ダンジョンで飯を食うのは間違っているだろうか?   作:超高校級の切望

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王の矜持

前回のあらすじ(大嘘)!

 

リリルカは友達との帰り道、謎の声に導かれ黒い生き物を拾う。

動物病院に届けたその日の夜、再び聞こえた謎な声に従い家を飛び出すと、黒い生き物と謎の怪物が戦っていて。

 

願いを叶えるグリフシードを巡る戦いに巻き込まれることに!!

 

魔法少女、リリルカ・アーデ、ここに参上!

 

 

リリルカ 魔法少女

 

リリウス 謎のマスコット。本来は時空管理局(局長ウラノス)の暗部(隊長フェルズ)と繋がり深い関係で、本来の力を取り戻せば世界を崩壊させる古代の技『ブラフマンダストラ』を扱う生きるロストロギア。管理局の白い魔神。基本的に外の世界など知るかの精神で本来は地上部隊。

 

ベル 敵の魔法少女(男の娘)。危ない目に遭ったらすぐに戻るように母に言い聞かせられている。雄牛の使い魔アステリオスと共にジュエルシードを狙う。

 

アルフィア 妹の病を治すためジュエルシードを狙う魔導士。親バカ。リリウスと浅からぬ因縁があるらしく………。

 

エピメテウス 世界を焼き滅ぼせるロストロギア『天の炎』を扱う。リリウスと渡り合える数少ない強者。

 

ロイマン 副局長。大好物は胃薬。

 

地上部隊 アストレアやガネーシャなどの隊長率いる第一管理世界『オラリオ』を守る者達。

 

次元渡航部隊 次元世界の勇者と呼ばれる男がいる。一部のエリート気取りが図に乗った結果、たった一人の地上部隊隊員に壊滅させられかけたとか。

 


 

 シャルザード軍は王族の帰還に喜ぶ。

 王位継承権のない女だったなど、もう気にしている者は居ない。

 

 それだけ、兵達はあの光景に希望を抱いた。

 装飾された、偽りの希望。何処ぞの勇者と同じなのでリリウスは不機嫌そう。それでも王を尊ぶ国と、意志なき王を救うのはそれぐらいしかやれる事はない。

 

「…………話がある」

「…………へえ」

 

 

 

 

 アリィが兵達を見て思った事は、このままではダメだと言う気持ち。

 兵士達が見ている希望はハリボテの希望。それに縋ったところで、やがて諸共崩れるのは目に見えている。

 

 だからといって、自分が何か出来ると自惚れてもいない。要は、意志の問題だ。

 

「改めて、王として貴方に頼む。我が祖国を救う為に、力を貸して欲しい」

「え、やだ」

「……………………は?」

 

 聞き間違いかと顔を上げるアリィ。リリウスは明らかに不機嫌そうな顔をしていた。

 

「お前が人形ではなく『王』として何かをしろって命じるなら、それは断る。俺の王は俺だけだ。気が乗らないことはしねえ」

「気、気が? いや、だが……貴方はファズール商会に………!」

「だから断られないとでも? 笑わせる。今のお前はとても惨めだ。何かしていると言い訳が欲しいだけ」

 

 そして、そんな輩の下につくなどごめんだ。

 

「そこで黙り込むのが、結局立ったふりだけしてる何よりの証拠だ」

「まっ………」

 

 背中を見せるリリウスに声をかけようとするも、言葉が出てこない。と、その時……

 

「まあ待て」

 

 エピメテウスが呼び止めた。

 

「なんだ?」

「そう結論を逸るな。下を向いたままとは言え、王族が前に進んだのだ」

 

 その言葉にリリウスはアリィに視線を向けた。

 

「……………じゃあ、勝ったら言うこと聞いてやるよ」

「は? 勝つ? え…………」

「力じゃねえよ。そこまで意地悪くねえ………あの、あれ…酒場でやった」

「……『戦盤(ハルヴァン)』か?」

 

 力ではなく知恵の勝負。確かにそれなら、勝つ可能性もある。ただし、リリウスは一夜の経験で未経験とは言え全知の神と渡り合う知恵者。

 

「お前が勝てたら、この一時お前を王と認めた上で下についてやる」

 

 

 

 

 『戦盤(ハルヴァン)』の準備をして駒を並べていくリリウス。

 駒は王帝(マレク)女王(マリカ)猛将(ファイズ)戦車(メルカーバ)妖精(ラウフ)賊徒(レース)小兵(ジェイド)奴隷(オボデヤ)の8種で、相手の王帝(マレク)を詰ませることで決着がつく。

 

 決められた領域内であれば『布陣』は自由。一度手番を失うことで選んだ駒と特定の駒を取り換える『生贄』など複雑なルールがある。

 

 むろん、王侯貴族で流行っている『戦盤(ハルヴァン)』はアリィも嗜んでいるし、定石も知り尽くしている。

 

 それでも勝てる姿が思い浮かばない。

 

「………王の意地とやらも、碌に続かねえならそもそも見せるな」

 

 席にも座らず俯くだけのアリィにリリウスが吐き捨てる。その言葉にアリィはハッと顔を上げた。

 そうだ、ここでリリウスに見捨てられれば、どのみちワルサに滅ぼされる。

 

 ならば、自分が掴み取るべき未来を得るために挑むのは…………。

 

「…………」

 

 席に座るアリィを見て、リリウスは目を細める。

 

「先手と後手、どちらにする?」

「後手…………」

 

 少なくとも、汎ゆる手が研究された昨今では後手が有利となっている。少しでも勝率を上げたいのだ。

 

 『布陣』は妖精(ラウフ)の機動力で敵陣に穴を開ける攻めの形。まず1つ、駒が前に出る。

 

「……………戦車(メルカーバ)を生贄に奴隷(オボデヤ)

 

 対してリリウスが取った動きは、まさかの最弱駒との交換で一手を捨てる。

 

「のろまな戦車は要らん」

 

 リリウスは二手を使い戦車を捨てた。フレイヤの時は捨てなかった。それはつまり、フレイヤはそれだけの相手で、アリィは自らハンデを背負える相手ということ。

 

「…………っ!!」

 

 そしてそれは思い上がりでも何でも無く、事実アリィは追い詰められていく。攻めの布陣はいつしか崩れ、防戦一方。

 

 勝ち目が見えない。眼前に広がる闇の中に活路を見いだせない。

 もう、このまま逃げ出したい。と、僅かに顔を上げたアリィはリリウスと目が合った。

 

 急かすこともなく、アリィの次の手を待つ。

 

「…………!」

 

 意思を示さぬアリィを、それでも意志なきまま『王』として扱ったリリウス。僅かなれど意思を示したが故に、一人の『王』と認め、己の『王』とは認めぬ眼差し。

 

 その力を借りるには、結局、挑むしかないのだ。

 

「……………!!」

 

 女王(マリカ)を動かす。

 考えがあったわけではない。遮二無二の一手、ただの悪あがき。

 

 終わったと、敗北を悟るアリィだがリリウスはしばし盤面を見つめる。

 長考している? ただの一度も、考え込まなかったリリウスが?

 

「…………………」

 

 リリウスが駒を動かす。アリィも駒を手に取り…………やはり負けた。

 

「……………! も、もう一度!!」

 

 惨めに物乞い。それでも、アリィはチャンスに縋るしか無かった。

 

「…………良いぞ」

「え?」

「さっき、負けの目があった。次は完全に勝つ」

 

 勝ち目があった? 自分に?

 何処だ? リリウスが長考したあの一手か? だけど、そこからどう繋げるのか、アリィには想像もつかない。

 

 勝つ手があっただけで、勝ち目は依然遠く。

 リリウスは今度は戦車(メルカーバ)を捨てなかった。それはアリィを警戒してのことだろう。アリィ自身、己にそんな価値があるとは思えないが…………だとしても!

 

 

 

「…………………」

 

 窓から差し込む月光は何時しか消え、しらんでいく空が見える。

 あれから何度、惨めに再戦を懇願したか。

 リリウスはそれに全て応え、そしてまた負ける。

 

「……………眠い。寝る」

「っ! ま、待ってくれ!」

 

 そして到頭、リリウスが盤面をそのままに切り上げた。これ以上、惨めな小娘の懇願に付き合う必要がないことなど、アリィも解っている。それでも…………!

 

「不戦敗だぞ?」

「…………え?」

 

 エピメテウスがリリウスにそう声をかけた。

 確かに、勝負を降りたのはリリウス。だが、これまでの対戦を見てリリウスが負けたなどと宣う者はいるはずが無い。だが………

 

「…………ああ、そうだな」

「えっ………」

「お前の勝ちだ」

「は? いや、だが…………!」

 

 自分は負けた。完膚なきまでに。こんな、お情けをもらえるほどの事をしていない!

 

「民なくして王は無い」

「?」

「王とは群れを率いる者。群れの長に必要なのは、まあ色々あるだろうが、結局は最後まで諦めないことだ。絶望の中顔を上げて、希望を掴もうと足掻く……」

 

 そしてアリィは、何度負けても顔を上げ続けた。

 

「認めてやる。今回に限り、お前は俺の王だ…………」

 

 ふぁ、とあくびをしながら部屋を出ていくリリウス。取り残されたアリィは、エピメテウスに視線を向ける。

 

「受け取っておけ。たとえあれが本当は鬱陶しくなっただけだとしても、お前は今世界最強の『力』を手にした『王』となった」

 

 侵略を止めることも、逆に全てを滅ぼすことも出来る力。それが今、アリィの手にはある。

 

「奴が起きるまでに、方針を決めておけ」

 

 エピメテウスはそう言うと部屋を出ていった。

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