ダンジョンで飯を食うのは間違っているだろうか?   作:超高校級の切望

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妖精の誇り

 リリウスはドゥルガーが拗ねるのでネプトゥヌスの槍を再び地面に突き刺した。

 すると筋骨隆々の上半身が飛び出してくる。

 

「せっかく使ったんなら最後まで使わんかい!」

「俺の契約精霊はドゥルガーだけだ」

「主様…………」

 

 いやんいやんと照れるドゥルガー。

 

「儂だって強いぞ! 女の子にモテまくりじゃい!」

 

 と、ポーズを取るネプトゥヌス。

 エルフ達の心境を一言で表すなら、思ってたのと違う、だろう。

 

「精霊は神の分身だ。ならば、お前達が崇める精霊もまた崇めるに足る精霊がいただけの話だろう」

 

 と、エピメテウス。もちろん精霊の中にはまるっきり子供な性格もいるが。少なくともドゥルガーやネプトゥヌスは大元の神に寄った性格をしている。

 

「それに、精霊の実態に落ち込んでる暇はないだろう」

「……………」

 

 エピメテウスの言う通り、エルフの聖域がモンスターに汚されたのだ。まあ古代、白妖精(ホワイトエルフ)は当時の聖地であるアルヴ山脈を手放した事もあるが…………それだって民の命を優先した訳だし。

 

 逆に黒妖精(ダークエルフ)は誇りを優先し、戦い続けその数を多く減らした。

 

「また新たな聖地を見つけるか、今度こそ戦うか………」

「俺等に任せて枯れた森に戻る手もあるぞ」

 

 スパンとエピメテウスがリリウスの頭を叩いた。

 

「煽るな………いや、本音なのだろうが。とはいえ、そういう手もあるのは確かだ。その前に」

 

 エピメテウスが森に目を向ける。枯れた木々を踏み折りながら、森の奥から何かが向かってくる。

 

「モス・ヒュージの分身か」

「形はだいぶ違うみたいだが」

 

 苔で出来た体を木の根のような骨格で強化する異形の怪物。数は2体。

 片方は歪な竜の首に直接足を生やしたかのような怪物で、片方は苔の巨人(モス・ヒュージ)の名に相応しい巨人型。右腕は鋭い木の根の槍。左手は木の根を編み込んだ盾だ。

 

 炎の対策か、苔はスポンジの様に大量の水を含んでいる。まあ、だから何だという話だが。

 

「お前達の言うところの、レベルは?」

「Lv.3だな。図体だけだ。氷の魔法が使えるやつからすれば体感もっと下かもな」

 

 焼き尽くされ、数多の武装に貫かれる。

 エピメテウスとリリウスに瞬殺された。

 

「……そんな………」

 

 と、そこで一人のエルフは言葉を飲み込む。エピメテウスは、その目を知っていた。

 そんな力があるならどうしてもっと早く、と言いたいのだろう。

 

「世界中のエルフに通達する。神の眷族となった者達ならば………」

「無理だろ」

 

 ラーファル王の言葉に、リリウスはエピメテウスの肩に乗りながら森を眺める。

 

「あれは少なく見積もってもゼウスとヘラぐらいしか相手したことない怪物だ。今のオラリオの戦力、ましてやLv.7も居ないエルフなんざ………」

「貴様! リヴェリア様を侮辱するか! Lv.7の猪も、結局は野蛮な戦士だろう。リヴェリア様以上の魔導士がいるとでも?」

「アルフィア。Lv.7の魔導師だった。リヴェリアを一方的にボコしてた」

 

 と、リリウス。

 

「そして俺はLv.8だ」

「……そうか。お前がリリウス・アーデ………世界最強か」

 

 ラーファル王は知っていたらしい。外の情報もきちんと集めていたのだろう。

 

「お前が世界最強と言うなら、どうしてこうなる前に…………!」

「拘束したのはお前等だろ」

 

 それ以前に、そもそもこの森は終わっていた。形だけの平和が保たれていたのは恐らくコリガンがいたから。

 

「コリガンはどうする?」

「ワフ」

「キィ」

「ガル!?」

「ふむ」

「どうした?」

 

 エピメテウスは彼等の言葉は分からない。スパルナとシュヤーマの言葉にシャバラが驚いたのは解った。

 

「コリガンが頭につけてた花冠、蔓が直接頭に入ってるらしい。血が出てたが、脳にまで達してたとは。回復魔法をかけながら引き抜くか」

「まあそれしかないか」

「コリガンだと!?」

 

 と、またエルフが叫ぶ。

 

「あの混じり物が! だから、ハーフなど信用できぬのだ!」

「? 信用も何も、彼奴の恨みを買ったのはお前等の自業自得だろ。増幅こそされ、彼奴の目を見る限り恨みは前からあったからな」

 

 エルフどもは理不尽だと言わんばかりに顔を歪める。自分達が恨まれる筋合いなどないとでも思っているのだろう。

 

 リリウスもエピメテウスも、そういう人間はよく知っている。

 

「…………私は、嘗て外に憧れた」

 

 と、唐突にラーファル王が口を開いた。何かを叫ぼうとしていたエルフも、王が話し始めればそちらに耳を傾ける。

 

「王族の責務を捨て、外に出たいと何度思ったことか」

「お、王?」

 

 その意外な言葉に誰もが困惑し、しかし王族(ハイエルフ)の言葉を咎められない。

 

「だが私は、外を恐れた。変化を恐れた」

 

 『未知』に怯えた。その足は立ち止まった。

 王族の責務だの、縋るべき自分が、などと聞こえが良い文句をいくら言おうと、慣習と秩序を振り解く事が出来なかった。

 

「外を嫌うことで、その事実から目を逸らし続けた」

 

 娘にすら己と同じ呪縛を施そうとして、鳥籠に七十年も閉じ込めた。

 ハイエルフの女は外に憧れる者が旅立とうとして、結局縛られる。きっと、ずっと昔から。

 

 そうしてラーファルの様に外を嫌う事で自分の勇気の無さを誤魔化すのだ。

 

「知りもしない外を嫌い、見たこともない未知を恐れ、自分達は誇り高いのだとありもしない高貴に縋った姿が今の我々で、それを誤魔化し続けた我等の醜さがあの妖魔の森を生んだ」

「王よ、そのようなこと!!」

「たとえ王であっても、看過しかねます!!」

 

 自身の誇りを貶める言葉に叫ぶエルフ達は、しかし王に睨まれ黙り込む。

 

「聖女セルディアは世界を救う為に森を飛び出し、怪物を討った。我が娘リヴェリアは、英雄の都で戦い続けている。我等は森の中で、何を成した」

 

 誰も答えられない。森の中で、ただ生きていただけだから。

 

「過去の栄華に縋り、祖先達に恥ずかしくは無いのか」

 

 誰もが俯く。

 

「ここまで来て誰かに当たり、子供達に恥ずかしくは無いのか」

 

 誰もが我が子達から目を逸らす。

 

「それとも…………」

 

 戦士達を見ながら思い返すのは、森に侵入し娘の肌を穢した忌々しい女神と、竜に挑んだ金髪の小人。

 

「お前達には小人族(パルゥ厶)の真似事すら難しいか」

 

 思い返すのは、竜を焼き払う娘の姿。

 

「お前達の勇気は小娘にすら劣るか」

 

 そして、今もなお魔窟と化した森を警戒し続ける異邦の戦士達を見る。

 

「私達は、誰かに救われるのを待ち続ける、落ちぶれた一族か?」

 

 音が消えた。

 声が静まる。

 静寂の中、リリウスはエルフを見つめる。エピメテウスは黙って彼等の第一声を待つ。

 

「………いえ、いいえ!!」

「恥ずかしくないわけがない! 先祖に、子孫に!」

「ならば、その誇りを示せ! その気高さを証明しろ!」

 

 ラーファル王の言葉にエルフ達が叫ぶ。

 

「………………少しだけ見直した」

「王族への尊敬も、連中の誇りも一応は本物ということだろう。正直足手まといだが」

「向こうはでかいからな。死ぬ覚悟もあるなら居ないよりマシだ」

 

 リリウスはドゥルガーに大量の武器や杖を作らせながら呟く。

 エピメテウスはそれらに炎を付与しながら、森を見つめた。

 

 


 

おまけ ダンメモであったアイドルがある世界

 

「時代の変革に何が必要か? そう、偶像(アイドル)だ!」

「「「……………」」」

 

 フェルズが何か言い出した。

 

「今人気の『エルフ・リンクス』! 解散してしまったが『L-AiZ(ライズ)』に『イル・ミリオーネ』! 此等は迷宮都市にて今もなお愛されている」

「ああ、フィルヴィスが盛大に暴走していたあれか」

 

 表向きには死んでいるのだから地上では目立つなと言われていたのに、仮面のアイドル『ペルソナ』として活動していた。

 

「いや、だって………レフィーヤが困って…………」

「そんな事はどうでもイイ!」

「どうでも良くはないだろ」

「今重要なのは、いかにして異端児(ゼノス)達を受け入れさせるかだ!」

 

 これそういう話だったのか。

 

「つまり、アイドルだ!」

「疲れてるのか?」

「だとしたら主な原因はお前だな」

「【千の妖精(サウザンド・エルフ)】に関わるお前だろ」

 

 と、責任を押し付け合う2人。

 

「そもそも人前に出せるか」

「正体を知られればな。だが、正体がバレなければ問題ない。鱗とか耳とか、隠せばいけんじゃね」

「お前のゴーレムで人型作って歌わせろよ」

「それでは意味がないだろう!」

 

 まあ確かに。

 

「というわけで、アイドル専用衣装に着替えてくれ」

「用意してんだ」

 

 

 

 メイン。

 不動のセンター(歩けないから)マリィ

 同じくカリス。

 レイ。

 

 バックダンサー

 フィア。

 ラウラ。

 タクシャカ。

 マナサー。

 

「おい待てコラ」

 

 フィアなどは神々の言う萌え袖で誤魔化せそうだが、ラウラは無理だ。マナサーも人魚(マーメイド)の亜種で足はあるが、翼や角に尻尾もある。タクシャカも同様。

 

「ではマリィとカリスが歌専門。フィアとレイがボーカル兼ダンサーに」

「まあそれなら………いや、だから此奴等を人前にだすな」

 

 ぶっ飛び具合にそもそもアイドル活動がマズいのを忘れかけた。

 

「ダメ?」

 

 と、マリィ。アイドルはともかく、かわいい服を着て歌いたいのだろう。

 

「隠れ里の中でだけなら」

「ではリリウス、ギターを頼む。モンスターの手では難しいからな」

 

 ドラムはラーニェがやる事になった。

 

 

 そして練習。リリウスは取り敢えず弦の位置などを頭に叩き込む。

 

「では、行くぞ」

 

 ラーニェがカンカンカンと音を鳴らし、音楽が始まる。

 

「──!?」

 

 真っ先にその違和感に気付いたのはレイ。マリィとカリスも音程を乱さぬまま目を見開く。

 

 リリウスのギターの、圧倒的な存在感。

 特別なパフォーマンスなどない。圧倒的な技量と迫力で、ボーカルもドラムも纏めて食い散らかされる。

 

「これが、オラリオ最強の冒険者の実力か!」

 

 異端児(ゼノス)達が盛り上がる中、アイドル経験のあるフィルヴィスだけが戦慄する。

 

「……………なんだコレ」

 

 エピメテウスはそう呟くことしか出来なかった。

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