ダンジョンで飯を食うのは間違っているだろうか? 作:超高校級の切望
「????」
アリィは自分が何時の間にか船の上に移動したことに気付き困惑している。
「こ、ここは?」
「ボフマン。王族に相応しい格好をさせてやれ」
ポイ、と困惑するアリィを侍女達に投げ渡すリリウス。困惑の目を向ける侍女達に、ボフマンは頷く。着替えさせてこいという意味だ。
「いや、待て! 状況が、解らない!」
「私も説明してほしいですぞ」
「此奴は噂の実は女のアラム王子」
と、呆気なく説明するリリウスにアリィもボフマンも驚愕で固まる。
「な、なぜ知っている!?」
「推測」
これまたあっさり言うリリウスに、アリィもボフマンも目を見開いた。
「その反応は当たりだな。ワルサ滅ぼしてやるから、ファズール商会を王家御用達にしろ」
「な、何故…」
「ワルサが俺等の追ってる新種のモンスターを所持している可能性があるからな。それを殺し尽くすために旅をしていて、ボフマンに出来た借りを返すのにも都合がいい」
それだけだ、とボフマンに船の準備に戻るよう話を切り上げるリリウス。その態度は、アリィを王族と知りながらも王として見ていない。
ボフマンの借りを返すのに使えるから、ただそれだけが彼がアリィを連れてきた理由だ。
「し、しかしリリウス様。ワルサは国一つ落とす程の………」
「………俺は誰だ?」
「………へ? ………リリウス様です?」
「じゃあ、今の最強は誰だ?」
「リ、リリウス様です!!」
「そういうことだ」
都市外の眷族の実力などたかが知れている。『世界勢力』でまともに敵になるとしたら、それこそ『学区』が精々。
つい先程も世界最強の派閥と称される三大派閥の一角の幹部達をまるで相手にしていなかったし。
「結果的に国を救うような輩に、民の未来を託せと?」
「お前が何かするよりマシな未来だろ。フレイヤに頼る手もあるだろうが、それならどっちにしろ同じだろ」
【フレイヤ・ファミリア】の手を取ろうがリリウスの手を取ろうが、結局国は救われる。そして、どちらも民に大した関心がないのは同じだ。強いて言うなら………
「あぁ、後。国取り戻したら、孤児の支援も忘れるな?」
リリウスの方が若干子供に甘い事だろう。記憶を取り戻した今、それをあまり隠すことも無い。
「私は…………」
「【
「……………解った。元より、頼れるものなど誰もいない」
「………………」
アラム王子が女だった。その事実が広まったのは、シャルザードと懇意の商人にでも掛け合い裏切られたからだろう。
確保に失敗した商人がシャルザードの不利になる噂を流しワルサに媚を売ったか。
事実シャルザードはここから盛り返せる可能性は低い。
ワルサに取り入るか、略奪ばかりのワルサに関わらないのが商人の方針。真っ先に支援したファズール商会のみが得を出来る。
ワルサに陥落したシャルザードの王都には拠点が築かれている。
天幕の中、地図を広げたゴーザ将軍は部下達に叫ぶ。
「アラム王子はまだ見つからんのか!?」
「そ、それが………」
依然消息が掴めず、シャルザード南方で衝突し潰走した部隊で目撃したのが最後。
「馬鹿者、捜索を急がせろ!! シャルザードは王家を尊ぶ国! 王家の血を全て押さえぬ限りこの戦争は終わらんぞ!」
先制攻撃でシャルザード王都を落としたというのに、これ以上戦が長引けば、侵略の為に多くの兵を派遣し手薄になった祖国が他の国に攻められかねない。
既にシャルザードの
ゴーザはグッと歯噛みする。この戦争の為に招かれた『疫病』の如き蛮族を思えば頭が痛くなる。
「ツェエエエーイ! 僕様参上!」
と、ゴーザの天幕に入ってくる一柱の神。
矢を模したかのような先の尖った帽子をかぶった小柄な神。長い黒髪を結わえ、愉快そうに笑う男神だ。
「神ラシャプ! 何故此処に!?」
彼こそがワルサが招いた傭兵系ファミリア【ラシャプ・ファミリア】の主神。付き従う
エルフらしい美形は、しかし何処か薄ら寒さを感じさせる。
「なーに言ってんの、僕は軍部の主神だぜ? 顔ぐらい出すさ!」
「貴方達には北方で交戦する敵軍を抑えるように伝えたはず! どうして主神自らここへ来た!」
抑える、なんて言うのはただの方便。ただ本隊から離したかっただけだが、あっさりこの場に現れたラシャプに叫ぶゴーザ。
「そんなの、
大柄なゴーザの叫びなど何処に吹く風。ケラケラと嗤いながら、ラシャプは何でもないかのように答え、兵士達が驚愕に固まる。
「ゴーザ君が手強いって言ってたセランだっけ? 彼処にいた連中皆殺しにしてきたよーん。報酬頂戴よ、ハハハ」
遅れて兵士が飛び込んで来る。急報は、セラン軍の壊滅。
本来なら喜ぶべきことだが、ゴーザの顔は嫌悪に歪む。
放火、略奪、凌辱。ラシャプ直属の眷族が通った道には二度と緑が生まれぬと思うほどに蹂躙された。それはまさしく獣の所業………欲望を満たし破壊に酔う悪辣なる賊の行いそのものだ。
枯れた土地故に略奪に生きるワルサといえど、それでもまだ軍としての規律があった。今のワルサに、それは失われつつある。
(憎きシャルザードを、まさか憐れむ日が来るとは………!)
ゴーザはそんな【ラシャプ・ファミリア】に蹂躙される敵国に、喜ぶことなど出来なかった。
「で、やることなくなっちゃったからさあ。僕達もそのアラム王子………あ、王女だっけ? 捜索に加わっていーい? 囲ってる連中を『拷問』するのもお手の物だよ☆」
「ッ! 待たれよ!」
これ以上この【ファミリア】から力など借りたくない。
「神ラシャプには残存勢力の相手を──」
「虫の息の残り滓ぐらい君達で何とかしろよ。でないと、君達は無能のそしりを受けちゃうぞ☆」
「────」
「王子は南方勢力で行方が掴めなくなったんだろう? なら
神の視点を持って正解を引き当てるラシャプ。そのまま楽しそうに提案をする。
「
「やめろっ! 神ラシャプ! シャルザード以外の第三国の恨みを買うような真似は──」
「おいおい、早く戦争を終わらせなきゃ君達が王サマに怒られるんだろう?」
事実、ゴーザは将軍という立場で、シャルザードに挑み何度も負けてきた。その上【ラシャプ・ファミリア】の提案を断り戦を長引かせたとなれば………。
「任せとけって、僕の子供達がぜ〜〜んぶ、邪魔者をぶち殺してやるからさ。いや〜、僕達働き者☆」
天幕を出ていくラシャプに気付き、尊敬の光を目に宿し駆け寄る兵士達。
ワルサの兵士達はラシャプの団員達の砂漠世界において屈指の強さに心酔し、魅入られ、あの神に
賊徒の如く堕ちていく兵士達に、もはやゴーザの言葉は届かない。彼はまさしくお飾りの将軍と化した。
「悪疫の獣め!!」
悪戯に戦火を広げる
「王女を認めないシャルザードに王女の存在を認めさせる。まずはそこからだ」
夜。船は止まる。
リリウスは狩ってきたモンスターを食いながらアリィとボフマンを集め話していた。
「し、しかしシャルザードの歴史上、女王が即位したことなど………」
「馬鹿かお前」
「ばっ!?」
「どれだけ装飾を施そうと歴史は所詮過去だ。絵物語の如く人々を楽しませ歩む道を示そうと、未来を作るのは結局生きた人間。前例? 歴史?
血統主義の完全否定とも取れる言葉だ。王家の血を尊ぶシャルザードの王子はその言葉に顔を歪める。
事実自分が無能なのは認めるが、その血を、歴史を尊び戦い続けた兵士を否定したくなかったからだ。
「貴方とともにいる男とて、英雄の血統だろう!」
「は? 殺すぞお前?」
「っ!!」
「そもそも彼奴は力を示してるだろうが」
事実世界最強の眷族達を、彼は軽くあしらった。
「いいか? 歴史がただの血に付加価値をつけ、王家の血として今がある。つまりお前が男だろうが女だろうが、シャルザードにとっては特別な血。それを利用する」
「しかし………」
「
と、リリウスがあっさり言ってのける。
「お前は覚悟も、意義も、意志も、何も示していない。唯一示される価値すらまともに扱えない。そもそもお前は