ダンジョンで飯を食うのは間違っているだろうか?   作:超高校級の切望

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シャルザード

 念の為持ってきていたポーションにより回復した【フレイヤ・ファミリア】。

 都市の外で不要だろうと誰もが思っていたが、ヘディンはリリウス・アーデがLv.8に至るほどの冒険があった以上万が一に備えていた。そのリリウス・アーデ本人と争い使う羽目になるとは思ってもいなかったが。

 

「あれがLv.8……世界最強か」

 

 それに加えて、Lv.6の自分達を歯牙にもかけなかったあの男。戦った感覚的に、基礎能力(スペック)はオッタルに劣れどLv.7クラス。技量はオッタル以上。

 

 リリウスが聖域で出会ったという英雄の子孫だろう。

 『愚物』などと称されているが、かの存在が現れる前と後では怪物に襲われる国の数がまるで違う。()()()()()()()()()。なぜなら滅ぼされることなく言い伝えることが出来たからだ。

 

 その英雄の子孫。脈々と受け継がれた術理?

 しかし、あの目。

 

 愚か者に囲まれ王として君臨するしかなかったヘディンの周りでその目を目にする機会は少なかった。

 ただ生を貪るだけの愚か者ではない、正しく長く生きた賢人が浮かべる目に似ていた。それも、ヘディンが知る限りの誰よりも老練な……。

 

「貴方達は、これからどうするつもりだ」

 

 と、尋ねてくるのはアリィ。リリウスと顔見知りだったらしい。

 奴隷として捕まった彼女を救ったというのがリリウスだったようだ。なら奴隷商を襲ったという怪物は……。

 

「あの子に頼らなかったの?」

「元より、私の力だけでなさねばならぬ事だ」

 

 今はフレイヤに恩を返せと付きまとわれているが。

 

「でも、馴染の商人にも裏切られて、お金もないのに?」

 

 なりふり構わず金を盗ってくる、なんて事も出来ない真面目な王子。まあそうしていた場合、今頃彼女の両腕はリリウスに食われていただろうが。

 

「貴方こそ、路銀を用意する約束はどうなった」

 

 その路銀を賭けてボフマンと『戦盤(ハルヴァン)』を打っていたのだが、リリウスが乱入し賭けは無効になった。

 

 証文は奴隷の大量購入もとい解放の際に商人に預け、金貨なんて嵩張って重たいものをフレイヤが持つはずもない。

 

「………テヘペロ」

「誤魔化すな!」

「仕方ないわね。一度商会に戻って、必要なものを揃えましょう」

「…………そういう事をするのだな」

 

 世界最強の派閥と称される【フレイヤ・ファミリア】が、商人相手に強請るなど、と意外そうな顔をするアリィにフレイヤは首を傾げた。

 

「だって、貴方とのデートが終わってしまうなんて悲しいじゃない?」

「………デートではない」

「それに、貴方がしたいことをさせてあげないと、その魂は陰ってしまうもの」

 

 全てを見透かすかのような銀の瞳にアリィは思わず背筋を震わせる。

 そんなアリィに微笑みフレイヤは歩き出す。未熟な王の出す答えを楽しみにして。

 

「行くわよ、みんな」

 

 眷属達も、アレンの不服度が増しに増したが女神の言葉に従おうとしたその時だった。

 

「こいつ借りるぞ」

「え?」

 

 突如現れた犬に乗ったリリウスがアリィを抱える。

 そのままオッタルを殴り飛ばした時以上の速度でその場から消えた。

 

 

 

 

 遡ること数分。

 『砂海の船(デザート・シップ)』の準備を急ぐファズール商会を尻目にリリウスは船底の奴隷達が魔力を注ぐ機関部を見ていた。

 

 奴隷全員を足してもリリウスの魔力の方が多い。その事を伝えると商人の一人が積み込む食料を減らせますねと嬉しそうに語る。

 

「? 人が減った分、詰め込める食料は増えるだろ」

「え?」

「?」

 

 まだ若い商人とリリウスは揃って首を傾げる。話が噛み合わない。

 と、その時。何やら船が騒がしい。

 

「それは本当か?」

「はい、確かかと」

「ううむ…………」

 

 ボフマンは手に入れた情報をどう扱うべきかと思案している様子だ。

 

「どうした?」

「ブヒ!?」

「ぶひ?」

 

 リリウスが問題ごとかと話しかければボフマンはとても驚いた。出来ることなら情報を伏せたかったらしい。

 

「そ、その………シャルザードの王子……アラム王子が実は女だったらしく」

「それが?」

「シャルザードは王女を認めていません。王都の奪還が叶ったとしても、国力を維持できるとは」

「ん?」

「え?」

「何故俺がシャルザードを救う前提なんだ?」

「え? ですが、方角的に…………」

 

 地図を広げリリウスが指さした方向を見るチラチラ見るボフマン。

 リリウスはその様子を見ながら、情報を整理する。

 

 リリウスは精霊の気配に向かうように指示して、ボフマンはそれをワルサとシャルザードの戦争に介入すると勘違い。

 つまり精霊は両国のどちらかが所有。シャルザードが落とされた事を考えるとワルサ。

 

 戦争には微塵も興味ないが………ここでリリウスがワルサを潰せばファズール商会は救国の一助となった商人。

 

 まあ勝って救ったところで感謝がどの程度に集まるか………。と、そこまで考え脳裏に過るのはフレイヤと共にいた女。

 

 フレイヤが一般人に興味を持たないとは言わないが、あの女はそれなりの芯を持っていたのだろう。

 あの女は、何処かフレイヤに迷惑そうな……振り回されるクソ猫に近い顔をしていた。

 

 それでも一緒にいた。脅された可能性は低い。そういう恐怖はなかった。使命感故に受け入れている。

 

 噂が流れるタイミング。迷惑な女神を連れてでも果たさなくてはならない何か。それが意味することは?

 

「………………シャバラ」

「ワウ!」

 

 リリウスに名を呼ばれ即座に駆け寄ってくるシャバラ。撫でてやると砂でジャリジャリ。

 リリウスはシャバラの背に乗る。そして────

 

 

 

 

「ボフマン。お前を救国の一助を担った王家御用達商人にしてやる」

「話がまるで見えませんぞ」

 

 


 

コラボネタで少し思い付いたリリウス

 

【子鬼喰らい】リリウス・アーデ

妹と(中の人的な意味で)そっくりな受付嬢を襲おうとしたゴブリン共を殲滅するべく宝箱に入っていた『子鬼殺しの鎧』を纏ったリリウス。この巣のゴブリン共を皆殺しにする為に動く。

 

 

おまけ

【赤燐僧侶】リド

宝箱から出て来た蜥蜴僧侶の衣装をまとったリド。蜥蜴僧侶には炎を吐くのでより竜に近いと思われている。

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