ダンジョンで飯を食うのは間違っているだろうか?   作:超高校級の切望

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記憶喰らう花

 大精霊ネプトゥヌスとの仮契約。それがラーファル王に課せられた役目。

 元より大精霊。その力に耐えられる者はリリウスとエピメテウスを除けばその場におらず、なら置いていくかとなった中で立候補したのがラーファル。

 

 確かに彼なら器でなくとも少しの間は耐えられる。

 それでも全身張り裂けそうだが。

 

「ネプトゥヌス!!」

「お前を知っているのか」

「大精霊じゃしのう」

 

 穢れた精霊は傷を再生させながらラーファル王の持つネプトゥヌスの槍を睨み、しかし直ぐに笑みを浮かべる。

 

「貴方モ、食ベテアゲル!」

「性的な意味ならウェェェルカム!!」

 

 ネプトゥヌスは下界の民には理解不能な言語で叫ぶ。取り敢えずやる気はあるらしい。

 問題は………

 

「コリガン!!」

「────!」

 

 魅了を扱うコリガンの存在。ラーファル王でさえ、耐えられたのは一瞬。あの時リリウス達がこなければ………!

 

「はぁ!」

「ギッ!?」

 

 再生しようとしていた箇所を水の槍で貫かれる。

 バランスを崩した精霊に対して、魔石を狙う一撃。竜の顎が閉じ防がれた。

 

 鎧の役目も果たす竜の顎。やはり、硬い。

 

「……ナンデ?」

 

 魅了の通じぬラーファル王に、牙の隙間から疑問の目を向ける精霊。コリガンの力に抗えるのは強い精神力を持つか、強大な力を持つ者だけのはず。精霊の加護?

 

「妻に操を立てている………と言えれば格好もつくが、女に呆ける余裕がないだけだ」

 

 ツゥ、と頰を血の涙が流れた。

 過ぎた力の代償。文字通り体を壊す激痛がとろける頭を正気に戻す。

 

 コリガンが武器化精霊を放つも、蛇のようにうねる水の上に立つラーファル王に到達する前に激流に飲まれた。

 

 命を賭した下位精霊の特攻をただ一振りの武器が無効化する。これこそが大精霊の力。数多の英雄と共に世界を救いし救済の化身。

 

「だが、私ではその娘を救えん」

 

 故に、その仕事は別の者。

 

「俺の剣、何処いった?」

「「────」」

 

 竜の口内に何時の間にか侵入していたリリウス。精霊が反応するより早く、拳が叩き込まれた。

 

「…………硬いな」

 

 割り込んだ腕がへし折られながらもリリウスの拳をそらし、頭が弾け飛び竜の上顎が開く。

 

「此奴は貰ってく」

「!? 触るんじゃねえええ!」

 

 コリガンの襟首を掴み竜の顎から出ていく。

 

「返シテ!」

 

 精霊が腕を伸ばすが、炎に腕を焼かれる。

 

「お前の相手は我々だ」

「………………」

 

 炎を纏うエピメテウスを前に、竜の顎がガチンと閉じる。閉じこもる気だろう。

 モゴモゴと聞こえる詠唱と、膨れ上がる魔力。更に巨大な魔法円(マジックサークル)が現れた。

 

「…………大地の精霊か」

 

 召喚される黒光の大岩。雨の如く降り注ぐ無数の巨石を炎と水が撃ち落とし、竜の顎を狙う。

 

「大した硬度だ………」

 

 焼け焦げ、砕けながらも耐えた。直ぐ様修復される。

 

「リリウスは剣を持っていなかった。それさえあれば楽なのだがな」

 

 

 

 

「クソ!!」

「口が悪いな。誰から教わった」

「とも………だ……友達? とも………!!」

 

 リリウスの言葉に頭を押さえるコリガン。ドロリと血が流れる。洗脳のみならず凶暴化の効果もあるようだ。

 

「シュヤーマ」

「ワフ!」

 

 リリウスの言葉にザッと土を踏みしめ現れたシュヤーマ。リリウスがその背に乗る。

 

「うぅ、うぅぅ! 私、私は………?」

「………………」

「私は……私は、殺す。彼奴等を、皆、皆殺してやる!!」

 

 まあ、その気持が全くわからないとは言わない。それでもリリウスは、やはり解らないと言うのだろう。自分は彼女ではないのだから。

 

「それがお前の本心なら、好きにすりゃいいさ。外の世界を見る前に、殺してこいよ」

「………………」

 

 その言葉にコリガンの肩が震えた。

 

「ま、そうだろうな。お前は俺と違ってまともだから、引きずる」

 

 そして、だからこそ嫌いな奴らの命なんて背負いたくない。自分が幸せになって、ザマーミロと舌を出してやる。彼女にとっての復讐なんて、それだけで良かったはずなのだ。

 

「うううる、さい!!」

 

 リリウスは頭を貫こうと飛んできた精霊の槍を歯で受け止めるとボリボリと噛み砕く。

 

「だって、あの子が一緒に………あの子と、私は……!」

「あの子ってのは、墓をああした奴か?」

「うるさい!!」

「……………」

 

 リリウスは飛んできた剣を掴み、更に飛んできた武器を弾く。

 

「だって、友達なんだもん! 初めての、友達なんだ!」

 

 それもまた彼女の本音。

 

「皆嫌い! 皆皆大っ嫌い! あの子だけだもん、私の友達は! 私に優しくしてくれたのは!!」

「…………本当か?」

「────っ!!」

 

 ズキリと頭が痛む。

 リリウスの言葉に当たり前と答えるために記憶を探り、頭痛が邪魔をする。

 

「お前はお前の母親の顔を思い出せるか?」

「……………ぁ」

 

 思い出せない。頭に浮かべようとすると、頭痛が酷くなる。リリウスは目を細めた。

 

「やるぞ、シュヤーマ」

「ワウ!」

 

 猟犬シュヤーマ。そのレベルは、オリンピアでの経験を経てLv.4。新たな発展アビリティは『魔導』。

 

「【太陽に先立つ光。夜闇は白ずみ、陽光が世界を照らす】」

「っ! あぁ!!」

 

 魔力に反応し、再び攻撃を行うコリガン。本人の意志と言うよりは、反射で動くようにされたか。

 

「【目覚めよ、地に満ちる命。日輪の抱擁が我が身を消し去ろうと、新生の暁が生命を捧げよう】」

 

 当然、リリウスやシュヤーマにとってそんな攻撃など当たるはずもない。

 

「【アルーン・モーハナ】」

「アオオオオン!」

 

 全てを癒す光が溢れる。コリガンの穴だらけの脳を癒し始めた。

 

「ぎっ!?」

 

 再生する脳とそれを阻む根に文字通り脳を削られるような痛みが襲う。精霊達が混乱する中、リリウスは根本を掴み引っこ抜く。

 

「キィー!!」

 

 花冠の花々が泣き出した。花の中央に小さな牙を持ちキイキイ喚く寄生花は、そのままリリウスに寄生しようと根を伸ばし爪の隙間や眼球の隙間に根を通し………()()()()

 

「────!!」

 

 自身の根が溶かされ慌てて抜こうとするが、遅い。

 寄生花は根元から凍りついていき、凍った水分が細胞からなくなり枯れぬまま乾燥した。リリウスが力を込めればそのまま砕け散った。

 

 

 

 

 

「!? コリガン!!」

 

 戦闘中であるにも関わらず精霊が動揺した。

 リリウスがうまくやったか。ならば、もう生かしておく理由はないな。

 

「やれ………」

 

 エピメテウスの言葉にラーファル王が大量の水の槍を放つ。

 苔の巨人(モス・ヒュージ)の分身体は本体が死ねば当然灰に還る。そうなればコリガンの頭に穴が開くとして殺さぬよう手加減していたのだ。

 

 もうその必要もなくなった。

 

「はあ!」

 

 エピメテウスが放った高温の炎が水の槍を蒸発させ、水蒸気爆発が精霊の体を吹き飛ばす。

 

「リリウス、あったぞ!」

 

 剥き出しになった大樹の内部に取り込まれていたマーダが姿を現す。

 そこに落ちる落雷。

 

 電流は精霊の中に流れることなく、剣に食われた。

 

「!?」

 

 剣から放たれるのは炎。

 蛇の形を型取り精霊の体に齧り付く。

 

「【荒ベ天ノ怒リヨ】!!」

「【カエルム・ヴェール】!!」

 

 放たれるは超短文詠唱。精霊の身を守る雷の鎧………。

 

「…………?」

 

 だが、炎の蛇は気にしない。寧ろ炎の勢いが増し、反比例するように雷の勢いが衰える。

 

「………あれは、なんだ?」

「貪食の炎蛇(えんじゃ)………リリウスの魔力でしか目覚めないが、一度目覚めてリリウスの手から離れれば制御の利かない全てを(エサ)とする大喰らいだ」

 

 既に天の炎を吐き出し尽くしたマーダは、当然天の炎を吐き出せない。だが、リリウスの血が媒介となった吸収する力も、ヴリトラの鱗を元とした炎も健在。

 

 魔力だろうが石だろうが、何でも取り込み己の火力を上げる糧とする。

 

「アアアアアアアアア!?」

 

 後は単純に、相性が悪い。仮初の肉体を手にしようとその力は最強の魔法種族(マジックユーザー)である精霊で、その身は植物型モンスター。

 

 マーダからすれば食いやすい極上の(エサ)

 魔石を砕かれるまでもなくその身を灰へと変えながら精霊は炎の蛇に食われていった。

 

 


 

 

エルフ達も頑張ってました。まあでも、リリウスとエピメテウスからしたら雑魚だし。

 

 

マーダはリリウスの牙みたいなもんなので、どんなに燃えててもリリウスが触れて炎を吸えばリリウスの精神力(マインド)と体力に加算される。

 

多分誰もが気になってるベートの魔法とぶつかったらは、厳密にはマーダは魔法とも異なるのでベートの炎が一方的に食われる。

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