ダンジョンで飯を食うのは間違っているだろうか? 作:超高校級の切望
昔々、王家の傍系の娘が居た。
このアルヴの
その数ヶ月後にリヴェリアが旅立ちそれどころではなかったのもあるだろうが。
そして数年後、彼女は帰ってきた。遠縁であろうと
穢らわしい血を森に入れるなと言う者もいれば、ここで殺すのは森が穢れると言う者もいる。
それでも一応同族の血を引いているから、里の端で生きることを許してやった。母親の必死な訴えを見て、同情よりも、落ちぶれた同族を相手する不快感が勝ったのもあるだろう。
当然、穢らわしい他種族の檻も里の端にある。
少女、コリガンは母を喪い久しく、人の声が聞きたかった。何より、母が愛していた外の世界を知りたかった。
男に捨てられた、などと噂を流されていた母だが、父は冒険者で、父の故郷に向かう道中山道で嵐に襲われ、モンスターに襲われ離れ離れになってしまったらしい。
母は父をとても愛していた。外の世界を素晴らしいと言っていた。
見たこともないのに野蛮、低俗と罵る里の者の言葉など信じるに値せず、母の語ってくれた燃える川、白の砂浜、城下町の横幅より広い大瀑布………それを何時か見たいとずっと思っていた。
外の世界を何でも知ってると思うような母ですらほんの一部しか見てないという外の世界。それをききたいと、『皆』に頼み見張りの目を欺いて、こうして檻までやってきた。
褐色の大男と、白髪の小さな少年。親子には見えないけど………小さな少年は、もしかしたら
口が達者で、手先が器用なトレジャーハンターが母の知り合いにいたらしい。針一本で遺跡の宝箱を開けたとか。
でも彼は手枷を食べてる。
「…………?」
なんだろう? 彼を見てると、胸がソワソワする。これが恋? うん、多分違う。
「皆はどう思う?」
皆は仲良くなりたいらしい。チラチラ見ていると、大男が手枷を腕力だけで破壊した。あれ、手枷って自由を奪うためのものじゃ?
「それで、どうする?」
「飯はちゃんと出してくれるみてえだし、暫くは様子見だな………そっちのガキは知らねえが」
「!!」
その声は、明らかにこちらを指していた。
チラッと覗けば目があった。コリガンは大人しく姿を現すことにした。
「あ、あの…………私、コリガン、です。そ、外の話聞かせてもらえませんか?」
「外?」
「………………」
意外そうな大男は、エルフが外に憧れるなど思いもよらなかったという顔だ。隣の少年は………え、すごく見てくる。どういう感情なの、あれ?
「あ、あの……?」
「ん? ああ、奇妙な縁もあるなと。血が疼いた」
「血が…………?」
彼も、自分に何かを感じたということだろうか? 血…………?
「まさか、お兄ちゃん!?」
「違う」
「あ、ごめんね。お姉ちゃんてっきり………」
「兄弟って意味じゃねえ」
呆れた目で見られた。
「あの…………貴方達は?」
「俺はリリウス。
「………エピメテウスだ」
エピメテウスに、リリウス。お互い名前の最後の響きが同じ。やはり、親子?
「で、外の話を聞きたいだったか?」
「は、はい!」
「なら飯をもってこい。こんなんじゃ足りねえ」
「えっと、手枷を何処からか持ってくればいいですか? やっぱり、誰も使ってないの?」
「別に好物じゃない」
「エルフらしからぬ娘だな」
「ハーフってのもあるのかもな」
耳の形を思い出しながらコリガンが持ってきた樹の実を食べるリリウス。
高飛車なエルフとは対照的に、彼女はリリウス達を毛嫌いせず、なんなら寧ろ自分を下に見ていた。
「精霊にも好かれていたし」
「精霊?」
「自我も薄く、殆どの連中が気付けないほど希薄な下位も下位の精霊だがな」
「だが、あの娘をとても愛している」
スルリとリリウスの中から現れるドゥルガー。コリガンが去った方向を見つめ目を細める。
「妾も、主様と契約していなければ彼女を選んでいたやもしれぬ。あれはそういう何かを背負っている」
カサンドラの予言を無条件で信じないのと同じ、コリガンには無条件で好いてしまう何かがある。
「精霊の愛子ということか」
「精霊、ね………俺の血が反応したのは下位精霊の気配だが」
直接目にしなければ感じ取れないほどの弱った下位精霊の群。精霊の愛子というのも間違いないだろう。
「…………………」
と、窓の外から獣の遠吠えが聞こえてきた。
「………なんて?」
「埋められた死体を見つけたとよ。服を剥ぎ取られている……やっぱ商人に扮して忍び込んだか」
「信用のおける商人か………顔の確認は、しないか」
何せエルフだ。信用のおける、とはつまり繋がりの深さであって、歴史。祖先が利用したのだから使ってやるの精神で、人間性も見ていなければ、なんなら顔だってまともに見てないだろう。
「…………顔か」
「どうした?」
「さっきのガキ、顔を隠してたなって…………」
コリガンは母もみたことのない地上を、早速母の墓の前で話す。本来の墓場より離され存在する墓だが、コリガンはむしろ母の秘密の話ができるようで好きだった。
「………大丈夫、顔は見せないよ」
母は言っていた。その顔を見せてはならないと。
お前の顔を誰に知られてもならない。お前が不幸になるから、と。
きっとハーフの自分は、醜い顔をしているのだろうとコリガンは一人俯く。顔も知らぬ父に怒りを覚えはしないが、それでも自分が純血ならと思うことは何度かあった。
「………じゃあ、またね」
「アラ、オシマイ?」
「…………え?」
手を合わせ、家に戻ろうとするコリガンは聞こえてきた声に振り返る。
母の墓を覆うように生えた蔓。そこに咲いた、一輪の花。
「貴方ノオ話、モット聴カセテ?」
森を蝕む悪意は、人知れず、されど確かに広がっていた。
コリガンの母のパーティ
コリガン父ヒューマン
生粋の英雄オタク。英雄譚に出て来る街や神殿の遺跡を探すのが趣味のLv.1。神とは別れている。
コリガン母エルフ
世界を見たかったエルフ。コリガン父をほっとけず一緒に旅に。女の人といると嫉妬する。恩恵無し。
小人族♂
鍵開けが特技。小さな体を活かして遺跡の隙間に侵入するトレジャーハンター。二人の指輪を作った。恩恵無し。
ドワーフ♀
コリガン母の喧嘩友達。お互い実は頼りにしてる。恩恵無し。
アマゾネス
コリガン父を誘惑するが、コリガン母の反応を楽しんでるだけ。手にしたお金で酒を飲んで男を引っ掛けるのでコリガン母には呆れられていたが、夜の手ほどきをしてあげた。Lv.2。神とは別れている。
ヒューマン♀
自称戦う詩人。実はコリガン母に恋心を抱いていた。