ダンジョンで飯を食うのは間違っているだろうか? 作:超高校級の切望
前回のあらすじ(大嘘)!
迷宮グルメ機関『DGO』所属の料理人ベルは、グルメ四天王アイズと共に未知なる食材を探求する日々。
そんな彼等はこの世の食材の独占を図る美食會との争いに巻き込まれる!!
ベル 料理人。成長性に優れたグルメ細胞を持つ
赤い猛牛 ベルのグルメ細胞。
アイズ グルメ四天王。3千種類の野生のジャが丸くん(?)を発見した。
エニュオ 数々の暗躍を行っている謎の人物。美食會ボスをバカ女に牙を抜かれたと嘲笑う。
リリウス 美食會ボス。アルフィアの事を…言っているのか?
エピメテウス 美食會実力No.2。焼きながら切るなどの特殊調理を得意とする。
ゼウス 美食神。アルフィアの義父。実はベルの祖父。浮気したことだけは本当。
ヘラ ゼウスの妻。もぐつもり。
ザルド DGO会長。
ワルサ撃退の翌日。リオードを救ってくれた貴人から話があると伝えられ、集まる民達。
周辺の街をワルサが焼いているのは聞いており、先日この街が標的になったのだ。それを救ってくれた者の言葉に耳を傾けぬワケがない。
集まった民衆達に語るは隠し砦の兵士達に騙った言葉と同じ。性別を偽り、王都をみすみす奪われ消息を絶った無能な王子は、その実王家存亡の危機に手を貸すと約定された伝説の戦士達に力を借りる為軍を離れていただけ。
確かに王家の持つ紫の瞳をしているが、本当に?
信じ感激する者、疑う者、困惑する者………反応は様々。
『商人よ、
それを楽しそうに眺める女神。
『ただ、どうかこの声を届けてほしい! 砂丘を越え、砂風へ乗って、我がシャルザードへ!』
「当然、その声はワルサも拾う。決戦に持ち込む気でしょう」
ヘディンはその頭脳を持ってリリウスの作戦を見抜く。
尤も、ただ王族の居場所を知らしめただけでは決戦には持ち込めない。数で勝るワルサが、敢えて全軍を動かす理由などないからだ。
つまり、ワルサが全軍を持って迎え撃たなければならない状況を生み出せばいい。
「私ならガズーブの荒原に軍を集結させると周知します」
ワルサとシャルザードの国境に存在する荒原。それはつまりそのままシャルザード王都に向かうことも、
『決戦の地に現れなければお前達の国を滅ぼす』という脅しだ。
『我が真名アリィに誓い約束する! 決戦の日は5日後のガズーブの荒原!』
フレイヤがニコッとヘディンに視線を向ければ、ヘディンは眼鏡をくいっと上げた。
『全軍を集結させ、王都を奪還する! イスラファンの民よ、どうかこの言葉を我が勇猛なる将兵達に届けて欲しい。さすれば、私は此処に宣言する! 王家の生き残りとして新しき王となり、悪族ワルサを打ち倒すと!!』
王威を持って宣言したアリィの姿に歓声が上がる。
『リオードの宣誓』は、砂漠の砂風よりも速くカイオス砂漠を駆け抜けるだろう。
それは各地にて抗戦を続けていたシャルザードの兵達、そして………当然ワルサにも。
「くそ! やられた!!」
シャルザード軍は東進を開始。部隊を細分化させ、その勢いを止めることは叶わない。
雌雄を決する気がなければそのまま守りの薄くなったワルサに進軍するという脅し。
姿を消したと思っていたらこの様な奇策に出てくるとは。
「才ある身と聞いていたが、此処に来て『覚醒』したということか!」
そして、神ラシャプは二択に見せて実質一択の選択をケラケラと笑う。
軍を2つに分けるという選択はない。敵の力は未知数。確実な戦力を用意しなくてはならない。
まあ、ラシャプは別にワルサが滅ぼされても問題ないのだが。
彼には彼の、恐ろしく悍ましい計画があるのだ。
「誘いに乗ってあげよう! こっちには『隠し玉』や、その『ついで』もあるもんね。ね、シール」
「はい、ラシャプ様」
ラシャプの言葉にシールは薄気味悪い笑みを浮かべる。
「ですが、その『ついで』のみで十分かと」
そう言って取り出される無骨な魔剣。
金属板の如きあの『隠し玉』の鱗を剥いで作らせた武具防具は、下位の精霊の加護よりも上位の力を宿している。
アイテムやクスリ、魔法で眠らせているも身動ぎする度に眷属達が大勢死ぬが、ラシャプは特に気にしない。
「
彼等の『隠し玉』。それはリリウスが探している穢れた精霊の分身。
ラシャプは宝玉の胎児を、元より弱体化した地上種なれど単体で国軍を壊滅させる強大なモンスターに取り込ませた。
「しかし残念ながら、シャルザードは私が壊滅させてしまうでしょう」
Lv.4………オラリオに於いても規格外と称される位階に到達せしめたシールはそう言ってまだ見ぬ敵軍を嘲笑う。
「勝利の暁には、アラム王子の皮をはいで使った旗でラシャプ様にお伝えします」
「すげえイケメンの顔でクッソゲスいことほざくお前のそういうところ、僕は気に入ってるよ」
彼等は勝利を疑わない。
彼等は蹂躙を疑わない。
彼等は惨劇を疑わない。
近隣の戦士をどれだけ募ろうと、自分達に勝てる訳がないと確信していた。
余談だが、ラシャプ達は元々強力なモンスターを使用していただけあり、精霊の分身は羽化する程度の魔石しか与えていない。
なので、まあ……その、つまり。
たとえ世界最強の小人が参加してなかったとしても、残念ながら彼等の計画は破綻することが決まっていた。
さて、勝利が約束されたシャルザード。当然、ボフマンはこのまま行けばリリウスの約束通り王家お抱えの商会となるだろう。
当然、それを快く思わないものも居る。ましてや、商会四天王の一人が死に空白が出来た今、その座を狙い、足を引っ張るのもまた商人。
「………………」
夜闇に潜む暗殺者の集団。
大陸にて密かに囁かれる、殺戮の女神の眷族達。
これから命を奪うことに緊張はなく、興奮もなく、ただただ作業的に対象へ接近する。
彼等の隊長はLv.3。されど雑兵。感情が殺されるような修業を経て心を生かすことの出来なかった出来損ない。
まあ、心を生かせた者も娘を庇い死んだり、神の元から離れたりと、成功例と呼べるかは微妙なところ。確かなのは、感情を失った人形も殺しを楽しめる殺戮者も殺しに苦しむ者も、殺戮の女神は等しく愛し、汚れ仕事を望む者達に貸し与えられるということ。
故に彼等も依頼を受け命を…………。
「似たような味だな。魔法やスキルも同じか? 個性が死んでんなあ」
「!?」
ならば取る行動は一つ。
「で、ですぞ?」
ここ数日不眠不休で働いていた標的の命を刈り取る。ここで死んだとしても、依頼だけは達成する。
窓を突き破り、標的の喉元にナイフを突き立てようとして、腕が消える。
バキバキと千切れた腕が握ったままのナイフを噛み砕く獣に失った筈の恐怖を取り戻した暗殺者は喉からこみ上げる悲鳴を上げるまもなく食い殺された。
「……………あばばば」
「俺が帰ったら、お前死ぬなこれ」
「そ、そんな! どうかお守りくださいですぞ!」
「え、やだ」
「そんなあ………」
「……とは言え、恩は返すとも。今からお前を
首根っこを掴み廊下の奥へと引きずっていくリリウス。窓辺の月の光が届かぬ廊下の闇に飲まれていくボフマン。
その夜、リオードの民達は肥え太った豚が黒い巨獣に食われては復活し、何度も食い殺され悲鳴をあげる『夢』を見た。