ダンジョンで飯を食うのは間違っているだろうか? 作:超高校級の切望
高校受験に失敗したベルは、祖父の紹介の下書類審査で入学出来る陽海学園に入学することに。
そこで出会ったアイズという美しい少女に血を吸われて!?
ベル 人間(実は四分の一妖)。一級フラグ建築士。アイズの十字架を何故か外せる。
アイズ 吸血鬼。二重人格に近く普段の性格はアリアドネ姫で裏がアイズ。妖気操作にたけ、風のように操る。ベルの血とジャガ丸くんが好物。
シル 淫魔。ベルの事が好き。
レフィーヤ 魔女。アイズの追っかけ。ベルの事が気に入らないと言っているが……?
ヘルン 雪女。ベルのストーカー。
アルフィア セイレーン。実はベルの母(人間)の異母姉妹。三大冥王に匹敵する力を持つ。
リリウス 蠱毒の生贄の一つだったが、壺代わりの穴蔵内の毒虫も獣も食らった蠱毒神。新聞部部長。公安と敵対し壊滅させかけた。
エピメテウス フェニックス。理事長。人類との共存を目指す三大冥王の一角。
アミッド ドライアド。保健委員。リリウスの体質を抑える薬を定期的に渡している。
エレボス 真祖。二百年前に封印された吸血鬼。人類殲滅を目論むが、その真意は?
三大冥王 組織力トップ、アルゴノゥト(ぬらりひょん)。最強、アルバート(吸血鬼)。最年長エピメテウス。
砂漠を駆ける獣が通った後に、巻き起こるは砂嵐。
それを生み出すは、たった一人。
音さえ置いていかれる超高速の疾走、その軌跡をなぞる様に後を追う風が周囲の空気を巻き込み、砂を巻き上げ
奇しくもその光景は、今まさに忌々しげに顔を歪めている
『世界最速』が再現する『
悲鳴すらかき消され、砂嵐の中に潜む獣に喰われていく。
「な、何が起きて! ぎゃあ!」
「どうし──」
悲鳴に反応し声を上げた瞬間首の肉を食い千切られる。
その姿は砂嵐に隠れ、発生源も見つけられず彼等にはただの災害にしか映らない。嵐に命乞いをする者が居ないように逃げ惑い、故に殺されていくだけ。と………
「はっはー!!」
砂嵐を突き破り現れる人影。手に持つのは、魔剣。
リリウスが回避すると砂漠世界を凍てつかせる吹雪と砂の大地を焼く業火が柱の如き砂の嵐を掻き消した。
「…………魔剣か」
それも、かなり質の高い。と言うか、精霊の力を感じる。魔剣の素材は精霊の分身だろう。
「貴様か! 我が主ラシャプ様の計画を邪魔する輩は! 我が名はラシャプ様一の眷族にして、団長のシール!!」
今の名乗りで87回は殺せたが、敢えて見逃したのはこれが国と国の戦争だから。生き残る数名に、名乗りを無視して殺したと吹聴させるより名乗り、挑んだ上で殺されるという光景を伝えさせるため。
「強いなぁ、貴様は! 見れば解る、走るだけで嵐を引き起こせるんだもんなあ! ひょっとして我々と同じ砂漠世界の外の戦士! いやいやひょっとしてひょっとしたら、あの
漂う人の血と油の匂い。既視感………ディース姉妹と同じ、所謂妖魔と蔑まれるタイプの
「このカイオス砂漠では『
などと宣いながら己の死をこれっぽっちも予感していない。周囲に配置しだした暗殺者が自信の源だろうか?
「ヒヒッ! このままでは私は殺される! 故に、我が常勝の『戦士殺し』をお見せしよう!! 【荒べ、悪疫の幻風】!!」
「……!」
魔法……いや、この魔力の禍々しさは『
「【ハル・レシェフ】!!」
瞬間、シールの目が輝く。いかに最速を持ってしても回避不可能の視線の光線。悍ましい魔力がリリウスの中に入り込む。
無論リリウスのスキルによる体質は既に魔力を食らい始めているが、決して無効化ではない。恐らくはLv.4の………
発言からしても良く使っている魔法。数秒は効果を及ぼすだろう。とは言え
「………………?」
シールの姿が消えた。幻覚の類? 殺した兵士達の食残しはそこらに転がっている。
周囲からは兵士の匂い。隠蔽?
面倒だ。旅の道中出会った五感を逆転させる
「リリウス………」
「────」
シールの
リリウスの目に映るのは真実『最愛』。だが実際はシールの配下。
シールは知っている。どんな強者でも………否、『偉業』を成した強者故に『犠牲』を払うのが常。
致命的な同情を誘った所をオラリオから取り寄せた猛毒で一突き。錯乱し部下を殺そうと『最愛』の皮を被る駒は何人もいる。
シールはこの魔法で格上を殺しランクアップしてきた。間違いなく最弱のLv.4。それでも対人において自分は最恐だと自負する。
最愛、悲劇の記憶を織り交ぜたシールの魔法は、どんな人間であろうと心を抉る。
『最愛』に壊される者の悲鳴は何度聞いても新鮮で、リリウスの叫びを今か今かと待ちわびる。これは、またランクアップしてしまうかもしれない。
例えばリリウスは、妹を傷つけられるかと言われたら傷つけられる。
それを一番理解しているのはリリウスだ。アフロディーテも間違いなく最愛だが、場合によっては殴れる。
では、シールが見せるのは誰か?
最愛にして、悲劇が生じる者。それは、ただ一人。
「大きくなったな」
安堵するように、感激するように笑う灰色の女は真実アルフィアそのものであった。
それ程の再現性。故に……
「………やれ」
「ああ」
炎が全てを焼き尽くした。
「……………は?」
炎に包まれ灰燼と成る部下を前に、シールが目を見開き固まる。炎の中心に立つリリウスはギョロリとその瞳をシールに向けた。
「なぁ!? な、何故!? なんで!?」
「………声は聞こえないが……まあ、言いたいことは何となく解る。お前は今、『この世で最も呵責なく殺せる』姿をしている」
「そんな、そんな馬鹿なあ!? 嘘だ嘘だ嘘だああああ!!」
今リリウスの目に映るのは傷つけること躊躇う『最愛』の筈。心を蝕む悲劇の筈。でも、じゃあ、どうして!?
どうしてこの男は平然と次々迫る『最愛』を焼き尽くしていく。
「そもそもただ放つだけの炎で殺せるわけもねえが…………お」
と、リリウスの視覚と聴覚を支配していた魔力が完全に食い尽くされた。リリウスの瞳は真実シールを映す。
「あ、あひ…………」
蹂躙と殺戮に酔う妖精は、酔いすら覚める圧倒的な恐怖を覚え、炎の蛇に喰われた。
「おいおい、シールまでやられちゃったの?」
「は、はい!」
ステイタスの消滅を感知しながらも眷族の報告に驚いたふりをするラシャプ。Lv.2は勿論Lv.3の眷族すら今この瞬間加速度的に消えていく。
「部隊は撤退も許されず、まともに残っているのはゴーザ将軍の本隊のみ!」
炎の壁に阻まれ、正確な伝令は出来ていないだろうがそれにしたって3人と3匹に………。呆れるラシャプは、しかし冷静に考える。
『学区』ではないだろう。しかしこれだけの速度で蹂躙するとなれば
彼処は力持つファミリア程外に出るのが難しいと聞く。シャルザードが依頼を出す暇はなかったろうし、となると評価としては中堅なれど精鋭ぞろいの派閥か。
「『二者択一』を迫られた時点で裏があるとは思ってたけど、当たらないで欲しかったな〜」
天幕から出たラシャプが向かうのは巨大な檻。中に気化させた薬品を流し込む装置を止め、ラシャプは眷族を呼び寄せる。
「イーザ、これを戦場の真ん中に放り込んできて」
「えっ?」
「大丈夫。
確証もなく宣うその姿は、まさしく下界を娯楽と楽しむ神の笑み。イーザが鞭を振るうと檻の中から咆哮が響き、鉄格子を容易く引き裂きそれは飛び出した。
「はははは! 切り札は最後まで取っておくものだぜ☆」
ワルサの兵士をすり潰しながら進むそれを見て笑うラシャプは、そう言えばと近くの兵士に尋ねる。
「敵ってどんなの? シールを殺せるあたり、オラリオの冒険者だとは思うけど」
「は、はあ………まずは、第2師団を褐色の男が焼き尽くし、第3師団を小柄なアマゾネスが蹂躙」
「ふむふむ………」
「第4師団を黒髪仮面の
「ははっ、訳わかんねー」
「あ、あと………第4師団の一部を白髪の
ピタリとラシャプが固まる。
「………………んん?」
そのままドッと冷や汗を流す。
「僕、ちょっと周りの物見てくるね。壊れた物とか片しておくよ」
「は、はあ」
ラシャプは今の内に逃走することにした。
「…………………」
中央本隊。ここまでくれば走るのもやめ、ただ歩くリリウス。されどそれを止めようとする物は皆等しく屍を晒す。
あれだけの強さを前に、ゴーザは荒唐無稽は報告が嘘ではないと悟る。されど、引くに引けない。【ラシャプ・ファミリア】などという悪疫の獣共を国に招いて戦争に勝てなかったなど、ワルサとゴーザの主神の権威が失墜する。
馬鹿げた意地と揶揄されようと挑まぬ選択肢はない。
恐怖に飲まれた兵士達は、それでもゴーザの号令の下死地へ飛び込む精鋭達。と…………
「キャハハハハハハハハハ!!」
炎の壁を突き破り現れたのは巨大な
瑞々しい褐色の肌を覆う竜鱗は所々焼け焦げているものの再生を始めている。
吐き出される毒が近くの兵士達を石化させたかのように麻痺させ苦悶の表情のまま固める。
「アポピス…………!!」
戦場の何処かでラシャプの眷族の生き残りが震えた声で呟く。
アポピスと名付けられたそのモンスターの寄生先は『バジリスク』。蛇の姿をしながらも、その種別はモンスターの王と称される竜種。
火を吐き、石化の如き麻痺毒を巻き散らすカイオス砂漠はバジリスクの猛威により広がったとされるほどの伝説級の怪物。その強化種。
精霊との融合を果たした
「……………!」
「ゴーザ将軍、ここは危険です! 急ぎ撤退を!」
「……ああ」
これらはもはや人と人との戦争ですらない。これから始まるのは、怪物による蹂躙。
幸いにもアポピスが狙うは自らの鱗を剥ぎ取った忌まわしき兵士達。と、白い毛並みの小人を見つけた。
金の瞳が見開かれる。その血に宿る精霊の力を感じ取ったのだ。
「アァ、スカディ! 貴方モ一ツニナリマショウ!」
返答は、剣の一閃。故に必殺。
縦に斬り裂かれたアポピスの魔石は2つに割れ、倒れる死体は大地を揺らす前に灰へと崩れる。
「……………
その光景にゴーザは声を絞り出す。
「あんな化け物に敵うものか」
リリウスとゴーザの視線が合う。一般的には部隊の5割を失えば壊滅。対しワルサの兵はまだシャルザードに挑めずとも軍事行動を行える程度には残っているが…………。
「スパルナ、エピメテウスに伝えろ。軍の全滅は無し、獣共を殺し尽くしたら終わりだ」
「キィ!」
数秒して、炎の壁が消えていく。
呆然と立ち尽くすアリィを、シャルザード軍が見つける。
「姫様! アリィ姫! シャルザード五大将が一人ジャファールが参りましたぞぉ! 先だって奇襲を仕掛けるとはなんと素晴らしき手並み! さぁ、我等も参戦致します! 憎きワルサを蹴散らしましょう!
敵は何処に!?」
「…………終わった」
「は?」
震える手で目の前の光景、赤く染まった砂漠を指差すアリィ。
「本当に、終わってしまった」
ふと、思い出す。オラリオの壁は外からの襲撃に備えたものではなく、中からモンスターを出さぬ為に存在しているという話だ。
だが、