ダンジョンで飯を食うのは間違っているだろうか?   作:超高校級の切望

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奇妙な友情

 リリウスが大人しくしている理由は、精霊の分身本体の位置が掴めないのと、飯が出るのと、エルフは他種族と関わろうとしないからだ。

 

 食事だけ運んで、そこに毒を入れることもしない。さっさと踵を返すので手枷が壊されている事にも気付かない。

 リリウスはスパルナが持ってきた本で暇をつぶす。

 

「それで? 精霊の居場所は解ったのか?」

「気配が多くて臭いが広い。以前あったキノコと同じだな。恐らくは森全体に既に広がってる」

「それは、面倒だな」

「森ごと焼けば簡単だがな」

 

 その場合世界中のエルフが敵になるだろうが、まあリリウス一人でどうとでもなる。それをしないのは、ここを故郷とするリヴェリアが昔じゃが丸くんを奢ったのと、エルフであるリューやセルティに気を使っているから。

 

 後は………と、エピメテウスとリリウスが振り返る。

 

「こ、こんにちは!」

 

 後は、この少女を嫌いではないからだろう。

 

 

 

 

「それでね、オリンピアには温泉があって、すっごく大きな鼠がいたんだって!」

 

 母の墓に咲いた喋る花。これが別に母の生まれ変わりじゃないのは解る。それでも友人のいない彼女にとって話し相手であることには変わりない。

 

「外ガ見タイノ?」

「うん!」

「コノ森ハ、嫌イ?」

「────」

 

 甘い蜜の様に、その言葉はコリガンの中にトロリと染み込む。

 未だ幼い妖精が母もなく生きていけるのは、森のエルフ達のおかげ。だが、それは………。

 

『見ろ、あれが森の外の穢れた種族に産まされた子供だ』

『森の外にはあんなにも穢らわしい生き物で溢れている』

『見ろ、あの醜い姿を』 

『里を飛び出して、穢れに染まった哀れな末路だ』

『未だ清らかなリヴェリア様はやはり特別なのだ』

 

 とまあ、子供達の『教育』の為だ。

 だから子供達は平気でコリガンを傷つける。神聖な森に住み着く穢らわしい生き物だと石を投げ、逃げるコリガンに皆で喜び親に褒めてもらう。

 

 でも、やめようと言ってくれる者はいるのだ。こっそり樹の実をくれる子がいるし、家の前に食料をおいてくれる大人もいる。

 

「嫌いじゃ、ないよ」

「ソウ……?」

「うん。外の世界は、何時か行きたいけどね」

「私モヨ。空ガ見タイノ」

「…………」

 

 コリガンは空を見る。木々に囲まれたこの里では空は見えない。だから、彼女にとって空とは葉の隙間から覗く光であった。

 

 母いわく青い空が広がり大きな光が浮き、白いふわふわとした雲が流れ、夜になると数多の光が煌めくらしい。

 

「デモネ、貴方ニ会エタ。コレッテ、凄ク素敵。貴方ト居ルト、『皆』モ私ヲ怖ガラナイ」

「『皆』、怖がってたの?」

「貴方ガ大好キナノヨ。私モ貴方ガ好キヨ……誰ニモ、私ニモ渡サナイ」

「………?」

 

 不思議な言い回しに首を傾げる。でも、大好きと呼ばれて悪い気はしない。

 エルフと、喋る謎の花。奇妙な関係がそこにあった。

 

 

 

 笑顔が増えたコリガンに、面白く感じないのはエルフ達。特に子供達。()を与えてやってるのに、走り去る時に見える口元は笑みを浮かべている。

 

「穢れた子供の分際で………!」

「全くだ。奴には反省する気がないのか!」

「心まで卑しい奴だ」

「ね、ねえ………もうやめようよ」

「馬鹿を言うな! 我等が裁かず誰が裁く!」

「そうだそうだ!」

 

 何を裁くと言うのか。生まれたこと? この森に住んでいることだろうか?

 きっと彼等はそんな事を考えない。だって自分達は正しいのだから。

 

 そんな彼等を木々に巻き付く蔓から咲いた花が見つめていた。

 

 

 

 

 先日、竜が襲ってきただけあり騎士達の見張りは何時も以上。

 とはいえ、竜などそうそう現れないだろうという油断もある。

 神を拒み、恩恵こそ得ていないが祖先より受け継ぐ魔法を持つエルフ達は決して弱いわけではない。オラリオの外を拠点とするファミリアなら、相手次第で勝てる程度には兵力を持ちモンスターとも戦ってきた。

 

 だから、何度も言うが油断していた。そしてそれは致命的だ。

 

「な、なんだ!?」

「お、おい! あれ!」

 

 大地を鳴らしながら現れたのは種族問わぬ怪物の群れ。共通点は、体を覆う植物。

 

 魔法が飛ぶ。矢が放たれる。

 怪物はそれらを無視する。

 前列の死体を踏みつけ、また生きている同胞を踏み台に駆け抜け里を覆う壁に張り付く。

 

 ガリガリと爪を突き立て、その怪物を足場に駆け上がる。

 

 魔法で焼かれた体でまずたどり着いたのはリザードマン。後から続く仲間のためにエルフを殺す…………なんてことはせず飛び降り、死んだ。

 

 一匹を皮切りに次々壁を登りきった怪物達は全て同じ行動をする。巻き込まれてエルフの騎士が落ちた。

 築かれた死体の山に落ちたモンスターは、とうとう死なず顔をあげ響き渡る鐘の音に逃げ惑うエルフ達を見つめる。

 

 そのまま襲いかかり………通り過ぎた。

 何かを探すようにギョロギョロと映らな目が蠢き、やがて止まる。視線の先にはエルフの子供。

 

「──────!!」

 

 粘性のある涎を撒き散らし吠えると一気に駆け出し無骨な骨の棍棒を振り下ろした。

 

「…………エルフの里には結界が張られているのではなかったか」

「何時の話だ。昔の話をするとジジ臭くなるぞ」

 

 その棍棒を片手で受け止めるのは褐色の肌の大男。軽口を返すのは、モンスターの頭に乗った白髪の少年。

 

「恩でも売ろうぜ、媚びへつらう他種族らしく」

「聞く耳を持つとは思えんがな」

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