ダンジョンで飯を食うのは間違っているだろうか? 作:超高校級の切望
リリウス・アーデとアレン・フローメルの不仲はオラリオではよく知られている。この2人は、お互い理由も分からないがとにかく相手が気に入らないのだ。
「てめぇこそなんでいるんだクソ猫。あれから数年、Lv.7にもなれてねえ雑魚が呑気に旅行かよ」
「ああ? てめぇこそ、昼間っから酒場とはなあ。Lv.8になったからって随分のんびり屋になったんじゃねえか」
「はっ。俺より雑魚に言われてもな」
「殺すぞチビ」
「出来もしねぇ言葉使うな」
二人の間に火花が散ってる。オラリオでは武器と武器がぶつかって物理的によく散っていた。
リリウスがLv.4になるまでは一方的に。Lv.4からはリリウスも対応し始め、Lv.6同士だと中々決着が付かず、Lv.7になってからは一度もない。
アレンはオッタルというLv.7にも噛み付いているが、Lv.8となったリリウスは単純にオッタルより上だろう。生半可なアビリティでリリウスがランクアップするわけがないことなど、アレンは知っている。
例外はLv.6の時だけだ。
「…………………!」
「………………」
無言で睨み合う二人の背後に、周囲の者達は巨大な化猫と餓えた獣を幻視する。
今にも互いに牙と爪を振るわんとする怒れる獣達だ。
「そこまでだ」
「女神の休息を妨げることは許さん」
誰にも止められない争いになるかと思われたその時、アレンの槍をオッタルが掴みリリウスの肩をエピメテウスが抑える。
「「……………チッ」」
リリウスとアレンは同時に舌打ちして闘気を収める。本当に、いろんな意味でこの2人は似ているのだ。
「あら?」
「む……」
遅れてフレイヤと付き人の女が出て来た。アレンとリリウスの殺気に当てられ泡吹いてるボフマンの横を通り過ぎる。
「こんにちは。昨日もあったわね」
「美の女神………神フレイヤか」
「ええ」
エピメテウスはやはり面倒くさそうに顔をしかめる。
「あまり好かれていないのかしら?」
「美の女神の厄介さは身にしみているからな」
主にアフロディーテのせいで。神の力を断ち切る『
「行くぞエピメテウス。面倒事はごめんだ………ボフマン、お前の船の出港準備しろ」
「は、はあ………」
リリウスは精霊を探すことにしてその場から去ろうとする。と………
「待て」
オッタルがリリウスを呼び止めた。
「お前は、Lv.8へ至った………」
「…………………」
「
事実、Lv.7を保有していた【オシリス・ファミリア】も【ゼウス】と【ヘラ】に敗れ、その二大派閥も黒竜に敗れた中で最初にLv.7になったのはオッタルだ。
「故に、必ず俺も追いついてみせる。その頂に………」
「……………………は?」
「「「──!!」」」
オッタルの宣誓に、リリウスが返したのは無言の殺気。即座に得物を構える【フレイヤ・ファミリア】。
誰よりも疾く動いたのはやはりアレン。
常人には………否、上級冒険者であろうと極一部しか視認は不可能。第一級でも反応できるものが限られる神速の突撃。
一線の銀の閃光は、漆黒の三日月に切り裂かれる。
「っ!?」
「遅え」
即座に斬り裂かれた槍の石突で殴り付けるアレン。速度こそが彼の売りであろうと、その身は第一級の戦士。
遠心力で加速されたその一撃は、冒険者の頭部すら容易く砕く。
「軽い」
だが、リリウスは格上。冒険者においてレベルが2つも違えば遥か格上と言ってもいい。
片手で掴み取り、引き寄せ腹を殴る。
「がっ!!」
アレンの体がくの字に曲がる。大気が吹き飛ばされる轟音を響かせ、アレンの疾走と変わらぬ速度で街の外まで吹き飛ばされた。
「────」
「【
ヘグニが呪剣を振るおうと迫り、ヘディンが詠唱を唱える。
小人達も各々の得物をリリウスに向け………まずグレールが頚椎を叩かれ麻痺する。大剣が奪われ、ヘディンに向かって投げられる。
「っ!?」
「「「はっ?」」」
「!!?」
行ったのはエピメテウス。
リリウスに意識が向いていたとはいえ、誰一人反応出来なかった。
やはり強いと、ヘグニが剣を振るう。剣に込められた呪が体力を奪い、代わりに斬撃範囲を拡張する。
が、既に目の前に接近していたエピメテウスが顔を掴みヘディンへ投げつける。
「お前、何者だ………」
ガリバー兄弟の残りがエピメテウスを睨む。オッタルはリリウスを見据えていた。
「お前、お前等………そもそも何追い抜かれてんだ」
「なに?」
「あの男が、あの女が……命を懸けて託す程の戦士だったから、お前等はあの時挑ませてもらったんだろうが」
少なくとも、あの二人は託す為に来た。託せると信じたから、全力で壁になった。
「お前達は彼奴等が未来を捧げる程の戦士だったのか? なら、この7年近く何をしていた」
無論、冒険をしていた。だが、それが如何ほどのものか、結果は残酷なまでに記されている。
アビリティの成長がいくら速かろうと試練なくしてランクアップはありえない。
リリウスとオッタル達が歩んで来たこの数年は、それこそ比べるまでもない。
「もっと死ぬ気で悔しがれ。それすら出来ねえ野郎が、寝言をほざくな」
リリウスの姿がブレる。アレンという都市最速とすら渡り合えるオッタルをして、反応を許さぬ神速。鎧の如き筋肉を穿ち、内臓を震わせる一撃がオッタルを吹き飛ばした。