美の女神であるイシュタルなどはヒステリックに叫んでいると歓楽街の外にも聞こえてくる。

 

「お前はLv.7にしかなれん」

 

 ならばやはり、現時点のLv.7であるオッタルがLv.8へと至り、証明しなくてはならない。そんな態度に、アレンは歯噛みする。

 

「あのガキを超えるのは俺だ! 邪魔するんじゃねえ、オッタル!」

「出来るのか? 未だLv.6のお前に」

「出来る! 出来なきゃならねえ! お前に劣るのはムカつくが、まだいい。良くはねえが…………我慢してやる。だが他でもねえ、あのガキに負けるのだけは許せねえ!」

 

 何故、と言われてもアレンにも説明できない。ただ、気に入らない。

 見ていてイライラする。あいつが自分に、後ろから近づくのは許容出来ても、超えるのは許せない。

 

 リリウスがLv.7となった日から、荒れだし、なんとか落ち着かせたのにまただ。ヘディンは舌打ちした。

 

「出来ていないだろう、間抜け」

 

 

 

 

 

「…………最強の小人族(パルゥム)。最強と英雄候補か」

「大丈夫です団長! 団長は、私達派閥の仲間を育てるから遅れているだけで、総合力なら!」

「ティオネ…………」

 

 ティオネはそう言うが、事実としてLv.8を知るフィンは笑顔を向けるだけ。

 6年ほど前の大抗争はLv.7の2人に都市を蹂躙されたが、その片方でも出来たとフィンは確信している。

 

 Lv.7は現在1人。レベル差的には、あの時と大きな違いはない。【ロキ・ファミリア】の仲間の力は信頼しているが、なら総力を持ってリリウスに勝てるかと問われれば…………いや、そんな必要はない。

 

 そもそもフィンは一族を奮い立たせる『(フィン)』となるために冒険者になった。

 己の主神に【勇者(ブレイバー)】と言う名を拝命させたのもその一環。

 

 リリウスは確かに獣の如き凶猛さを見せ、他者に噛みつく。だから代わりがフィンにも務まる時点ではフィンが有名になるよう動いた。

 

 最早フィンでは代わりにならないなら、いっそ『勇者』を立てる側に回って………。

 

 そう思っていたフィンだがLv.8の出現に急遽開かれた神会(デナトゥス)から戻ってきたロキがソーマから受け取ったという言葉は「リリウス・アーデに【勇者(ブレイバー)】などという陳腐な二つ名を()()()()()()あらゆる手段を使ってお前を潰す」と言う警告だったとか。

 

 ロキもフィンが裏方に回るのは良しとしていなかった。ままならないものだ。

 

 

 

 アイズ・ヴァレンシュタインにとってリリウス・アーデは憧れでもあった。最初の出会いこそ印象が悪かったが、あの人にはあの人の見てきた世界があり、あの人なりの戦いがあった。

 

 ならば後は冒険者としてみれば、半年でのランクアップや格上の階層主の単独討伐など、強くなっていく姿はアイズの願いそのもので……………でも、恐れた。

 

 怪物の力を、黒い風を操るあの姿………正直にいえば、今だって少し怖い。だから、怯えないよう強くなろうとした。強く、なった。でも、向こうはそれよりも…………。

 

「………あの人は、今は何してるんだろう」

 

 今は大英雄と一緒に海を干上がらせる灼熱の蛇退治をしていた。

 

「……何時、戻って来るんだろう」

 

 今から約1年後だ。その間にどんな冒険があったかといえば…………

 

 

 

 

 

 オリンピアにて世界を救って、約8ヶ月。精霊の分身を狩る過程で、最後の商品として買い取ったと高らかに語る神に出会った。

 

 実際、フェルズからも潜入調査しているフィルヴィスが取引を止めるという会話を聞いたと報告を受けた。

 

 なので残りを狩り尽くすだけ。リリウスの精霊喰いとしての嗅覚が2つの場所を指し示した。一つはカイオス砂漠。もう一つは、アルヴの王森。

 

 そんなアルヴの王森の中の里…………ハイエルフが住まうエルフの聖域に侵入者が現れた。

 卑しい小人族(パルゥム)と浅ましいヒューマンの二人組だ。

 

「助けてやったのにこの態度。何時の時代も、エルフは変わらんな」

「そうなのか」

 

 その牢屋で、リリウスは木の手枷を喰いながら呆れた様子のエピメテウスの言葉を話半分に聞く。

 

 穢れた精霊の気配を追い辿り着いたのはエルフの聖域。もちろんリリウスは世界中のエルフが敵に回ろうが気にしないので入ろうとしたが、その前に森で火の手が見えた。

 

 どこぞより迷い込んだ木竜(グリーンドラゴン)が暴れていたのだ。

 木とはつくが緑なだけのはずの竜は、その身から葉を茂らせていたが。

 

「精霊の居場所はわからんのか?」

「それがこの森に入ってから全然わからねえ。霧がかったと言うか、臭いはするけど発生源が掴めねえというか」

「そうか……」

 

 エピメテウスは腕力だけで手枷を破壊した。

 

「それで、どうする?」

「飯はちゃんと出してくれるみてえだし、暫くは様子見だな………そっちのガキは知らねえが」

「!!」

 

 リリウスの言葉に柱の陰からチョコチョコと現れる小さな妖精(エルフ)

 自分達こそ神よりも美しい至高の種族と宣うエルフにしては珍しく、顔を隠すように前髪を伸ばしている。

 

 緑が混じった髪は、高貴な血を引く証。ニイナと同じくあくまで一部だが。

 

「あ、あの…………私、コリガン、です。そ、外の話聞かせてもらえませんか?」

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