ダンジョンで飯を食うのは間違っているだろうか?   作:超高校級の切望

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カイオス砂漠

 カイオス砂漠。

 広大な領域を砂に覆われ、オアシスを中心に複数の国が存在し、不毛の大地故に資源を奪い合う。

 過酷な世界に耐えるため神の恩恵を求めるのは当然。この砂漠に於いて【ファミリア】とはそのまま軍を意味する。

 

 人の手の及ばぬ砂の海に住まうはモンスター。そのモンスター蔓延る世界で国から逃げながら生き残る盗賊なども当然神の眷属で、小国の軍なら戦力を割いて相手するなんて出来ず放置されている。

 

 そんな砂漠を横断する商人は高い金を払い傭兵系ファミリアを雇う。

 財力=戦力。そんな図式が成立するカイオス砂漠の商会四天王ロッゾは当然砂漠でも有数の戦力を雇える。

 

 戦争中の国に赴き『人狩(ひとが)り』を行える程度には、彼が雇った傭兵系ファミリアは強かった。

 だが一人残らず死んだ。

 

 ワルサに王都を焼かれたシャルザード。王都が陥落した国の軍がまともに機能するはずもなく、これ幸いと多くの民を捕えることが出来た。

 

 見目麗しい女の奴隷に、労働力となる男の奴隷。

 労働力にはならないがその手の輩には高く売れる子供達。

 

 リオードの街へ向かいながら稼ぎを計算するロッゾは、ふと巨大なサンドワームの死体を見つけた。

 腹が大きく裂け絶命している。あれだけの巨体に………同族同士で殺し合ったか?

 

 そして、その近くにいるのは子供。或は小人族(パルゥム)。どちらにしろ、砂漠に一人の時点で仲間とはぐれたのだろう。

 

 飢えのあまりモンスターの肉を食う人影を見て多少の足しになると声をかける。

 振り返った顔は美しく、思わぬ高級品にロッゾは善人の笑みを浮かべ誘ったが、無視された。

 

 敗国の貧乏人風情がとムキになったロッゾは傭兵に痛めつけるよう命じた。ポーションもある。多少傷ついても治してしまえば問題ない。

 

 白髪の小人族(パルゥム)。それが意味することも忘れ手を出した。獣の食事の邪魔をした。

 

 

 

「は、はひ………ひぃ!」

 

 ゴギュと最後の傭兵が頚椎を噛み砕かれる様を見ながら、ロッゾは逃げる事も出来ず震えていた。

 

「た、たす………たしゅけ……!」

 

 グチャリ。

 獣の尾を踏んだ哀れな連中の最後の一人の命が噛み砕かれた。

 

 

 

 

 奴隷達は荷台の外から聞こえる悲鳴や音に震えていた。

 奴隷と言っても、なんならその扱いは外で歩く傭兵達より良いだろう。死んでしまっては商品にならないし、傷ついたりやつれたりすれば価値が下がるからだ。

 

 だが逃げられないように鎖で繋がれ、布も厚く丈夫で外の様子は何も見えない。聞こえてくる音から、何か恐ろしい怪物が暴れ回っているのだけは解る。

 

 やがて悲鳴が聞こえなくなる。外にいた傭兵も商人も全員殺されたのだろう。ならば、次は? 外の怪物が腹を満たしていても、怪物は人を殺す。仮に巣に戻っても、砂漠のど真ん中。盗賊や他の怪物に襲われる。

 

「「「────!!」」」

 

 荷台の入り口が動く。全員子供を背に奥へと避難する。

 

「………………」

「お、女の子?」

 

 顔を覗かせたのは怪物などではなく、白い髪の………少女だろうか?

 キョロキョロと周囲を見回す。

 

「………………」

 

 やがて視線は幼い兄妹で止まる。舌打ちした。

 一人の少女が前に出る中、白髪の人物が荷台に上がる。その手には剣。

 

「…………え」

 

 ジャララと鎖が落ちる。全て等しく切り裂かれていた。何時? 見えなかった。

 

「……………ぁ」

 

 そのまま背を向け外へ出ようとすると、外套の背に刻まれたエンブレムが見えた。

 真珠貝と泡のエンブレム。歌劇の国(メイルストラ)に本拠を置く美の女神の眷族の証。そして、女と見紛う美貌の小人族(パルゥム)。それが意味することは…………。

 

 

 

 

「リリウス・アーデ様ですな!?」

 

 リオードの街。商人の街とも言われる交易の要にて、太った男が一見美少女にも見える白髪長髪の小人族(パルゥム)へと話しかける。

 

「…………誰だ?」

 

 駱駝車をここまで引っ張ってきたリリウスは見覚えのない黒い豚のような男に首を傾げる。

 

「私めはボフマン・ファズール。商人のはしくれなれば、稀代の英雄の暇つぶしの一助になればと」

 

 商人の界隈では『下手な王侯貴族より力ある神の派閥(ファミリア)に手を揉め』なんて格言がある。このボフマンも、偶然リリウスの存在を知り探していたのだろう。

 

「ドゥフフ。それに、貴方の旅の伴も現在我が商会にて歓待しております」

「伴………」

「キィー!」

 

 と、リリウスへ向かって降りてくる巨大な鳥。

 砂漠の種ではない。艷やかな羽を持つ巨大な猛禽類。

 襲いかかるのではなく、リリウスの肩に乗る。と思えば今度は2匹の犬がリリウスへ飛びかかり顔を舐め始める。

 

「やはりここに来たか」

「エピメテウス」

 

 最後に現れたのは褐色の大男。エピメテウス………愚物と呼ばれる男と同じ名前? そういえばリリウス・アーデの偉業の一つにその子孫と怪物を打倒したというものがあったが…………。

 

「後ろの連中は?」

「拾った」

「……………そうか」

 

 救国の英雄が2人。そんな光景を紫紺の瞳の少女が見つめていた。

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